「その背中を追い続けて、気が付けば」前編
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思い出せば始まりは、そう。俺が小学4年生の頃だったと思う。
俺は当時中学生だったあの人に助けられた。
確かあれはヴィランの襲撃に巻き込まれて、倒れてくる大木をあの人が撃ち落としてくれたんだった。
それから。そこから、俺の険しく果てしない恋路は始まったんだった。
まだ10歳だった俺は、退院後の災害カウンセリングも医者の言葉も全部すっ飛ばして、あの人に会いに行った。
お礼が言いたいと警察に人に言えば会わせてくれたのだ。
ダークブルーとピンクの混じったポニーテール。深いパープルの瞳。
俺は確かにお礼を言うつもりだった。ありがとうと。感謝の言葉を述べるつもりだったのに、俺は美しいあの人に目を奪われてしまっていた。
「俺と!結婚してください!」
あの時の、あの人の驚いた表情は、きっと忘れないだろう。
中学3年の頃。俺たちは連絡先を交換し合うほどの友人となっていた。恋人にはなれなかったけど。
あの人は高校を卒業後は公安に就職するそうだ。なんでも公安直々にスカウトがあったそうで。そんなことをとても嬉しそうに話していたから、俺も自分の事のように喜んだ。
高校2年生の頃。あの人はヒーロー活動が忙しくなって、俺も受験が控えていることもあって、会う頻度は減ってしまっていた。
それでも俺は諦めなかった。あの人は“レディ・ナガン”と言う名前で、ヒーロー活動に専念していて、ニュースやテレビでその名前を聞けば噛り付くようにして見入っていた。
高校卒業後、俺はナガンの後を追うようにして公安へ就職した。
ナガンのように優秀な人材ではないからこそ、努力を重ねた。事務雑務なんでもござれ。上司の暴言、理不尽な同僚、俺を陥れようとする後輩。全部耐えてきた。それも全てナガンのために。
俺は部署移動の希望を何度も訴えた。それでもナガンとは遠く離れ、別の仕事を任されていた。
毎晩夜遅くまで残業をし、朝早くに出社する。
ただ、それだけの繰り返しだった。
いつか、あの時助けてもらった恩を返すために。今度は俺がナガンを助けるために。
師走の異動希望調査の紙が来るたびに俺は『ナガンと仕事がしたい』と書き続けていた。上司はそんな俺を「ストーカー」「気持ち悪い」と蔑んでいた。
俺は決して諦めなかった。
数年の時が経った。
ナガンが、逮捕された。
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