お姉さんをオトシたい!
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「…というのが祥子さんとの初めてのお仕事でしたね」
「ホークス…今日は一人で飲むつもりだったんですけど」
「ははは。俺もたまには飲んでみよっかなって」
バーの店内に流れる優雅なBGMと、グラスに入った氷が心地よい音を立てる。
ここは祥子さんのいつもの行きつけの店。
相変わらず仕事でのストレスを発散させるために、祥子さんは性懲りも無く1人で飲みに来ていたのだった。
どうして俺を誘ってくれないんだろうか。誘われ無さすぎて自信を無くしちゃうよ、全く。
当の本人はそんな俺の心中を微塵も察する素振りもなく、1人飲みを邪魔された祥子さんは不機嫌そうに、いつものウイスキーを煽るように飲んでいた。
「腹を貫かれて、よく無事でしたね」
「まーね…あたしも悪運強かったのかも」
祥子さんは無意識に傷跡がある場所を撫でていた。
俺は彼女がふとした瞬間に服の上からその傷を撫でているのを何度か見たことがある。
あの夜の事件が彼女のトラウマになっているのか、その傷が疼くのかは俺には分からない。
「…それで?その後はその…アディ?というヴィランを捕まえることができたんですか?」
「勿論!その後は俺がちゃんと片づけましたとも!」
祥子さんの大事な体を傷物にしたんだ。
屋上から落ちてきた時は心底肝を冷やした。そしてあの大怪我。
自分が自分では無くなったかのように、思わず怒りに身を任せ、奴らに生きている事を後悔するくらいには痛めつけた。
勿論後処理は祥子さんには任せずに、全部俺が始末し、その後の祥子さんの処遇についても俺が全て根回し、新人のお姉さんを俺の担当になるよう仕向けた。
今後、俺の手元から離れないように。
恐らくお姉さんは他人のためなら自己犠牲もやむ無しと安易に考えてしまう人間だろう。
だから俺の目の届く所に置いておかなければ、すぐに死んでしまうような気がした。
「それがさぁ、不思議なことに病院で目が覚めたらぜーんぶ終わってたの。あたしの事殴ったクソ上司も左遷させられてたし…やっぱ、神様はみてるってことなのかな」
「案外、神様は近くにいるかもしれません…ね?ホークスさん」
「ははは。マスター、俺は神様とか信じないタイプなんすよ~」
マスターはニコニコしながらグラスを磨いていた。
俺もただ愛想笑いをしながらアルコールの入っていないドリンクに口をつけた。
「はぁ…来週誕生日だ…ほんと年取るたびに誕生日が来るのが憂鬱になる…」
「祥子さん来週誕生日なんですか?俺、お祝いしますよ」
勿論知っていたが。
「あ~いいいい。気を使わなくていいよぉ…どうせ婚期逃した負け犬女だから…ホークスはもっと若い子のところ行ってそのお金を使ってきなさい」
負け犬女?俺の目にはそんな人いませんがねぇ。
そうですね。祥子さんの薬指のサイズは測定済みですから、結婚指輪でもプレゼントしましょうかね。
そうしたら少しは俺の事意識してくれますかね?
「それよりもお酒がいいなぁ。お酒はいいぞぉ、嫌なこと…ぜんぶ…忘れちゃうか、ら…」
と、祥子さんは器用にグラスを掲げたまま机の上で眠ってしまった。
これが飲みに行く度にこうなってしまうなら、他の男に寝取られる前に俺が既成事実を作ってしまったほうが早い気がしてきた。
「マスター、お会計。カードで」
「いつもありがとうございます」
帰りますよ、と声をかけても祥子さんは起きる気配がない。
俺はいつものように祥子さんを背負うと、そのまま店を出て夜の街を歩いていく。
途中でピンクのネオン街につい視線を向けてしまうが、俺の背中で気持ちよさそうに眠る祥子さんの睡眠を妨げることなんて出来るわけがなかった。
「祥子お姉さん…早く俺の気持ちに気づいてくださいよ」
俺はとっくにあなたの虜なんですから。
end
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