お姉さんをオトシたい!
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***
「…」
朝、だろう。カーテンから差し込む光がそれを物語っている。
見知った天井に瞼を何度もぱちぱちとさせる。
起きたばかりの頭はまだ働かずに、未だ現状を理解できない。
その代わりに昨日の代償と言わんばかりに頭がガンガンとひどい鈍痛を訴えてくる。そして胸のあたりがむかむかするような、気持ち悪さ。
昨日あたしはいつものバーで酒を飲んでいた。その証拠にこの二日酔いだ。それから…それから?
あたしはどうやって自分の家に帰ってきた?
全く思い出せないままゆっくりと体を起こす。ベッドの上をキョロキョロと見渡すと枕元にはスマホが。
とりあえず画面をタップして時刻を確認。土曜日のAM9時。まだ昼前だ、良かった。
あれ?あたしスーツどこやった?
仕事帰りに行ったはずだからスーツ一式で寝てなければならないはずなのに、現在私はワイシャツ一枚のみだ。しかもご丁寧に第二ボタンまで外されている。下は…下着のみ。
周囲を見渡してみれば、ハンガーに上着とパンツが丁寧に吊るしてあるではないか。酔ったままあんな事ができるのだろうか…?
全く覚えていない。ここまで記憶を無くしたのは久しぶりかもしれない。
「あ、祥子さん起きました?」
キッチンに続くドアを開けて顔を出したのはホークスだった。
いつものようににこやかに愛想笑顔を振りまいている。
「…」
「おはようございます。お水飲みますか?」
さも当然とでも言わんばかりにホークスはキッチンに戻ると冷蔵庫からペットボトルを取り出してあたしに差し出してきた。
買った覚えはないから恐らくホークスが用意したんだろう。それを呆然と眺めた後、受け取る。
冷蔵庫で良く冷やされたペットボトルが気持ち良い。
「…」
「二日酔いとか大丈夫ですか?」
「待ちなさい…なぜあなたがここにいるんですか……」
「祥子さんって酔っぱらうと一人称『あたし』になるんですね。意外でしたよ~」
「まさか本当に昨日迎えにきたんですか……?」
「いつも酔いつぶれてるっていう話は聞いてましたからね。それにそんな女性を一人で帰らせるのはさすがに危ないでしょ」
仕事の合間の雑談に確かにそんな話はしたことがある。
あたしも軽口程度でそんな時に誰かが迎えに来てくれたら安心だろう、とは言ったことがある。あるが、しかし!
「いや、それはありがたい、けど…冗談で…まさか本気にされるとは…というか、なんであた…し、私の家を知ってるんですか!?それに鍵とか!」
「忘れましたか?俺はヒーローですよ。困ってる人を放っておけません」
「それ答えになってないし…!」
「それと服に関しては俺は触ってませんから安心してください。剛翼でやっといたんで」
「!」
現在自分が結構肌を露出していることに今更気づき、慌てて布団で全身をくるんだ。
ニコニコと笑っているが、正直ホークスに関しては胡散臭くて苦手なところが多いのだ。仕事上、付き合いは仕方ないとして。
「まぁ…とにかく、昨晩はご迷惑をかけしました。それと、ありがとうございます」
「祥子さん」
「!」
ホークスは赤い翼を広げて、先ほどまで部屋に入り口にいたはずなのに一気に私の前まで詰め寄ってきた。
そして剛翼を広げてその翼で私を包み込む。まるでホークスと二人っきりの密室になってしまったかのようで。
「女性の一人飲みは控えてくださいね。俺がいくらでも付き合いますから」
「わ…かり…まし、た…」
真剣な表情でしばらく見つめられた後、ホークスはパッと表情を明るくさせ、私の傍から離れた。
「それじゃ、俺、もう行きますんで!」
と、告げて彼は部屋のベランダから颯爽と飛び立っていった。
「…やること速いなぁ」
ベッドの上に落ちていた一枚の剛翼を拾い上げて、私は小さくつぶやいた。