第3話 任務のために
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けれど。何もせず襲われるのは非常に癪だ。
ボクは迫りくる魔の手を追い払うのをあきらめ、繋がれた手首を可動範囲限界まで曲げて、必死に自身の帽子へ伸ばす。
その間にもせっかく買ったばかりのドレスは無残にも引き裂かれるが、お構いなしだ。
ここで輪っか、もとい、
光輪を帽子の中に詰め込むということは、せっかく吸収した太陽光が帽子によってその光を防いでしまうため全く意味をなさないのだ。
光を全身に浴びてこそ、ボクの個性は発動する。
「はぁっ…はあっ…外れて…早く…」
シヅルは楽しそうな笑みを浮かべながらワイシャツを脱ぎ捨てる。
こんなことなら血みどろになったほうがまだマシだった。
「…ホークス」
想い人を脳裏に浮かべ、あなたの名前が自然と零れ落ちる。
「ボクに触る…なあっ!!!!」
「ぐっ!?」
ボクは自由の利く足を使ってシヅルの鳩尾に全力で蹴りこんだ。
まさか反撃してくるとは思っていなかったのか、受け身を取れずにシヅルはベッドの下へと落ちていった。
その間に帽子を取ろうともがく。
「こンの…クソ女が!!!」
「がはっ!」
シヅルは勢いよく起き上がったかと思えば、ボクの上に馬乗りになって全力で顔を殴る。
何度も、何度も、何度も。
口の中は鉄の味で満たされ、鼻血も止まることなく滴り落ちる。
だけど、痛みを犠牲にして得たものがある。
「大人しくしてれば俺が気持ちよくしてやるって言ってんだろ!」
「ボク、好きな人以外に抱かれる趣味はない!」
「っ!?ま、まぶしっ…」
帽子から光輪を外すことに成功。
全力で部屋中に満ちるほどの強い光を放つ。
元々この部屋はカーテンをしていなかったので、恐らく外から見てもこの部屋から光が溢れ出したのがはっきり分かるだろう。
シヅルは直接光を見たんだ。当分の間は目が見えないはずだ。
ボクは拳を握りしめて光をその手の内に集め、熱を帯びさせる。そのまま手枷を強く握りしめれば、強い光の熱で手枷が焼き切れる。
ようやく自由になった手首を摩りながら、ベッドのシーツを身にまとった。
「ここまでです。大人しく降伏してください」
ボクは光弓を作り出すと、目を抑えてるシヅルの前に構えた。
「チッ…腐ってもヒーローかよ…」
「その扉の向こうに控えてる男たちも降伏するよう命じてください。ボクはあなた方の牙が届くより先に全員戦闘不能にすることは可能ですよ」
「おいおい、偉そうなこと言うくせに?その口は余裕がないようにも見えるが?」
「黙りなさい」
実際薬の効果は消えていないのだ。
意識は朦朧とし始めているし、弓を構える手も震えている。
「お前ら!!やれ!!!」
「最悪っ…」
部屋の扉を勢いよく開け、雪崩れ込むように複数の男たちが部屋に入り込んでくる。
全員筋肉質で体格が良い。単純に力勝負なんてすれば、ボクが負けるだろう。
光翼を、つか、って…
「っ…ああっ…」
ボクはそのままベッドの上に膝から崩れた。
激しい動悸。体の奥がざわざわする。苦しい…早く、楽にしてほしい…!
限界だった。気丈に振舞うことさえも、立つことすらも。身にまとうこの布が擦れるだけでも、正気を保っているのが限界だった。
今度こそ、本当に。
「生きて帰れる…わけないかっ…」
手放した光弓は消え、ボクは顔も上げてることさえ辛くなってしまい、項垂れる。
これ以上抵抗することができなくなってしまった。
男たちがボクに襲い掛かってくる。
女だろうが全員容赦なく殴りつける。
顔を。
腹を。
容赦なく、何度も、何度も。
殴られた拍子に、口から血と共に胃液が吐き出される。
口の中が血の味と、胃液の酸っぱさで気持ち悪い。
もしかしたらホークスが救けにきてくれるなんて、淡い期待をしながら。
でも、しばらくたっても彼の救けは来なかった。
漫画みたいに行くことなんてありえないか、と自嘲気味に笑った。