第3話 任務のために
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あの…ホークス…」
「ん〜?」
「そろそろ離れて貰えませんか…?」
「えー!やだー!もーちょっとだけ」
「っ〜〜〜!!」
巡回を終えたあと、ボクは事務所に戻ってくるなり、ホークスから個性についてあれこれ質問攻めを受けていたのだった。
そして最終的にホークスが僕の背中から生えてる光翼を抱きしめていた。どうしてこうなった。本当に。
「光翼って光で出来てるってことでしょ?だから触れないと思ったんだけど〜…触れるんだねぇ。しかもめっちゃ温かいのなんのって。まるで羽毛布団に包まれてるかのような温かさ…」
「羽毛布団て…皮肉ですか…」
「アンジュちゃんめっちゃ太陽の匂いする…何これ極楽…」
「ちょっ、人の匂い嗅がないで下さいよ!」
ボクの心臓が持たない!
結局ホークスの言う〈好き〉とは、LIKEなのかLOVEなのかは聞けずじまいだったけど、ホークスはあれから普段と変わらない様子だった。
ボクだけが一喜一憂してるみたいで、何だかバカバカしく思えてきてしまった。
それでもこうしてホークスがボクに触れる度に、ボクの乙女心は揺れ動いてしまう。
「でさ、気になってたんだけど。アンジュちゃんが触ったところから相手に光翼を付加することができる。そしてDNA摂取した所は触れた部分より長時間の付加が可能…つまりDNAってどういうこと?」
思わず「うっ」とうめき声が漏れてしまった。
ホークスに説明する時ぼかして伝えたつもりが、やはり中々目ざとい人だ。
ここの部分の説明はあまりしたくなかったから、尚更指摘されると逃げたくなるものだ。
ホークスの顔を見なくても彼はきっと今楽しそうに笑っているのだろう。絶対確信犯だ。
「……です」
「ん?」
「ぼっ、ボクの血液…とかっ…飲んだり…き、きす…したりっ…一時的にボクの個性を相手も使えるようになります」
「へぇ…」
「ボクはそれを…【
「確かにアンジュちゃんからキスされちゃったら、ある意味【祝福】だろうね」
「ちっ、違います!そういう意味じゃありませんから!!」
「じゃあさ」
ホークスは翼を抱きしめていた腕を緩めて、そのままボクの腰に手を回した。
先程まで遠かった声は今では耳元に。背後に彼の吐息を感じる。
「アンジュちゃんとキスしたら俺の剛翼、どうなるか気にならない?」
「なりません!!!!」
ホークスの腕を掴んで思い切って引きはがそうとしたが、ビクともしない。
それなりに筋トレはしていたので力には自信はあったほうだが、ここまで力の差を見せつけられると少々凹む。
それでも諦めまいと何度も挑戦する。このままでは本当に心臓が爆散してしまうからだ。
「ってことは誰かに試したことがあるってこと?」
「昔、猫に口を舐められたことがあって、たまたまその時に個性が発動して…って感じですね。血液の方は友人に血の個性の関係の子がいたので、それで」
「それって男の子?」
「いや女の子ですけど…」
「じゃあ俺がアンジュちゃんの初めてを貰ってあげるよ」
「嬉々として変なこと言わないでください!!」
「…きっと君はいつかどうしようもないピンチになったときに、誰彼構わず【祝福】を与えるような気がしてね。だったら先に君のだーい好きなこの俺が可愛いアンジュちゃんの初めてを奪ってあげたほうがよっぽど良いと思わないかい?」
「っ!」
「バレてないと思った?アンジュちゃんのスマホ画面俺だし、家の鍵についてるキーホルダー、あれ俺のぬいぐるみじゃん」
「悪いですか!あなたのファンで!」
「ぜーんぜん。寧ろ好都合…だって俺もアンジュちゃんの事、好きだもん」
「冗談でもそんなこと言わないでくださいよ…本気にしちゃいますからっ」
密かにホークスの腕に抗っていたが、ホークスはボクの腰を掴んで軽々と持ち上げて、強引にホークスと向き合う形に。
目と目が、合う。
「俺、欲しいものは絶対手に入れたくなる性分なんだよね」
「…ボクはっ」
「本気になってもいいよ」
ホークスは人の扱いが上手いと思っていた。
普段の仕事ぶりを見ていればそれはすぐに理解できた。
だからこれもきっと何か裏があるに違いない。そうじゃないと辻褄が合わない。
こんなボクの事をホークスが選んでくれるはずがない。
そう否定しても、心の中では喜んでいる自分がいた。
―――でも、もし本当にその言葉通りだったら?
だけど私は出かかった言葉を、ぎりぎりで飲みこんで、深く深呼吸した。
落ち着け。落ち着け。
そして右手を手刀の形にすると、そのままホークスの頭に振り下ろした。
勿論大分手加減したけど。
「ふぅ…ボクをいじって楽しいかもしれませんが、そろそろやめてください」
「あれ?怒ってる?」
「怒っていませんよ…雇い主に歯向かうほどボクの人間性は出来てないですよ」
「あはは。ごめんごめん、おふざけはこのくらいにして、と。仕事の話をしようか」
ホークスはやっとボクを解放したかと思えば、手のひらを返すかのように真剣な表情へ切り替わる。
するとポケットからスマホを取り出してそれをボクに見せてきた。
そこには。
「これ、公安からの極秘任務で…実はアンジュちゃんも連れて行けって書いてあるんだけど」
「いや、そんな大事な機密情報、サイドキック如きのボクに見せないでくださいよ…その画面怖すぎなんですけど」
急に真面目な話をされると、温度差で風邪をひいてしまいそうだ。
「いやぁ、俺としてはアンジュちゃん置いてくつもりだったワケ。危ないし。でも君の個性の話も詳しく聞けたし、大丈夫かなって」
「いやどういう基準ですか」
「今回の任務はとあるホストクラブの潜入。そこではVIP客に対して”特別”な接待があるみたいでさ。どうやらそれ、大手ヒーロー事務所も絡んでるって噂。何人もの女性がそのホストクラブに行ったまま帰ってこないとか、薬漬けにした女の子たちの体を文字通り売ってるって話もあるくらいだ」
「…あくまで噂でしかないから、今まで捕まえることができなかった、とか?」
「ま、ホスト相手に大金貢ぎこんで払えなくなった客がそのまま雲隠れしたとか…海外へ飛んだとか…夜の街ではよくある話で片付けられる。警察も二の足を踏むわけさ。実際に確実な証拠を掴まない限り、警察も俺たちも踏み込めない」
「なるほど。概要は分かりました。で、まさか…ボクが囮になれって言うわけじゃないですよね?」
「大正解」
ボクは思わず口端が引きつった。
まともに夜の街なんて遊びにでかけたこともない、箱入り娘のようなボクなんて、そういう仕事をしているプロ達の絶好のカモじゃないか。
なんていうのが表情にでていたのか、ホークスは「心配しないで」と告げる。
「だってアンジュちゃん、俺一筋だろうし。それにホストにハマっちゃったら俺への気持ちなんてそんなものだったんだなって…俺、かなしーなー」
どう見ても後半は棒読みだ。
明らかにボクを煽ってると見た。
「いいでしょう…この任務、ボクに任せてください!必ず証拠を掴んで見せます!」
後に、ボクはこの時の発言を訂正したくなる気持ちに追われるのであった。