05
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***
雄英に到着してから気づいた。
巨狼のままで学校に入るか、それとも生徒の姿で―――
一瞬躊躇したが、建物の外から大勢の声が聞こえる。
生徒の匂いに交じって部外者、恐らく警察官とヴィランの匂いだ。
でも今のまま校舎の中に入ったら多分セキュリティシステム発動しそうだし…
どうしたものかと考えていると、正門からリカバリーガールと根津校長が顔を出した。
「エンデヴァーから連絡来てるよ。お入り」
「丁度良かったフェンリル君、ついでに僕をUSJまで連れて行っておくれ」
「USJ…?」
多分、私の考えている所と違うだろう。それにしてもどこか既視感を覚える名前だった。
今まさに現場となった場所の事だと思う。
それよりもエンデヴァーさん連絡してくれていたのは、とても助かった。
しゃがんで根津校長を背に乗せて、指示のもと目的地へ向かった。
「校長先生、一体何が起きたんですか?」
校長先生も私の正体を知っているため、フェンリルが突然この場に現れてもなんら動じなかったのだ。
私が訪ねると校長先生はいつものように明るく告げた。
「ヴィランの襲撃さ。ヒーロー科1ーAに奇襲をかけられ、オールマイトを含め教師3名重軽傷、生徒1名怪我を負ったものの、生徒とオールマイトは今リカバリーガールに治療してもらったところさ」
「襲われたのは1ーAだけってことですか?」
「そうさ」
校長先生の言葉に少し安堵した。
普通科の方には影響はないみたいで良かった。
いや、結果的には良くないんだけど。
「ヴィランは?」
「大勢確保できたけど、今回の主犯は逃亡してしまったよ。そんな折、丁度君が現れてくれた。まだ犯人の匂いが強く残っている今、君が頼りだよフェンリル君」
「はいっ!」
先ほどまで何もできなかった無力感に襲われていたが、少しでも目の前の事に集中してこれ以上の最悪の被害を抑えなければ。
今、私にできる最善を。
「!」
校長先生の指示のもと走っていくと、着いた先には何台ものパトカーとヴィラン、そして1-Aの生徒たちがいた。
生徒の方はコスチュームが多少汚れているものの全員無事のようだった。
「フェンリル!?なんで雄英に!?」
「本物初めて見た!」
「マジでデカいのな!」
突然現れた私の登場に生徒たちは色めき立つ。
興味津々とした目で私を見上げてきた。さすがはヒーロー科といったところか。
誰一人として動揺することなく平然としていた。
まるで授業の延長線かのように。
あくまでもそう見えているだけの話かもしれないが。
「ヴィランの痕跡が新しいうちに何か力になれればと思って駆けつけた次第です」
「うおおお!!フェンリルがいればすぐに犯人も捕まるな!」
「断言は難しいですが…」
校長先生はUSJの中に入るよう指示をくれた。
私は生徒たちに軽く頭を下げてから中橋を踏み入れた。
室内には乱闘の痕跡と、多くの人間の匂い。
そしてそこに紛れる『悪意の匂い』
「主犯はワープの個性を使って逃亡したのさ」
「となると、ここからの追跡は困難ですね」
身体能力の個性を使っての逃亡、例えば走るなどならば追跡は可能だがワープというのはその場で完全に匂いが途絶えてしまう。
A地点からC地点に移動した場合、その間にBという道があったとすれば通常であればBに犯人の匂いが残っているためC地点まで追跡が可能。
しかしワープでAからCへ移動してしまった場合Bに痕跡は残らないため、C地点を探し出さない限りは匂いを追うことはできない。
正直現状無力ではあるが。
「一番強い匂いがありますね…少し行ってもいいですか?」
「勿論」
校長先生は背中から降りる気配がなかったので、私はそのまま階段を飛び降りた。
中央の最も戦闘の痕跡が色濃く残った場所。
地面はひび割れ相当な力が加えられたのだろうか、あちこち地面が割れている。
鼻先を地面に近づけ、その匂いを覚える。
まるで死者のような、乾いた人間の何か。
犯人によってその悪意の匂いというものは様々である。
その中でもこの犯人の匂いは何か、胸騒ぎがした。
この犯人を早急に捕まえなければさらに事件はより深刻なものに変化していくような―――
「!」
もう一つ。
人とは思えない別の匂いの痕跡が外へと続いていることに気づいた。
先ほどの匂いとは違い、人でありながら人ではない、けれど複数の人間が濃縮された匂い。
我ながら矛盾しているとは思うが、とにかく”コイツ”の匂いはまだ痕跡として続いている。
雄英にいるのか。
「校長先生、ヴィランが外にいます。私は追って探しますので待機を」
「任せたよ」
再びその場から先ほどのUSJ内の入り口まで素早く駆けると、そこにはミッドナイトとスナイプの姿があった。
彼らに軽く事情を話し、スナイプが私の背中から校長先生を下ろしてくれた。
ぐっと足に力を籠め、外へ駆け出す。
丁度USJの建物の裏側は雑木林になっており身を隠すならうってつけかもしれない。
でもどうしてコイツだけ雑木林に?オールマイトあたりにでも吹っ飛ばされたのだろうか。
もしくは負傷しながらの逃亡。
どちらにせよ主犯が置いていくということは、所詮捨て駒だったということか。
木々を避けながら匂いを辿っていくと。
「なっ…!?」
そこには、人ではない怪物が倒れていた。
これが捨て駒?
いや見た目からしても圧倒的な戦力を持っているだろ…
全身黒い筋肉に覆われ、顔の半分以上が飛び出した脳みそで覆われ、ぎょろりとした目玉さえも脳みそに埋まってしまっている。
人のようで人ではない何か。
コイツは一体何なんだ…?
捨て駒ではなく仕方なく置いていった…?
瞼はないのだろうか、目は見開いたままピクリとも動かないので恐る恐る前足でコイツの腕をつついてみた。
「…」
動かない。
生きて…いるんだよね?
もう一度つついてみた。
「フェンリル!」
「うひゃあ!?!?」
後ろから複数の警察官が現れ、声をかけられたものだから、驚いて思わず変な声が出てしまった。
「ヴィランの様子は?」
「意識はある…のか分からないですけど、触ってみても反応はなく」
「フェンリル、悪いがヴィランを抑えていてくれ。我々で拘束する」
ヴィランを押さえつけ、警察官が拘束具を取り付ける。
その間も抵抗することなく大人しくしていた。
それがあまりにも不気味で。
まるで指示を待つロボットかのようで。
ヴィランは拘束されているがもし万が一再び暴れだしたら危険だ。
一度警察官と共に戻ることに。
その間警察官がヴィランに呼びかけるも、ヴィランは一切反応しなかった。
聞こえているのか、口がきけないのか分からないが、ただただ不気味にそこに佇んでいるだけだった。
「フェンリル、塚内警部から連絡が入った。悪いが我々と共にこの後雄英校内を共に捜査してほしい。既にエンデヴァーには連絡済みだ」
「了解です」
「…正直我々もフェンリルがいてくれると大分捜査が楽になる。私が言うのもなんだが、エンデヴァーのアシスタントを辞めて警察に転職してほしいくらいだよ」
「ありがとうございます。でも私はエンデヴァーさんの元から離れるつもりはありません」
「そうだよな。変なことを言って済まない」
道中、あらゆる五感を駆使してみたがこのヴィラン以外に悪意の匂いも他の人間の気配も感じられない。
全て撤退したといってもいいだろう。
けれど念には念をいれて、だ。
私は遠くに佇む雄英の校舎を見上げた。
そういえば教師3名と生徒1名が重軽傷という話だったが、大丈夫なのだろうか。
今朝の事件から妙な胸騒ぎが止まらない。
巨狼の第六感が強く働いているのがわかる。これは当てずっぽうでもない。
何か近いうちに大きな事件が起こってしまう。
―――そんな予感がした。
(その後、エンデヴァー事務所に戻ると)
(かなーり激高したエンデヴァーさんに長時間説教されたのであった。辛い)
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