05
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消火から数時間後。
私は公園に設置された救護用仮設テントの裏で伏せていた。
結局あれから必死に探したが、生存者0。
エンデヴァーさん曰く、圧倒的な高火力で一瞬にして燃えつくされたのだと。
そして犯人は未だ逃亡。
最悪の結末だ。
「フェンリル」
「エンデヴァーさん」
「いい、休んでろ」
立ち上がろうとした私を制す。
その際に水の入ったバケツを私の前に置く。
バケツには「フェンリル用飲み水」と書かれている。私が書いたものだ。
この姿ではペットボトルでは補給が難しいからだ。
バケツを咥えると、そのまま一気に口の中に流し込む。
体の中を冷たい水が通るのが良く分かった。消火されているとはいえ、この場所は未だに熱い。
「エンデヴァーさん、これだけの匂いだと犯人追跡は困難です。ただ、この炎にはその…」
「なんだ。言ってみろ」
「エンデヴァーさんに似たような匂いを感じます。でも何か違う…もしかしたら犯人はエンデヴァーさんと同等の、同じような個性を持っているかもしれません。現場からはそれしか分かりませんでした」
「いや証拠がない分、こういう時のフェンリルの勘は良く当たるからな」
エンデヴァーさんは踵を返して仮設テントに入っていく。
中には救護用の他にも警察官が中で話をしているはずだ。恐らくエンデヴァーさんは情報共有に向かったのだろう。
巨狼の第六感。
これは巨狼の個性は感覚器官が特に優れていることから、視覚・嗅覚・聴覚・味覚・触覚―――そして第六感も同様に機能している。
しかし他の五感と違って全てが当たるわけではない。
結局はただの「勘」と変わらなくなってしまうが、エンデヴァーさんは私のことをよく理解し、利用する。
私は小さくため息をついた。
朝から嫌な夢を見たかと思えば、事件は最悪の形で終わってしまうし。
両腕で顔をガシガシと叩きつける。
だめだ。感情に引っ張られるな。
私が悪意の匂いに気づけていれば、もっと早く救けることができたかもしれないのに。
後悔の念が押し寄せる。
が、頭を振ってそれをなんとかして振り払おうとした。
「悪意の匂い」
それはその人の匂いとは別に明確な悪意を持っている人間から発せられる嫌な匂い。
悪意を持つことによって人間の心理的な反応に体がいつもと違う体臭を放つという話を聞いたことがある。
だから私はそれを「悪意の匂い」と呼んでいる。
でも後悔しても仕方ない。そもそも私はあくまでアシスタントとして活動しているわけだから。それに基本は学校にいる。
全てを救うことは、できない。
「だからせめて、私の手の届く範囲は救けたい…」
と、その時。
救護テントからエンデヴァーさんの怒号が響いた。
「雄英がヴィランに襲われた!?」
私はエンデヴァーさんに確認する間もなく、地面をえぐる程の力を込めてこの場を疾く離脱した。
脳裏に浮かんだのは。
「凪織…心操君…!」
友人たちの、笑顔。