Vol.2
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「氷崎純か。ハジメマシテ、お前のクラスの担任の相澤消太だ」
雄英高校職員室にて、純はたった今担任と名乗った相澤から何枚か書類の入った封筒を手渡される。
「テレビでも持ちきりだったな。お前の活躍。あんまり褒めたもんじゃねーけど。まぁ、今更俺から小言聞かされるまでもなく、散々怒られてきただろうが…体の方は大丈夫なのか?」
数日間。純は毒の影響で高熱に襲われていた。
医者曰く、猛毒の割には人体への影響が少なく、高熱だけで済んだのは不幸中の幸い。手の傷も時間がたてば元の皮膚に戻るとのこと。
被害女性も重体ではあったが、一命を取り留めたのは間違いなく純の個性のお陰だったと伝えられた。
どちらも純の迅速な判断によるものだったため、未資格での個性使用を咎めるものは少なかった。ただ、”大人”として叱る者はいたが。
目覚めた後は手の痺れ、体の動かしづらさがあったのでリハビリと経過観察を兼ねた数週間の入院、警察の事情聴取などにより大分遅れての雄英入学となった。
勿論現在は検査結果に問題はない。体も至って正常である。
「はい。えっと…相澤先生?の方がかなり重症にみえるが…」
そう、目の前にいる相澤は顔が埋まるほどの包帯が巻かれ、腕は骨折しているのか、首から吊るされており、どう見たって相澤の方が重症であった。
それもそのはず。純が入院している間に、雄英高校襲撃事件が発生していたのだ。相澤はその際に負った怪我で現在のような状態に陥っていた。
純のニュースなどあっという間に埋もれてしまうほどの一大事件。勿論、純もそのニュースは連日報道されているから知っていた。
「俺の心配なんかどうでもいい。分かってるのか、氷崎。お前は何日も出遅れてるという事実に。ここはトップヒーローを目指す連中のいる学び舎だ。ついて来れなければ即除籍処分とするからな。あと敬語を使え」
「…肝に銘じておきます」
相澤は表情をピクリとも変えない純を一瞥し、気怠そうに職員室を後にした。
純も落ち着いた素振りでその後をついていく。
「…」
授業が始まる前のHRの時間だろうか。校舎の中はとても静かで、相澤と純、二人の足音だけが廊下にこだまする。
純は相澤の後ろ姿を見ながら、指先の焔を燃やしながら遊んでいた。
「相澤先生、私はどのくらい出遅れてる…んですか?」
ついっと指を振り下ろして焔を消す。
「…お前と同じようにあいつらは先日ヴィランと戦闘を交えた。その経験は間違いなく力になっている。それに付け加え、普段の雄英カリキュラム。模擬戦闘をやってみれば、案外お前の方が負けるかもしれないな」
相澤の言葉に、純は再び指先に焔を灯す。
ゆらゆらと。めらめらと、青白い焔が揺れ動く。
「…私の個性を把握してのセリフですか?」
「勿論」
「なるほど…先生、私実は負けず嫌いでして」
「…」
「今年って体育祭は実施しますか?」
「ああ。お前の事を紹介した後、話すつもりだったが」
「なるほど。それは都合がいい」
相澤の後ろを歩いていた純は足早にその隣まで近づくと、下から相澤の顔を覗き込むような形で、告げる。
「今年の体育祭で5位以内に入賞出来たら、先ほどの言葉を取り消してくれますか?」
「…」
相澤は巻かれた包帯の隙間から、純の顔を見据えた。
口元は少し笑っているが、青い瞳は光無く冷たい色をしており、そこには微塵も冗談など含まれてる様子などなかった。
氷崎純はその瞳で何を見ているんだろうか。ただの負けず嫌い、にしてはこだわりが強すぎる。相澤は少し沈黙の間を開けたのち、呟いた。
「3位だ」
「!」
「3位に入賞出来たら…取り消してやるよ」
「…」
「どうした?さっきまでの自信はどこへいった?」
「…分かりました。今の言葉、忘れないでもらいたい」
「……敬語を使えって言ってんだろうが」
「失礼しました」
「ついたぞ。1年A組、お前のクラスだ」
相澤は純に違和感を覚えつつも、1-Aと書かれた大きな扉の前に立つ。
教室の中からは話し声で溢れている。
「おはよう」
相澤は扉を開けて教室の中に入ると、生徒たちは驚きの声を上げる。
「「「相澤先生復帰はえー!?!?」」」
「プロすぎんだろ…!」
「先生!無事だったんですね!」
「無事いうんかな…あれ…」
相澤は教卓の前に立つと、入り口で立ち止まっている純を見て、入れ、と顎で指示する。
純はそれを受けて相澤の隣まで歩いて行った。
「誰だ…?」
「女の子…?」
「あ!もしかして入学式からずっと空席だったあの席の…!?」
「おい、あの事件の奴じゃねぇか…!!」
「静かに。もう隠すようなことでもないが、入学早々事件に巻き込まれて、諸々の事情で今日からこのクラスに加入することになった。お前らと同じクラスメイトだ。仲良くやれよ」
「氷崎純だ。よろしく頼む」
純はぺこりとお辞儀をしたのち、静寂だった教室はわっと活気に溢れた。
「新しい仲間キター!!!」
「え?待って髪の毛なんか燃えてね?」
「どんな個性なんだろ!あたしめっちゃ気になる!!」
「氷崎、お前の席は一番後ろだ。今まで空席だったからな」
純は悠然と席まで歩いていき、長らく空けていた自身の席につく。
周囲を見渡せばクラスメイト達が嬉しそうにこちらに向かって手を振っていたり、嬉々として純の事を歓迎していた。
「さて、お前らも浮かれてばかりじゃ困る。俺たちの戦いはまだ終わっちゃいねぇからな」
その言葉に、空気がピリつく。
歓迎ムードだった教室は一気に緊張感が走る。
「まさか…」
「まだヴィランが…!?」
「……雄英体育祭が迫っている」
「「「クソ学校っぽいのキタアアアアアア!!!!」」」
***
放課後―――
「ねぇねぇ、純ちゃんはどんな個性なの?」
「髪の毛燃えてるけど熱くないの?」
「もしかして火の個性なのか!?」
「あの事件のニュース見たぜ!マジすごいな!」
「怪我はもう大丈夫なの?」
授業終了後、純はクラスメイト達に囲まれていた。
授業の合間の休み時間のうちに自己紹介は既に済ませてある。
少し困ったように純は笑いながら、どの質問から答えようかなと考えあぐねていると。
「君たち!氷崎君は今日が初めての登校なんだ!一気に質問してばかりだと困ってしまうじゃないか!もっと優しく接するべきだぞ!」
ビシッと整えられた片手を純とクラスメイトの隙間に割言って入ってきたのは、飯田だった。
「あはは…いいよ、大丈夫。えっと…ありがとう。天哉」
「!」
飯田はピシリと体の動きを止めた。
「わおっ、純ちゃんってクールそうに見えて意外と人見知りしないタイプ?結構最初から距離近めな感じ?」
純の後ろで燃える髪を触りながらにこやかに芦戸は言う。
「そうか?名前は大事だろう?三奈」
「なんか照れちゃうね…純ちゃん、背も高いし、カッコいいし、さては女子からモテるタイプだな~~?」
「身長いくつあるのかしら?とっても素敵よ」
「173㎝かな。ありがとう、梅雨。あ、梅雨は”梅雨ちゃん”って呼んだ方がいいのか」
「ケロ」
蛙吹は照れくさそうに、でも心から嬉しそうに微笑んだ。
「胸のサイズは…?」
「アホか!峰田!」
耳郎は近くにいた峰田の頭をはたく。
「えーっと、確か、エ「純ちゃん!言わんでええて!!」
なんで?と麗日に向けて首をかしげる。そんな何の疑問を持たない純を見て、女子生徒一同純の純潔は私達で守らなければならないと、強く決心した。
と、同時に男子生徒は純の一言目で大方サイズは理解できてしまったのであった。だって男の子だから。
「あれ?なんか教室の前、人だかりできてない?」
「うわっ、ほんとだ!いつの間に…」
先ほどまで固まっていた飯田はハッとして入り口まで駆け寄ると。
「君たち!A組に何か用か?」
「んだよ!出れねーじゃん!何しに来たんだよ!」
「敵情視察だろ、雑魚。ヴィランの襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ておきてぇんだろ」
爆豪はちらりと純に視線を向けたかと思えば、すぐに逸らして入り口まで歩いていく。
「そんなことしたって意味ねーから。どけ、モブ共」
「知らない人の事とりあえずモブっていうのやめなよ!」
悪態をつく爆豪を飯田が制するも、まるで聞こえていないかのように前方の人だかりを睨みつけていた。
「噂のA組。どんなもんかと見に来たけど、随分と偉そうだな。ヒーロー科に在籍する奴はみんなこんななのか」
人ごみをかき分けて爆豪の前に立ちはだかる一人の男子生徒。
「こういうの見ちゃうと幻滅するなあ。普通科とか他の科って、ヒーロー科落ちたからって入ったやつ結構いるんだ。知ってた?」
「あぁ?」
「そんな学校側にも俺らにチャンスを残してくれた。体育祭のリザルトによっちゃヒーロー科編入も検討してくれるんだって。その逆もしかり、らしいよ」
その言葉を聞いて、A組に緊張が走る。
「敵情視察?少なくとも俺はいくらヒーロー科とはいえ、調子に乗ってっと足元ごっそり掬っちゃうぞっつー宣戦布告しにきたつもり」
大胆な発言。しかしそれゆえに、彼から体育祭に込める思いが読み取れる。
黙ってみていた純は徐に立ち上がると、宣戦布告してきた生徒の前に歩み寄る。
「悪いな。
「あぁ!?テメェ人の頭に手ェ乗せんじゃねぇよ!ってか馴れ馴れしいんだよ!」
爆豪の頭の上に乗せていた手を振り払われるが、お構いなしに純は続ける。
「逆に―――A組が本当に本気じゃないって思ってるのか?」
「!」
この場の温度が一気に冷える。空気だけではない。純自身の言葉さえも冷たい刃のようだった。
悪寒にも近いそれを感じた生徒達は思わず一歩後ずさる。まるで肌を氷の刃でなぞられていくような、気持ち悪い感覚に。
「アンタ、この間のニュースになってたやつだろ。”プロヒーロ―でさえも手をこまねいていた、厄介なヴィランを女子高生が確保した”ってヤツ」
「ああ」
「そんなに目立ちたいかよ。資格未取得者が安易に手を出して良かったのか?」
「そうだな。褒められた行為ではなかったのは自覚しているさ。ただ、あの場で誰もが呆然と立ち尽くす中、私だけが先に動いていた。結果、ああなった、それだけだ」
「…」
「私が動かなかったら?誰かが救けに入っていた?あの場ではヒーロー到着まで待つのが資格未取得者がやる最善だったか?被害は女性一人だけでは済まなかったのではないか?」
「っ…」
「だから言っているだろう。”決して褒められた行為ではない”―――だが間違った行動だとも思っていない」
純は明らかな煽りに対しても微塵も気にする様子を見せなかった。
「そんな顔をするな…別に虐めたいわけではない。君、名前は?」
「…心操人使」
「そうか。人使。ならば期待しておくといい。なんせ、
「…」
「…」
まるで一触即発。
お互いがにらみ合い、沈黙が続くが―――
「おうおうおう!隣のB組のモンだけどよう!ヴィランと戦ったっつーから話聞こうと思ったんだけどよう!えらく調子づいちゃってんなァ!オイ!!あんま吠えすぎてっと本番で恥ずかしいことになっぞ!!」
第三者の介入に、その空気感は壊れ、先ほどまで冷え切っていた空間はゆるやかに元の温度へと戻っていった。
爆豪は相手にする価値もない、といった素振りでその場を後にしようとする。
「待て爆豪!お前のせいでヘイト集まりまくってんじゃねーか」
「関係ねーよ」
「はぁ!?」
「上にあがりゃあ関係ねぇ」
それだけ告げると爆豪は今度こそ教室を去っていった。
「ってかさ、氷崎、俺らの事なんも知らねーじゃん!なんで強いとか言っちゃうの!?本番で馬鹿にされたらどーするんだよ!!」
峰田は純に抗議するかのように、背中をポコスカ叩く。
「え?だって君たち、強いからここにいるんじゃないのか?それとも、ただの運だけでヒーロー科に在籍しているわけでも、先日のヴィランもたまたま退けたわけではないだろう?」
「「「!!!」」」
「…確かに私はまだ君たちの事を良く知らない。でも私は私に優しくしてくれる人達の事を信じて、一緒に頑張りたいと思っている」
あとさ、と続ける。
「
照れくさそうに純は視線を逸らした。
その一連の動作、仕草、言葉がこの場のA組全員の心を射抜いたのは言うまでもなかった。
「氷崎!俺、感動した…!姉さんて呼ばせてもらってもいいっすか!?」
「や、鋭児郎、それは同級生としてちょっとキツイ」
「確かに。俺たちは実力でここにいるのだから、今更尻込みする必要はない」
「言うねぇ…」
「氷崎さん、私、あなたの言葉に感銘を受けましたわ…!!必ず勝ちましょう!」
八百万は純の両手を強く握りしめる。
その温かさに、少しだけ純の瞳が揺らいだ。
「頑張ろうな。体育祭」
Vol.2 もう一人のクラスメイト
(周囲を虜にしてしまうのも)
(才能の一つなのかもしれない)
