Vol.1
夢小説設定
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何か、夢を見ていたような気がする。
カーテンの隙間から光が差し込み、鳥の囀りが朝だということを告げていた。
純はベッドから体を起き上がらせると、無造作に零れ落ちる髪の毛をかき上げる。
まだ寝起きと言うこともあり、頭が上手く働いておらず、ぼうっとどことなく一点を見つめていた。
体には倦怠感と頭痛が残っている。風邪でも引いたのだろうかとも思ったが、それとはまた違うような気がした。
「お姉ちゃーん!いつまで寝てるの!?今日入学式でしょ!?遅刻しちゃったらどうす…る…」
がちゃり、と部屋のドアを開けて入ってきたのは妹の晶。
片手にしゃもじを持ち、身に着けている淡い桜色のエプロンは純が晶の誕生日に送ったものだ。
晶は珍しく寝坊する姉を起こしに来たはずなのだが、目の前の光景を見て絶句した。
「晶…」
「お…姉ちゃん…!?」
「え…?」
「な、泣いてる!?お姉ちゃんが!?生まれた時以外泣いたことがなかったと言われるお姉ちゃんが!?」
「…」
純は晶に言われてから自分が涙を流したことに気づいた。
確かめる様に手で顔に触れてみれば、零れ落ちる涙が手をつたっていく。
とめどなく溢れるこの涙は一体何だろうか。
「お、おかあさあああん!!!大変!!お姉ちゃんがああああ!!!!」
「ちょ、晶…」
純が止めるよりも先に晶はその身を翻して、どたどたと慌ただしく階段を下りて行った。
部屋を開けたままにしたことによって、晶の作ったであろう朝食の良い香りがした。
***
「さすがに生まれた時以外泣いたことがないは大げさよ~」
「いや、だってお母さん前にそういったじゃん!」
身支度を整えた純はリビングに向かうと、既に父、母、妹は席についており、純も同じように席についた。
水色のランチョンマットの上には、玄米、小松菜と油揚げの味噌汁、焼鮭と目玉焼き、デザートの苺のヨーグルト。
純は朝からこの量を毎日作ってくれる晶に恐れ入る気持ちだった。
食卓を家族四人で囲み、いただきます、と全員で声を揃えて朝食をとり始めるが、晶は先ほどの出来事を興奮した様子で父と母に伝えていた。
「比喩よ、比喩。まぁ確かに純は普通の子よりはあんまり泣かない子だったけど…でも晶が生まれてからは確かに泣いているのを見たことがないわね」
「でしょ!?なのにお姉ちゃん、めっちゃ泣いててさあ!!今日入学式やめた方がいいんじゃない!?地球爆発するかもよ!?」
「怖い夢でも見てたんじゃないか?なあ純」
父親に話を振られて、純は箸を止めた。
どうして泣いていたのかも、夢の内容も思い出せない。思い出そうとすると頭にぴしり、と頭痛が走る。
ただ、残っているのは体に鉛のような何かが沈み込んでいるような感覚と倦怠感。
父親の言う通り怖い夢でも見ていたんだろう。些細な事を気にしている場合ではないと、振り払うようにして顔を振った。
「そうだな。父さんの言うとおりだ。晶が騒ぐほどの事でもないさ」
「えぇ~~!?氷崎家始まって以来の大事件だよ!?」
「怖い夢と言えば、誰かさんが一緒にホラー映画見ようって言って、トイレ行けなくなるぞって言ったにもかかわらず、次の日案の定おねしょしたのは大事件だったと思うけどなぁ?」
「お、お、お姉ちゃん!?そ、それは言わない約束だったじゃん!!」
「あら?知らなかったわぁ…」
「純が証拠隠滅したんだろ。そういうとこ、ホント手際良いからなぁ」
「も、もうこの話はいいでしょ!?お、お姉ちゃんだって遅刻しちゃうよ!!」
晶に言われて時計を見れば7時を過ぎていたところだった。
確かに、と思う反面、もう少しこの可愛い妹をいじっていたいところだったが、入学式早々遅刻するわけにはいかない。
少し足早に食事を済ませ、鞄を持って席を立つ。
「お姉ちゃん!」
晶は背を向けた純を後ろから抱きしめた。
「今日から雄英高校…がんばってね!!私、応援してるから」
「ありがとう、晶」
晶の頭を撫でてから、純は学校へと向かっていった。
