04
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
―――ピピッ ピピッ
「…ぅん…」
カーテンの隙間から朝日が差し込み、アラームが機能しているスマホの画面は時刻6時を示していた。
温かい布団の中から気だるげな右手を伸ばして喧しいアラームを止める。
「…」
そのまま目を閉じて二度寝に入りかけるが、なんとか重い瞼をこじ開けて、のそり。とベッドから起き上がった。
しばらく頭がぼーっとするものの、学生たるもの遅刻は厳禁と思い直して朝の支度へと取り掛かった。
洗面台に向かい、その鏡に映った姿を見て思わずため息が零れる。
昨晩も心操君と別れた後、ヴィラン討伐に追われボロボロの状態で家に帰ってきて、泥のように眠りについたわけだが短い睡眠時間だけでは目元の隈は消え去ってはくれなかったようだ。
ああ、なんと不細工なことか。
げんなりとしつつも、この間買ってきたばかりの「味噌煮込み味歯磨き粉」を取り歯ブラシの上に出す。
うわ…これは完全に…アレの色だ…うん…
何を血迷ったかはわからないが、あれは確かアシスタント活動後に寄った薬局で適当に買ったものだ。うん、多分疲れてたんだと思う。
ええいままよ、と口に突っ込んでそのまま歯磨きタイムへ。
案外イケるかもと思いつつ、歯磨きをしながらリビングに戻ってテレビをつけた。
『先日、複数の強盗事件があり―――』
未解決事件においては特に慎重に事件のあらましを頭に入れておく。
それが例え管轄外の事件であっても、だ。
犯人に対する意識が外に向いていると、案外近くにいても気づかなかったりすることもあるからだ。
いつどこで対応できるように心がけている。
例えばオフの時のエンデヴァーさんと偶然街ですれ違ったとき、向こうが話しかけるまで全く気付かなかった。
何年も一緒にいるのに、だ。
しばらくフリーズしていたため、いつものようにエンデヴァーさんの拳骨を脳天に食らってようやく気付けた。
…大燃焼系ヒゲ親父としか認識していないかもしれない。
『―――ここで〇〇ショップの新作のお知らせです!』
ニュース関連が一通り終わったので、私は口をゆすぎに洗面台へと向かう。
『今SNSで大注目!老若男女に大人気!あのフェンリルをグッズ化し、特に学生の間で大流行のアイテムをチェックします!』
「ブファーーー!!!!????」
洗面台に盛大に味噌煮込み歯磨き粉を吹き出し、急いでリビングに戻れば。
可愛らしいアナウンサーのお姉さんと共にスタジオに”フェンリルグッズ”が並べられていた。
それはぬいぐるみから始まり、キーホルダー、フィギュア、缶バッジ、スマホケース…etc.
驚きのあまり、空いた口がふさがらなかった。
なぜならば。
「グッズ化の話なんて聞いてないんだけどーーー!?!?!?!?」
04 初めての友達
朝からとんでもないハプニング(?)があったものの、今朝はエンデヴァーさんから連絡が来ることもなく登校することができた。
教室に入ればクラスメイトから挨拶が交わされる。
私もそれに笑顔で答えた。
席につくと、隣の心操君と目が合ったので、「おはよ」と声をかける。
すると心操君は私の顔を見て少し驚いた表情をしていた。
「どした…?」
「俺が言うのもなんだけど、大神さん、隈ヤバイよ」
「あっ、あ~…あー!あー!隈ね!そうそう。最近寝付けなくって」
心操君は自分の目の下の隈の存在に自覚があったのか。
あまりにも普段からナチュラルだったから気づいてないものだとばかりに。
「…持病、大変なんだな」
「ううん。大丈夫!気にしてくれてありがとう」
何やら妙な気を使わせてしまったような気がするとともに、胸がちくりと痛む。
これ卒業するころには私の良心ブレイクしてそうだな。
出来ることなら連絡は学校帰りにしてほしいものだ。
私の経験上の勘だと深夜に立て続けに事件が起きると、朝にも起こるというのが大体なのだが、今朝は今のところ音沙汰なし。
昨晩の事件が遅くまでかかったこともあり、さすがにエンデヴァーさんも自重したか…?
いや、日々訪れるヴィランとの戦闘に休む暇がないのがヒーローというものだ。
トップヒーローともなればその代替は難しい。
自信過剰、自意識過剰を承知の上で言わせてもらえばフェンリルもそこの位置していると私は思う。
我ながらこの力はエンデヴァーさんと同等か、それ以上か。
もしくはオールマイトを超えるか。
…。
はっはっは。
さすがにオールマイトは言い過ぎか。
まあとにかく、学生の身分でありながらこうして日々アシスタント活動を行っているのもそういうことなんだろう。
私はエンデヴァーさんにとって代替がきかない存在だということに。
椅子の背もたれに寄りかかり、両腕をあげて上半身を伸ばした。
凝り固まった筋肉が伸ばされて気持ちいい。
「グッモーニン!大神さん!」
「おわっ!」
伸ばした両腕をがしりと掴まれてさらに上へのばされた。
誰だろうと思って顔を上げてみると。
「癒伊さん…!」
「凪織でいーよ!あたしも満槻って呼んでいい?」
まるで太陽のようにまぶしい笑顔に、荒んだ心(主にエンデヴァーさんに対して)も浄化されていく。
ああ彼女はまるで仏のようだ。
そっと静かに心の中で合掌をしたのだった。