03
夢小説設定
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「おい犬助!!!早くしろ!!!」
「はいっ!!!」
めでたく高校1年の幕を開け―――
「ワン公!!!こっちを手伝え!!」
「はいっ!」
放課後は友達と一緒に帰ったり…
「バカヤロウ!!!勝手な行動はするんじゃねぇと何度言えば分かる!!!」
「はいいいっ!!!!」
放課後、先生に授業の分からなかったところを聞いたり…
「危ねぇだろ!!!俺を殺す気か!!!!」
「はい!!!…あっ、違います間違えましたごめんなさい!!殴らな…アーーーッ!!!!」
甘酸っぱい恋とか、そういうの、期待してた。
なのに…
「エンデヴァーさん」
「なんだ!!」
「……私って学生のはずですよね」
「当たり前だろ」
「……」
青春の「せ」の字の欠片さえないような、戦闘の日々を、過ごしていた。
甘酸っぱい青春?
いいや、汗まみれのしょっぱい戦闘。
恋愛要素?胸キュン?
いいや、命の危機で胸がドキドキする。
学校も早退遅刻欠席を繰り返し、入学してからまともに授業を受けた回数なんてほとんど少ない。
確かに病弱な子、という設定は板についてきたらしく、皆色々と気を使ってくれる。
それゆえか、腫物を扱うかのように私から距離を取っていた。
ここでの腫物は悪い意味ではないが。
体育の授業出たいのに、病弱設定のせいで皆から「無理しないで」や日傘をわざわざ貸してくれる子までいたもんだ。
分かってはいたけど、普通、とは大分かけ離れてしまった…
03 高校生活を堪能させてください
「…」
昼食。
雄英ともなれば、食事もまたプロヒーローが作る。
素晴らしいことだが、今の私はそれどころじゃなかった。
「…」
度重なるアシスタントの仕事。
勿論肉体労働なのでいくら早くに切り上げても、眠いものは眠い。
頼んだランチを手に付ける前に、私は一瞬で意識が明後日に飛んで行ってしまい寝落ちした。
勿論一瞬だったのですぐに重い頭を持ち上げる。
「…」
もそもそと食事を口に運ぶ。
疲れているせいだろうか、あまり味がしない気がした。
ご飯作ってくれてるランチラッシュにも申し訳ない…
「…味が…」
トマトを口の中に放った。
…味がしない、気がした。
ダメだ。一回仮眠を取ろう。
この眠気は先生に叩き起こされても起きないやつだ。わかる。
瞼が重い。まるで麻酔のごとく眠気が襲ってくる。
食器を片付けなければ。
なんとか立ち上がって、食器を持ち上げた瞬間。
ガシャンッ!
急に立ったことにより、立ち眩みを起こしてしまったのか、膝から床へ崩れ落ちた。
その際に食器を落としてしまい、食堂全員の視線を感じた。
こんなに恥ずかしい状況なのにそれを上回るほどの、眠気。
わかる。疲れてるんだ。本当に。
割れた食器を集めようと手を伸ばすが。
「待って!」
「!」
一人の少女が私の手を止めた。
床に座り込む私の顔を覗き込む彼女は、どこか見覚えがあった。
肩までくるくると伸びたピンクブラウンとホワイトのメッシュヘア。
まつ毛はぱっちりとカールしており、鮮やかなピンク色のリップが塗られた唇。
その顔は陶器のように白く美しい。
女の私でも見惚れてしまうほどの綺麗な子。
確か、同じクラスで…めちゃおしゃれな子だなと思っていた。
そして先日活気のある彼女は学級委員長に任命されいた。
自ら立候補の事はもちろんだが、クラス全員が彼女が学級委員長になることに満場一致だったのだ。
無論、立候補したのは彼女だけではないが、私は遠く眺めていただけだし、聞き耳を立てるくらいしか接点はなかったんだけど。
初日からクラスをまとめ上げ、誰もが彼女を慕い、いつも彼女中心にクラスは動いていた。
まさに、天性のカリスマを持つ。
「日傘…貸してくれた人…」
「やだなー!癒伊だよ!
癒伊凪織ちゃんは私の腕を掴んで、そのまま彼女になされるがまま、再度先ほどまで座っていた椅子に座らされる。
凪織ちゃんはパパっと手早く割れた食器を片付けると、床に膝をついたまま私の顔を覗き込んだ。
「うっわー!相澤先生も引くほどの隈!寝不足?それとも病気のせいだったり?あっ、ごめんデリカシーないよね!?あたしってそういうところあるからほんとダメなの!言わなくていいよ!体調大丈夫?午前の授業もさ、なんかフラフラしてて心配してたんだ。大神さんキツかったらあたしを頼って!満槻さんの後ろの席だからいつでも力になるよ!なんてったってあたしの個性はすごいんだから!」
一気に。
彼女はまるでハリケーンのような勢いでまくし立てた。
その勢いに思わず唖然としていると、私の表情を見てハッとした。
「ごめーん!!今あたしの話してる場合じゃないよね!リカバリーガールのとこいこ!」
「あっ、う、うん」
半ば強引に凪織ちゃんと腕を組む形で、私たちは保健室へ向かったのだった。