01
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燃え盛る炎。
倒壊間近のビル。
逃げ惑う人たちの悲鳴。
―――非常事態だ。
プロヒーロー達も駆けつけ、それぞれに対応を取るが如何せん、ビルが大きすぎる。
不安定な足場。勢いが止まらない炎。残された人々の救出。
ヒーロー達が怒号を発しながら、救出活動に当たる。
ぐるりと周囲を見渡して、私は耳を立てながら足を止めることはなかった。
辺り一面茜色に染まりあがり、つうっと汗が止まらずに流れ落ちる。
熱い―――それ以上に恐怖心が私を食らおうとしていた。
一歩間違えれば死。
危うい綱渡りを齢15にして渡っているとは、自分も稀有な人生を送っているもんだと、ため息が出てしまう。
怖い。熱い。怖い、怖い。
心を埋め尽くそうとするそれを拭い去って。
私は顔を上げた。
「救けて…!!誰か…!!!」
人の、縋るような声。
私は声のする方向へ素早く向かっていった。
01 熱には強いんです
遡る事数時間前。
高校入試に向けて、喫茶店で勉強をしていた時だった。
いつものメロンソーダとショートケーキを注文して、リスニング問題に取り掛かっていた。
学生らしくあれ。これは私のモットーの一つだ。
普通の学生は受験勉強をして普通に生活をして普通に友人と遊ぶ。
私には縁のない生活かと思っていたけど、人生どうなるかわからないものだ。
今回の受験先は雄英高校。
数々のトップヒーローを輩出し、ヒーローを目指す者なら誰しもがこの学校を目指す、まさに登竜門。
それゆえに倍率はいつもとんでもない数字を叩き出す。
が、私はそこの『普通科』を受ける。それでも倍率が厳しいことに変わりはないし、そもそもなんでヒーロー科を受けないのかという理由は…
思考を巡らせていると流暢な英語に紛れて、緊迫した声が耳に届いた。
それはテレビからだった。
元々音楽プレイヤーの音量は低めだったため、すぐに察知。
と、同時にスマホがブブブ、と震える。
着信は―――プロヒーロー、エンデヴァーさんからだった。
電話に出ながらテレビを見る。
緊急速報と報じられ、女性キャスターが燃えるビルを移しながら実況していた。
恐らく、最悪の事態だ。
「もしもし」
『緊急事態だ。爆弾魔がビルを爆破させた。テレビ、見てるか!?』
「ええ、丁度。状況は?エンデヴァーさん」
速やかに道具をスクールバックに詰め込み、伝票をもって会計へ。
金額ピッタリの野口と小銭を置き、レシートを貰って店を出る。
『犯人は既にこちらで身柄を確保。水系の個性を持つヒーローが何名か来ているが、ビル自体がデカ過ぎる。炎が消えやしない。
倒壊前にバカだが幸運にも犯人の予告があってほとんど脱出はしている。
だが、残された人もいる上に、ビルの学習塾に来ていた中学生が取り残されている情報が入っている。
その場から個性の使用を許可する。速やかに現場に到着しろワン公!!』
「うるさ…ワン公やめてください炎おじさん」
『おじさんではない!!エンデヴァーだとなん』ピッ
強引に電話を切って、鞄に電話を突っ込むと人目につかないような路地裏へと身を翻す。
同時に中に入っていたオレンジのジャケットを取り出し身に着け、個性を発動させた。
巨大な白銀狼の姿に、私は変わる。
そして四肢に絡みつく幾重もの頑丈な鎖と枷。普段は服の下に身に着けているため、こうして個性を発動させるとその姿を見せる。
あまりこの手枷は好きではない。文字通り、私の個性を制限する枷となっているのだ。
狭くなった路地裏から素早く抜けて、街中を駆ける。
巨大な狼の姿に町の人々は一瞬目を見開くがいつもの狼の姿を見て声高らかに叫んだ。
「ガンバレ、フェンリル!」
「フェンリルだーーー!!!カッコイイ!!!」
「テレビ見たぞ!!気を付けろよ!!!」
フェンリルとは私の個性の名であり、アシスタント時のヒーロー名でもある。
プロヒーローのアシスタントとして名高く広まっているが、あくまでもそれはこの姿のみだ。
未成年での個性使用は現在の日本の法律では許されていないが、私は海外で既にヒーロー免許を取得している。
そのためヒーローとしては活動できないが、条件として現役プロヒーローの指揮があってこそ私は活動を行えるのだ。
姿を解いた後の学生の私は特定の人物以外には明かしていない。
理由は個性が関係している。
国も各メディアに圧力をかけ、妙な取材や写真等全てチェックしているらしい(あくまで噂だ)
アシスタント活動にあたってもう一つ条件がある。それが今着ているオレンジのジャケットだ。
正直、このジャケットは私にとって不服極まりないのだが。
的を得ていて過ぎて言葉も出なかった。
ジャケットには。
"災害救助犬"
と大きく書かれていた。