Vol.7
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一番最初に個性が暴走した時。
周囲の人たちが私に向ける目の感情は、
"恐怖"だった。
vol.7 力の強さ
「あれっ、オールマイト先生…それにミッドナイト先生も…」
次の日の放課後、私は簡素な服に着替えて演習場で待っていた。
中に入るとそこには相澤先生の他にオールマイト、ミッドナイト、プレゼント・マイクそれから…
「君の個性、見に来たよ!」
「こっ…校長先生まで!!!?今日も麗しく!!素敵なお姿で!!!」
熊なのか鼠なのかよくわからない校長先生は今日もとてもかわいかった。
小動物は好きです。校長先生を小動物と呼ぶのは失礼すぎるが。
全力でもふもふしたい衝動を抑える。
「初日は全力でかかって来い。まずは自分の限界をもう一度体で覚えろ」
「…本当にいいんですね?」
「そのために先生方に来てもらった」
ぐるりと。
気が付けば先生たちに四方を囲まれていた。
校長先生だけは、てくてくと離れていく。
文字通り校長先生は見に来ただけなのだろう。
「…生徒だから傷つけないといった遠慮はいりません。それは自殺行為にも等しいです。
私が重傷を負おうが構いません。本気で、かかってきてください」
少し、身体が震えてる。
怖いと言うのが正直のところ。
でも。
壁を乗り越えて。
プルスウルトラ。
「…行きます」
一歩足を踏み出す。
二歩、三歩。
目の前にいる相澤先生に向かって。
とん、とん、とん。
…とん。
四歩目。
ぶわっと全身を熱が込み上げ、急激に温度が変わったせいで周囲に煙が立ち上る。
身体の温度と周囲の温度があっていない。
60%…80%…85……そこから私は考えるのをやめた。
意識は自然と深い海底に沈んでいった。
***
(side相澤)
「…行きます」
柳崎がそう言って、俺に向かって歩いてくる。
1、2、3、4歩目。
そこから雰囲気が一気に変わった。
身体から煙を発し、人の姿を変えていく。
俺含め、他の先生たちも身構えた。
特にオールマイトさんは昔一度柳崎と面識があったそうだ。
それに付け加え入試後も柳崎を止めたとか。
…なんでそんな大事俺の耳に入ってこなかったんだ?
暴走した柳崎を止めたことがある。
今回オールマイトさんに来てもらったのはそれが一番の理由だ
それから手が空いている先生方に声をかけ、校長は…来るとは思っていなかった。
だがこいつの存在はそれだけ影響を与える。
「ミッドナイトさんは後方支援でお願いします」
「任せてちょうだい」
「オールマイトさんと俺とマイクは柳崎を出来るだけ凌ぐ。
限界が来たらそこで俺が個性を発動させる」
「任せときな!」
「ならば私が最初にいこう!!」
オールマイトさんは強く地面を蹴ると完全に未だに煙に包まれ姿を見せない柳崎の元に飛んでいった。
俺も捕縛武器に手をかける。
ドンッ!!
「―――!!」
容赦なく、オールマイトさんは拳を振りかぶった。
柳崎がいた場所から大きく亀裂が走る。
だが次の瞬間、何かが空に逃げた。
「…コミックかよ…ありゃ、マジでドラゴンじゃねーか…!!」
天井ギリギリにつく高さまで飛び上がった柳崎。
だが姿は完全に竜そのもので、違和感があるとすればそれは人の形を模した竜ということだ。
おとぎ話や絵本で書かれるようなずんぐりとした姿ではない。
スマートな体形に体のパーツ自体が人の体をベースに竜に仕上げた、という感じか。
俺が演習場を外ではなく室内にしたのは正解だった。
最悪こいつが逃げてしまった場合の可能性を考えた。
「ムッ…!」
柳崎はオールマイトさん目がけ急降下。
獣に下ったあいつはもはや本能でオールマイトさんを襲っていた。
「マイク、呆けてんな。行くぞ」
「おっとそうだった。消太耳塞いでおけよ」
マイクは息を吸い込んで、声を発した。
それが柳崎に直撃すると悲鳴を上げ、オールマイトさんから離れた。
「なんだ?効いてるのか?」
「耳が良すぎるせいかもしれねぇな。身体能力に特化してるだろうから、恐らく間違いねぇ」
「こりゃ俺の独壇場か?」
「調子乗ってると怪我すんぞ!!」
「うおあぁ!!?」
標的をオールマイトさんからマイクに変え、低空飛行でマイクを襲った。
だがそれをさせまいと俺の捕縛武器を使って柳崎の足を捉えた。
「!」
「おい柳崎少しは戻ろうっていう努力はしているんだろうな…!!」
「…」
柳崎は喉を低く鳴らすだけで、答えなかった。
俺はそのまま捕縛武器を引き、柳崎の体制を崩した。
ふらついた隙を着こうとしたが、空へと飛んで逃げる。
だが今の状態は、まるでタコ上げの状態だ。
もがいて捕縛武器を外そうとするが、そう簡単には取れない。
俺もこの状態を長くは保てない。
馬鹿みてぇな力に負けそうだった。
ずりずり。
身体が力に沿って徐々に前に動いていく。
足を踏ん張ってもその力には耐えられそうになかった。
「ただがむしゃらに暴れてるって感じだね…君ッッ!!!」
鈍い音が響いた。
宙に飛んだオールマイトさんが柳崎の顔を全力で殴り飛ばす。
生徒だろうが容赦ない一撃に、柳崎は地面に叩きつけられた。
「個性をコントロール出来てないからせっかくのパワーも台無しだ。だから簡単に私に倒される」
ゆっくりと柳崎は体を起こす。
ぎょろりとした瞳はオールマイトさんを捉えている。
「……す…」
柳崎はぎらりと並ぶ牙を見せながら、この姿で初めて、喋った。
「―――殺してやる」
その殺意に、思わず俺は後ずさった。
たった一言。
その場にいた者を声と目で圧倒させた。
さすがにもう限界が近いと思い、俺は個性を発動させた。
ミッドナイトさんもそれを察し、眠り香で対応した。
俺達が近づいてきたことに対せ大暴れしたが、ミッドナイトさんの香りが鼻についたのか、次第に大人しくなった。
すかさず個性を発動させ、柳崎はそのまま地面に倒れた。
しゅるしゅると、元の人の形に戻っていく。
その場にいる全員がその口を開かない。
思っていた以上に、柳崎の個性が危険だと言う事実に。
誰もが呆然としていた。
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