Vol.5
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どういう経緯で仲良くなったかと聞かれれば、それは単純に家が近所だったから。
と、答えるだけだ。
近くの家がたまたま心操君だっただけ。
近所にその他の生徒が見受けられないから、いつの間にか二人で登下校をしていた。
馴れ初めはそこからだったんだろう。
心操君が私の事をどう思ってるかは分からない。
けれど私は彼の良き友でありたいと思ってる。
vol.5 対人戦
午後の部はトーナメント式の対人戦だ。
A組の子、恐らく騎馬戦の時で一緒だった男子一人がトーナメントを辞退する。
彼なりのけじめ、ということだった。
最後の試合の前にレクリエーションを挟み、それからトーナメントが開始された。
第一回戦は心操君VS緑谷君の勝負だった。
それを見た瞬間息が止まるかと思ったが、心操君は問題ないとあっけらかんとしていた。
だがこうして試合が始まると、心が落ち着かない。
「ガンバレ…ガンバレ心操君…!!」
「…由紀ちゃんってさ、心操君と付き合ってるの?」
「いや?」
「……あ、そう…」
緑谷君の一撃は凄まじい。
先手必勝で心操君が緑谷君を洗脳できればこっちのものだ。
緑谷君の個性は…パワー型なのかな?あれでやられたら心操君はひとたまりもないだろう。
「チャンスをドブに捨てるなんてバカだと思わないか?」
と、心操君が緑谷君に仕掛ける。
「何てこというんだ!!」
―――!!
こんなに、あっさりと。
緑谷君は心操君の問いかけに答えてしまった。
恐らくA組のしっぽの子が緑谷君に対策を伝えていたはずなのに。
そして私は実感した。きっと緑谷君は素直でいい子、なんだと。
『オイオイどうした!大事な緒戦だ!盛り上げてくれよ!?
緑谷、開始早々―――完全停止!?』
緑谷君は動かない。
こうなってしまえばもう決着は早いだろう。
「振り向いてそのまま場外まで歩いていけ」
緑谷君は心操君の命令通り、くるりと振り返って場外へと歩き出した。
緑谷君に対しての心配は杞憂だったか…?
でもなんだろう。まだ、心が落ち着かない。嫌な予感がする。
―――バキッ!!
「!!」
何かが折れる音と、それから爆風。
何かと思えば、緑谷君が肩で息を揺らしながら、その足を踏み留めていた。
まさか、心操君の洗脳を解いたと言うのか…!?
『緑谷!!踏みとどまった!!』
おいおい自分の指を折ってまで洗脳を解いたとか…緑谷君…!!
何て奴だ…!!
緑谷君は、体制を整える。
心操君に向き合って、地面を蹴った。
「指動かすだけでそんな威力か!羨ましいよ!!
俺はこんな"個性"のおかげでスタートから遅れちまったよ。
恵まれた人間にはわかんないだろ」
心操君の、叫び声が聞こえた気がした。
「誂え向きの"個性"に生まれて望む場所へいける奴らにはよ!!」
緑谷君は心操君に掴みかかる。
だが心操君も負けじと、緑谷君の顔面を殴った。
だが、緑谷君は心操君を殴ろうとはせずに、押し出そうとしている。
そこからは殴り合い。
けれど、私はもう決着が見えていた。
洗脳が解けていた時点で。
緑谷君が心操君を投げ飛ばしたところで、心操君の足が場外へと出てしまった。
「…っ」
「ちょっと由紀!!?」
席を飛び出し、私は階段を駆け下りた。
遠くで緑谷君が二回戦へ進出するミッドナイト先生の声が聞こえる。
会場は大盛り上がりだ。
所々から聞こえる、プロヒーローの声。
それは心操君の賞賛の声だった。
「―――!」
「心操君」
試合を終え、中に入ってきた心操君の表情はどこか垢ぬけているようにも見えた。
「聞こえた?みんな心操君の個性を…褒めてたよ…
プロヒーローにも心操君の個性が、凄さが伝わってたよ…!!」
「…お前ほんとお人よし」
彼は、泣きたいのを堪えながら笑っていた。
私は心操君の両腕を掴んで、労いの言葉を送る。
「お疲れさま」