Vol.2
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どの絵本を見ても、いつでも竜は悪役だった。
お姫様を攫ったり、魔女の召使いだったり。
竜が主役で、救世主だったなんてこと一度もない。
ゲームではラスボスだったり、悪い敵だったり。
私は小さい頃それが不満で仕方なかった。
圧倒的な力を持つものは弱者にとっては敵も同然。
そういう押しつけをされているようで、絵本が嫌いだった。
"おまえは、わるものやくだ!"
どうして?
ままごとでさえも、悪役を押し付けられては成敗だと体中にあざを作って。
"今度の文化祭での悪役は柳崎さんでいいですね"
勝手に悪を演じられて。
どれほど悔しかったか。
勿論それを言い返せない私にも腹が立っていた。
竜は悪役だと言う決めつけが、私は大嫌いだった。
でも、あの日に出会った英雄に言われたことが、私がヒーローを目指そうと決めたきっかけでもあった。
出会うべくして出会った、は言い過ぎかな?
『そう思うのかい?ならば君がその決めつけを覆せばいいじゃないか!
圧倒的な力で敵を倒せば、誰もが君をこう呼ぶだろう。"救世主(ヒーロー)"と。
そうすればもう誰も君を悪役だなんて言わないさ』
その言葉と姿に見入ってしまって。
私は彼のような英雄に、ヒーローになりたいと思ったんだ。
vol.2 ヒーローの決意
「スマッシュってオールマイトのフォロワーかい?まぁいいや」
顔が真っ青になってる少年の元へ、駆ける。
少年までの距離約10メートル…いける。
一歩、二歩、三歩。
だんっ、と強く、地面を蹴った。
それから四歩めで"空気"を蹴る。
「退けっ!!」
死柄木から少年を奪い返す。
その場にいた、他の生徒2人を連れて距離を取った。
相澤先生の元へ再び高く跳躍する。
「き、きみっ…すごい個性だね…」
「と、飛んでるー!!?オイラ達飛んでる!?」
ふわっと地面に着地して、相澤先生の容体を確認する。
まだかろうじて意識があった。
今ならまだ…
「相澤先生を連れて、安全なところへ!早く」
「君はどうするの!?」
「私は…救援が来るまで戦う」
「む、無茶だ!あ、あんたヒーロー科の生徒じゃないだろ!?
オイラ達だって…無理なのに…相澤先生でさえ無理だったんだぞ!?
どうにかなる問題じゃ…」
頭にブドウがくっついているような髪型の少年は泣きながら言った。
だから私はなるべく笑うように心がけて、少年達に告げた。
「"誰か助けて"、みんなそう思ってる。
ヒーローは助けを求められたら、黙ってられないでしょ?」
「君…」
「とにかく相澤先生を…!」
と、言いかけた所で脳無が襲ってくる。
再び跳躍し、その攻撃をかわす。
それにしても図体に似合わず素早い動き…これは少し厄介かな。
「僕も、君の力になれれば…」
「…だめ」
「なんで!?一人でやるより―――!」
ボサボサ頭の少年の心遣いに、一瞬心揺らいだが、それでも私は断る。
「だって、君たちは相澤先生の生徒だもの」
生徒に怪我があったら、相澤先生の努力が水の泡でしょう?
羨ましい。
妬みとか、そういうんじゃなくて。
心の底から君たちに、憧れるんだ。
「すっご…君の個性、それ何?硬化とかってレベルじゃないよね?」
死柄木は私の腕、足を見て言った。
先ほどの跳躍力はこの個性によるもの。
「個性"化け物"?」
面白そうに死柄木は笑う。
私もつられて微笑んだ。
「そうだよ、"化け物"さ」
私の個性は"竜"そのもの。
手足を竜化、つまり竜と同じ手と足にすることによって、圧倒的な力を発揮することが出来る。
部分開放を、ハーフフォルム。
勿論全身も可能だけれども、それはまだ上手く制御ができない。
「じゃあ死んでよ」
目の前にいたはずの脳無が消えた。
私の力量じゃあ眼で捉える事なんて出来ない。
だから。
「正面突破しかないっしょ…!!」
竜の鱗は鋼鉄の鱗。
ただの殴り合いなら防ぐことが出来る。
…はず。
ドンッ!!
「ぐっ、う!」
衝撃が内臓に来る。
両腕で脳無の攻撃を防ぐも、その一発自体が重い。
すぐさま爪を使って反撃する。
だがその手が皮膚に届く前に、右下からの蹴りが飛んでくるが、それを右足一本で防いだ。
竜化だからこそできる力技。
「ぐぬぬ…!」
「さっすが化け物は違うね!化け物と渡り合ってるとか…人間じゃないなぁ…!!」
「凄い…あの人…足で止めるなんて…」
少年たちの声が聞こえる。
まだ逃げてなかったのか…!
「でもさぁ、君一人で全部守れるわけ?」
「!」
「っ!梅雨ちゃん!!」
死柄木が少年たちの方へ向かってくと、そこにいた少女の顔に掌を向けていた。
咄嗟に脳無から離れて、死柄木を後ろから蹴とばそうと試みた。
だが。
「さすがだなァ…脳無」
「うぐ…うあっ…!!」
右足を脳無に捕まれ、メキメキと嫌な音が聞こえた。
尋常じゃない痛みが体中を襲うが、左足で脳無の腕を蹴とばした。
その時にゴキッと音がしたので脳無の腕をへし折ることが出来た。
現に今、あらぬ方向へと腕が曲がってる。
手から解放され、なんとか少年たちをこの場から逃がす方法を考えるが死柄木は考える時間さえも与えてくれなかった。
少女と死柄木の間に割り入った。右手で少女を突き飛ばし、左手で死柄木を抑え込もうと試みる。
だが、それを押しのけ死柄木が掴んだのは、私の顔。
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