Vol.12
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「―――100%」
そう呟いた柳崎の言葉に、俺は思わず身構えてしまった。
また、あの時の様になるのではないかと。
咄嗟に個性を抹消しようとしてしまった。
それでは柳崎自身が成長しないと言うのに。
俺は情けない話、あいつが暴走した時の殺意に、未だに気圧されたままだったかもしれない。
vol.12 100パーセント
尾白が俺に補習の申し出をした時は、断ろうかと思っていた。
あの事件の後に、生徒同士でやらせるのにはいささか安心できない。
だが俺はそれでも尾白に許可をくれてやった。
俺ばかりと戦っていたら柳崎自身も何も成長しねぇ。
たまには違う相手もいいかもしれない。そう思った。
最悪俺が個性を抹消すればいい。
あいつが自分から逃げたまんまなら、全力は早々出さないだろうと思っていたのに。
「絶好調だよッッ!!!相澤先生!!!!」
開いた口がふさがらなかった。
勝手にあいつら同士で火ぃつけあって、勝手に燃え上がってやがる。
柳崎がまさか尾白相手に100%を出すと思っていなかった。
どうせ今回も怖さに負けるのだろうと思っていたのに。
あいつは違った。
全身を竜にした時、一瞬こちらを振り返ったがあいつは確かな目で俺を捕らえていた。
暴走していた時とは違う。殺意が全く感じられない。
心境の変化か?
あの事件の後あいつはぐずぐずと落ち込んでいたんじゃ、無かったのか?
理由はどうあれ、今はその"万が一"の状況に近い形だ。
俺は捕縛武器に手をかけ、その様子を見守った。
「…」
―――コントロール出来ている?
楽しそうに戦うあいつを見て、眉間に皺を寄せた。
短期間で、こうも早く成長したと言うのか?
一瞬柳崎が尾白を攻撃した時に加減する場面が見られた。
あれは、確かに。
制御している。
手探りの状態で尾白と戦っているが、何より本人自身の戦い方が壊れ物を扱うように戦っている。
まだ自分の全力を知らない柳崎だからこその行為だ。
かと思えば急に個性が解かれ、空中に浮いていた二人は重力に従って落下する。
咄嗟に俺は二人を捕まえた。
俺は急に全力で力を解放した柳崎を叱った。
だが半分本音が漏れる。
柳崎はそんな事さえも気にせずに、笑っていた。
「100%!!コントロール出来てました!!私、意識飛ばさなかったです!」
笑っていたかと思えば、次は泣いている。
全く、忙しない奴だと溜息さえも零れた。
だが、こいつにも見込みがあったってことだ。
"相澤先生のような、ヒーローになる"
あの言葉を聞いたときは心底驚いたけど。
こいつは本気だった。
今までめんどくせぇモン背負ってた割には、思いのほか自分で割り切れることが出来ている。
十分ヒーローになれる素質を持っているじゃねぇか。
こいつが嬉しそうに笑うから、思わず目を逸らしてしまった。
だから、その後の行動は俺にとっては不本意だった。
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