twst夢
今年もNRCにはたくさんの問題児が入学してきた。「も」というのがこの学校のやばさが分かるところだろう。
例えば、史上最速で退学をになりそうだった二人とか。喋って火を吹く魔物とか。上げればキリがないけれど、在校生の中でぶっちぎりに話題になるのはやはり監督生だろう。
なんてったって女の子。しかも異世界から来たらしい。目を怪我しているのか眼帯をしているが、顔が可愛らしいことは隠せていない。灰色の学校生活に突如現れた一輪の花に男子学生達はときめいた。
では、監督生とはどんな人物なのだろうか。
周りに聞くとこんな答えが返ってくる。
「んー監督生ねぇ。あんま性別とか気にせずに遊べるダチかな。だって普通に下ネタとか話してるし」
「いい奴だぞ?ただ常識が全然ないな。最初の頃はテストとか授業とか分かって無かったみたいで、見る物全部に驚いてた」
「監督生さんですか?異世界から来たとか信じがたいですが、女性ですし。住む場所やお金の事をやってあげていますよ。あぁなんて私は優しいんでしょう!」
伝わんねえよ、このクソガラス。
取材をしていた新聞部の記者は監督生に少し同情した。この学園長に生活を任せるとはどんなに不安なことだろうか。
最近の寮長がオーバーブロットしたという噂にも関わっているようで、監督生がどんな人物なのか、部長に取材してこいと言われたのだ。次は監督生自身に取材をしてみよう。
「おーい監督生!なんか新聞部が用があるらしいぜ!」
1-Aの教室で監督生はクラスメイトに呼ばれた。授業が終わり、帰ってグリムのご飯どうしようかな、ツナ缶でいいかな、なんで考えていた時のことだ。1-Aは猛獣使いとも呼ばれる監督生のおかげか、はたまた入学したばかりだからか、そこまで仲が悪くなかった。
「え?新聞部?あーそーいや監督生のことについて取材受けたわ。」
隣に座っていたエースが思い出したように言う。本人の許可なく取材される。やっぱりここはNRC。
「どうしたんですか?」
「いや、監督生に関して今取材をしてて…異世界についてとか色々本人に聞きたかったんだよ。今から大丈夫か?」
「え、まあいいけど。」
「聞きたいのは異世界についてとか、学校の感想のことなんだけど…って早いな」
監督生は新聞部の記者が心配になるくらい軽く引き受けた。このお人好しさが様々な問題に巻き込まれる原因だろう。
「オレも異世界について聞きたい!今日部活ないし聞いてていい?」
「ああ、聞いてみたいな」
エースとデュースもあまり自分の事を語らない監督生の話を聞きたいと集まってくる。
クラスメイトも聞き耳を立てている様だ。
「結構な人数聞いてんな…ま、いいや。じゃあ無難なやつから。なぜあなたはそこまで人を助けるのですか?」
無難とか言いつつ一番知りたかったことを真っ先に質問する記者。
「なぜってそれ聞くやつ…?えっと、人は助け合わないと生きていけないじゃん?」
「いやぁ…お人好しだわ。」
「んなことよく言えんな…」
基本ヴィランであるNRC生はその答えにドン引きする。
「へぇ…なるほど。次はそうだな…なんで監督生ってそんな世間知らずなのですか?」
「確かに色々知らないこと多いよなー」
「学校とか制服知らないってどんな山奥から来たんだと思ってるわ」
「いや、仕方なくない?!私の世界は学校なんてなかったんですぅー!ちなみに未だにテストやる意味が分かんないわ!」
その答えに例の対策ノート事件の時に?を浮かべて、学年でも最底辺レベルの点数を叩き出した監督生を思い出し、クラスメイト達は爆笑していたことが気まずくなる。
「学校がないってどんな世界だよ…
監督生がこの学校に来て一番驚いたことは?やっぱ治安?」
取材をすると大抵の生徒が答えることは校内の治安である。世紀末かよ。
「いやそれよりも魔法の方が驚いたかな」
「監督生魔法使えないんだよな。やっぱ驚くもんなのかな?」
「そりゃそうでしょ。魔法について全然知らないならさ」
「いや、魔法はあったけど。人間だけ使えないんだよね」
人間が魔法を使えない。
それは一体どういうことなのだろうか。異世界とはどんなところなのか。
一気に疑問が増えたエースは疑問を口に出す。
「どゆこと?妖精とかじゃないと使えねーってこと?」
「魔法が使えないのは人間だけ…?」
「なにそれ、不公平じゃん」
「あはは、不公平かー。この世界に来てからは確かにそう思う。
私の世界にはね、イクシードって言う十六の種族がいるんだけど、その中で人間だけが魔法を使う為の精霊回廊が無いんだよねー。」
「十六種?結構多いな…」
「魔法の仕組みから違うのか?」
知識欲のあるイグニハイド生なども珍しく話に参加し、議論が始まった。
「あ!でもさ魔法より驚いたのは他種族なのに共存しているところかも!よく獣人…私の世界ではワービーストって呼ぶんだけど…とか生態が違う種族と暮らせるよなあって」
獣人であるサバナクロー生は驚き、思い出した。最初監督生と会った時はかなり警戒されていて、慣れるまで時間がかかったことを。エースとデュースも監督生は魔法を使って見せると少し怖がる様な目をしていたことを思い出した。そして、恐る恐る自分達に話しかけてきたことを。
「監督生の世界は人間と他種族の仲が悪かったのか?」
「人間とって言うか…種族が違うもの同士でいがみ合ってた感じだよ」
実はこの表現かなりぼかしている。
実際には「永遠」とまで言われるほどの大戦が起こっていたのだ。
人間は弱者で獣人の一噛みで容易く死ぬ。そんなことを共存していて平和なこの世界に伝えなくていい。目のことも体のことも、自分をダチと言ってくれた友人達に心配をかけたくない。
そんな風に監督生が考えているなんてつゆ知らずクラスは盛り上がっていく。
「歴史上、他種族とのいざこざはあったよな。なあ、その…ワービースト?って言う獣人以外にどんな種族がいたんだ?」
「えっと、人間にはよくわからない種族も多いんだけど…
エルフっていう種族はカイナースという森神に作られた種族で、魔法が得意。地霊種・ドワーフとめっちゃ仲が悪い。カイナースは、オールドデウスっていう神霊種で、」
「多い多い!それに、え!?神様って種族なのかよ?!」
「そう。結構多くて、とーっても強いの。それこそ世界の法則なんて破れるくらいの魔法が使える」
「監督生の世界やべえな…」
「異世界ってマジだったんだな…」
「神様が実際にいるってすご」
「ディアソムニアの例の人より強いのかも」
「それやばくね?」
「マレウス様並が沢山いるなんて…」
「でも最近、唯一神が誕生したんだよ?ゲームの神様。『十の盟約』っていうルールで世界が平和になったんだ。
そしてそれは幽霊の…人間のおかげなんだよ!」
「どういうこと?」
「ゲームの神様が唯一神?」
「人間のおかげとは??」
「魔法が使えないのに…?」
「え、マジ分かんないんだけど」
「そこんとこ詳しく!」
「だーめ!教えない!」
監督生はにししっと悪戯が成功した様な顔で笑う。その笑顔はなんだかとっても可愛らしくて、つい見惚れてしまった。
見惚れていたうちの一人である新聞部の記者は、自分の仕事を全うしなければ部長に殺される事に気づき、気を取り直して取材を続ける。
「よ、よし、でも今は他種族でも平気なんだよな?監督生ってBのジャックと仲良かったもんな?」
「うん、ジャックとは仲いいよー。てゆーか、そもそもこの世界の種族とは別物だと思うよ?人魚も妖精も全然違う。いっそ怖いくらいにはね」
「あ、次はアンケートできた監督生への質問な。読むぞー『なんで沢山のことに巻き込まれたのにへらへら笑ってんだ?』…ただの悪口だな、これ。」
アンケートなのに質問が書かれていない。そんなんだから怖い・やばそうな学校NO.1とか言われるんだ。
「気にすんなよー、次!『好きなタイプや理想はありますか?』、くると思ったよ…」
「たいぷ?あー結婚とかの理想?子供作れりゃいいとは思うけど…強いて言うなら互いに背中を預けられは人とか、リク兄とシュヴィちゃんみたいな関係がいいなぁ」
子供作れりゃいいという豪快な言葉に女の子への夢が崩れていく1-Aの生徒達。デュースなどは真っ赤になっている。
「監督生さ、この前言ってたよな『人間、生きてく為に必要なのはさ、一に子作り二に食糧、三四五は子作りだよね』って。」
女の子が言う言葉じゃないッッッ!ポムフィオーレ生は血の涙を流した。
「性別が気にならないってそーゆーことかぁ…つかシュヴィちゃんとか誰だよ」
「え?私の友達。ちょ〜可愛いの。リク兄と夫婦なんだけど、ラブラブだったの」
コイバナが好きなツイステッドワンダーランドの住人にはソワソワする話だ。
そしてエースは気づいた。気づいてしまった。監督生がその二人に憧れているということはラブラブな関係に憧れているということではないか。思春期の男子にとってちょっと刺激が強かった。他にも気づいたクラスメイトが顔を赤くしている。
ピンク色の空気を変えようと、
「んじゃ、これで最後な。『元の世界に帰りたいと思いますか?』」
今度は空気が緊張に包まれる。特にエースとデュースは真剣だ。ダチの気持ちが知りたいから。
「元の世界に?ううん別に」
その答えにホッとする様な、心配な様な複雑な顔になる。
監督生は笑いながら言った。
「だって私の役割はもう終わってるからね」
幽霊の記録は残らないんだよ。
♢ ♢ ♢
監督生
大戦が終わった直後にツイステ世界にきた。幽霊として大戦を終わらせた。リクよりも年下で、尊敬している。目は片目だし、義手義足だけど誰にも言ってない。心配かけたくないから。
性格は明るくてお人好し。だって助け合わないと生きていけないじゃん?
エーデュース
性別関係なく、監督生といると楽しい。
もっと詳しく知りたいし、いつか相談してくれるといいな。
1-A
異世界すげえ
他クラスよりも素直ないい子が多い
でもしっかりNRC生
新聞部の記者
どうやって記事にしようか
生半可な取材をすると新聞ガチ勢である部長に締められる。
ノゲノラゼロの大戦時の世紀末感が全然出せなかった。他にも書きたいところがあったけど、力尽きました。
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♢ ♢ ♢
「エース、デュース、お願いがあるんだけど、いい?」
「どうしたんだ?」
「いいけどよ…」
「私の足と手を外してくれないかな」
メンテナンスのために手足を外してと頼む監督生。きっと友人としてかなり二人のことを信頼していて、自分の秘密を打ち明けた。
「あ、痛い、痛い痛い痛い!いやだ、いやいやいや、行かないで!私を置いて行かないで…ちがっ、痛い痛い、いや、怖い怖いこないで!ずるいよぉ、ずるいずるいなんでなんでなんで、
私達は魔法が使えなかったの?」
なんかの拍子にトラウマが蘇りみんなのSAN値が削れる話
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