サーカス編
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ウチが『ニコラス』に捕まって数年が過ぎた。
『ニコラス』というのは、人身売買を主な活動としたマフィアのことである。ボスはジョニー=マルクス。ウチをさらった男だ。
あんなヘラヘラしていてもマフィアのボスだということを忘れてはならない。ジョニーがマフィアのボスだと知った時のウチの手のひら返しはもの凄いものだったと思う。
しかし、彼はそれをお遊戯のよう楽しんだ。
なんなら今現在もそれを楽しんでいるように見える。いい迷惑だ。
『ニコラス』は人身売買を主としている。
じゃあ他は何をやっているのかといえば、”人々の娯楽に直結するもの”だ。
たとえばカジノにホテル、水商売のお店…それにサーカス。
なんでマフィアを名乗っているんだろうか?
そう考えた瞬間は多々ある。いや、今も考えている。
「今日の公演も成功~!」
札束の山を抱えながら一人の美女が部屋へと入ってくる。
「お疲れ様でーす。」
ここは、ウチの楽屋だ。
入ってきたのがジョニーではないので咎めもせず、ただただ自分の濃い特殊メイクを落とすための手を休めた。
「見て!このお金の数!!素敵よね~!」
メイクも衣装も舞台に上がった時のまま、クリスティーヌはウチの楽屋のソファーへとどっかり腰を下ろした。
「あーあ、またそうやってメイク落とさないから肌荒れするんですよ」
ジョニーから盗んだのかチケットの売上金の束を嬉々と見つめるクリスティーヌ。
彼女は『ニコラス』の一員である。金髪のロングヘアに今にも零れ落ちそうなたわわな胸元…。
という特殊メイクをしている、肌荒れに悩むティーンエイジャー。
「空中芸をしてる時のアタシが可愛ければそれでいいのぉ!!」
肌色のおしろいで塗り固められた皮膚がにぃ…と動く。
うん。慣れないなぁ。
クリスティーヌの肌を見て、ウチは自身の化粧を落とす手を再び動かした。
それにしても、ウチの特殊メイクも気味が悪い。
派手なオレンジ色の長いウィッグ。しかもチリチリ髪のもの。
肌は白く塗りたくられ、真っ赤な鼻に唇。
そして黒で縁取りされる目元。
まさに、ピエロだ。
「あーあ…、もっとカッコいいメイクならなぁ…」
ウチの呟きは、誰の耳にも入ることなく消えていった。
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