サーカス編
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今日は少し調子が悪かった。
あるいは運が悪かったのかもしれない。
「待てー!!」
後ろから追ってくる果物屋のオジサン。
いつもならバレずに盗めたのになぁ…。
入り組んだ路地裏と人より優れた運動神経から見て、オジサンはまだまだボクには敵わないのに。
一生懸命ボクを捕まえようとするあの必死な姿。すごく滑稽だ。
最初はそんな姿に面白さを感じていたものの、数分でソレが色あせて見える。
「飽きちゃった◇」
グンッとオジサンとの距離を伸ばせば、オジサンはボクを追うのを諦めたようだ。つまんないの。
大通りに続く路地裏の道。
盗んだ林檎に噛り付きながら大通りへと進んだ。
大通りに近付けば近付くほど人々の歓声、陽気な音楽が聞こえてくる。
どうせいつものつまんない見世物小屋の連中たちだろう。
だけど、今の退屈さを少しでも埋めたかったボクはゆっくりと大通りへと出た。
奇抜な色の乗り物に続く大きな張りぼて。
沢山の踊り子たちがその周りで踊る。
乗り物に乗っている人たちがキラキラした紙をまき散らす。
空中にあったそれを手にしてみてみると、どうやらサーカスのチケットらしい。
パレードはおもしれいケド、サーカスか…。
こんな辺鄙な土地でショーをする者は、過去どれだけ探してもいないであろう。とてもいい発想だと思う。
だけど、パレードに関しては及第点だ。
「つまんないや♧」
そう踵を返した。
すると、どこからか音楽が流れた。
聞いたことのない曲調。他の音楽とは違ったハイテンポの変わったメロディー。
そこにアルトのような、ソプラノのような…どう表現したらいいのか分からない、そんな歌声が聞こえる。
声を辿ってあたりを見回すと、乗り物に乗った自分と同い年くらいの女の子がいた。
奇抜なオレンジ色のちりちり髪。
ピエロの化粧に、おしろいで白くなっているであろう肌。
そして大きな目に宝石をはめ込んだかのような黒い瞳。
一目見た瞬間から、言葉では言い表せない感情が沸き立った。
ボクの中の季節がガラッと変わった。
そう、表現してもいいくらいだ。
歌を歌う姿や、大きな口を開けて満面の笑みを向ける彼女に、ボクはおそらく興味を持ってしまったのかもしれない。
それもとびっきり強い興味を。
ボクはその時から、恋に落ちてしまったのかもしれない…。