サーカス編
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連れてこられたのは大きなテント。
けばけばしい色合いで目が痛くなるほどだ。
大きさ的には普通の一軒家数百個位の大きさと言っていいほど大きいテントだ。まさか「悪い大人に子供を売る仕事」だとか言いながらサーカスも運営してるとか言うなよな。
呑気にそんなことを考えながら男たちの後ろを大人しく付いて行く。
逃げることも考えたが流石に子供の体に、背中の方で縛り付けられたままの腕では走ることはままならない。
それに加えてここは『HUNTER×HUNTER』の世界。
相手がもし、念能力なんてものを使える強者ならばウチに勝ち目はない。
だから大人しくしているのだが…。
「…。」
相変わらずジョニーの視線が居心地悪い。
周りのいかにも手下感を出す男たち。
その男たちなんかウチに目を合わせようともしないのに…。
「フィリップ~。ステージ空いてる?」
テント内へ足を踏み入れるとジョニーが間延びした声で奥へと声を放った。
「おい…、なんだソイツは…」
ジョニーの向いている方へと身を乗り出すと、いきなり真後ろから低い声がした。
肩がびくりと震えた。ジョニーと同じく気配を感じられなかったからか、その男の声から温度を感じられなかったのか定かではないが。
声の方へと顔を向けると、こちらをゴミを見るかのような目つきで見つめるモヒカン男と目があった。
口も耳もピアスの乱れ打ち。
ロックバンドのような服に、V系のメイク。
不良と陽キャ、どちらも兼ねそろえたかのような見た目にウチは再び肩を震わせた。
「あ~らら~、ルイ君来ちゃったカンジ?」
ニヤニヤといつもの笑みを浮かべジョニーはルイと呼んだピアス野郎へと向かい合った。
「ちょっと気になるコがいてね。」
「関係ない。ここは実力主義だ。
実力がないなら、例え団長推薦だろうが売りさばいてやる。」
バチバチと火花を散らす大の男二人。
しかも、両者引けをとらないほど奇抜で異質で…とりあえずへなちょこな格好をしている。
ピエロとロックミュージシャンが争っている様子をただ話を聞くことも何かを考えることもなく、ぼーっと見つめ続ける。
「実力は今から見せてもらうつもりサ!」
その言葉にルイも、今まで目すら合わせようとしなかった部下のような人たちもウチに注目する。
「…えっ…?」
*****
「じゃあ、元気に言ってみよー!!」
目の前で杖を振り回し指揮者の猿真似をするジョニー。
その周りにはピアス野郎のルイと、あと10人くらいの奇抜な面々。
その厳つい面子が今、ウチを取り囲んでいる。
正確には舞台の上に立ったウチを…だけれど…。
此処に連れてこられてすぐ、ウチはこの舞台に立たされジョニーの糞野郎に無理難題を突き付けられた。
「さぁ!!パフォーマンスして!!」と。
嫌だ。
とてつもなく嫌だ。
かといって面と向かって嫌と言えば、めちゃくちゃこちらを睨んでいるルイに殺されそうなのでなんとなくやんわりと断ってみた。
「え~っとぉ…、音楽とかは…?」
「アカペラでいいよ!」
即答された。
乾いた拍手が鳴る。
と言っても、団長だと呼ばれるジョニーはさも楽しみだというオーラを醸し出し、高速の拍手を繰り出している。
どうしよう…。
どうすればいい…?
半ばパニックになる頭の中。
こんな状況で歌えと?しかも手にあった縄も外されていることから相当ウチを逃がさない自信があるに違いない。逃げたところで何の意味もない。
エヴォンケリオンの主人公の如く「逃げちゃだめだ。」と唱えても緊張は余計に増すだけ。
何か、何か方法は…。
冷や汗が頬を伝った、その時だった。
ババンッ!!!
「…!!」
会場に音楽が流れだした。
しかも、その音楽は生前ウチが聞いたことのあるものだ。
ドラムの軽やかなテンポとエレキギターの重低音。
機械の唄う歌。
もう少しでイントロが終わってしまう!
その前に…!口をすぅっと開く。
その後のことはよく覚えてない。
緊張は消えて、歌に集中した。いや、没頭が正しいのかもしれない。
気付けば割れんばかりの拍手。
そして、周りにいた人たちの興奮しきった顔。
ジョニーの「してやったり」と言わんばかりのにやけ顔。
__ミョウジ ナマエ。
特技は演説に劇、そして歌うこと。_