サーカス編
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「はー!面白かった!!」
手元にあったリモコンをソファーへと放り投げ、くいっと伸びをする。
今、ウチが見ていたのは『HUNTER×HUNTER』という少年向けのアニメだ。しかし、いくら少年向けと言っても「絶対違うだろ!」と言ってしまうような作風…高校生のウチでも充分楽しめるものだった。
前々から父、そして週刊少年誌ジョンプ好きの友人多数からすすめられ渋々アニメを見たが、とても面白くてウチは一気に作品の虜となった。
「いい加減寝なさいよー。」
アニメを見終わってしまった喪失感と、続きへの期待で胸がいっぱいの自分を現実へと引き戻す母の声。
「はぁーい。」
やる気のない返事をし、重たい腰を上げる。
アニメによって興奮した脳を落ち着かせようと、他のことを考えようとするが駄目だ…他のことなんて考えられない!!
どうしてゴンってあんなに天使なの???!!!!!
飽き性な自分が、あそこまでアニメを見れたのは主人公ゴン=フリークスのおかげと言っても過言ではない!
正直、ゴンはウチのタイプとはかけ離れていた。
兄弟の中で一番最年長のウチ。
もちろん姉として下の弟たちの世話はしないといけない、たくさん我慢もした。周りからは大人びた子だとか言われるけど、ウチだって一杯我が儘言いたかったし、親に甘えたかった。好きで大人びていたわけではない。
だからこそ『子供』という存在は恋愛対象…いや、推し対象から除外されていた。奴らがどんなに五月蠅くて、面倒臭い存在かなんて自分が痛いほど分かっていたから。
でも、ゴンは違った。
純粋で可愛くて、大人顔負けなこともやりのけて可愛いし、正義感溢れる少年。あとめっちゃ可愛い。
とにかく、ウチが出会ってきたどの『子供』よりも可愛くて可愛くて仕方のない子。それがゴン。
「ふへへへ…」
我ながら気持ちの悪い声をあげながら自室のベッドへともぐりこむ。ゴンと野原を駆けまわる夢でもみたいなぁ~、見せてくれよぉ~なんて考えながら目を閉じた。
そう、確かそんな感じだ。
目が覚めたら普通に学校へ行って、友達にゴンの良さを原稿用紙50枚分くらいに纏めた簡単な感想を言う筈だった…。
*****
「うーん…。」
水面に映る自分の顔を見て顔をしかめる。
どう見てもウチだ。
ウチなことには変わりない。
父に似た釣り目気味の大きな目に、普通の人より二回り小さい黒い瞳。ハーフ顔とさんざん言われ続けた原因の高い鼻。くっきりとある力強さの感じる眉毛。
ウチだ。
違うとすれば、体が幼くなっていることと、髪の毛が長いこと。
そして、違和感のあるビジュアル。
どう見ても自分の大好きな大好きな天使のいる作品、『HUNTER×HUNTER』のビジュアルだ。でも、自分を見ても自分だと認識できる…かといって違和感は消えない。何とも言えない気分だ。
髪を触る。
腰まで伸びた猫毛の黒髪は今も健在だ。
おそらく…おそらくだが…。ウチは『HUNTER×HUNTER』の世界に転生してしまったのでは…?
そう考えたところでウチは首を振った。
そうだとしたら、前世のウチが死んでいなければならない。生憎、死んだ覚えはない。それに、今のウチの体の年齢は想定4,5歳…。それまで育ててくれた人の記憶どころか、育ててもらった記憶すらなし…。
そう考えると、ウチが転生した可能性は低い。
「だとしたら…」
ふかふかの芝生への転がり、空を見上げる。
「転生…だりょうか」
すこし高めの舌足らずな自分の声に違和感を覚えながらも#私#は冷静だった。
だって『HUNTER×HUNTER』の世界だよ?
確証はないけど。
好きなアニメの世界にどんな形であろうが来れたのは喜ぶべきことだ。前の世界が恋しくないのか?と聞かれれば恋しい。だが、どんぴしゃで好きな世界に行くなんて、高等な夢でも実現できないだろう。ひとまず、ウチはこの世界を堪能することにしたのだ。
「まずはッと…」
すっくと立ち上がり、白いワンピースをはたく。
「念能力かりゃ覚えるれしゅ…!!!」
呂律が回らない…。