第0章
夢小説設定
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「はぁ…はぁ…」
なんとか中庭付近で撒いたようだ。
肩で息をしながら井戸の淵に手を掛けた。
ベタつく汗が気持ち悪く、フードを外す。
ふと、井戸の中を覗き込むと水面に映る自分の顔。
ここに来る前のそのまんまの自分。
それが式典服を着て、黒い口紅にアイシャドウをしている。
決して可愛いとは言えない顔だったが…、ふむ。
「これはこれで可愛いかも…」
このメイクのまま過ごすのもアリか…。
しかし、汗が気持ち悪い。
この井戸の水を飲みたいし、顔を思いっきり洗いたい。
「うぅ…」
葛藤の末、結局ウチは井戸の水を顔に掛けた。
ついでにごきゅごきゅと水を飲み干す。
喉の渇きが潤ったのは良かったが、アイシャドウも口紅も全て落ち、黒髪黒目の自分が現れてしまった。
あぁ、ウチの顔だ…。
せめて美少女にしてくれても良かったのではないか?
そんな事を考えていると一羽の小鳥が飛んできた。
まだ飛び方もぎこちない小鳥は迷う事なく井戸の淵に羽を降ろす。
野生動物とは思えない警戒心のない行動に若干戸惑いながらも、恐る恐る手を伸ばした。
逃げられるんだろうなぁ…。
そう考え、手を引くと小鳥は小さな体をウチの手の上に乗せた。
歌を歌うように鳴くその小鳥に癒されていると、後ろから大きな轟音がした。
「やっば!!!」
急いで小鳥を木の上まで乗せると、中庭の近くにあった扉へと入る。
両腕で扉を急いで閉めるとそこには本棚が大量な場所。
ただの図書館かと思いきや、あちこちには空中に浮かぶ本たち。
そういえば、此処でグリムと監督生が鉢合わせして学園長が…。
バァンッ!
大きな音を立てて、先程自分が入ってきた扉が大破した。
「うわっ!!」
勢いに負け、尻餅をついてしまった。
痛む尻を摩りながら、ウチは目の前の珍獣を見上げる。
「俺様の鼻から逃げられると思ったか!さっさと制服を寄越すんだゾ!!」
「ちょっと、此処で炎はナシだってば!」
ボワボワと炎を撒き散らしながら、先程撒いたはずの珍獣が近付いてくる。
それより此処の本高そうなのに、そんな炎撒き散らしても大丈夫なの?!
絶対燃えちゃうって!!
「丸焼きにされたくなかったらその服を…」
そうグリムが告げると同時に何かが空を切る音。
そして…
バチィンッ!
鞭の痛々しい音。
「ふぎゃっ!?痛ぇゾ!なんだこの紐!」
グリムが紐もとい鞭によってグルグル巻きにされる。
お、これはきっと…。
「紐ではありません。愛の鞭です!」
来たー!学園長!
羽の散りばめられたマントにベネチアンマスク、黒いシルクハット。
仮面の奥からは眼光が鈍く光っている。
うわぁ、実物カッコいい、そんで背ぇデカ。
想像していた学園長より二回りほど大きい学園長に若干気圧された。
「あぁ、やっと見つけましたよ。あなたが今年の一年生ですね?」
ヘタリと尻餅をつくウチの元へ学園長が一歩、また一歩と歩み寄る。
「ダメじゃありませんか。勝手に扉から出るなん……」
バチリとベネチアンマスクの奥の瞳と目が合った。
途端に学園長の動きがピタリと止まる。
「…て…。」
ポカンと此方を凝視する学園長。
え?もしかして何かウチの何処かおかしかったりする?
そういえば、メイク雑な感じで落としちゃったからお化けみたいになってたりとか?!
内心ヒヤヒヤしたのと、長い沈黙に耐えられなかった為、ウチは意を決して口を開ける。
「あの…」
しかしウチが言葉を続ける前に、学園長は半ば叫ぶかのように言葉を発した。
「ま、全く!!勝手に開けて出てきてしまった新入生など前代未聞です!」
顔を逸らされた。
えぇ…。
それほどウチって不細工?
「離せ!!離すんだゾ!!」
もがもがと暴れるグリム。
すると何の言葉もなく学園長はグリムの口を塞いだ。
「どれだけせっかちさんなんですか!
さぁさぁ、とっくに入学式は始まっていますよ。鏡の間へ行きましょう。」
そして、何事もなかったかのように言葉を続けた。
「あ、あの、待ってください。」
今にも鏡の間に飛んでいきそうな学園長。
しかし、ウチが声を出すと、ピタリと再び動きを封じた。
原作同様話を聞いてもらえないのでは、と大分失礼なことを考えたがどうやら杞憂で終わったようだ。
「ウチ…、此処の世界の人間じゃないです…。」
あまりにも突拍子の無い事を言ってしまった。
その証拠に学園長だけでなく、グリムまで首を傾げているでは無いか。
でも、どうせ闇の鏡がバラすんだ。
それならいつ言ったって変わらないだろう。
「日本って所から…、いやそもそも魔法の無い世界から来たというか…異世界というか。」
我ながら語彙力に乏しい説明だ。
段々恥ずかしくなってきた。
「すみません…」
国語辞典読も。