第0章
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*****
鉱山から逃げに逃げ、七人の小人の家まで戻ってきたウチ達。
「はぁ、はぁ…ここまで来れば…大丈夫っだろう…!」
ウチを抱えてここまで走ってきてくれたデュースは既に疲れ切っていた。
「ありがとう。でも、ごめんね。重かったでしょ…?」
罪悪感と感謝の気持ちでいっぱいだ。
あんな時に転ぶなんて、本当にツイてないなぁ…ウチ。
「あぁ、重かった…。」
「ははっ、実に失礼な奴だな!」
あまりにもはっきり言われた。
ウチの罪悪感を返してほしい。
「あ、あいつ…キャラ変わってね…?」
ふと、エースがグリムに密かに耳打ちするのが聞こえた。
まぁ、無視するけど。
「さて、これからどうする?」
ウチがそう言えば、シン…と静まり帰る一行。
そりゃあそうだ。あんな化け物がいると分かった手前、もう一度あの鉱山に行くには勇気がいる。
此処はすぐに解決策を提示したほうがいいのか…、と口を開く。
しかし…。
「俺は出来ればもう行きたくねーよ…。」
そんなエースの言葉に反対の意を唱えようとするデュース。
そんなデュースの反論の前にエースが言葉を繋げる。
「行きたくねー…けど、巻き込んじまったナマエに来てもらってんのによ、行かねーっていう選択肢ある?」
やれやれと首を振るエース。
デュースとグリムの表情が明るい物になる。
「そうだな、絶対魔法石を手に入れよう!」
額の汗を拭い、デュースは更にやる気を上げた。
デュースの意気込みに、ため息を吐きながらエースも「おう。」とだけ答えた。
「でもでも、アイツをどうするんだゾ?」
グリムのその言葉で、グッと二人が押し黙った。
あんなにやる気のあったデュースでさえ、だ。
「オマエら、バーンとド派手な魔法とか使えねーのか?」
「大掛かりな魔法や複雑な魔法の使用には訓練が要る」
「だから魔法学校があるんだけどね。
パッと思い浮かべた通りに魔法を使うには、かなり練習が必要ってワケ。
ぶっちゃけテンパってるとミスりやすい。」
グリムの疑問をすぐさま断ち切る二人。
二人の言葉にグリムも希望を失ったかのように押し黙ってしまう。
そう言えば、原作では此処で喧嘩になるはずなんだが…。
「「「「……」」」」
どうやら喧嘩になりそうな雰囲気ではなさそうだ。
しょうがない。ちょっと早い気もするが、此処は原作の知っているウチが手助けしてやろう。
「オッホン…、ウチにいい考えがある!」
胸を張り、仁王立ちで三人の前を立つ。
三人はそんなウチの言葉に瞳を輝かせた。
「おお~!流石子分なんだゾ!!」
「で、その考えとは何なんだ?!」
まぁまぁ落ち着き給え。と、興奮する三人を落ち着かせ口を開いた。
ウチが原作通りの作戦を話すと、エースとグリムは徐々に顔を曇らせていった。
「ってな訳で、早速…」
粗方作戦を説明し終え、早速鉱山へと向かおうとしたその時だった。
「っふざけんな!!!」
デュースの叫び声に、ウチを含め三人はビクリと肩を揺らした。
「ど、どうして…?」
少し怯えながらも、デュースへと問いかける。
デュースは顔を下に向けてしまったが、ゆっくりと言葉を綴った。
「なんで、なんでナマエが囮なんだ…。怪我してるのに、僕じゃ…ダメのか?!」
デュースの言葉にエースが目を伏せた。
「魔法が使えないウチが囮になるしかないんだ。心配しないでグリムもついてるし…!」
「だがっ…!!」
頑なに作戦を実行させようとしなデュース。
困った。これ以外の作戦で良いものなどあるのだろうか。どっち道囮は必要不可欠だ。
しかも魔法を使う人を囮にすれば攻撃する時に火力が足りなくなってしまう。
そう困り果てている時だった…。
「その分…、俺らで何とか守ってやればいい…」
エースがポツリと呟く。
そのエースの呟きにデュースがゆっくりと顔を上げた。
「もし、ナマエが危険な目に逢いそうだったら全力で防ぐ。俺達で…。」
「エース…」
朝喧嘩を吹っかけてきた奴とは大違いだ。
真剣な眼差しで、エースはデュースに言い聞かせる。
「下手にナマエが危険な目に合えば、俺たち退学どころじゃ済まなさそーだし…」
エースの言葉に、デュースとグリムは大きく震えた。
別にそんな事になっても魔法石だけ持って帰れれば退学はないさそうなんだけどな。
「よ、よしっ!絶対ナマエを危険な目には合わせない!!!」
別の方向でやる気を出すデュース。
そしてそのデュースの言葉につられてやる気を出すグリムとエース。
*****
ウチ達は再びドワーフ鉱山の入口までやってきた。
心なしか吹いている風が冷たい気がする。
「ほんとにその作戦で上手くいくのかよぉ……こわ……いや、不安なんだゾ」
ガタガタとウチの足元で震えるグリム。
まぁ、今からあのモンスターの囮として動かないといけないし怖いのはしょうがない。
定位置に着いたエーデュースがグーサインを掲げる。
その様子を確認し、首を縦に振るとウチはグリムと共に鉱山の入口に近づく。
「やぁ~い、お前ん家おっばけや~しき!!」
「やい、バケモノ!コ、コッチなんだゾ!」
ウチとグリムは口々にモンスターを煽った。
【グルゥ…………ガエレェエエエエ!】
そんなウチ達の声に反応したモンスターが大きく唸り声を上げた。入口にいるのに、すぐ気付くの凄いな…。
ドシドシと足音が大きくなり、モンスターが此方に向かってきているのが分かる。
「ギャッーー!来た!ナマエ~!」
グリムが怖がる中、ウチは更にモンスターを煽っていく。
「お前の母ちゃんで~べそ!!」
【ワダサヌ……オデノ………オデノ!!】
グリムと共に散り散りに逃げる。
モンスターはこんなに煽っているウチよりも距離の近いグリムを追いかける。
どっちでもいい。
兎に角モンスターを入口から遠ざけれれば!
「こらぁ怒りんぼ!!そんなに怒ってたっていい事ないんだからなぁ!!」
「お、お前…煽り過ぎなんだゾ!」
やや調子に乗り、モンスターを煽る。
しかし、何を思ったのかモンスターはウチの声に反応して此方へと方向転換した。
「…あれ?」
グリムを越してもウチを狙ってくる姿は流石に恐怖を覚えた。
転んだ傷が痛いがこれは逃げるしかない!
「くっそ…!」
足を懸命に動かし、モンスターを引き付ける。
チラリと横目でモンスターを見れば、それなりの近さに迫ってはいたが鉱山の入口から結構離れている。
「エース!!デュース!!!」
ウチが叫ぶと、二人は草むらから姿を現した。
「オッケー、お任せ!いくぜ、特大突風!」
「アーンド!グリム様ファイヤースペシャル!ふな゛ぁ~!!」
エースの風の魔法とグリムの炎の魔法が合わさって、大きな炎へと変貌する。
しかし、それに感心している場合ではない。早く避けなければウチまで巻き込まれてしまう!!
その時、モンスターの手がウチを弾き飛ばした。
「うわっ?!!!」
勢いよく飛ばされた体は、大きな木に当たって勢いを小さくする。
「いったぁ…」
転んだ時より痛かった。
しかし、飛ばされたことによって魔法に巻き込まれる事はなかったから結果良しとしよう。
魔法は無事モンスターへと命中し、その隙にデュースが攻撃をする。
「…落ち着け。僕が知る中で一番大きくて重い………いでよ、大釜!」
モンスターの頭上に大釜が現れた。
エースとグリムの喧嘩シーンを見ていなかったから、デュースの大釜を見るのはこれが初めてだ。
大釜の下敷きとなったモンスター。どうやら身動きが取れない様子だ。
「ナマエ!大丈夫か?!」
エースとグリムがウチを起こす。
「大丈夫!それより早く鉱山に入って魔法石を!!」
「でも、お前その怪我じゃ!」
エースの言葉でようやく自身が意外とボロボロだという事に気付いた。
止まっていた筈の膝の傷口はもっと悪化し、手足は擦り傷だらけ。
きっと背中は痣だらけだろう。
あぁ、このままでは足手纏いだ。
そう思ったウチはエースとグリムを見据えた。
「…行って、置いて行っていいから!!」
二人が目を丸くする。
そしてすぐに反対の言葉を告げる。
だがこの好機を逃してはいけない。
「ホントに平気…。でも…早く帰ってきて…。」
ウチがそう言うと、二人は押し黙った。
しかし、意を決したように頷く。
「分かった。すぐ取ってくるから!」
そう言ってエースとグリムは猛スピードで鉱山の中へと入っていった。何かデュースが言っていたようだが、それを無理やり手を引いていた光景が見えた。
「はぁ…はぁ…。」
浅く呼吸を繰り返しながら、ウチは木へと背中を預ける。
「うぐっ…!!!!」
途端に痛む背中。
やっぱり強く打ってしまったんだ。
口をハクハクと動かし、痛みを逃がした。
「あぅ…、ふっ…、どぅして…」
そして目の前の大きな影へと問いかける。
「どうしてっ…魔法石を守りに行かないの…?」
痛みでうっすらと汗が滲む。
そしてそんなウチを覗き込むインク壺の頭部。
攻撃してこようとする素振りもなく、ただ屈んでウチを見てめているだけ。
問いかけても答えないモンスター。
「…庇ってくれて、ありがとう。」
モンスターの体がピクリと震えた。