第0章
夢小説設定
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フロイドに抱っこされたまま鏡を抜けると、そこには鏡舎の光景。
ずらりと並ぶ各僚へ繋がる鏡が並んでいる。
すとん、とフロイドに降ろしてもらい着地する。
なんやかんや大変だったが、フロイドには感謝しかない。
精神的ダメージは大きかったが、肉体的ダメージは少ないし。
「じゃあね~、イルカちゃん!」
くるりと向きを変え、フロイドが鏡の方へと歩き出す。
「は、はい…ありがとう御座いました!フロイドさん…」
そう言った時だった。
フロイドがUターンして、ウチの目の前へと戻ってくる。
「ジェイドは呼び捨てのクセに、俺は呼び捨てじゃないの?」
突然そう言われ、顔を近づけられて滅茶苦茶焦ったのは言うまでもない。ツイステのキャラ、距離感バグってる奴多いな…。
「…えぇ…、じゃあ…フロイド。」
恐れ慄きながらも、呼び捨てで呼ぶとフロイドは笑った。
あ、なんか可愛いかも。
そう思ったのもつかの間…。
「そうそう!今度から呼び捨てで呼ばなかったら…絞めるぞ。」
「ひぇっ…」
笑顔からのガチトーンで脅され、少々漏らしそうになった…。
あんな長身の男に上から睨まれ、脅されるのに耐えれる一般人が何処にいる?いや、いない。
「んじゃ、今度こそじゃあねぇ~」
「ハハハ…、バイバイ…」
大きく手を振って、フロイドは鏡の中へと姿を消した。
嵐が去った後の如く静かになった鏡舎。
そして、それはウチの心の中も同じだ。いや、どっちかって言うと和やかになったと言った方がいいだろう。
ようやく帰ってこられた学園。
グリムと学園長の事を考えるとちょっと頭は痛くなるが、早く合流しなければ。
よろよろと慣れないヒールで鏡舎を出る。
しかし、ウチは自分がナイカレ敷地内の地理を把握していないことに気付くのだった。
「噓でしょ、此処何処?!」
目の前にはよくわからない道。
そして後ろを振り向くと、背後に聳え立つのは校舎。
「はぁ…、取り敢えず校舎に向かって歩くしかないな…。」
コツコツとヒールを鳴らし、ウチは学園を目指すのだった。
コルセットが苦しい…。
*****
歩いて、歩けば校舎内にようやく辿り着いた。
そして現在、グリムと学園長を探すべく学園内の廊下を歩いている最中だ。
「つ…疲れたぁ…。」
足も棒になり、コルセットによって息はしづらいし…。
しかもどんなに疲れてもドレスのせいで背筋はピンと伸びたまま。
猫背になりたい。ドレスなんか気にせず横になりたい。
先程から廊下ですれ違う生徒たちはウチをガン見してくるし、精神的にもつらい。
そりゃあ、男子校にドレス着た女がいれば驚くのも無理ないけど…。なんせ恥ずかしいものは、恥ずかしいのだ。
っていうかこの格好、学園長にどう説明すれば…?
「あの、すみません。」
そうやって一人考えていると、後ろから聞き覚えのある声がする。
「先生!」
勢いよく振り返ると、やはり予想通り学園長だった。
「す、すみません!道に迷ってしまって…!」
ぺらぺらと出て来る弁明の言葉。
しかし、学園長は心ここに在らずの状態で、ウチを見つめたまま動いてくれない。
「あの…?」
ウチが声を掛けると学園長は、ハッとした表情になる。
「…えぇと、ナマエさん…どうしてその様な格好に?」
学園長の言葉にウチの動きがピタリと止まる。
この頓珍漢な格好を一体どう説明すればいいのか、分からない。
正直に話す?いや、それではアズールと契約した意味がないだろう。
「こ…これには深い訳がありまして…!」
「ナマエ!!!」
取り敢えずウチが訳を説明しようとすると、声が聞こえた。
学園長の後ろから走ってくる、ボロボロの一匹と二人…。
は?何でお前ら一緒にいるの…?
その一匹と二人に嫌な予感がする。
いや、もう嫌な予感は確定したようなものだ。
今にもウチに飛び掛かろうとする珍獣の前に、学園長がウチを守るかのように立ちはだかる。
「一体何事ですか。貴方達はもう退学だと言ってるでしょう。」
「た、退学?!」
平然とそう言い放つ学園長。
そしてその学園長の背中越しから見る一匹と二人の顔は真っ青だった。
勿論一匹はグリム。そして二人というのはトラッポラといつの間にか合流したデュース・スペード。
いや、何であの一匹と二人が問題起こしてるの?
ウチが居なかったからなのか?そうなのか?頭が痛くなった。
「どうかそれだけはお許しください!俺はこの学校でやらなきゃいけないことがあるんです!」
初顔合わせのデュースが、必死に学園長に許しを請う。
初顔合わせと言っても彼らからはウチは見えていないだろう。なんせ長身の学園長の後ろに居るのだから。
「馬鹿な真似をした自分を恨むんですね」
「許してもらえるなら弁償でも何でもします!」
学園長とデュースにやり取りが進められていく。
しかし、後ろのエースとグリムは何一つ言葉を発さなかった。恐らく、この一匹と一人がデュースを巻き込んだのだろう…。
ため息しか出ない。
「学園長。」
ウチが声を上げると、その場にいた全員がウチを見た。
やはりウチに気付いていなかったのかデュースは驚いた表情をしている。
「グリムを長時間目を離したのはウチの落ち度です。本当にごめんなさい…。」
頭を下げる。
こればかりはグリムが悪いとは言えないからだ。
学園長は頭を下げるウチに戸惑った。
なんで戸惑っているのかは分からない。ウチも罰を受ける気はあるのに…。
「ナマエ…!」