第0章
夢小説設定
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ゴロゴロ…ピシャンッ!!
土砂降り、雷の落ちる中、来たのはなんとも趣のある建物。
その姿にふぅ…と胸を撫で下ろした。
これには理由があった。
鏡の間を出た後の話だ。
本来原作のストーリー通りならばオンボロ寮にすぐ行くところだったのに、学園長に案内されたのは超綺麗な客室。
キングサイズのベッドに豪華な装飾のある王室のような部屋。
いくら
「部屋ができるまでこの部屋で我慢してください。」
"この部屋で"?!
しかも部屋作ってるの?!
触っちゃいけなさそうな程豪華な内装に目が痛くなった。
こんな豪華な客間はウチには勿体ないのに…、まだこれ以上いい部屋を作るの?!
流石に、居候の身でここまでしてもらうのは…。
自分の顔が申し訳なさでクシャッと歪むのを感じた。
「あ”の”…」
と、そんな感じで何食わぬ顔で立つ学園長をウチがなんとか言い包めて、やっとオンボロ寮に泊めてもらえる事となった。
一安心するウチとは対称に学園長は今でも不服そうだ。
「…改めて聞きますが…本当にこんなボロイ所でよろしいんですか…?」
ぼろいって言ってるよ完全に…。
オンボロ寮のドアの手前で学園長が再度ウチに問いかける。
ウチはその言葉に頷くと、学園長は渋々といった形でオンボロ寮のドアを開ける。
ツンと香る埃の匂い。
蜘蛛の巣と埃の巣窟と化している此処は、原作で見た以上にオンボロだった。
家具も散乱しているが、生活に必要な家具が落ちてるのは中々魅力的だ。
一歩、寮内へ歩を進めると木製の床がギシリと音を立てた。
「…では、私は荷物を取りに行ってきますので適当に過ごしていてください。くれぐれも外にはでないように!」
「では」と学園長はオンボロ寮から姿を消した。
ポツン…と一人残るウチ。
しかし、先の展開を知っているウチは、オンボロ寮内を散策する。
お目当ての物を棚から引っ張り出して、小さな丸椅子に腰かけた。
あとは来るのを待つだけ…。
ふと、雨音が強くなったかと思うと、玄関から聞き覚えのある声が聞こえる。
「ぎえー!?急に酷ぇ雨だゾ!!」
パチリとグリムと目が合う。
リドルくんに付けられた首輪はもうすでになくなっている。
「おかえり」
よっこらせとウチが丸椅子から立つと、グリムは首を傾げた。
「…おかえり?」
ポカンと濡れたまま立っているグリムにタオルを被せ、ぐわしぐわしと体を拭いてやった。
元居た世界でめちゃめちゃ大きな犬を飼ってたからか、随分スムーズにできたと思う。
「い、いきなり何するんだゾ!!?」
すっぽりタオルにくるまってしまったグリム。
うん…なんか可愛いな。
そういえば、ウチ猫派なんだよね。
「…ねぇ、なんでそんなに学園に通いたいの?」
グリムの体を拭きながら、聞く。
「単純な話なんだゾ!オレ様は大魔法士になるべくして生を受けた天才だからなんだゾ!」
「おぉ、グリム様!」
そう囃し立てると、グリムは自分がどうやって此処に来たのかも事細かく教えてくれた。
まるで武勇伝のように語るものだから、原作を知っている身でありながら、可笑しくて笑った。
「に゛ゃッ!つめてっ!天井から雨漏りしてやがるんだゾ!」
ふと、グリムと話していると天井から雨粒が落ちてきた。
それは迷うことなくグリムの頭上へ落下する。
「せっかく拭いたのに…。」
一人と一匹で雨漏りに文句を言っていると、再び滴が天井から…。
「ふぎゃっ!また水が降ってきた!オレ様のチャームポイントの耳の炎が消えちまう~!」
小さな肉球のついた手でグリムが自身の耳の炎を守る。
毛繕いみたいで可愛いなぁ、なんて思いながらもバケツを探すべくしゃがんでいた腰を上げる。
「バケツあるかな…」
ウロウロと談話室内を彷徨う。
動く度に蜘蛛の巣が足に絡みつく。
ほこりなのか砂なのか、よくわからない物を足の裏に感じながらバケツを探す…。
が、ちょっとしか無い。
「なんでバケツが無いの…」
まぁ長い間掃除してないならしょうがないのか?
少ないバケツを雨漏りしている所に置く。
「こんな雨漏り、魔法でパパーっと直しちまえばいいんだゾ。……って、オマエ魔法使えねえのか。ププーッ!使えねえヤツだゾ!」
ウチを指さしながらケラケラと笑い転げるグリムに、若干殺意を覚える。
まぁ、ウチ優しいので!!
「はいはい、小さな大魔法士さま。」
小さな毛玉が視界の端で弾むのを見ながら、ウチは再びバケツ探しの旅に出たのだった。