season1
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許せない………。
ノエルの悲痛な叫びが俺の耳にはっきりと聞こえる。
「…………た…す……けて……」
ラッセル・バロウズ………シビラ・ベッカー………。
「これは申し訳ない事をしました。すでに死亡されていると思ったのですが。
そのままでは苦しいでしょうに…今、楽にして差し上げましょう。」
シビラが一歩踏み出すと同時に俺はすかさずノエルの元に駆け寄り、シビラの前に立ち塞がる。
シビラが珍しく驚いたような表情になる。
悪魔さんは勿論、突然現れた人間に目を丸くした。
「…ナマエ様、何故ですか…!」
シビラが眉根を寄せるが、今の俺にそんなことに構っていられるほど余裕はなかった。
一歩とシビラが近付く。
『来るな!!来たら殺す!!』
俺は怒りで真っ赤になった視界でシビラを睨んだ。
しかし、それと同時に安心していた。
”人間”のシビラにこうまで言っておけば、何も出来ないだろうと油断していたのだ。
シビラは俺の言葉に顔を歪める。
その時だった。
ビリッ!!
『ガッ!!…』
体中に駆け巡る強い電流。
思わず俺は片膝をつく。
電流で痺れたのもあるが、なにより突然の強い衝撃に体が付いて行かなかったのだ。
俺が苦しんでいる隙に、シビラはすかさずノエルの元へ行き、
『や、やめ…ろっ…!!!』
電流により回らない口元。
麻痺で動かない体。
シビラはノエルの髪をぐわしっと掴むと、ビルの淵まで引き摺って行く。
ノエルが所々呻き声をあげる。
『やめっ…やめろぉおおおおお!!!!』
懸命に自分の体を動かした。
だが、俺の体は動かず、ノエルはビルの淵からぶらりと宙に浮いた。
「………どう………して……こんな……いったい……何が…」
やめろ…!
動かない腕に懸命に力を入れた。
ノエルの濁った瞳が見える。
「…ごきげんよう、ノエル様」
シビラの声が嫌に耳を突き刺さった。
「……や、やめ……!……たすけ」
ドボォン!
その瞬間、ノエルが海に投げ捨てられた。
『ノエル!!!』
びりびりと未だに麻痺し続ける体。
未だに腕すらあがらない。
いざとなった時に動けないようじゃ意味がないのに!!
頭の中はまるで酸欠にでもなったかのように真っ白で…、なにも考えられない。
ノエルが…
『……ざけんな…………ッふざけんな!!!』
殺してやる殺してやる!!!
シビラ・ベッカー!
俺の意識は殺意で満ちた。
ビキビキと音を立てる俺の体。
あぁ、この感覚は今でも慣れない。
でも、今はそんなことどうだっていい…。
『堕天!!』
体中に何かが駆け巡る感覚。
体が軽くなったようで、逆に不快感が俺を襲う。
「なッ!?堕天だと!?」
「……!?」
悪魔さんもシビラもどうやら堕天をした俺に驚いているようだ。
生半可な気持ちで、魔人を名乗ってはいない。
「……ほぉ…ナマエ様…やはり、市長が興味をお持ちした人間…いや…"獣使いの魔人"とでも言っておきましょうか…」
バロウズ。
その名前を聞くだけで反吐が出る!
『……うるさい!!!』
堕天によって身体能力が高まった。
もう、問題なく腕も足も動かせる。
俺はシビラへ飛びかかった。
ーーーーーー
*カロンside*
「待てっ!!落ち着け!」
今にもシビラを殺しかかりそうなコイツを押さえつける。
大悪魔の私が羽交い絞めにしている割に、コイツは暴れまわって勢いを失う素振りを見せない。押さえつけている此方も殺す勢いだ。
『離せ!!よくもっノエルをッッ!殺してやる!殺してやる!!!!』
男の周りからたくさんの魔方陣が現れ、その中から動物の唸り声がする。
マズイな…このままだとこのビルどころか…。
「チッ…」
ドスッ
男の首に手刀を落とす。
止むおえなかった。
『ガハッ……!?』
男は一度唸り声をあげると、ガクリと糸が切れた人形のように動かなくなる。意識を失うと同時に、男の体にあった堕天の痣もみるみる消えていく。
ずしりと重くなる右腕。
「市長にとって…私にとってもナマエ様はとても興味深い存在です。ではカロン様、お疲れ様でした。もしまた召喚させていただくことがあるなら、なにとぞ…」
相変わらずの涼しい顔でシビラ・ベッカーがそう告げる。
「お前も、ラッセルも……あまり悪魔をなめていると痛い目にあうぞ。」
「……ご忠告、ありがとうございます」
そう言い、帰っていくシビラ・ベッカー。
どうやら私の忠告を聞く気が無いのだろう。
白々しい女の態度に、募っていく怒り。
いや、一旦落ち着け…。
まずは、コイツとさっきの小娘を安全な場所に運ばなければな…。
まさか……堕天が出来るとはな………
先ほど暴れていた人間とは思えない程、大人しく眠っている。
そのまま肩に担ごうと動いた時、男のフードがずり落ちた。
「…っ!」
それは決して"男"とは呼べない、端麗な顔立ちだった。
長い間凍り付いていた心臓が大きく脈打ったのを感じる。
いやいや、いくらなんでも男にこんな感情を抱くような趣味は持ち合わせていない。
「それにしても…コイツ…女らしい顔つきをしているな…」
無意識に手が伸び、男の頰を撫でる。
「ッ!?何をしているんだ私は!」
頬を撫でていた手を引っ込める。
さっさと小娘を回収するか…。
先ほどから、心臓の鼓動が止まらないのは…
きっと気のせいだと思いたい。