season1
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『ピアノコンクールの会場ってどこだっけ?』
華の16歳。
ナマエ・レビール。
現在「いっけなぁ~い!遅刻遅刻!」状態である。
いや、今はそんなのどうでもいい!
自身のボケに自分でツッコンでいるが、今の俺は余裕がない。
ダラダラと顔を伝う汗。
目の前をことごとく邪魔してくるフード。
しゃらくせー!
そう思い、フードを頭から引き剥がし、右手で顔を汗を乱暴に拭った。
そう、俺はかれこれ約15分程ラプラス市内を走っているが、どうも会場らしきところを見つけられないでいた。
急がないとノエルとジリアンの演奏が終わっちゃう!
二人の悲しげな顔を思追い浮かべ、俺は更にスピードを上げた。
光のごとくラプラス市の周りを回っているとそれらしき建物がやっと見えた。
『あったよ!!!ふぅ…。』
キキィーッと急ブレーキを掛け、俺は目の前の豪勢な建物を見上げた。
15分のマラソンを経て、心臓が痛く脈打つ。
もう一度汗を右手で拭い、肩で息をする中、建物の中へと歩を進めた。
『あ…でも演奏中かも。…静かに入ろ…。』
スゥーっと大きく息を吐き、逸る鼓動を収めた。
息切れの音さえ忍ばせ、今度こそ会場へと歩き出した。
そろーり…
ゆっくり扉に手を掛ける…。
その時だった…。
「やぁ…」
『ングッ…?!!!』
後ろから声を掛けられた。
いきなりのことだったのと声の主がある人物だと分かった事の相乗効果で、俺はカエルが潰れたような声を上げた。
これでも声を抑えた俺を褒めてほしい。
じろりと後ろへ首を向ける。
案の定、知っている…いや、会いたくない人物だった。
市長、もといラッセル・バロウズ…。
俺は、コイツ嫌いだ。
今にも白目を剥きそうなほどの嫌悪。
それを隠そうとしないのは、隠す気がないからである。
安っぽい笑顔を貼り付け、バロウズは俺へと更に話しかける。
俺の嫌悪の表情に気を留めず。
「君もピアノコンクールを観に来たのかい?」
傍から見れば、貧乏人の俺に特注スーツの市長が優しく話しかけているという構成。
しかし、その貧乏人は嫌がってるんです!!
もう、話しかけないで!!
俺はテメェの声じゃなくてピアノ聞きに来たんだよォ!!
なんて心の中で憤慨した。
しかし、それを今口にしようがしまいがコイツの話は終わらなさそうだ。
そう考えた俺はさっきまでの嫌悪の表情を“無”へと変え、
『ハイそうです、サヨウナラっ!』
と、早口かつ足早にバロウズの元から去った。
逃げた訳ではない。
とにかく急ごう。
二人と約束したし!
「ナマエ・レビール…彼…いや、彼女は実に興味深い…」
ようやく会場へと入れた俺は、ホールの観客に紛れて演奏を聞く。
ちなみに今はジリアン。
ポロロン…と美しい旋律を奏でるジリアンに俺は感嘆の息を漏らさずにはいられなかった。
ほぇー…。
昔より上達してる!
我が子を思う親のような感情が溢れ出てくる。
パチパチ_____
拍手が会場に響く。
俺もその拍手を送っている一人だ。
ジリアンがペコリとお辞儀をし、舞台袖へと消えていく。
次は…、どうやらノエルらしい。
楽しみだな!
ウキウキと心を躍らせながら、舞台を見つめる。
俺の心を読んだのかと思う程のベストタイミングでノエルが舞台袖から顔を出した。
コツコツ…、優雅なヒールの音。
白鳥のような美しい佇まい。
会場の誰もが、今この瞬間「式典奏者はノエルだ。」と確信したに違いない。
それ程、ノエルの雰囲気は他の奏者とは格が違った。
ポロン…
柔らかなピアノの音が会場に響く。
1音目からすでに素晴らしいものだった。
まるでピアノ自身がノエルに語りかけるように、そしてノエルもピアノに身を委ねるように。
互いが協力しあって一つの曲になる。
やっぱり上手いな…。
ジリアンも上手だったけど、ノエルは他の奏者と比べ物にならないくらい…。
あまりにも美しいに音色に鳥肌がたった。
ピアノを嗜んでいる者も、そうでない者も「次の式典奏者はノエルだ」誰もが、そう思ったと思う…。
最後の音が完全に空気に溶けて、聞こえなくなるまで観客は誰一人音を立てることは無かった。
その静寂を破ったのは紛れもなくノエル本人で、観客は割れんばかりの拍手を送った。
俺も大きく拍手を送る。
ノエルの賞賛の言葉が飛び交う中、行われた授賞式。
奏者たちがステージの上で緊張した面持ちで佇んでいる。
スーツに身を包んだ司会者がマイクの前に立つと、ジリアンは緊張した面持ちになった。
ノエルは何ともなさそうな顔をしている。
それもそうだ。
確かにジリアンの演奏も素晴らしいものだった。
だけど、ノエルが比較対象となると言葉が詰まる。
彼女の演奏は間違いなく誰よりも優れていると言わざる負えない物だったからだ。
俺は壁にもたれかかった状態で司会者の言葉を待った。
「今年の最優秀奏者…そして名誉ある式典奏者に選ばれたのは…」
誰もが息を呑んだ。
「ジリアン・リットナーさんです!おめでとうございます!」
「わぁ、ホ、ホントに………!?」
あまりの衝撃に会場の観客たちは拍手を忘れた。
勿論、俺もそのうちの一人。
急いで拍手をすると、周りの観客たちも俺に続いて拍手を送った。
「………⁉」
ノエルは相当驚いているようだった。
ノエルを心配する気持ちとジリアンが式典奏者になったことの嬉しさ、半々が俺の脳内を占拠してなんだか変な感じだ。
俺からしても意外だ。
俺はてっきりノエルが選ばれるものだと確信していたのだから。
でも…。
『ジリアンおめでとう!』
ステージから降りたジリアンに俺は拍手で迎えた。
ジリアンが選ばれたことは素直に嬉しい。
「ありがとう、ナマエ!」
ジリアンは大きな瞳を細め、笑った。
本当に嬉しそうだった。
「………」
ジリアンの後に降りてきたノエルは未だ結果が信じられないような、放心した状態だった。
そんなノエルに声を掛けようとしたところで、何を言えばいいのか。
俺には分からなかった。
その後…ジリアンは市長と話をしに行ってしまった。
やっぱ俺、市長嫌い。
だって俺とジリアンが喋ってる時に来るんだもん!
いいもん!
俺にはノエルがいるし!
そう思ってノエルを探す…。
しかし、どこにもノエルの姿は見当たらなかった。
ホール内を歩き回って暫くした時、市長と話し終えたジリアンが目に入った。
そこに赤いドレスを纏ったノエルが近付く。
『あ!いた!ノエ…』
パリーンッ
俺が二人に近付いた瞬間、グラスの割れる音が鳴った。
会場内が静寂する中、ノエルの叫び声だけが痛く響いた。
「だから今どんな気持ちだ、と笑いたいのでしょう!?
ノエルクェッティの娘が無様な姿を晒す、今!それを見て優越感に浸りたいのでしょう!?」
「ち、ちょっとノエル。僕はそんなつもりで言ったんじゃ…」
ノエルの訴えに、ジリアンは必死に弁解する。
しかし、そんなジリアンの言葉は意味を成さず…。
「……っ失礼しますわ!」
ノエルは足早に会場を出て行ってしまった。
『ノエル!!』
俺は横を過ぎ去るノエルを呼び止めるが、まるで俺の声が届いていないかのようにホールを飛び出してしまった。
ジリアンは唖然と立ち竦んでいた。
俺はそっとジリアンに近付く。
『ジリアン…』
俺が声を掛けると、ジリアンは懇願するような瞳で見上げる。
そして泣きすがるような声で俺に言った。
「ナマエ!僕…どうすれば?」
あまりにも悲痛な声。
俺はジリアンの手をがっしりと握った。
『俺がノエルを探してくる!』
俺はジリアンの瞳を力強く見つめ返すと、フードをかぶりホールを飛び出した。
待ってて、ノエル。
すぐに行くから!
華の16歳。
ナマエ・レビール。
現在「いっけなぁ~い!遅刻遅刻!」状態である。
いや、今はそんなのどうでもいい!
自身のボケに自分でツッコンでいるが、今の俺は余裕がない。
ダラダラと顔を伝う汗。
目の前をことごとく邪魔してくるフード。
しゃらくせー!
そう思い、フードを頭から引き剥がし、右手で顔を汗を乱暴に拭った。
そう、俺はかれこれ約15分程ラプラス市内を走っているが、どうも会場らしきところを見つけられないでいた。
急がないとノエルとジリアンの演奏が終わっちゃう!
二人の悲しげな顔を思追い浮かべ、俺は更にスピードを上げた。
光のごとくラプラス市の周りを回っているとそれらしき建物がやっと見えた。
『あったよ!!!ふぅ…。』
キキィーッと急ブレーキを掛け、俺は目の前の豪勢な建物を見上げた。
15分のマラソンを経て、心臓が痛く脈打つ。
もう一度汗を右手で拭い、肩で息をする中、建物の中へと歩を進めた。
『あ…でも演奏中かも。…静かに入ろ…。』
スゥーっと大きく息を吐き、逸る鼓動を収めた。
息切れの音さえ忍ばせ、今度こそ会場へと歩き出した。
そろーり…
ゆっくり扉に手を掛ける…。
その時だった…。
「やぁ…」
『ングッ…?!!!』
後ろから声を掛けられた。
いきなりのことだったのと声の主がある人物だと分かった事の相乗効果で、俺はカエルが潰れたような声を上げた。
これでも声を抑えた俺を褒めてほしい。
じろりと後ろへ首を向ける。
案の定、知っている…いや、会いたくない人物だった。
市長、もといラッセル・バロウズ…。
俺は、コイツ嫌いだ。
今にも白目を剥きそうなほどの嫌悪。
それを隠そうとしないのは、隠す気がないからである。
安っぽい笑顔を貼り付け、バロウズは俺へと更に話しかける。
俺の嫌悪の表情に気を留めず。
「君もピアノコンクールを観に来たのかい?」
傍から見れば、貧乏人の俺に特注スーツの市長が優しく話しかけているという構成。
しかし、その貧乏人は嫌がってるんです!!
もう、話しかけないで!!
俺はテメェの声じゃなくてピアノ聞きに来たんだよォ!!
なんて心の中で憤慨した。
しかし、それを今口にしようがしまいがコイツの話は終わらなさそうだ。
そう考えた俺はさっきまでの嫌悪の表情を“無”へと変え、
『ハイそうです、サヨウナラっ!』
と、早口かつ足早にバロウズの元から去った。
逃げた訳ではない。
とにかく急ごう。
二人と約束したし!
「ナマエ・レビール…彼…いや、彼女は実に興味深い…」
ようやく会場へと入れた俺は、ホールの観客に紛れて演奏を聞く。
ちなみに今はジリアン。
ポロロン…と美しい旋律を奏でるジリアンに俺は感嘆の息を漏らさずにはいられなかった。
ほぇー…。
昔より上達してる!
我が子を思う親のような感情が溢れ出てくる。
パチパチ_____
拍手が会場に響く。
俺もその拍手を送っている一人だ。
ジリアンがペコリとお辞儀をし、舞台袖へと消えていく。
次は…、どうやらノエルらしい。
楽しみだな!
ウキウキと心を躍らせながら、舞台を見つめる。
俺の心を読んだのかと思う程のベストタイミングでノエルが舞台袖から顔を出した。
コツコツ…、優雅なヒールの音。
白鳥のような美しい佇まい。
会場の誰もが、今この瞬間「式典奏者はノエルだ。」と確信したに違いない。
それ程、ノエルの雰囲気は他の奏者とは格が違った。
ポロン…
柔らかなピアノの音が会場に響く。
1音目からすでに素晴らしいものだった。
まるでピアノ自身がノエルに語りかけるように、そしてノエルもピアノに身を委ねるように。
互いが協力しあって一つの曲になる。
やっぱり上手いな…。
ジリアンも上手だったけど、ノエルは他の奏者と比べ物にならないくらい…。
あまりにも美しいに音色に鳥肌がたった。
ピアノを嗜んでいる者も、そうでない者も「次の式典奏者はノエルだ」誰もが、そう思ったと思う…。
最後の音が完全に空気に溶けて、聞こえなくなるまで観客は誰一人音を立てることは無かった。
その静寂を破ったのは紛れもなくノエル本人で、観客は割れんばかりの拍手を送った。
俺も大きく拍手を送る。
ノエルの賞賛の言葉が飛び交う中、行われた授賞式。
奏者たちがステージの上で緊張した面持ちで佇んでいる。
スーツに身を包んだ司会者がマイクの前に立つと、ジリアンは緊張した面持ちになった。
ノエルは何ともなさそうな顔をしている。
それもそうだ。
確かにジリアンの演奏も素晴らしいものだった。
だけど、ノエルが比較対象となると言葉が詰まる。
彼女の演奏は間違いなく誰よりも優れていると言わざる負えない物だったからだ。
俺は壁にもたれかかった状態で司会者の言葉を待った。
「今年の最優秀奏者…そして名誉ある式典奏者に選ばれたのは…」
誰もが息を呑んだ。
「ジリアン・リットナーさんです!おめでとうございます!」
「わぁ、ホ、ホントに………!?」
あまりの衝撃に会場の観客たちは拍手を忘れた。
勿論、俺もそのうちの一人。
急いで拍手をすると、周りの観客たちも俺に続いて拍手を送った。
「………⁉」
ノエルは相当驚いているようだった。
ノエルを心配する気持ちとジリアンが式典奏者になったことの嬉しさ、半々が俺の脳内を占拠してなんだか変な感じだ。
俺からしても意外だ。
俺はてっきりノエルが選ばれるものだと確信していたのだから。
でも…。
『ジリアンおめでとう!』
ステージから降りたジリアンに俺は拍手で迎えた。
ジリアンが選ばれたことは素直に嬉しい。
「ありがとう、ナマエ!」
ジリアンは大きな瞳を細め、笑った。
本当に嬉しそうだった。
「………」
ジリアンの後に降りてきたノエルは未だ結果が信じられないような、放心した状態だった。
そんなノエルに声を掛けようとしたところで、何を言えばいいのか。
俺には分からなかった。
その後…ジリアンは市長と話をしに行ってしまった。
やっぱ俺、市長嫌い。
だって俺とジリアンが喋ってる時に来るんだもん!
いいもん!
俺にはノエルがいるし!
そう思ってノエルを探す…。
しかし、どこにもノエルの姿は見当たらなかった。
ホール内を歩き回って暫くした時、市長と話し終えたジリアンが目に入った。
そこに赤いドレスを纏ったノエルが近付く。
『あ!いた!ノエ…』
パリーンッ
俺が二人に近付いた瞬間、グラスの割れる音が鳴った。
会場内が静寂する中、ノエルの叫び声だけが痛く響いた。
「だから今どんな気持ちだ、と笑いたいのでしょう!?
ノエルクェッティの娘が無様な姿を晒す、今!それを見て優越感に浸りたいのでしょう!?」
「ち、ちょっとノエル。僕はそんなつもりで言ったんじゃ…」
ノエルの訴えに、ジリアンは必死に弁解する。
しかし、そんなジリアンの言葉は意味を成さず…。
「……っ失礼しますわ!」
ノエルは足早に会場を出て行ってしまった。
『ノエル!!』
俺は横を過ぎ去るノエルを呼び止めるが、まるで俺の声が届いていないかのようにホールを飛び出してしまった。
ジリアンは唖然と立ち竦んでいた。
俺はそっとジリアンに近付く。
『ジリアン…』
俺が声を掛けると、ジリアンは懇願するような瞳で見上げる。
そして泣きすがるような声で俺に言った。
「ナマエ!僕…どうすれば?」
あまりにも悲痛な声。
俺はジリアンの手をがっしりと握った。
『俺がノエルを探してくる!』
俺はジリアンの瞳を力強く見つめ返すと、フードをかぶりホールを飛び出した。
待ってて、ノエル。
すぐに行くから!