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雨の夢

「結先輩………」
「………っひ、ぁ…」
雷が鳴り響く中、俺の胸のなかで結先輩が怖がっている。
髪に隠れて表情はよく見えないが、ぶるぶる震えているのが痛いほど伝わってくる。

……俺はどうすれば…っ

あやすように結先輩を優しく抱きしめて髪をなでて肩や背中をさすって……いつもと同じ事をゆっくりと……時間をかけて、雷が収まるのを待つ。

どのくらい経ったのか…ようやく雷は収まってくれた。小雨の音になってきた。


「……森山くん。ごめんね」
俺の胸のなかで結先輩が強く抱きついている。
「大丈夫です、結先輩。雨も…雷も静かになりましたよ(笑)」
にかっと自然な笑みを浮かべたら、先程まで泣きそうな顔だった先輩が微笑み返してくれた。


「ありがとね。君がいてくれて助かったよ」
「そりゃあ、よかったです(笑)」
つられて照れてしまった。
結先輩がいつもの笑顔に戻った。……本当に…よかった…
「……なにかお礼、できればいいんだけど…」
「いえっ大したことはしてないですよ(笑)」


「……終点。終わっちゃったね」
「…大丈夫ですよ。どっかで時間つぶしますから(笑)」
結先輩が何かを考え込んでいて、俺に背を向ける。
「結先輩?」
「……森山くん。少しの間、目をつぶってて」
「?…はい」
結先輩の言う通り、ためらいなく目をつぶっていたら、唇に柔らかい感触が。
………?…え……

瞼を開けたら結先輩の瞳と俺の瞳の色が重なっていた。



驚きすぎて瞬きすらせず固まって動けないでいると、唇に掠めるだけ触れていた結先輩の唇がゆっくり、離れていった。

「……ゆい、先輩……」
「…………」
悲しそうに視線をそむける結先輩。

なにか言わないと……言葉を探していたら先に先輩が口を開いた。

「……ごめんね。やっぱり……気持ち、悪いよね……」
「?!え…あの……どういう…」
「私はもう汚れてるから………気持ち、悪いよね。……変なこと、しちゃって………本当にごめん、ね」

雨でも雷でも泣かなかった結先輩から涙がこぼれる。
気づいたら強く抱きしめて押し倒していた。


俺に抱きつかれた状態のまま、床からキョトンとした表情の結先輩。

「ちが、う…!結先輩…!!」
「…?…」
「聞いてください。……俺は結先輩が好きです」
「……森山、くん」
「最初は貴方に憧れて……っ…、志望校を変えたんだ」
「……前にも、言ってたね…。……申し訳ないことをしちゃったね…」
「っ!違います…!俺がやりたくてこの学科に入ったんです…!結先輩と出会えて……!俺は本当に…嬉しいんだ!!」
「…………」
「…だから…、……キス、とっても嬉しかったです…!」
「……」
「結先輩と出会ってから楽しい事が連続でっ…!上手く言えないけど俺にとってすごく充実した時間なんです」
「……」
頬にそっと手を添えて、精一杯の笑みを浮かべる
「水くさいじゃないですか(笑)もっと俺にも沢山頼ってくださいよ!
………俺、結先輩に頼りっぱなしなんだから(笑)」
「……………あり、がと」

涙ぐみながら困ったような表情をしているが、微笑んでいる結先輩。
「私も………君のことが好きだよ」
頬に手をのばして、そっとさすってくれている。
「……っ…結先輩…!」
「私は幸せ者だな(笑)……君と出会えて本当によかったよ」





続く…?










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