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水晶の森4

「笠松、そのネックレスどうしたんだ?」
「な、なんでもねぇ…」
「そうなんだ~、珍しいなと思ってさ(笑)」
自分の事のように嬉しそうな小堀。頬を緩めてニコニコしている。俺はコイツのこの表情に弱い。
「とっても良く似合うね。触ってもいい?」
「ああ」
「…これ、石か?冷たくて面が光ってる。…綺麗な青だな。海常にいた頃を思い出すよ(笑)」
「人工水晶だってよ。天然の水晶を原料にしてて青色をつけて再結晶化したそうだ」
「…へえ、そうなんだ。……笠松、石に詳しかったっけ(笑)」
「!!お、教えてもらったんだ!」
「……このネックレスをくれた人に?」
「……なんで分かんだよ(苦笑)」
「だって、笠松とっても嬉しそうな顔をしてるぞ(笑)……まるで恋をしてるみたいだな」
「!!ち、ちげーよ!結先輩とはそんなんじゃない!!」
「ゆい先輩…っていうのか(笑)よかったな、笠松♪」
いつもより強く髪をワシャワシャ撫でられる。
「ガキ扱いすんな!小堀てめー!シバくぞっ」
「はいはい(笑)でも運動の時は外した方がいいぞ」
「わ、わかってら!」


大事そうにネックレスをつけちゃって……よっぽどお気に入りなんだな(笑)

笠松とは学科は違うが同じ大学で勉強している。毎日、ではないが時間が合えばお互い授業の事などで話している。
ある日から笠松が大事そうにネックレスをつけて大学に来ている。普段ぶっちょ面の笠松が……穏やかで嬉しそうな生き生きした表情だ。

ちょっと前に森山から興味深いLINEが来たっけ。
『小堀~!笠松に女の子を紹介するぞ!』
『え?笠松倒れるぞ(苦笑)』
『大丈夫!俺の友達だから♪』
『え?お前に女子の友達?!!』
『俺の尊敬する先輩だ!』
『大丈夫か…?』
『楽しみにしてろよ♪』

笠松に女の子を紹介することにも驚いたけど、……それと森山…お前に女の子の友達が出来たのか?!!
いやいや、海常でもナンパでも毎回口説いては振られての繰り返しだったじゃないか…。一体どうしたんだ。
森山と友達になったその女の子の先輩とは一体どんな人なんだ……?会ってみたいと強く思った。




結先輩と出会ってから早2週間。
慣れない大学生活をこなしながら時間があっという間に過ぎていった。
あれ以来森山から連絡はない。あいつも勉強に忙しいんだろうな。
結先輩のネックレスに触れながら考えごとをするのが癖になっていた。
……結先輩、元気かな。また会いてぇな。
しかし突然行ったら迷惑がかかるだろう。
仕方なく森山にLINEをした。

『笠松~待ってたぞ♪』
『シバく』
『ええ~(笑)怖いよお~笠松くんったら♪』
『お前の大学行きてぇんだけど、いつだったら空いてる?』
『明日空いてるぞ♪』
『即答だなオイ』
『結先輩は明日も1日加工してるぞ。明るい時間帯なら大丈夫だ』
『別に結先輩に会いに行くわけじゃねぇ』
『はいはい♪じゃ俺に会いに来てくれよ♪また明日~』




「笠松、早かったな(笑)」
「おめーもな」
「さっ、結先輩のとこに行くぞ~」
「ち、ちげーよ!!べ、別に……」
「じゃあその可愛い袋の手荷物はなんだ?笠松~(笑)」
「!うるせー!これはこの前の礼だっ!」
「ひどいな~♪由孝くん泣いちゃうぞ(笑)」

そうこう言い合っているうちに工芸学科の前に着いた。
管理棟の名簿に名前を記入して建物の中に入る。

「あれ~?森山君、お友達と一緒?」
「赤くなっちゃってカワイイ♪」
「先輩方、今日もお疲れさまです!休憩になったら俺とお茶でもど…」
「え~?忙しいからパス~(笑)」
「ええ~(笑)じゃあまた差し入れ持ってきますね♪」
「ありがと~♪森山君の差し入れ美味しいから大好き~♪」
「同じく~(笑)」
「ええ~(涙)そこは本人が好きだと言ってほしいなあ~♪え?おい、笠松~っ!じゃあ先輩方、また後程~っ」

「えーっと、笠松、大丈夫?」
「……シバく」
「ぐったりしてるなぁ(笑)ごめんごめんって。先輩方に俺からの愛を込めて、特製お菓子を作っているんだ♪」
「は?お前料理なんか出来たっけ?」
「今練習中だけどメキメキ上達してるぞ♪」
森山はそう言ってウェットティッシュで手を拭き、タッパーのお菓子を俺の口に放り込む。
「………美味ぇな」
「はっは!そうだろ笠松~!俺の自信作だ♪」
「…森山のくせになんかムカつく」


「ここだよ笠松」
コンコン
「結先輩~!失礼しまーす!」

「森山くんいらっしゃい。今日も早いね………お、笠松くん。よく来たね」
「こ、こんにちは…!結先輩」
無邪気に笑っている結先輩に迎えられて、さっきまでの緊張が徐々に解けていった。また会えて嬉しい。本当によかった。

「結先輩~!今日も可愛いですね♪俺とこれからお茶で…」
「森山あああ!」
結先輩に抱きつこうとしてたので思わずシバいていた。



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