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運命の職人さん2

大きいお腹の音にもびっくりしたけど、顔が緑…?!絵具なのか?それとも罰ゲームか?!

使い込んである運動靴にエメラルドグリーンのツナギを着ている女の子と目が合った。
そのままだと顔が大変だと思い、慌ててハンカチを差し出した。よかった…!受け取ってくれて。
可愛い……かな?うーん、個性的…?脳内で言葉を探していたら、強風で桜の花びらが女の子の肩やボサボサの髪に降りかかる。
「桜、きれいだね。見れてよかったよ」
花びらを集めて嬉しそうな満面の笑みを見て、何か胸が熱くなった。
「可愛いっ!俺と付き合ってください!」
思わず反射的に出てしまった。俺にはこの大学に運命の人がいるのに…!しかし女の子は特に驚く様子もなく、
「私もお腹がペコペコなんだ(笑)一緒にお昼でもどうかな?」
「え、あの…」
恥ずかしながら女の子と食事をして事が殆どないんだ。嬉しさと同時に困っていたら
「…失礼。いきなり初対面の人間と食事は気になるよね(笑)これ、お昼代に」
俺が上手く答えられずに困惑していたら、ツナギのポケットから500円玉を手渡された。手が触れたらヒンヤリしてた。気持ちいい。
「う、受け取れません!」
「?さっきのハンカチのお礼だよ」
「ハンカチ、ありがとね」
女の子は俺の様子を特に気にすることなく早足で歩いていく。
「あ!待ってください!」


緑色のツナギだから遠目からでも発見できてよかった。
桜の全身が見えるガラス張りの窓側の席に座るのを見かけて、慌てて後を追いかけた。
「あれ?君はさっきの……そんなに慌ててどうしたんだ?」
「これ……ありがとうございます。大した事してないので受け取れません」
「……わざわざ届けに来てくれたのか。ごめんね、気を遣わせてしまって」
「大丈夫です!…それより、その、顔が…」
「ああ、加工室に戻ったら少しは落ちるかな。でもお風呂に入らないと取れないんだ(笑)」
「が、頑固汚れなんですね(苦笑)」
「ああ。磨き粉は厄介でね(苦笑)…よかったら座る?」
「あ、はい」
「お昼まだかな?ちょっと待っててね」
俺が何か言う前に女の子は食券売り場の方へ消えていく。
ああ、なにやってんだよ俺…!世の中の女の子と話した事が少ないもんだから…!ダメダメじゃないか…

木の机にうなだれながていたら、美味しそうな匂いが
「おまたせ」
二人分の山菜うどんが置かれる。
「うどんや山菜アレルギーはあるかな?」
「あ、いえっないです!きつねうどん好物なんです!」
「ははっそうか(笑)きつねじゃなくてごめんね。もし機会があったら頼んでみてね」
「いえっ!ありがとうございます!いただきます~!」
「いただきます」
ズルズルと軽快な音をたてて美味しそうに食べている女の子。よく味わってる仕草が可愛いな。もしかして山菜うどんが大好きなのかな?女の子ってパスタとかお洒落なものが好きだと思ってた。……渋いな(笑)

思えばこうして女の子とご飯なんて殆どなかったな。…海常にいた頃は笠松たちを誘ってナンパに繰り出していたけど、ことどとく失敗してたもんな(苦笑)卒業して少ししか経ってないのに…懐かしいな。
女の子は無言だが美味しそうにうどんを食べている。穏やかな優しい空気が流れていた。
ゆったりと回想にふけりつつ、俺も山菜うどんを食べていた。……あ!俺、ずっと無言だったよな?!え、どうしよ…!!なにかモテる会話をした方がいいのか?!沈んでいた顔を起こした
「あ、あのっ………あれ…いない!?」
女の子は消えていた。

「あ、名前っ!聞くの忘れてた~!!」


お盆の隅にメモらしきものが添えてあった
『お先に失礼するよ
 食器は返却口に戻してね

 口説きの成功を祈ってる』

え!?なんで俺が運命の子を探しているのを知っているんだ…!??



俺の名は森山由孝。
今年の2月13日に誕生日を迎えて晴れて18歳になった。海常を卒業してこの大学に入学を迎えるまで後1週間。試験会場で会ったこの大学に入学する運命の子を探していた。
校内のすれ違う女の子たちが皆運命の子に見えて、嬉しさで声をかけていた。

運命の子はどこにいるんだ…?

半々の思いで、緑ツナギの女の子が気になっていた。
また…会いたいな…今度会ったら……貴方の名前を教えてください
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