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運命の職人さん3

入学式当日。
俺は試験会場で出会った運命の子を探していた。
いくら探しても見当たらない…!!嫌な予感がする…まさか…っ違う大学に入学、してしまった、とか…………
がーん……頭が遠くなった。名前すら知らないんだもんなぁ(涙)
ううう、あの子は俺の運命の人ではなかったのか…?!……うう、仕方がない、諦めよう…

落ち込んでフラフラしながらまるで酔っぱらいの如く歩いていたら、見覚えのある顔に声をかけられた。
「……あの、具合でも悪いですか?」
「え?か、笠松っ?!!お前どうして?大学別だったよな?!」
驚きのあまり、作業着姿の笠松をつかみかかった。……ん?作業着…?

「痛いです(苦笑)…それと人違いじゃないかと」
「え?笠松……じゃないの?」
顔と声色はほぼ同じだが背がちょっと低い…かな?172くらい…か?確かに笠松は背が小さかったけど(アイツが聞いたらシバかれそうだ)ここまで小っさくないよな(笑)
「あ、ごめんね。友達によく似てて…」
「いえ、大丈夫です。…具合は大丈夫ですか?」
「ああ!もう大丈夫!次の出会いに挑戦するさ!」
「…出会い…?」
一瞬キョトンとしていたが、さほど気にしていないのだろう。笠松によく似た男子はチラシの束を整えている。

「えっと、君も新入生?お花がついてる…」
「はい。…挨拶が遅れました。笠原小幸と申します」
「…!俺も新入生!森山由孝っていうんだ。よろしく!」
少し照れたような、はにかんだ表情で握手をし返してくれた。笠松とは全然違うな(笑)
しかし名前もよく似てる。ドッペルゲンガー(?身長とか違うけど)……すごい偶然だ。


「…森山さん。これよかったら貰って頂けますか」
「ええと、サークルの案内……石部?」
「はい。僕は工芸学科に所属しています。…先輩の部活なんですけど……人数が少なめでして。もしよかったら登録だけでもしてもらえると嬉しいです」
「ふーん。鉱物研究の為に山登りをしたり、宝石の鑑別、ミネラルショー(石の祭典)の参加や鉱物について語り合うのか…。理系は得意だけど難しそうだなあ(笑)」
「…いえ、検討してもらってありがとうございます」
笠原くんが礼儀正しく深々とお辞儀をしている。
「いや、いいって(笑)俺さ、数学科なんだけど同じ学科で興味ありそうなやつがいたら誘っとくよ」
「…!いいんですか。森山さん、ありがとうございます」
「なんだか照れるな(笑)森山でいいって!笠松………笠原」
「…!ありがとうございます。森山さん(笑)」

呼びすてでいいよ~と笑いながら笠原の肩をバンバン叩いていたら、女子の声が…!!
「笠原君~新入部員見つかったぁ~?」
ギャルらしき見た目の派手な女の子…先輩が……
うう、俺はチャラすぎる子は苦手なんだ(涙)
「その人新入部員?可愛い~♪」
「え、ええと……俺はチラシもらっただけで…」
「ねぇ~折角だから話だけでも聞いてってよお~」
困っていたら助け船が
「先輩……、彼は石部には興味がないそうですので。さっき何人か新入生から入部希望の申し込みがありましたので大丈夫です」
「ああ、そうなんだぁ~(笑)よかった♪じゃあ校舎に戻ろっか~」
「僕も後から行きます」

ギャル風の先輩がさささっと消えていく。ホッとしてその場にへたりこんだ。
「ああ~!笠原~助かったよ(涙)…俺、チャラすぎる女の子が苦手でさ~」
「……あの先輩はそんなにチャラい…?感じではないですけど(苦笑)」
笠原の見た目が笠松にそっくり過ぎるもんだから、色々と突っ込みどころが満載で……笑ったりビックリしたり感涙したり………俺の脳内が忙しい

手を差しのべてくれた笠原が名残惜しそうに呟く
「森山さん、また会えたらいいですね」

…?……ちょっとした違和感?デシャブを思い出す


『また会えたらいいね』
緑色のツナギの女の子もそう言ってたなぁ……
顔に緑色がついてて気になってる女の子……
なんてこった!気になってたけど今の今までぼやけてた…!!

ダメもとで笠原に聞いてみる
「なあ笠原、石部にさ……緑の顔をした緑色のツナギを着ている女の子っているかな?」
それまで平静だった笠原が驚いた顔をしている
「……女の子……先輩なら知ってます」


人違いかもしれませんが(苦笑)
笠原と工芸学科の敷地内に入る
「あ!ここ前に通った!女の子と出会った場所だ!」
「工芸学科第5棟……通称、水晶の森、と呼ばれています。………結先輩の事だよなぁ…」
笠原が囁くように呟いているのを聞き逃さなかった
「ゆい先輩っていうのか?」
「はい。僕の………学校の先輩でした」


加工室の窓からそっと伺うと、青いツナギを着た女の子が中で作業をしている。けたたましい音が鳴り響いている中、ゴーグルをつけて何かを切断しているようだ。
「……あの人だ…!」
「オリエンテーションの石を切っている最中ですね」
「しかし凄い音だぞ!危なくないのか?!」
「怪我をしないように慎重に作業をしてるので大丈夫です」

ふと、音が止む。
結先輩と目があった。
「…………口説きの子…?」
ゴーグル越しから嬉しそうに微笑んでいる
驚いてて口が開けっぱなしの俺

「いらっしゃい。よく来たね」
「あ、…こ、こんにちは…!」
「…結先輩、森山さんを知っているんですね」
流水で手を洗いながら結先輩が嬉しそうに笑っている
「ああ。ちょっと前にね。おもしろい子だなぁって(笑)」
「あ、あの…っ!また会えて嬉しいです!!」
少し緊張しながら背筋をピンとまっすぐ伸ばす。
「ありがとね。私もまた会えて嬉しいよ、森山くん(笑)」
結先輩の飾り気のない無邪気な笑みにつられて、自然と俺もつられて笑っていた


「……すみません、僕お邪魔ですね(苦笑)」
「小幸くん、そろそろ時間だったかな?」
「……名字で呼んで頂けたら有り難いです」
「ははっ、ごめん。ついクセで(笑)新入部員さん、来そうかな?」
「4名は確実に大丈夫です」
「そうなんだ…!ありがとね、笠原くん。助かったよ(笑)」
「いえ。それでは後程」



「笠原っ!ありがとう!俺も石部に入る!!」
「…!森山さん、大丈夫ですか…予定、とか…」
「大丈夫!結先輩ともう一度出会えたのも運命だ!!」
必ずこの恋を成就させてみせる!!と自信たっぷりに言ってる俺をよそに、何か言いたそうな複雑な顔をしている笠原と一緒に石部の部室まで向かっていく。



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