運命の職人さん
桜の花びらと磨き終わった水晶がくっついた。
校舎のどこからか飛んできたのだろう。こんな奥まで来るなんて…外は桜が咲いていたっけ?
そういえば今年はじっくり見てなかったなぁ。磨き続けて早4時間。そろそろ休憩がほしいな(笑)
よし、ちょっとお花見に行こうかな。
緑色に染まった両腕を綺麗に洗い落として、加工室を後にする。
「そこのお嬢さん!ああ、なんて可愛いんだ…君と出逢えたのも運命だ…!!是非俺と付き合ってください!」
「えっと…間に合ってます(苦笑)」
「ガーン!!う、うう。じゃあせめてお茶でも…」
「え、遠慮します…!さようならっ」
「ううう、またダメだったぁ…」
その男の子は落ち込んでいるようだ。桜の木の下でうなだれている。
青いブレザーに緑がかった青い髪。スラリした長身。制服のようだな。おそらく高校生か。オープンキャンパスと時期がずれているから、おそらく入学前に見学に来たのだろう。
数十秒程経った所で、今度は別の子に話しかけていた。
「そこのお嬢さん!俺と結婚を前提に付き合ってください!!」
「すみません、急いでいるんで(笑)」
「うう、またダメだったぁあ!!」
面白い子だな。
初対面であろう女の子たちを口説いているが、ことごとく失敗に終わっている。恋の事はよく分からないが、あの口説き文句がなければOKしてくれる女の子がいるのかもしれない。
ふとそんな事を頭の中で思いながら桜並木を歩いていたらほぼ同時にお腹の大きい鳴き声がふたつ
ぐうううううう!
「お腹すいたぁ(笑)」
「腹へったあ~!朝パンだけだったもんなぁ…」
…え?視線を横に向けたら1m横の人と目があった。さっきの口説き文句の男の子だった。
「…あ、失礼。お腹が減っててね(笑)」
笑いながら背中越しに手を振ったら、口説き文句の男の子はポカーンとしているようだ。
今日は一段と大きな音がなったもんだなぁ(笑)昔からお腹の音が大きいとよく言われたもんだ。しかし口説き文句の男の子と同時に鳴るなんてな。すごい偶然だ。
「ま、待ってください!」
「はい。私かな?」
「あ、あの……!」
口説き文句を言ってくるのだろうか?いや、それはないな。
「顔が緑になってます!!」
「……あ、そうか。ありがとね」
いつもの癖で仕上げの塗料が顔についたまま外に出てしまった。
「いえ……あ、そうだ。これ、どうぞ!」
白いハンカチを差し出してくれた。
「ありがとね。嬉しいけど、気持ちだけ貰っておくよ。この緑は色が落ちづらくてね(笑)」
「あ、大丈夫です!使ってください」
男の子はふわりと歯を見せて笑った。先程の芝居がかっていた微笑みとは違うような…
「君、可愛いね」
「え?」
「ああ、何でもないよ。これは頂くね。ありがとう」
校舎のどこからか飛んできたのだろう。こんな奥まで来るなんて…外は桜が咲いていたっけ?
そういえば今年はじっくり見てなかったなぁ。磨き続けて早4時間。そろそろ休憩がほしいな(笑)
よし、ちょっとお花見に行こうかな。
緑色に染まった両腕を綺麗に洗い落として、加工室を後にする。
「そこのお嬢さん!ああ、なんて可愛いんだ…君と出逢えたのも運命だ…!!是非俺と付き合ってください!」
「えっと…間に合ってます(苦笑)」
「ガーン!!う、うう。じゃあせめてお茶でも…」
「え、遠慮します…!さようならっ」
「ううう、またダメだったぁ…」
その男の子は落ち込んでいるようだ。桜の木の下でうなだれている。
青いブレザーに緑がかった青い髪。スラリした長身。制服のようだな。おそらく高校生か。オープンキャンパスと時期がずれているから、おそらく入学前に見学に来たのだろう。
数十秒程経った所で、今度は別の子に話しかけていた。
「そこのお嬢さん!俺と結婚を前提に付き合ってください!!」
「すみません、急いでいるんで(笑)」
「うう、またダメだったぁあ!!」
面白い子だな。
初対面であろう女の子たちを口説いているが、ことごとく失敗に終わっている。恋の事はよく分からないが、あの口説き文句がなければOKしてくれる女の子がいるのかもしれない。
ふとそんな事を頭の中で思いながら桜並木を歩いていたらほぼ同時にお腹の大きい鳴き声がふたつ
ぐうううううう!
「お腹すいたぁ(笑)」
「腹へったあ~!朝パンだけだったもんなぁ…」
…え?視線を横に向けたら1m横の人と目があった。さっきの口説き文句の男の子だった。
「…あ、失礼。お腹が減っててね(笑)」
笑いながら背中越しに手を振ったら、口説き文句の男の子はポカーンとしているようだ。
今日は一段と大きな音がなったもんだなぁ(笑)昔からお腹の音が大きいとよく言われたもんだ。しかし口説き文句の男の子と同時に鳴るなんてな。すごい偶然だ。
「ま、待ってください!」
「はい。私かな?」
「あ、あの……!」
口説き文句を言ってくるのだろうか?いや、それはないな。
「顔が緑になってます!!」
「……あ、そうか。ありがとね」
いつもの癖で仕上げの塗料が顔についたまま外に出てしまった。
「いえ……あ、そうだ。これ、どうぞ!」
白いハンカチを差し出してくれた。
「ありがとね。嬉しいけど、気持ちだけ貰っておくよ。この緑は色が落ちづらくてね(笑)」
「あ、大丈夫です!使ってください」
男の子はふわりと歯を見せて笑った。先程の芝居がかっていた微笑みとは違うような…
「君、可愛いね」
「え?」
「ああ、何でもないよ。これは頂くね。ありがとう」
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