100万打記念(旧サイト)

『バーカ!!』

「バカって言う方がバカなんですよー。」

『うっさいバカ!大っ嫌い!!』


小学生のような捨て台詞を吐いて、彼女は飛び出してしまった。

どうやらまた失敗。



「あーあ、コレ結構時間かかったのになー…」


床に散らばったムカデのおもちゃを拾い、ジーッと眺める。

思いだすのは、彼女の悲鳴とミーに駆け寄って来た時の怯え姿。


自分でも、歪んでるのは分かってる。

こんな風にきっかけを作らないと、まともに話しかけることすら出来ないのだから。





---『フラン助けて!じょうろの中にムカデがいっぱい…!』

---「あのー…抱きつかれたらミーも動けないんですけどー……」

---『あ、ご、ごめんっ!………って、何でちょっと笑ってんの…?』

---「そんなこと無いですよー。」

---『分かった!アレやったのフランね!!信じらんない!!』




怖がった姿が面白かったんじゃなくて、
ミーのトコに一番に来てくれたのが嬉しくて嬉しくて。

けど彼女はそれを勘違いして。

あーもー何で気付かないんですか、あの鈍感女。


いつもならすぐ探してあげるんですけど、今日は何か気分が乗らなくて後回しにした。





-----
---------


「ちょっとちょっと、フランちゃんっ!」

「どーしたんですかー?ルッスセンパイ。」



数時間後、ルッスセンパイがミーを呼び止めた。

異様に焦ってるなーと思って話を聞くと、彼女がミルフィオーレの下っ端の下っ端に捕まったとか。

うわ、何やってんだか。


「あの子、まだ幻術使いとしては見習いだし……」

「分かりましたー、行ってきます。」


気付いたら、走ってた。

ミーをこんなに走らせるなんて、後で覚えてろよ。



ポケットには、ヘルリング。

単身での潜入だったけど、何の問題もなかった。

だってミーには、師匠仕込みの幻術があるんですから。


「しっ、侵入者だ!!」

「何ぃ!?」

「あのー、ココにバカ女いませんかー?」

『フランっ…!?』

「あ、いた。」



軽い拷問でも受けたのか、頬が何度も叩かれたように赤くなっていて。


「それ、返してもらえません?ミーの大事な…」

「殺せ殺せぇ!!」

「……人の話は最後まで聞けよ。」

『フラン危ない!!』



匣を開けるまでもない。

簡単な幻術で一捻り。

けど、それだけじゃミーの苛立ちが収まらないんで……


「あ、あれは…!」

「ヘルリング!?」

「一生不幸に塗れる幻覚をかけてあげますー。」



幻に翻弄される敵の包囲網から、彼女を救うのは至極簡単だった。

足を捻ったとか言うもんで、おんぶする羽目に。

あーあ、最後の最後に力仕事かー…


『あの…ごめんね、フラン…』

「ホントですよー、あと100回謝って欲しいくらいですー。」

『あと……ありがとう。』



彼女は、ミーに抱きつく力を強めて。


『来てくれて、嬉しかった……本当にありがとう、フラン。』


照れ臭さを交えた表情で。



「……どーいたしましてー。」


こっちまで、照れ臭くなる。

これって…今言わなきゃダメな感じですかね…?



「あのー、」

『なに?』

「好きです。」





のリングが光る時

歪んだ愛情表現は、全部素直な気持ちに変わる




fin.
6/10ページ
スキ