100万打記念(旧サイト)
もし野球の神様ってのがいるなら、答えて欲しい。
あんなに一生懸命好きな野球に打ち込んでた武が…何か悪いことした?
貴方の機嫌を損ねましたか?
ずっとその背中を見て来た私には、今のこの状況は残酷過ぎた。
中学最後の大会、優勝したけど果たせなかった約束……
---「今度はきっと、お前のトコにホームラン打ってやるぜ!!」
---『ホント!?そんなこと出来るの!?』
---「あぁ、一番良く聞こえる声援だからなっ♪」
高校になればまた、野球に打ち込む武を見つめて、たまに笑いかけて貰って……
そんなごくごく普通の幼なじみコンビでいられると思ってたのに。
『どうしたの!?その怪我!』
「ん?あぁ、ちょっとミスっちまってな。大丈夫だから気にすんなよ、なっ!」
スポーツ万能な武が何をミスったのか、その内容は教えて貰えなかった。
いつも武の背中ばかり見ていた私は、武の瞳に何が映ってるのか全く分かっていなかった。
武は、武の瞳は……とうの昔に野球じゃない世界を見ていたのに。
---
-------
胸騒ぎがして寝苦しかったある夜、私は風を感じたくて窓を開けた。
と、目に入ったのは道路の向こうから走って来る武。
こんな時間にロードワーク?
そんなワケないってことは、無意識に理解していた。
『武っ…!』
「あり?何で起きてんだ?」
『何処行くの!?』
答えて欲しかったけど、答えて貰えないだろうなって思った。
きっとまた、原因不明の怪我を作りに行ってしまうんだって。
「んー……ダチの為に、全力を尽くしにさ。」
あぁいつの間に彼は、こんなに遠くなってしまったんだろう。
『野球……野球はっ!?また怪我して帰って来るんでしょっ!?危ないんでしょ!?』
危ないなら、野球が出来なくなるなら、行かなくていいよ。
私は、楽しそうにボールを追いかける武が好きなんだよ。
ずっとずっと、白いユニホーム姿で笑う武を見ていたい……
そう、心から想ってるのに。
「……悪ぃ、」
こっちまで胸が痛むような苦笑で、武は言った。
「約束、守れそうにねーんだ…」
『え…?な、何言って……』
聞こえない、聞こえないよ。
「野球より大切なダチが出来て、気付いた。俺には……とっくの昔に野球より大好きな存在があったんだ。」
やめてよ、聞こえない。
最後みたいに言わないで。
「お前が好きだ。だから、ちょっくら守りに行って来る。」
---
-----
-----------
あれからずっと、武は帰って来ない。
並盛高校はエースを欠いたまま地区大会決勝まで上り詰め、
そして今……
「バッター、4番、田島」
本来武の名字が入るハズの場所には、違う名が。
『ねぇ、どうしてよっ……武っ…』
あの約束とあの日の告白が、私の脳裏にこびりついて離れない。
友達に引っ張られて応援に来たけど、ちゃんとした声援は送れなかった。
もう一度、白いユニホームを着て得意気な笑顔でベースを踏む貴方の姿が、見たい。
4番の枠に彼の名は無い
血塗れになった彼が、全てを守る為に戦っているとはつゆ知らず
fin.
あんなに一生懸命好きな野球に打ち込んでた武が…何か悪いことした?
貴方の機嫌を損ねましたか?
ずっとその背中を見て来た私には、今のこの状況は残酷過ぎた。
中学最後の大会、優勝したけど果たせなかった約束……
---「今度はきっと、お前のトコにホームラン打ってやるぜ!!」
---『ホント!?そんなこと出来るの!?』
---「あぁ、一番良く聞こえる声援だからなっ♪」
高校になればまた、野球に打ち込む武を見つめて、たまに笑いかけて貰って……
そんなごくごく普通の幼なじみコンビでいられると思ってたのに。
『どうしたの!?その怪我!』
「ん?あぁ、ちょっとミスっちまってな。大丈夫だから気にすんなよ、なっ!」
スポーツ万能な武が何をミスったのか、その内容は教えて貰えなかった。
いつも武の背中ばかり見ていた私は、武の瞳に何が映ってるのか全く分かっていなかった。
武は、武の瞳は……とうの昔に野球じゃない世界を見ていたのに。
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胸騒ぎがして寝苦しかったある夜、私は風を感じたくて窓を開けた。
と、目に入ったのは道路の向こうから走って来る武。
こんな時間にロードワーク?
そんなワケないってことは、無意識に理解していた。
『武っ…!』
「あり?何で起きてんだ?」
『何処行くの!?』
答えて欲しかったけど、答えて貰えないだろうなって思った。
きっとまた、原因不明の怪我を作りに行ってしまうんだって。
「んー……ダチの為に、全力を尽くしにさ。」
あぁいつの間に彼は、こんなに遠くなってしまったんだろう。
『野球……野球はっ!?また怪我して帰って来るんでしょっ!?危ないんでしょ!?』
危ないなら、野球が出来なくなるなら、行かなくていいよ。
私は、楽しそうにボールを追いかける武が好きなんだよ。
ずっとずっと、白いユニホーム姿で笑う武を見ていたい……
そう、心から想ってるのに。
「……悪ぃ、」
こっちまで胸が痛むような苦笑で、武は言った。
「約束、守れそうにねーんだ…」
『え…?な、何言って……』
聞こえない、聞こえないよ。
「野球より大切なダチが出来て、気付いた。俺には……とっくの昔に野球より大好きな存在があったんだ。」
やめてよ、聞こえない。
最後みたいに言わないで。
「お前が好きだ。だから、ちょっくら守りに行って来る。」
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あれからずっと、武は帰って来ない。
並盛高校はエースを欠いたまま地区大会決勝まで上り詰め、
そして今……
「バッター、4番、田島」
本来武の名字が入るハズの場所には、違う名が。
『ねぇ、どうしてよっ……武っ…』
あの約束とあの日の告白が、私の脳裏にこびりついて離れない。
友達に引っ張られて応援に来たけど、ちゃんとした声援は送れなかった。
もう一度、白いユニホームを着て得意気な笑顔でベースを踏む貴方の姿が、見たい。
4番の枠に彼の名は無い
血塗れになった彼が、全てを守る為に戦っているとはつゆ知らず
fin.