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惹かれてしまうのです。
ひたすら、貴方に。
---「おいで、もう怖くない。」
私に光を見せてくれたのは、キャバッローネの9代目です。
私に人の心を分けてくれたのは、キャバッローネの皆さんです。
スラムで育った6年間を打ち消すかのように、私の人生は虹色に染まりました。
全てが美しく見えました。
そして……
---「俺、ディーノ。宜しくな!」
あの瞬間、虹色の中に桃色が咲きました。
眩しいくらいの金髪の中に見え隠れする、照れ臭そうな微笑み。
やんちゃな方なのか、頬には絆創膏が一つ。
その方こそ、9代目の直系の息子さんであり、次期キャバッローネボスとなるお方……ディーノ坊っちゃんでした。
「なぁっ、一緒に探検しないか?」
『申し訳ございませんディーノ坊っちゃん、9代目の使いで外出しなければいけないので…』
「そっか……だったら俺、ついてくよ。なっ!」
『えっ?い、いけません!そろそろ坊っちゃんはお勉強の時間でしょうから…」
「勉強なんかより……お、俺は…」
伏し目がちに何か言おうとするディーノ坊っちゃんを、ロマーリオ様が見つけて連行して行きました。
歳が同じ私に、坊っちゃんはとても頻繁に話しかけて下さり、その度に私は嬉しくて仕方なかったのです。
けれど、次期ボスの座を約束されている坊っちゃんに、9代目に拾われた使用人である私が簡単に近づいていいハズがありません。
私は、距離を置こうと努めました。
坊っちゃんに会わないように、
坊っちゃんと話さないように、
坊っちゃんに……これ以上惹かれないように。
それは、間違いだったのでしょうか?
「俺のこと、嫌いなのか?」
私は、大好きな貴方にそんな顔をさせるつもりはありませんでした。
私の行動は、選択は、全て貴方のためだと思ったのです。
私は貴方と多く関わってはいけない身分だから……そう、思っているのです。
『いいえ、私は……坊っちゃんを大切に思ってます。』
精一杯の返答も、坊っちゃんにはきちんと届いてくれませんでした。
「そんな風に呼ぶなよっ……俺の名前、知ってんだろ!?」
『はい、存じております。』
「だったらちゃんと、名前で呼んで欲しい。」
『私は…使用人ですので……』
「関係ない!」
『ありますっ…!』
坊っちゃんに強く反論してから、自分の口を押えました。
目の前にいる坊っちゃんは、驚きと哀しみを瞳に映していらっしゃいました。
『申し訳ございません…失礼します。』
助けて下さい。
私は、貴方といると嬉しいけれど苦しいのです。
実らない想いが大きくなるのが、堪らなく痛いのです。
いつはち切れてしまうのかと思うと、不安で不安で仕方ないのです。
そんな私に、あるお話がきました。
9代目のお供として、長期遠征をするとのことでした。
その頃だったでしょうか、ディーノ坊っちゃんにも全寮制の学校に入学する話がやってきたのは。
「俺、どうしても行きたくないんだ…」
『坊っちゃん…』
「それに……お前にも行って欲しくない…。寂しい、から…」
『……私は、9代目に付いて行きます。』
9代目のご意向は承知していました。
温室育ち状態になってしまったディーノ坊っちゃんを、本当のボスにするためにというご配慮。
私が、個人的な感情で反対意見を述べてはいけないのです。
「何で…そんなこと言うんだよ…!」
『私は、キャバッローネ9代目ボスに仕える身ですから。』
「………じゃあ、さ…」
しばしの沈黙の後、ディーノ坊っちゃんは強い視線を私に向けて、おっしゃいました。
「俺が10代目ボスになったら、俺の言うこと聞いてくれるのか?」
毎日貴方を見ていた私ですが、初めて見た表情でした。
力強く真剣なその瞳に、私はまた惹かれてしまったのです。
長期遠征の、前日のことでした。
お仕えすべきは9代目
なのに私の心は全部、貴方に持って行かれてく
fin.
ひたすら、貴方に。
---「おいで、もう怖くない。」
私に光を見せてくれたのは、キャバッローネの9代目です。
私に人の心を分けてくれたのは、キャバッローネの皆さんです。
スラムで育った6年間を打ち消すかのように、私の人生は虹色に染まりました。
全てが美しく見えました。
そして……
---「俺、ディーノ。宜しくな!」
あの瞬間、虹色の中に桃色が咲きました。
眩しいくらいの金髪の中に見え隠れする、照れ臭そうな微笑み。
やんちゃな方なのか、頬には絆創膏が一つ。
その方こそ、9代目の直系の息子さんであり、次期キャバッローネボスとなるお方……ディーノ坊っちゃんでした。
「なぁっ、一緒に探検しないか?」
『申し訳ございませんディーノ坊っちゃん、9代目の使いで外出しなければいけないので…』
「そっか……だったら俺、ついてくよ。なっ!」
『えっ?い、いけません!そろそろ坊っちゃんはお勉強の時間でしょうから…」
「勉強なんかより……お、俺は…」
伏し目がちに何か言おうとするディーノ坊っちゃんを、ロマーリオ様が見つけて連行して行きました。
歳が同じ私に、坊っちゃんはとても頻繁に話しかけて下さり、その度に私は嬉しくて仕方なかったのです。
けれど、次期ボスの座を約束されている坊っちゃんに、9代目に拾われた使用人である私が簡単に近づいていいハズがありません。
私は、距離を置こうと努めました。
坊っちゃんに会わないように、
坊っちゃんと話さないように、
坊っちゃんに……これ以上惹かれないように。
それは、間違いだったのでしょうか?
「俺のこと、嫌いなのか?」
私は、大好きな貴方にそんな顔をさせるつもりはありませんでした。
私の行動は、選択は、全て貴方のためだと思ったのです。
私は貴方と多く関わってはいけない身分だから……そう、思っているのです。
『いいえ、私は……坊っちゃんを大切に思ってます。』
精一杯の返答も、坊っちゃんにはきちんと届いてくれませんでした。
「そんな風に呼ぶなよっ……俺の名前、知ってんだろ!?」
『はい、存じております。』
「だったらちゃんと、名前で呼んで欲しい。」
『私は…使用人ですので……』
「関係ない!」
『ありますっ…!』
坊っちゃんに強く反論してから、自分の口を押えました。
目の前にいる坊っちゃんは、驚きと哀しみを瞳に映していらっしゃいました。
『申し訳ございません…失礼します。』
助けて下さい。
私は、貴方といると嬉しいけれど苦しいのです。
実らない想いが大きくなるのが、堪らなく痛いのです。
いつはち切れてしまうのかと思うと、不安で不安で仕方ないのです。
そんな私に、あるお話がきました。
9代目のお供として、長期遠征をするとのことでした。
その頃だったでしょうか、ディーノ坊っちゃんにも全寮制の学校に入学する話がやってきたのは。
「俺、どうしても行きたくないんだ…」
『坊っちゃん…』
「それに……お前にも行って欲しくない…。寂しい、から…」
『……私は、9代目に付いて行きます。』
9代目のご意向は承知していました。
温室育ち状態になってしまったディーノ坊っちゃんを、本当のボスにするためにというご配慮。
私が、個人的な感情で反対意見を述べてはいけないのです。
「何で…そんなこと言うんだよ…!」
『私は、キャバッローネ9代目ボスに仕える身ですから。』
「………じゃあ、さ…」
しばしの沈黙の後、ディーノ坊っちゃんは強い視線を私に向けて、おっしゃいました。
「俺が10代目ボスになったら、俺の言うこと聞いてくれるのか?」
毎日貴方を見ていた私ですが、初めて見た表情でした。
力強く真剣なその瞳に、私はまた惹かれてしまったのです。
長期遠征の、前日のことでした。
お仕えすべきは9代目
なのに私の心は全部、貴方に持って行かれてく
fin.