🎵番外編
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何とまぁ早いもので、もうクリスマスイブです。
とっくに冬休み突入してる大学生なのですが、あたしに休みはほとんど訪れません。
「おはようございます、柚子♪」
『む、骸さん…おはようございます。気のせいでしょうか、いつもより笑顔が怖いですけど……』
「おや、分かりますか?さすがですね、クフフフ…」
『では、朝食作りに行きますので。』
「お待ちなさい柚子!そこは理由を聞かずにスルーですか!?」
うん、やっぱりダメだったか。
聞きたくないからスルーしようとしたのに……
「よっ、柚子に骸!何してんだ?」
『山本さん!お帰りなさいっ♪別に何も!これから朝食を作ろうと思いまして!』
このタイミングで朝練から帰ってきて下さるなんて…
本当にゴッドだ!あたしの救世主山本さん!!
「な、何故ですか!この僕を差し置いて山本君が柚子のゴッドとはどういうことです!!」
「ん?ゴッド?」
『あーもー読まないで下さいってば!!それに色々ややこしくなるので喋らないでください!』
「……僕の柚子が…反抗期……」
『とっくに終わってます!』
スパッと受け答えすると、骸さんは「うわあああ」と叫びながら去って行った。
ぽかんとしている山本さんに、もう一度「何でもないです」と言っておいた。
『皆さんおはようございます、朝食お持ちしました。』
「おはよう、柚子。」
「ちゃおっス。」
順に配置してから、ツナさんの隣の空席に座る。
手を合わせて食べ始めると、不意にツナさんに話しかけられた。
「なぁ柚子、今日予定ないよな?」
『予定ですか?えっと、この間倉庫でツリー見つけたので、それを大広間で飾ろうかと思ってるんですけど……』
「そんなんあったっけ。」
「確か、去年ハルが持ってきたヤツだぞ。」
リボーンさんの説明に、ツナさんは数秒記憶の糸を辿る。
「あぁ……じゃあその前にちょっとだけ付き合えよ。」
『えっ、何処か行くんですか?』
「ん、ちょっと買い物に。」
『いいですけど…』
ツリーの飾りをゆっくりやりたかったけど、まいっか。
軽く承諾して、朝食の片付けを終えた後に出掛ける準備をした。
『(外、寒いかなぁ…)』
窓に吹き付ける風の音は、いつもより強め。
しまいこんでいたマフラーを出して、くるくるっと巻きつけた。
『すみませんっ、お待たせしました!』
「行くぞ。」
『歩き、ですか…?』
「たまにはいいだろ?」
玄関で待ってたツナさんは、ダークブラウンのロングコートのポケットに手を突っ込んで。
いつも車なのに珍しいなと思いつつ、後ろをついて歩く。
商店街はすっかりクリスマスカラーに彩られ、色んなお店からクリスマスソングも聞こえてくる。
少しルンルン気分で歩きながら、考えてみた。
ツナさんの買い物って…何だろう?
この時期の買い物って、クリスマスプレゼント??
でもちょっと遅いような気も……
「うるさい、文句あるのか?」
『よ、読まないで下さいっ!文句とか、ないですけど……随分と急な準備だなって思って。えっ、てゆーか本当にプレゼントですか!?ツナさんが!?』
「……給料半額にしようか。」
『ごめんなさいすみませんお許しください雇い主様!!』
半額とか、どんだけ下げる気ですか!!
横暴ボスめ……
「やっぱ半額に、」
『冗談です!……でも、どうしてあたしも?あっ、もしかして女の子にプレゼントですか?』
「…そんなトコ。」
『それって…あたしが選んじゃっていいんですか?』
「柚子、そんなに人並み外れたおかしなセンスしてないだろ?」
『それは…そーだと思いますけど……』
ツナさんが女の子にプレゼント…ってゆーか貢ぐなんて意外……。
「もしかして、妬いてる?」
『誰がですか!からかわないで下さいっ。ツナさんが誰にプレゼントあげようと、家政婦のあたしには関係ないですし。』
「ふーん…」
あ、あれ?
何でちょっとオーラ黒くなってんの…?
んもーっ、ますます一緒に歩きにくいじゃないですか…。
少しだけぎこちなくなって、俯いた。
改めて、今日は気温が低いんだなと感じる。
こんなことなら手袋もしてくるべきだったと後悔していると……
『……しゅんっ、』
顔に吹き付けてきた冷たい風に刺激されて、小さなくしゃみが出た。
極力抑えたつもりだったんだけど、ツナさんにも聞こえたみたいで振り向かれる。
「何だよ、寒いのか?」
『だ、大丈夫です…気にしないで下さ、』
「手ぇ貸せよ。」
『わっ…!』
突然手を握られたから、ビックリして立ち止まる。
ツナさんはつられるように止まったけど、人込みは構わず流れていく。
ぎゅっとあたしの手を握って、眉間に皺を寄せた。
「冷たいじゃんかよ…」
『大丈夫ですってば!これくらいの気温、水仕事の時に比べたら…』
「いいから、これ。」
ツナさんは自分の左手の手袋を外し、あたしの左手にはめる。
黒い手袋にはツナさんの手の温度が残ってて、悔しいけどドキドキしてしまう。
『あ、あの…これじゃツナさん……』
「いいから。」
あたしの左手に少し緩い手袋をはめたツナさんは、手袋がなくなった左手であたしの右手を包んだ。
ビックリして見上げると、その口元には僅かな笑み。
「こっちの手は、これで文句ないだろ?」
『……あ、えっと…その……』
この人、本当にずるい。
何で急にこんな……プレイボーイは自粛してって言ってるのにー…
「何?惚れ直した?」
『ち、違いますっ!!』
あたしの気持ちの揺れなんて、絶対にわかりっこない。
ツナさんてば、もしや確信犯……?
「柚子、」
『な、何ですか?』
ビクッとしながら返事をすると、ツナさんは珍しく前を見たまま尋ねてきた。
「今つけてるマフラー、貰いものとか?」
『へ?いえ、これは高校の時お小遣いを貯めて買ったものです。この音符の刺繍に惹かれて…』
「…そっか。」
『どうして急に?』
「別に、何となく聞いただけ。気にすんな。」
『はぁ…』
よく分からないけど、ツナさんはそれきり黙りこんでしまった。
しかも、いざお店に入っても(可愛い服屋さんだった)、プレゼント選びというより色選びさせられただけ。
暖色系か寒色系か、とか、
柄はどんなのがいいか、とか。
サンプルは見せてくれたけど、実際にツナさんが誰のために何を選んだのか、見せてもらうどころか聞かせてもらえなかった。
『……あの、ツナさん?』
「ん?」
で、買い物は終わったらしくて公園のベンチに座る。
イブだからか、広い公園もカップルだらけで何だか気まずい。
あたし達も、周りから同じように見えるのかと思うと、とっても緊張してしまう。
『あたし、ご一緒した意味ありました?』
「それなりに。」
『ならいいんですけど……あの、休憩するなら早く7号館戻りませんか?』
「…俺と2人でいるのは不満?」
『そっ…そーゆーんじゃなくて……』
何でそんな答えづらい切り返しするんですか、まったくもう。
きまり悪くて黙りこむあたしの手をツナさんはぎゅっと握る。
『ツナさん…?』
「もう少しだけ。」
『少し、って……』
次の瞬間、握られている手がぐいっと引っ張られる。
咄嗟に対応できなくて、そのままツナさんの腕の中に閉じ込められた。
『あ、あの…!』
「寒いな、今日。」
『ですからっ…早く7号館に帰りましょうって言ってるじゃないですか…!は、放して下さいっ…!』
「イブなんだから、ちょっとぐらい俺のモンになれっての。」
『な、何ですかソレ…!!いつも言ってますけど、プレイボーイは…』
「だから、お前にしか言わないって。」
力を振り絞って逃れようとするあたしの顎を掴んで、ツナさんは真剣な瞳を向ける。
不覚にも見入ってしまい、フリーズしてしまった。
「俺が欲しいのは柚子だけ。」
『(うっ…///)』
ペースに乗せられちゃダメ、演技上手なツナさんだもの。
きっと何人もの女性が泣かされて来たに違いない。
柚子、乗せられちゃダメ……
心の中に警告が響いても、距離はどんどん近くなる。
ツナさんの真剣な瞳は、徐々に優しくなっていって………
ブーッ、ブーッ、
『えっ!?』
「…ったく、リボーンのヤツ……」
突如聞こえてきたのは、ツナさんの携帯のバイブで。
舌打ちをしながら電話に出るツナさん。
我に返ったあたしは今の状況を思いだし、半分放心状態になった。
あ、あたしってば、今……
『(うわああああ!!恥ずかしいぃぃぃぃ!!!)』
危なかった!
屋外で、人前で、醜態さらすトコだった!
リボーンさんありがとう!
「…分かった、すぐ帰るよ。じゃーな。」
ピッ、
『リボーンさん……何て?』
「準備できたって。」
『準備、って……何のですか??』
不思議な単語に首を傾げると、ツナさんは楽しそうに笑って「お楽しみ」と言った。
---
-----
7号館に戻り、玄関のドアを開けようとすると、ツナさんが「ちょっと待て」と腕を引いた。
『わわっ!』
「おっと、…ったく、柚子は危なっかしいな。」
『い、今のはツナさんが急に引っ張ったから…!』
「まぁそこが可愛いからいいけどさ。」
『なっ…そ、そーゆーのやめて下さいっ……』
言い返せずに目を逸らしていると、しゅるっとツナさんがネクタイをほどく音。
『な、何してるんですか!?』
「後ろ向いて。」
見せられた笑顔に、危機察知本能が反応する。
この人は多分、また妙なことを企んでいるに違いない、と。
けど、逆らえないのは承知してるから渋々背を向けた。
と、次の瞬間、真っ暗になる視界。
『ちょっ…ツナさんっ!?』
「慌てるなって、俺がしっかりエスコートするから。」
『エスコートって……』
「俺の手、ちゃんと握って。ゆっくりゆっくり歩かないと転ぶからな?」
『は、はい…』
どうやら先ほど解かれたネクタイで目隠しされてしまった模様。
あたしは仕方なく真っ暗の状態で、両手を引くツナさんの手だけを頼りに歩みを進めた。
ギィ、と扉の開く音がして、右に曲がるよう促される。
移動した距離的に考えて、大広間かなと思う。
けど、電気がついていないみたいで、光の気配がまるでない。
「ここにいろよ。」
『えっ?』
不意にツナさんの手が離れて、あたしはとてつもなく不安になった。
そのまま退室してしまう足音も聞こえて、どうしたらいいか分からなくなる。
すぐにネクタイの目隠しをほどこうとしたけど、固結びされてて取れない。
『つ、ツナさーん!』
呼んでみても、戻ってきてくれない。
ツナさんじゃなくても、誰か来てくれないかなぁ……。
優しいバジルさんとか来てくれたら目隠し解いて欲しいのに…
その時だった。
シャーッとカーテンが滑る音がして、窓から陽光が降り注ぐ。
『だ、誰かいらっしゃるんですか!?あの…』
「ごめんな柚子、もうちょい待ってくれ、なっ?」
『山本さん…?』
「この野球バカ!沈黙守れっつったろーが!」
「いやー、柚子が不安そうだからさ。」
『獄寺さん…?』
少しずつ、少しずつ、人の気配が分かってくる。
あ、もしかしてあたし……サプライズされてるの…?
「極限に良いではないか!十分驚いているぞ、な!柚子!」
『了平さん、ですか…?』
「ったく、しょーがねーな、おめーらは。」
『リボーンさん…?』
「目隠し、そろそろ取って差し上げませんか?柚子殿が混乱してるようですし…」
『バジルさん?』
やっぱり、発言内容が一番優しいバジルさん…!
自分では取れない固結びを取ってもらえるのかと期待していると、特殊な笑い声が聞こえてきた。
「クフフフフ…ならば僕が、可愛い可愛い柚子を暗闇から解き放ってあげましょう。」
『む、骸さん…?』
「もっとも、視覚情報が無いまま戸惑う柚子も可愛いのですg……」
ドゴッ、
「クハッ…!」
骸さんの言葉が途切れた。
もしかして……雲雀さん、かな?
大きなため息が一つ聞こえた。
「ねぇ、まだなの?沢田。」
「今行きます。」
あ、ツナさんの声だ…。
近づいてくる足音がツナさんのだって、何故かハッキリと分かった。
その音はあたしの目の前で止まり、目隠しのネクタイに手が添えられる。
多分いつもと違う大広間の光景が待っているんだろうと思って、小さく深呼吸をした。
「心して受け取れよ、俺からのプレゼント。」
『えっ?』
目隠しが外される直前に囁かれた言葉に反応する暇もなく、あたしの目に光が舞い込む。
一番に見えたのは、激レアな温かい笑みのツナさん。
ビックリして周りを見ると、色んなテーブルが用意されていて。
ごちそうが並んだテーブル、
背の高いクリスマスケーキが乗ったテーブル、
大好きな和菓子の宝庫みたいなテーブル、
何やら大きな可愛い袋が積まれたテーブル、
そして……
『ツナさん、あれって…何ですか?』
「…やっぱりアレが最初か。」
『え?』
「柚子なら絶対、最初に聞くと思ってた。あの楽譜だらけのテーブルが一番気になるだろうってな。」
見れば分かるよって言われて、楽譜のテーブルに歩み寄る。
どれもこれも、有名な曲ばっかり……?
にしては統一性がないような…
「10代目に感謝しろよ、一番時間かかったんだからな。」
『これ、どこかから集めたんですか…?』
獄寺さんの言葉に首を傾げると、リボーンさんが来て教えてくれた。
「その楽譜は全て、柚子の父親が世界大会で弾いた曲のだ。コンクールの課題曲はすぐ集まったが…エキシビジョンの曲は骨が折れたぞ。な、雲雀。」
「……彼はいつもその場で選ばせてたみたいだからね。」
『お父さんが弾いた…曲たち……』
コンクールでの父を知らないあたしは、こんな形で知ることが出来るなんて思っていなかった。
思わず口元が緩むと同時に、目が少し熱くなる。
すると、ぽんぽんっと軽く頭を叩かれた。
「柚子はいっつも頑張ってっからな♪感謝も込めて、な!」
『ありがとうございますっ…本当に……ありがとう、皆さん…』
「さぁ、極限にパーティーを始めるぞ!!」
「がっつくんじゃねー!芝生!!」
「おやおや、途端に騒がしくなりましたね。どうです?柚子、このまま僕と二人で抜け出すのは…」
「骸、怒るよ?」
「…冗談ですよ、半分は。」
『ツナさん、あのっ……』
お礼を言わなくちゃと思っているのに、こんな時に限って緊張する。
というより、あたしは大したプレゼントも用意してなかったから気まずいってのもある。
ご馳走作って「プレゼントです」とか安易なことしようとしてたし……
「そうなんだ。」
『よ、読まないで下さいってばー!』
「はい、これが俺からのプレゼント。」
差し出されたのは、向こうのテーブルにあった大きな袋。
さっき行ったお店の袋だ。
こんなに大きなの、いつの間に買ったんだろう…
まさか、歩いて行ける距離なのに配達システム使った…?
『あっ、ありがとうございます!!あの、開けてもいいですか?』
「うん。」
何より中身が気になってしまったあたしは、早速広げてみる。
と、出てきたのは可愛いマフラーともこもこの半纏だった。
『わぁ…!』
「マフラー、そっちの方が素材的に防寒になるからさ。」
マフラーについて聞かれたことを思い出して、嬉しくなる。
「あとそっちの半纏は屋内用で。」
『はいっ♪ありがとうございます!その…とっても嬉しくて…どうしたらいいか……』
あたふたするあたしに、ツナさんはふっと笑って言った。
「なら、一つだけ頼もうかな。」
『は、はい、あたしに出来ることなら…』
「今晩、俺の抱き枕になってくれる?」
『へ………?』
ぼふん、と顔の熱が急上昇したのが自分でも分かって、思わず数歩後ずさった。
『な、なな、何でそうなるんですか!!///ツナさんの横暴!!策士!!』
「そうです!柚子を抱き枕にしていいのは僕だけでs…グハッ!」
「君は黙ってなよ。」
雲雀さんの制裁を喰らう骸さんを横目で見てから、ツナさんはわざとらしく言う。
「あーあ、俺、折角柚子に喜んでもらおうと色々用意したのになー。」
『そ…それとこれとは話が…』
「違くない、だろ?」
結局、あたしはクリスマスもこの腹黒笑顔に振り回される運命のようです。
fin.
とっくに冬休み突入してる大学生なのですが、あたしに休みはほとんど訪れません。
「おはようございます、柚子♪」
『む、骸さん…おはようございます。気のせいでしょうか、いつもより笑顔が怖いですけど……』
「おや、分かりますか?さすがですね、クフフフ…」
『では、朝食作りに行きますので。』
「お待ちなさい柚子!そこは理由を聞かずにスルーですか!?」
うん、やっぱりダメだったか。
聞きたくないからスルーしようとしたのに……
「よっ、柚子に骸!何してんだ?」
『山本さん!お帰りなさいっ♪別に何も!これから朝食を作ろうと思いまして!』
このタイミングで朝練から帰ってきて下さるなんて…
本当にゴッドだ!あたしの救世主山本さん!!
「な、何故ですか!この僕を差し置いて山本君が柚子のゴッドとはどういうことです!!」
「ん?ゴッド?」
『あーもー読まないで下さいってば!!それに色々ややこしくなるので喋らないでください!』
「……僕の柚子が…反抗期……」
『とっくに終わってます!』
スパッと受け答えすると、骸さんは「うわあああ」と叫びながら去って行った。
ぽかんとしている山本さんに、もう一度「何でもないです」と言っておいた。
『皆さんおはようございます、朝食お持ちしました。』
「おはよう、柚子。」
「ちゃおっス。」
順に配置してから、ツナさんの隣の空席に座る。
手を合わせて食べ始めると、不意にツナさんに話しかけられた。
「なぁ柚子、今日予定ないよな?」
『予定ですか?えっと、この間倉庫でツリー見つけたので、それを大広間で飾ろうかと思ってるんですけど……』
「そんなんあったっけ。」
「確か、去年ハルが持ってきたヤツだぞ。」
リボーンさんの説明に、ツナさんは数秒記憶の糸を辿る。
「あぁ……じゃあその前にちょっとだけ付き合えよ。」
『えっ、何処か行くんですか?』
「ん、ちょっと買い物に。」
『いいですけど…』
ツリーの飾りをゆっくりやりたかったけど、まいっか。
軽く承諾して、朝食の片付けを終えた後に出掛ける準備をした。
『(外、寒いかなぁ…)』
窓に吹き付ける風の音は、いつもより強め。
しまいこんでいたマフラーを出して、くるくるっと巻きつけた。
『すみませんっ、お待たせしました!』
「行くぞ。」
『歩き、ですか…?』
「たまにはいいだろ?」
玄関で待ってたツナさんは、ダークブラウンのロングコートのポケットに手を突っ込んで。
いつも車なのに珍しいなと思いつつ、後ろをついて歩く。
商店街はすっかりクリスマスカラーに彩られ、色んなお店からクリスマスソングも聞こえてくる。
少しルンルン気分で歩きながら、考えてみた。
ツナさんの買い物って…何だろう?
この時期の買い物って、クリスマスプレゼント??
でもちょっと遅いような気も……
「うるさい、文句あるのか?」
『よ、読まないで下さいっ!文句とか、ないですけど……随分と急な準備だなって思って。えっ、てゆーか本当にプレゼントですか!?ツナさんが!?』
「……給料半額にしようか。」
『ごめんなさいすみませんお許しください雇い主様!!』
半額とか、どんだけ下げる気ですか!!
横暴ボスめ……
「やっぱ半額に、」
『冗談です!……でも、どうしてあたしも?あっ、もしかして女の子にプレゼントですか?』
「…そんなトコ。」
『それって…あたしが選んじゃっていいんですか?』
「柚子、そんなに人並み外れたおかしなセンスしてないだろ?」
『それは…そーだと思いますけど……』
ツナさんが女の子にプレゼント…ってゆーか貢ぐなんて意外……。
「もしかして、妬いてる?」
『誰がですか!からかわないで下さいっ。ツナさんが誰にプレゼントあげようと、家政婦のあたしには関係ないですし。』
「ふーん…」
あ、あれ?
何でちょっとオーラ黒くなってんの…?
んもーっ、ますます一緒に歩きにくいじゃないですか…。
少しだけぎこちなくなって、俯いた。
改めて、今日は気温が低いんだなと感じる。
こんなことなら手袋もしてくるべきだったと後悔していると……
『……しゅんっ、』
顔に吹き付けてきた冷たい風に刺激されて、小さなくしゃみが出た。
極力抑えたつもりだったんだけど、ツナさんにも聞こえたみたいで振り向かれる。
「何だよ、寒いのか?」
『だ、大丈夫です…気にしないで下さ、』
「手ぇ貸せよ。」
『わっ…!』
突然手を握られたから、ビックリして立ち止まる。
ツナさんはつられるように止まったけど、人込みは構わず流れていく。
ぎゅっとあたしの手を握って、眉間に皺を寄せた。
「冷たいじゃんかよ…」
『大丈夫ですってば!これくらいの気温、水仕事の時に比べたら…』
「いいから、これ。」
ツナさんは自分の左手の手袋を外し、あたしの左手にはめる。
黒い手袋にはツナさんの手の温度が残ってて、悔しいけどドキドキしてしまう。
『あ、あの…これじゃツナさん……』
「いいから。」
あたしの左手に少し緩い手袋をはめたツナさんは、手袋がなくなった左手であたしの右手を包んだ。
ビックリして見上げると、その口元には僅かな笑み。
「こっちの手は、これで文句ないだろ?」
『……あ、えっと…その……』
この人、本当にずるい。
何で急にこんな……プレイボーイは自粛してって言ってるのにー…
「何?惚れ直した?」
『ち、違いますっ!!』
あたしの気持ちの揺れなんて、絶対にわかりっこない。
ツナさんてば、もしや確信犯……?
「柚子、」
『な、何ですか?』
ビクッとしながら返事をすると、ツナさんは珍しく前を見たまま尋ねてきた。
「今つけてるマフラー、貰いものとか?」
『へ?いえ、これは高校の時お小遣いを貯めて買ったものです。この音符の刺繍に惹かれて…』
「…そっか。」
『どうして急に?』
「別に、何となく聞いただけ。気にすんな。」
『はぁ…』
よく分からないけど、ツナさんはそれきり黙りこんでしまった。
しかも、いざお店に入っても(可愛い服屋さんだった)、プレゼント選びというより色選びさせられただけ。
暖色系か寒色系か、とか、
柄はどんなのがいいか、とか。
サンプルは見せてくれたけど、実際にツナさんが誰のために何を選んだのか、見せてもらうどころか聞かせてもらえなかった。
『……あの、ツナさん?』
「ん?」
で、買い物は終わったらしくて公園のベンチに座る。
イブだからか、広い公園もカップルだらけで何だか気まずい。
あたし達も、周りから同じように見えるのかと思うと、とっても緊張してしまう。
『あたし、ご一緒した意味ありました?』
「それなりに。」
『ならいいんですけど……あの、休憩するなら早く7号館戻りませんか?』
「…俺と2人でいるのは不満?」
『そっ…そーゆーんじゃなくて……』
何でそんな答えづらい切り返しするんですか、まったくもう。
きまり悪くて黙りこむあたしの手をツナさんはぎゅっと握る。
『ツナさん…?』
「もう少しだけ。」
『少し、って……』
次の瞬間、握られている手がぐいっと引っ張られる。
咄嗟に対応できなくて、そのままツナさんの腕の中に閉じ込められた。
『あ、あの…!』
「寒いな、今日。」
『ですからっ…早く7号館に帰りましょうって言ってるじゃないですか…!は、放して下さいっ…!』
「イブなんだから、ちょっとぐらい俺のモンになれっての。」
『な、何ですかソレ…!!いつも言ってますけど、プレイボーイは…』
「だから、お前にしか言わないって。」
力を振り絞って逃れようとするあたしの顎を掴んで、ツナさんは真剣な瞳を向ける。
不覚にも見入ってしまい、フリーズしてしまった。
「俺が欲しいのは柚子だけ。」
『(うっ…///)』
ペースに乗せられちゃダメ、演技上手なツナさんだもの。
きっと何人もの女性が泣かされて来たに違いない。
柚子、乗せられちゃダメ……
心の中に警告が響いても、距離はどんどん近くなる。
ツナさんの真剣な瞳は、徐々に優しくなっていって………
ブーッ、ブーッ、
『えっ!?』
「…ったく、リボーンのヤツ……」
突如聞こえてきたのは、ツナさんの携帯のバイブで。
舌打ちをしながら電話に出るツナさん。
我に返ったあたしは今の状況を思いだし、半分放心状態になった。
あ、あたしってば、今……
『(うわああああ!!恥ずかしいぃぃぃぃ!!!)』
危なかった!
屋外で、人前で、醜態さらすトコだった!
リボーンさんありがとう!
「…分かった、すぐ帰るよ。じゃーな。」
ピッ、
『リボーンさん……何て?』
「準備できたって。」
『準備、って……何のですか??』
不思議な単語に首を傾げると、ツナさんは楽しそうに笑って「お楽しみ」と言った。
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7号館に戻り、玄関のドアを開けようとすると、ツナさんが「ちょっと待て」と腕を引いた。
『わわっ!』
「おっと、…ったく、柚子は危なっかしいな。」
『い、今のはツナさんが急に引っ張ったから…!』
「まぁそこが可愛いからいいけどさ。」
『なっ…そ、そーゆーのやめて下さいっ……』
言い返せずに目を逸らしていると、しゅるっとツナさんがネクタイをほどく音。
『な、何してるんですか!?』
「後ろ向いて。」
見せられた笑顔に、危機察知本能が反応する。
この人は多分、また妙なことを企んでいるに違いない、と。
けど、逆らえないのは承知してるから渋々背を向けた。
と、次の瞬間、真っ暗になる視界。
『ちょっ…ツナさんっ!?』
「慌てるなって、俺がしっかりエスコートするから。」
『エスコートって……』
「俺の手、ちゃんと握って。ゆっくりゆっくり歩かないと転ぶからな?」
『は、はい…』
どうやら先ほど解かれたネクタイで目隠しされてしまった模様。
あたしは仕方なく真っ暗の状態で、両手を引くツナさんの手だけを頼りに歩みを進めた。
ギィ、と扉の開く音がして、右に曲がるよう促される。
移動した距離的に考えて、大広間かなと思う。
けど、電気がついていないみたいで、光の気配がまるでない。
「ここにいろよ。」
『えっ?』
不意にツナさんの手が離れて、あたしはとてつもなく不安になった。
そのまま退室してしまう足音も聞こえて、どうしたらいいか分からなくなる。
すぐにネクタイの目隠しをほどこうとしたけど、固結びされてて取れない。
『つ、ツナさーん!』
呼んでみても、戻ってきてくれない。
ツナさんじゃなくても、誰か来てくれないかなぁ……。
優しいバジルさんとか来てくれたら目隠し解いて欲しいのに…
その時だった。
シャーッとカーテンが滑る音がして、窓から陽光が降り注ぐ。
『だ、誰かいらっしゃるんですか!?あの…』
「ごめんな柚子、もうちょい待ってくれ、なっ?」
『山本さん…?』
「この野球バカ!沈黙守れっつったろーが!」
「いやー、柚子が不安そうだからさ。」
『獄寺さん…?』
少しずつ、少しずつ、人の気配が分かってくる。
あ、もしかしてあたし……サプライズされてるの…?
「極限に良いではないか!十分驚いているぞ、な!柚子!」
『了平さん、ですか…?』
「ったく、しょーがねーな、おめーらは。」
『リボーンさん…?』
「目隠し、そろそろ取って差し上げませんか?柚子殿が混乱してるようですし…」
『バジルさん?』
やっぱり、発言内容が一番優しいバジルさん…!
自分では取れない固結びを取ってもらえるのかと期待していると、特殊な笑い声が聞こえてきた。
「クフフフフ…ならば僕が、可愛い可愛い柚子を暗闇から解き放ってあげましょう。」
『む、骸さん…?』
「もっとも、視覚情報が無いまま戸惑う柚子も可愛いのですg……」
ドゴッ、
「クハッ…!」
骸さんの言葉が途切れた。
もしかして……雲雀さん、かな?
大きなため息が一つ聞こえた。
「ねぇ、まだなの?沢田。」
「今行きます。」
あ、ツナさんの声だ…。
近づいてくる足音がツナさんのだって、何故かハッキリと分かった。
その音はあたしの目の前で止まり、目隠しのネクタイに手が添えられる。
多分いつもと違う大広間の光景が待っているんだろうと思って、小さく深呼吸をした。
「心して受け取れよ、俺からのプレゼント。」
『えっ?』
目隠しが外される直前に囁かれた言葉に反応する暇もなく、あたしの目に光が舞い込む。
一番に見えたのは、激レアな温かい笑みのツナさん。
ビックリして周りを見ると、色んなテーブルが用意されていて。
ごちそうが並んだテーブル、
背の高いクリスマスケーキが乗ったテーブル、
大好きな和菓子の宝庫みたいなテーブル、
何やら大きな可愛い袋が積まれたテーブル、
そして……
『ツナさん、あれって…何ですか?』
「…やっぱりアレが最初か。」
『え?』
「柚子なら絶対、最初に聞くと思ってた。あの楽譜だらけのテーブルが一番気になるだろうってな。」
見れば分かるよって言われて、楽譜のテーブルに歩み寄る。
どれもこれも、有名な曲ばっかり……?
にしては統一性がないような…
「10代目に感謝しろよ、一番時間かかったんだからな。」
『これ、どこかから集めたんですか…?』
獄寺さんの言葉に首を傾げると、リボーンさんが来て教えてくれた。
「その楽譜は全て、柚子の父親が世界大会で弾いた曲のだ。コンクールの課題曲はすぐ集まったが…エキシビジョンの曲は骨が折れたぞ。な、雲雀。」
「……彼はいつもその場で選ばせてたみたいだからね。」
『お父さんが弾いた…曲たち……』
コンクールでの父を知らないあたしは、こんな形で知ることが出来るなんて思っていなかった。
思わず口元が緩むと同時に、目が少し熱くなる。
すると、ぽんぽんっと軽く頭を叩かれた。
「柚子はいっつも頑張ってっからな♪感謝も込めて、な!」
『ありがとうございますっ…本当に……ありがとう、皆さん…』
「さぁ、極限にパーティーを始めるぞ!!」
「がっつくんじゃねー!芝生!!」
「おやおや、途端に騒がしくなりましたね。どうです?柚子、このまま僕と二人で抜け出すのは…」
「骸、怒るよ?」
「…冗談ですよ、半分は。」
『ツナさん、あのっ……』
お礼を言わなくちゃと思っているのに、こんな時に限って緊張する。
というより、あたしは大したプレゼントも用意してなかったから気まずいってのもある。
ご馳走作って「プレゼントです」とか安易なことしようとしてたし……
「そうなんだ。」
『よ、読まないで下さいってばー!』
「はい、これが俺からのプレゼント。」
差し出されたのは、向こうのテーブルにあった大きな袋。
さっき行ったお店の袋だ。
こんなに大きなの、いつの間に買ったんだろう…
まさか、歩いて行ける距離なのに配達システム使った…?
『あっ、ありがとうございます!!あの、開けてもいいですか?』
「うん。」
何より中身が気になってしまったあたしは、早速広げてみる。
と、出てきたのは可愛いマフラーともこもこの半纏だった。
『わぁ…!』
「マフラー、そっちの方が素材的に防寒になるからさ。」
マフラーについて聞かれたことを思い出して、嬉しくなる。
「あとそっちの半纏は屋内用で。」
『はいっ♪ありがとうございます!その…とっても嬉しくて…どうしたらいいか……』
あたふたするあたしに、ツナさんはふっと笑って言った。
「なら、一つだけ頼もうかな。」
『は、はい、あたしに出来ることなら…』
「今晩、俺の抱き枕になってくれる?」
『へ………?』
ぼふん、と顔の熱が急上昇したのが自分でも分かって、思わず数歩後ずさった。
『な、なな、何でそうなるんですか!!///ツナさんの横暴!!策士!!』
「そうです!柚子を抱き枕にしていいのは僕だけでs…グハッ!」
「君は黙ってなよ。」
雲雀さんの制裁を喰らう骸さんを横目で見てから、ツナさんはわざとらしく言う。
「あーあ、俺、折角柚子に喜んでもらおうと色々用意したのになー。」
『そ…それとこれとは話が…』
「違くない、だろ?」
結局、あたしはクリスマスもこの腹黒笑顔に振り回される運命のようです。
fin.
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