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🎼本編

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---「柚子!おい、大丈夫か!?柚子っ!!」



沢田さんの、声…?



---「目ぇ開けろっ、柚子……頼むっ……柚子っ…!」



大丈夫、大丈夫ですよ。

そんな心配しないで下さい。

すぐに起きますから。



---「大丈夫か?柚子…どこも痛くないか?」



ええ、どこも。


……それにしても、どうしたんですか?

急に“柚子”って呼ぶなんて。

あ、いえ、別に嫌だとかじゃなくて……

その、気になったものですから。


皆さんが私のことを“柚子”って呼ぶのに、沢田さんだけ違ったんですもの。

何だか距離を置かれてるみたいで、少し寂しく思っていたんです。

だから、嬉しいです。


それで、ですね……沢田さん、

あたし、一つ聞きたいことがあるんですけど…………





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地震が起きてから一晩明け、ツナは改めて7号館にいる人間を全員、大広間に集めた。

普段は集まれば騒がしくなる面々だが、今回ばかりは真剣な面持ちでツナとリボーンの入室を待っていた。

脳震盪により眠り続けている柚子に付き添っているシャマルを除いて。


不意に扉が開き、場に居る全員がそちらを瞥見する。

獄寺だけがしっかりと礼をした。


「おはようございます、10代目、リボーンさん。」

「皆、ごめん。朝早くに招集かけて。」

「気にすんなって。ツナが回復してホッとしてるぜ。」


明るく言う山本に、ツナは「ありがとう」と返しながら席に着く。

リボーンも着席した。



「単刀直入に言うよ。今朝は、今後のことについて伝えるために集まってもらった。」

「今後のこと、とは?」

「俺は、イタリアに行く。」

「イタリアだと!!?」

「何で急に?」


了平と山本が問い返し、他の者も若干目を丸くした。

ツナはそんなメンバーの反応など気付いていないかのように、続けた。


「ボンゴレ本部に行って、9代目の傍で動いて行こうと思う。」

「9代目から、そのようなお達しがあったんですか…!?」

「前から話は来てた。次期ボスとして、本部に来ないかってね。いい機会だから受けてみることにしたんだ。」

「そう、ですか…」



獄寺の質問に落ち着いた口調で答えるツナ。

と、今度は骸が尋ねる。


「では、柚子のことはどうするつもりですか?契約を破棄させたマンションに今更放り込む、と?」

「いや、イタリアに行くのは俺とリボーンだけだ。皆には日本に残ってて欲しい。」

「……なるほど。“沢田綱吉は留学した”、柚子にはそう伝えろということですね。」

「察しが良くて助かるよ、骸。」



微笑するツナに対し、納得がいかないと言うように了平が意見した。


「しかし沢田、もし柚子が記憶を取り戻した時はどうするのだ?」

「確かに、笹川君の言う通りです。留学説は、柚子が記憶を失っていることが前提で成り立ちます。マフィアのことを伝えていない、今の状況あってこその話です。」

「だから俺が、遠ざかることにしたんだ。」

「……ツナ、それってどーゆー意味だ…?」



山本が珍しく眉を寄せながら、聞き返した。

自分の中に立ってしまった仮説を、ツナに否定して欲しい……そんな感情が彼の表情には表れていた。

しかし、その期待はからくも裏切られる。



「そう。俺達が柚子に接することで思い出すための刺激が得られるなら……もう少し、思い出すのを先延ばしにさせてもらうことにした。」

「な…!10代目、それでは柚子が…!!」

「分かってるよ、その分柚子には辛い思いをさせる時間を長く味わわせてしまう……けど、俺はそれが最善だと判断した。」

「最善、ですか…」

「だから、俺がイタリアにいる間、日本支部長代理を頼むよ、獄寺君。」

「お、俺っスか!?」


驚く獄寺に、ツナはゆっくりと頷いた。




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次に起きたら、きちんと質問をしよう。

ずっと疑問に思っていたことを、全て聞いてみよう。

そう決めて目を開けようとしたら、夢の中で誰かに腕を引かれた。

振り向くと、背の高い男の人……


『お父さん…?』

柚子、引きとめてしまってすまないね。けれど、今のまま起きても埒があかないんだ。」

『どういうこと?あたし、起きてヒントを探さなくちゃ。沢田さんたちのこと、早く思い出したいの。』

「そうだね、柚子は早く思い出さなくてはいけない。でも外にはもう、ヒントはないんだ。ほとんど隠されてしまったから。」

『えっ?どうして?一体誰が、何のために隠したの?』

「その全ての答えは、ここにある。この夢の中……柚子の内側にね。」



お父さんは、優しく微笑んであたしの頭を撫でた。

懐かしいその感触に目を閉じて、幼い頃の思い出に浸る。



柚子が初めてフルートで弾いた曲は、『きらきら星』だったね。」

夜空の下で、お父さんが教えてくれて……
でも、あたしは上手に吹けなくて…


「一生懸命練習して、五日後には一緒に吹けるようになった。その時に僕は、柚子がきっと素晴らしいフルート奏者になれると思ったんだ。」

お父さんに褒めてもらいたくて、頑張った。
お母さんの拍手が聞きたくて、練習した。



柚子、約束は覚えているかい?」

『忘れるわけない!あたしは、一番の演奏者になるために練習してきた!これまでずっと。』


でもお父さんは、あたしが一番素敵な奏者になる前に、逝ってしまった。

あたしは、永遠に約束を果たせなくなった。



「それは違うんだ、柚子。」

『違う…?』

「約束は、果たせる。僕は、“一番素敵な奏者に”と言ったけれど、それは……“世界で一番”じゃない。」


意味が掴めずに首を傾げるあたしに、お父さんは目を細める。


柚子は、ずっと昔に“一番素敵な奏者”になっているよ。気が付いていないだけだ。」

『なってる…?それ、どういうこと…!?』

「“世界で一番”じゃない。“誰かにとっての一番”さ。」

『誰かに、とっての……』

「思い出してごらん、柚子……。つらい出来事の中に、大切な人の記憶があるから。」



つらい出来事の、中……?

大切な…人……?




柚子自身が、心の底から思い出したいと願っているから、この夢を見ているんだ。僕との思い出が……僕の最期が、最大のヒントだよ。」

『最期、って…』

「一つ一つ、思い出しておくれ。大丈夫だ、僕も一緒だから。」

『……うん、分かった…』


何かを訴えるような、お父さんのつらそうな瞳。

あたしは覚悟をしながら目を閉じた。

これから辿る記憶の糸は、きっと、もっとも辿りたくない糸であるのだと。

それでも、必要なら……!





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ミーティングを終え、ツナは席を立つ。


「じゃあ俺は、夕方の便でイタリアに発つ。タイトなスケジュールで悪いんだけど、早速……」

「ねぇ、」


それまで一言も発しなかった人物が、ようやくツナに呼びかけた。

いつものように「何ですか」と答えるツナに、彼は鋭い眼光を向ける。



「つまり、君は柚子を諦めた……そういう解釈でいいのかい?」

「なっ…雲雀!てめぇ…!!」

「僕は沢田に聞いてるんだけど。」


雲雀がそう言うと、ツナは溜め息を一つ。



「…そう捉えられても、仕方ないですね。この場合。」

「ふぅん、それなら…」



雲雀もスッと立ち上がり、退室しようと足を進める。

その去り際、ツナとのすれ違い際に言った。


「僕がもらってもいいんだ。」

「……柚子が、安全でいられるなら。」



少しの間の後に返された言葉は、絞り出されたようにか細く、苦悩を湛えていた。

しかし雲雀は、まるでその様子に気付かないという風に「そう」と立ち去る。


一番近くで二人の会話を聞いていたリボーンが、銃を磨きながら言った。


「いよいよ引けなくなって来たな、ツナ。」

「…最初から引くつもりなんてない。」




…そうだ。

もう、後には引けない。
引いちゃいけない。

決めたんだ。

どんなことになろうと、柚子を守るための、最善の道を行くって。

俺が考える最善の道を、貫くんだ。


頭の中で繰り返し覚悟する度に、
拳を握り直す度に、

ふっと柚子の言葉を思い出す。


俺にも幸せでいて欲しい、だなんて。

今までこうして振り回してきた俺が、幸せになんてなっていいワケないんだ。

柚子と笑い合う未来なんて、望んでいいハズないんだ。


出会えた奇跡にだけ、感謝して。

俺のことを好きでいてくれた、それだけで……



「10代目…?大丈夫ですか?」

「え、」

「顔色が、あまり良くないので…」


獄寺君が、心配そうに俺を見ていた。

いや、獄寺君だけじゃない。

山本も、了平さんも。



「ああ、ごめん。何でもない。」

「しかし…」

「もう大丈夫だよ、回復してるから。それじゃあ俺、荷造りしてくるよ。」




イタリアに行ったら、忙しくなるんだろうな。

そうすればきっと、柚子のことも忘れられる。

同じように柚子も、俺のことを……。



「あ、獄寺君、車の用意を頼んでいいかな?」

「分かりました。」

「夕方16時半の便に乗るから、それに間に合うように。」

「はい!」


獄寺の返事を聞き、退室しようとするツナ。

だが、ふと山本が声をかける。



「ツナ、」

「ん?」



彼にしては珍しく、言うか言うまいか、葛藤している表情だった。

が、パッといつもと同じ笑顔に変わる。


「あんまり無理すんなよな、ツナ。」

「山本……ありがとう。」



いささか弱々しい笑みを返し、ツナは今度こそ部屋を後にした。





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「始まりは、夏休みに入る頃だったね…。」

『うん……』



暑い、暑い、夏の日。

入院したお父さんの病名は、何故かあたしにだけ伝えられなかった。

けれど、その理由も分かっていた気がする。

あたしは……薄々勘付いていた。

お父さんと、お母さんと、3人で過ごせる時間は限られているのだ、と。



「その頃、練習していた曲は、何だったかな。」

『…ラデツキー行進曲……』



フルート教室のみんなで練習していた曲。

あたしも、お父さんに聞いてもらいながら練習を続けていた。


でも……

発表会の本番が来る前に、お父さんはこの世を去った。


遺されたあたしには、明るい曲なんて練習できなくて。

明るい音の一切が出せなくなってて。

フルートに触れる度、お父さんがもういないことを実感してしまって。


どうしようもなく、塞ぎ込んで……



「それでも当日は、素敵な演奏を披露できたね。発表会での柚子は、とても立派だった。」

『あたし、ちゃんと演奏できたんだ……』


「さあ、記憶を辿っていこう。柚子は、どうして当日に素晴らしい演奏を披露できたか。」

『あたし……どうやって…?』


「大丈夫、思い出せるさ。自分の心に問いかけるんだ、“どうやって乗り越えたのか”を。」



どうやって……どうやって乗り越えたの?

あたしは、あの哀しみの中で、どうして行進曲を吹けたの?


一体、“誰に向けて”吹いたの…?




『練習したのは……木の下、だった…』


「そうだね。」


『毎日暑かったけど……木陰は涼しくて……』


柚子はその時、一人だったかい?」


『…そう、一人で…………ううん、誰か、誰かが…!』




塞ぎ込んだ情けない音を、誰かが聞いててくれて…


あたしは、そこで初めて……!




「そこで初めて、“彼”に出会った。名前も知らない、たった一人の“観客”に。」


『初めて…思った……。自分のためじゃなくて……聞いてくれる、誰かのために……って…!』




ハッとして目を開いた時、そこにお父さんはいなかった。

代わりに、とても心配そうにあたしの顔を覗くシャマルさんが。



柚子ちゃん!」

『シャマル、さん…』

「大丈夫かい?ひどくうなされてたみてーだが……」

『あ、すみません……ご心配おかけして……』

「謝んないでくれって。よし、んじゃーリボーンに伝えてくっかな。柚子ちゃんが起きたってよ。」

『は、はい………じゃ、なくて!あのっ…!!』

「ん?」


その時、部屋のドアが開いた。

シャマルが振り向き、目を丸くする。



「何だ、お前がここに来るなんて珍しいじゃねーか。」

「あなたには関係ないよ。」

「まぁそう言うなって。柚子ちゃん、今ちょうど起きたところだぜ。タイミング良かったな。」

「今?…そう。」


そこでシャマルは入れ違いに部屋を出る。

代わりに、やって来た雲雀がベッド脇の椅子に座った。


『あ、雲雀さん…!』

「やぁ柚子、具合は?」

『あたしはもう大丈夫です!それで、あのっ…』


何かを伝えようとしながらも困惑している柚子を見て、雲雀はスッとその手を握った。

突然の感触に驚き、柚子は雲雀を見上げる。



「落ち着いて。何か僕に聞きたいことでもあるの?」

『はい、あの…………――さんはっ…』


緊張のためか、そこで言葉を途切れさせる柚子

小さく息を吸って吐き、雲雀に向かってもう一度言い直した。



『ツナさんは、今どこですか…!?』










エスポワール
些細な希望が見え始め、彼女は再び動き出す




continue…

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