🎼本編
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車の中で、ひたすら窓の外を見た。
どんなに早く移り変わっていく景色を見ても、気は紛れない。
きっと、柚子の無事が分かるまでは落ち着けない。
……いや、今回に限っては多分………
「ツナ、そろそろ着くぞ。」
「分かった。」
荒々しい運転の合間に、リボーンが言った。
グローブをつけた拳をぐっと握ると、山本がぽんっと手首の辺りを叩いた。
「あんま無理すんなよ、ツナ。」
「山本……ありがとう。」
敵は、敢えて逆探知を許した。
勝つ気満々ってトコなんだろう。
ただ……向こうには柚子がいる。
人質に取られている状態で、もしも盾にされたら……
最悪の事態を考えて、その時の対処も自分の中で確認して。
俺は、車を降りた。
「今回は俺がこっからナビゲートしてやる。加えて、柚子を保護するまでは骸が幻術でツナ達の姿を隠す。」
「ですが、今回に限ってはあまり油断しないで下さい。敵は、僕の幻術を見破れるようなので。」
「ハナから幻術なんざいらねーってんだ、俺らが囮になんだから十分だぜ。」
「まーまー獄寺。」
リボーンが俺達に無線をスルーパスする横で、悪態をつく獄寺君を山本がなだめる。
「骸、お前は怪我もしてるのだ。くれぐれも自分に負担はかけぬようにな。」
「分かっていますよ、笹川君。」
「では、参りましょう。柚子殿が心配です。」
「そうだな。」
骸が幻術を発動する気配がした。
多分、もう俺の姿は周りの景色と同化して誰にも見えていないだろう。
-「柚子を見つけたら知らせて下さい。柚子にのみ姿が見えるよう調整しますので。」
「了解。」
無線越しに聞こえた骸の言葉に返事をし、俺達は二手に分かれた。
俺は山本とバジルと共に、切り立った崖の上に聳え立つ洋館の塀を飛び越える。
獄寺君と雲雀さんと了平さんは、正面の門へと走って行った。
作戦はいたって容易で単純なもの。
俺達は二手に分かれて、片方は正面から幻術なしで殴り込む。
もう片方は高い塀がある東側の森に回って、忍び込む。
東側の塀を越えれば、厨房への裏口がある。
小型情報端末にインストールした見取り図を確認し、ドアをそうっと開けた。
と、同時に、正門の方で大きな爆音が響いた。
「(獄寺君だ…)」
「あちらは始まったようですね。」
「こっちも頑張らねーとな!」
「うん。」
誰もいない厨房を抜け、廊下を覗く。
囮が効いているようで、3人しか見回りがいない。
「沢田殿、ここは拙者が。」
「頼むよ。」
バジルはブーメランを一度投げただけで3人を気絶させ、俺達は洋館の奥へと進んだ。
考えてみれば、警備が手厚くなっている方へと進めばいい話だ。
しかも、山本とバジルがいいサポートをしてくれているおかげで、俺はグローブに炎を灯さないまま3階まで到達した。
「ココら辺は…さすがに多くなってきたな。」
「しかし恐らく柚子殿はこの奥です。あのドアの前、3人で見張っています。」
「……俺が直進する。2人とも、援護頼んでいいかな。」
「オッケ!」
「分かりました。」
この奥に、柚子がいる。
もうすぐ…危険な状況から助けることが出来る。
「それと、さ……頼みがあるんだ。」
「ん?」
「何でしょうか?」
「これから俺が取る行動、何も言わずに受け流して欲しい。」
2人は怪訝そうにしながらも、頷いた。
小さく礼を言って、俺は敵が多数いる廊下へと突っ込んでいく。
案の定、ここの敵は幻術の対策が出来ているようで、すぐに気付いて応戦してきた。
それでも、突き進む。
最愛の彼女が待つ場所へ。
「ボンゴレだっ!!応戦しろー!!」
「悪ぃな、通してもらうぜっ!」
山本が剣をふるって、
「くそっ…援護を…!!」
「そうはさせません!」
バジルがブーメランを的確に当てて、
「柚子は、返してもらう。」
俺も拳に炎を灯した。
バンッ、
強硬突破して一番奥の部屋のドアを蹴破った。
そこには、ドアに背を向ける状態で椅子に座らされ縛られている柚子がいて。
爆音やら悲鳴やらが聞こえてたせいで、カタカタと震えていた。
「柚子……」
安堵のままに零すように名前を呼ぶと、ビクッとしてから振り返る。
『つ……ツナさん……?』
「怪我は?」
『あ、あの、あたしっ……』
みるみるうちに瞳を潤ませるその姿に、思わず抱きしめそうになる。
その衝動を抑え込んで、伸ばした腕はそのまま柚子を縛るロープへと運んだ。
「指はまだ無事か?」
『そ、そんなコトっ……つ、ツナさん……早く、早く逃げて下さいっ…』
俺がロープを解く間にも、柚子は震える声でそう訴える。
『何で来ちゃったんですかっ……あたし、言ったのに……来ないで下さいって……ちゃんと言ったのにっ…!』
こんな時にまで俺の心配するなんて、本当にお人好しだ。
そんな柚子に、俺は恋したんだ。
そんな柚子だから、俺の全てをかけて守りたいと思った。
「俺が負けるとでも思ってるのかよ、いらない心配するなっつの。」
『違うんです…!あの人は、最初からっ……ツナさんを狙ってて…!』
「そっか。なら丁度いいな。」
ごめんな、柚子。
巻き込んじまって。
怖い思いさせて。
もう、大丈夫だから。
二度とこんな目には遭わせない。
「柚子、お前このまま杏香さんの所に帰れ。」
『……え?』
見開かれた柚子の瞳から、透明な雫がつぅっと流れた。
『ツナさん……それ、どういう…』
「言葉の通りだよ。7号館の家政婦生活は終わり。山本とバジルがもうすぐ廊下の敵を始末するから、送ってって貰えよ。」
目を合わせないようにして、俺は言った。
柚子は呆然と立ち尽くす。
「婚約者役も降りて良い。振り回されるの疲れたろ?」
『な、何で……ですか…?どうして急に…』
「頃合いを見計らってたんだ、ずっと。あ、今月分の給料は後日郵送で…」
『嘘、だったんですか?今まで、全部……』
俺の言葉を遮った柚子の返しに、思わず詰まった。
…嘘なワケあるかよ。
こっちがどんな思いで言ってるか、察しろよバカ柚子。
お前が俺にとってどのくらい大切なのかは、伝えてきた通りで偽りなんてない。
だからこそ、俺はもう……お前を手放すんだ。
俺の命より大切な柚子は、俺の最大の弱みでもあるから。
近くにいれば居るほど、危険に晒されてしまうから。
「……俺の演技力は、なかなかのモンだろ?」
真直ぐで単純な柚子だから、きっとそのまま受け取るんだろう。
今この瞬間が演技だとは、気づかないまま。
いいんだ、そうして俺を嫌えばいい。
俺から離れて、忘れてくれよ。
覚悟は、出来てるから。
俯いた柚子は、数秒間黙りっ放しだった。
「ツナ!柚子は無事か!?」
「柚子殿、お怪我は…!」
山本とバジルが全ての敵を片づけて部屋に入ってきた時に、ようやく口を開いた。
『………そう、ですよね。そうだと思ってました!』
震えを隠しきれない声で、わざと明るい笑顔を作って。
『あたしったら、勘違い甚だしいですよね!すみませんでした。』
それでいい、そのまま……元いた世界に、一般人の生活に戻ってくれよ。
俺は遠くから見守ってる。
沈んでいた俺を導いてくれた光のような朽葉さん…。
柚子は、その光を受け継いだ俺の“太陽”だから。
これからきっと、幸せな人生を歩めるハズだ。
俺は、静かに祝福する。
お前が気付かなくても、いつまでも想ってる。
だからもう、お別れだ。
「バジル、柚子をリボーンのトコに案内してくれ。」
「は、はい!柚子殿、歩けますか?」
『大丈夫です。お手数かけます…』
去り際に、柚子は一瞬俺を見た。
寂しそうな瞳で見上げ、『ツナさんのバカ』と零した。
そんな目で見るなよ、これが最善策なんだ。
俺なりに精一杯考えたんだ。
お前の幸せと平穏を、心から願ってるんだよ。
「(けど、さ……)」
ホント、俺はバカだよな。
結局自分の手でお前を守れなかったんだから。
だからせめて、償いはさせてくれよな。
「ツナ、大丈夫か?顔色悪ぃけどよ…」
「平気、何でもないよ。」
「これからどーすんだ?エストラーネオの奴ら、まだ戦う気みてーだけど。」
窓の外を見る山本は、獄寺君達と交戦している男たちを指して言う。
多分あいつらは、トップが倒れない限り屈しない。
だったら……
「……山本、」
「ん?」
「俺、行ってくるよ。」
「まだどっか鎮圧してねートコ、あったか?」
「…トップだ。」
外の戦いを離れのバルコニーから見つめる男の姿を、俺はハッキリと視認した。
アイツが……
俺の尊敬する顔をかぶったあの男が……
柚子を攫って、傷つけた。
「決着は、俺につけさせてくれ。」
結構な距離があるハズなのに、敵の大将と目が合ったような気がした。
サタン
悪魔のような言動に走ってでも、太陽だけは守りたかった
continue...
どんなに早く移り変わっていく景色を見ても、気は紛れない。
きっと、柚子の無事が分かるまでは落ち着けない。
……いや、今回に限っては多分………
「ツナ、そろそろ着くぞ。」
「分かった。」
荒々しい運転の合間に、リボーンが言った。
グローブをつけた拳をぐっと握ると、山本がぽんっと手首の辺りを叩いた。
「あんま無理すんなよ、ツナ。」
「山本……ありがとう。」
敵は、敢えて逆探知を許した。
勝つ気満々ってトコなんだろう。
ただ……向こうには柚子がいる。
人質に取られている状態で、もしも盾にされたら……
最悪の事態を考えて、その時の対処も自分の中で確認して。
俺は、車を降りた。
「今回は俺がこっからナビゲートしてやる。加えて、柚子を保護するまでは骸が幻術でツナ達の姿を隠す。」
「ですが、今回に限ってはあまり油断しないで下さい。敵は、僕の幻術を見破れるようなので。」
「ハナから幻術なんざいらねーってんだ、俺らが囮になんだから十分だぜ。」
「まーまー獄寺。」
リボーンが俺達に無線をスルーパスする横で、悪態をつく獄寺君を山本がなだめる。
「骸、お前は怪我もしてるのだ。くれぐれも自分に負担はかけぬようにな。」
「分かっていますよ、笹川君。」
「では、参りましょう。柚子殿が心配です。」
「そうだな。」
骸が幻術を発動する気配がした。
多分、もう俺の姿は周りの景色と同化して誰にも見えていないだろう。
-「柚子を見つけたら知らせて下さい。柚子にのみ姿が見えるよう調整しますので。」
「了解。」
無線越しに聞こえた骸の言葉に返事をし、俺達は二手に分かれた。
俺は山本とバジルと共に、切り立った崖の上に聳え立つ洋館の塀を飛び越える。
獄寺君と雲雀さんと了平さんは、正面の門へと走って行った。
作戦はいたって容易で単純なもの。
俺達は二手に分かれて、片方は正面から幻術なしで殴り込む。
もう片方は高い塀がある東側の森に回って、忍び込む。
東側の塀を越えれば、厨房への裏口がある。
小型情報端末にインストールした見取り図を確認し、ドアをそうっと開けた。
と、同時に、正門の方で大きな爆音が響いた。
「(獄寺君だ…)」
「あちらは始まったようですね。」
「こっちも頑張らねーとな!」
「うん。」
誰もいない厨房を抜け、廊下を覗く。
囮が効いているようで、3人しか見回りがいない。
「沢田殿、ここは拙者が。」
「頼むよ。」
バジルはブーメランを一度投げただけで3人を気絶させ、俺達は洋館の奥へと進んだ。
考えてみれば、警備が手厚くなっている方へと進めばいい話だ。
しかも、山本とバジルがいいサポートをしてくれているおかげで、俺はグローブに炎を灯さないまま3階まで到達した。
「ココら辺は…さすがに多くなってきたな。」
「しかし恐らく柚子殿はこの奥です。あのドアの前、3人で見張っています。」
「……俺が直進する。2人とも、援護頼んでいいかな。」
「オッケ!」
「分かりました。」
この奥に、柚子がいる。
もうすぐ…危険な状況から助けることが出来る。
「それと、さ……頼みがあるんだ。」
「ん?」
「何でしょうか?」
「これから俺が取る行動、何も言わずに受け流して欲しい。」
2人は怪訝そうにしながらも、頷いた。
小さく礼を言って、俺は敵が多数いる廊下へと突っ込んでいく。
案の定、ここの敵は幻術の対策が出来ているようで、すぐに気付いて応戦してきた。
それでも、突き進む。
最愛の彼女が待つ場所へ。
「ボンゴレだっ!!応戦しろー!!」
「悪ぃな、通してもらうぜっ!」
山本が剣をふるって、
「くそっ…援護を…!!」
「そうはさせません!」
バジルがブーメランを的確に当てて、
「柚子は、返してもらう。」
俺も拳に炎を灯した。
バンッ、
強硬突破して一番奥の部屋のドアを蹴破った。
そこには、ドアに背を向ける状態で椅子に座らされ縛られている柚子がいて。
爆音やら悲鳴やらが聞こえてたせいで、カタカタと震えていた。
「柚子……」
安堵のままに零すように名前を呼ぶと、ビクッとしてから振り返る。
『つ……ツナさん……?』
「怪我は?」
『あ、あの、あたしっ……』
みるみるうちに瞳を潤ませるその姿に、思わず抱きしめそうになる。
その衝動を抑え込んで、伸ばした腕はそのまま柚子を縛るロープへと運んだ。
「指はまだ無事か?」
『そ、そんなコトっ……つ、ツナさん……早く、早く逃げて下さいっ…』
俺がロープを解く間にも、柚子は震える声でそう訴える。
『何で来ちゃったんですかっ……あたし、言ったのに……来ないで下さいって……ちゃんと言ったのにっ…!』
こんな時にまで俺の心配するなんて、本当にお人好しだ。
そんな柚子に、俺は恋したんだ。
そんな柚子だから、俺の全てをかけて守りたいと思った。
「俺が負けるとでも思ってるのかよ、いらない心配するなっつの。」
『違うんです…!あの人は、最初からっ……ツナさんを狙ってて…!』
「そっか。なら丁度いいな。」
ごめんな、柚子。
巻き込んじまって。
怖い思いさせて。
もう、大丈夫だから。
二度とこんな目には遭わせない。
「柚子、お前このまま杏香さんの所に帰れ。」
『……え?』
見開かれた柚子の瞳から、透明な雫がつぅっと流れた。
『ツナさん……それ、どういう…』
「言葉の通りだよ。7号館の家政婦生活は終わり。山本とバジルがもうすぐ廊下の敵を始末するから、送ってって貰えよ。」
目を合わせないようにして、俺は言った。
柚子は呆然と立ち尽くす。
「婚約者役も降りて良い。振り回されるの疲れたろ?」
『な、何で……ですか…?どうして急に…』
「頃合いを見計らってたんだ、ずっと。あ、今月分の給料は後日郵送で…」
『嘘、だったんですか?今まで、全部……』
俺の言葉を遮った柚子の返しに、思わず詰まった。
…嘘なワケあるかよ。
こっちがどんな思いで言ってるか、察しろよバカ柚子。
お前が俺にとってどのくらい大切なのかは、伝えてきた通りで偽りなんてない。
だからこそ、俺はもう……お前を手放すんだ。
俺の命より大切な柚子は、俺の最大の弱みでもあるから。
近くにいれば居るほど、危険に晒されてしまうから。
「……俺の演技力は、なかなかのモンだろ?」
真直ぐで単純な柚子だから、きっとそのまま受け取るんだろう。
今この瞬間が演技だとは、気づかないまま。
いいんだ、そうして俺を嫌えばいい。
俺から離れて、忘れてくれよ。
覚悟は、出来てるから。
俯いた柚子は、数秒間黙りっ放しだった。
「ツナ!柚子は無事か!?」
「柚子殿、お怪我は…!」
山本とバジルが全ての敵を片づけて部屋に入ってきた時に、ようやく口を開いた。
『………そう、ですよね。そうだと思ってました!』
震えを隠しきれない声で、わざと明るい笑顔を作って。
『あたしったら、勘違い甚だしいですよね!すみませんでした。』
それでいい、そのまま……元いた世界に、一般人の生活に戻ってくれよ。
俺は遠くから見守ってる。
沈んでいた俺を導いてくれた光のような朽葉さん…。
柚子は、その光を受け継いだ俺の“太陽”だから。
これからきっと、幸せな人生を歩めるハズだ。
俺は、静かに祝福する。
お前が気付かなくても、いつまでも想ってる。
だからもう、お別れだ。
「バジル、柚子をリボーンのトコに案内してくれ。」
「は、はい!柚子殿、歩けますか?」
『大丈夫です。お手数かけます…』
去り際に、柚子は一瞬俺を見た。
寂しそうな瞳で見上げ、『ツナさんのバカ』と零した。
そんな目で見るなよ、これが最善策なんだ。
俺なりに精一杯考えたんだ。
お前の幸せと平穏を、心から願ってるんだよ。
「(けど、さ……)」
ホント、俺はバカだよな。
結局自分の手でお前を守れなかったんだから。
だからせめて、償いはさせてくれよな。
「ツナ、大丈夫か?顔色悪ぃけどよ…」
「平気、何でもないよ。」
「これからどーすんだ?エストラーネオの奴ら、まだ戦う気みてーだけど。」
窓の外を見る山本は、獄寺君達と交戦している男たちを指して言う。
多分あいつらは、トップが倒れない限り屈しない。
だったら……
「……山本、」
「ん?」
「俺、行ってくるよ。」
「まだどっか鎮圧してねートコ、あったか?」
「…トップだ。」
外の戦いを離れのバルコニーから見つめる男の姿を、俺はハッキリと視認した。
アイツが……
俺の尊敬する顔をかぶったあの男が……
柚子を攫って、傷つけた。
「決着は、俺につけさせてくれ。」
結構な距離があるハズなのに、敵の大将と目が合ったような気がした。
サタン
悪魔のような言動に走ってでも、太陽だけは守りたかった
continue...