🎼本編
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こんにちは、柚子です。
本日はいい天気で、あたしの気分はウキウキです♪
授業も2限からなのでゆったり身支度できますし、更に……
コンコン、
「柚子、入るよ。」
『どわぁっ!!』
「今日の4限なんだけど……何してんだよ。」
『“何してんだよ”じゃありません!!どーして突然入って来るんですかぁ!!ま、まだ着替え中ですっ!!///』
慌てて隠すために、また毛布にくるまって頭だけ出すあたし。
う~~~ツナさんのバカ!
「何だよ、着替えてなかったのか。てか、俺は全然見せてくれて構わないけど。」
『あたしが嫌なんです!!』
意地悪そうに笑うツナさんは、どこか愉しそう。
いつか、振り回されない日が来るんだろうか。
……無理だよね、あたし一生ツナさんに勝てる気がしないや…。
『そ、それで…4限の授業がどうかしたんですか?』
今日のあたしの時間割は、2~4限までで終わり。
そして、4限の授業はツナさんと一緒だ。
オペラの構成や歴史を学ぶ授業で、あたしは結構気に入ってる。
「今日、“トゥーランドット”観る予定だっただろ?」
『はい!だからあたし楽しみで楽しみで!』
今まで講義ばかりだったから、今回は実際にDVD鑑賞する予定なのだ。
生じゃないのは残念だけど、オペラを観れるのはとっても嬉しい♪
「じゃあサボろうか。」
『えぇっ!!?あ、あの…ツナさん?』
「何だよ。」
『あたし…観たいんですけど……』
“楽しみ”って言ったの、聞こえなかったのかな?
それとも、いつもの嫌がらせ…!?
「いくら何でも、1週間に同じの2回は飽きるだろ。」
『へ…?』
話が見えずに首を傾げると、「後で話してやるから着替えて来い」と。
『わ、分かりました…』
「広間にいるから。」
『はい。』
気になるから急いで着替えて、荷物を持って広間に走ってく。
ツナさんはゆったりとコーヒーを飲んでいた。
「あぁ柚子、コレ見てみろよ。」
『何ですか?パンフレット…?』
そこに書いてある題目は、『トゥーランドット』。
え、しかもコレ……有名なオペラ歌手の名前がざらっと並んでる…!?
『ど、どうしたんですかコレ!』
「ボンゴレ10代目として招待された。柚子も行くだろ?」
『えっ…あたしも、宜しいんですか?』
「チケットは申請した分だけ貰えるし。特別枠だし。」
ぽかーんとしながらも、感動していた。
有名オペラ歌手のトゥーランドットを……生で観れる!!?
うそ…夢みたい……
ふと気付くと、ツナさんはクスクス笑っていて。
『な、何ですか…?』
「いや……お前、ホント可愛いなって思ってさ。」
『そっ…そーゆーコトはサラッと言うもんじゃないです!プレイボーイは自粛して下さい!!///』
「だから、安心しろって。柚子にしか言わないから。」
また、そんな風に言って…
あたしばっかり照れるの、何かちょっと悔しいじゃないですか。
「つーワケで、週末に見に行けるから今日の4限はサボる。いいな?」
『でも……』
「柚子は真面目過ぎ。あの授業、出席取らねーし、問題ないだろ?」
『まぁ、そうですけど…』
「よし決まり。」
この横暴ボスは…!
「何か言った?」
『いえ何も!』
黒笑いにビビったところで、出発時間になった。
ツナさんは、面倒だから2限には少し遅れて行く、と。
まったく、そんな自主遅刻を許すなんて、大学側は一体どんなプレッシャーをかけられてるんだか。
もしかしたら、資金提供されてるとか…?
…ま、いーや。
あたしが考えるようなことじゃないし。
最近、ツナさんの横暴があんまり横暴じゃないように思えてきた。
それは免疫なのか、それともあたしが……
「よっ、柚子!」
『あ、山本さんっ!』
ラッキー♪
山本さんとこんなトコで会えるなんて!
ここんトコ、山本さんは早朝練習で忙しいらしく、あたしが起きるよりも早く7号館を出てしまうのだ。
『お疲れ様です。』
「ん?あ、あぁ!」
『山本さんはもう聞いてます?今度、オペラ観に行くってツナさんが…』
「聞いてるぜ、だからその日に備えてトレーニング…」
『へ?』
オペラ観に行くのに、トレーニング??
試合とかあるんじゃなくて…??
疑問符を浮かべるあたしを見て、山本さんは慌てて口を閉ざした。
「いや、何でもねぇ!じゃーな柚子っ!」
『あ……、』
どうしたんだろう……
何処となく、いつもと違う感じがするのは気のせい?
走り去る山本さんの背を見ながら、う~んと手に顎を当てた。
とりあえず教室に行き、席に着く。
授業中も、あたしは教授の話を聞かないままボーッと思いを巡らせていた。
考えてみれば、皆さんの様子はちょっとずつ普段と違うような…
そんな気がしていたのだ。
獄寺さんは、こないだ「全力でお前を守る」とか言ったきりピリピリしてるし、
山本さんは、最近夕飯の時ぐらいにしか顔を合わせない。
了平さんは、あたしにボクシング勧誘を頻繁にするようになったし、
リボーンさんは、「銃を持っとけ」とか物騒なことを言う。
雲雀さんは、大学在籍なんてしてないみたいに授業をサボって毎日外出だし、
骸さんは、「買い物は僕だけで行きますからメモを下さい」という意味不明発言。
ツナさんですら……少し変わった。
前よりずっと、ずっとずーっと優しくなった。
そりゃあ、黒笑いと横暴発言は健在だし、突然抱きしめたり、「俺の柚子」とか言ったりもするけど……でも、
音が、変わった。
ツナさんが生み出すバイオリンの音色は、柔らかくて甘美になった。
聞いてるだけで、囁かれているような。
隠しがたい情熱を帯びているような。
『(もしかして……あたしが変わった、のかな…?)』
あたしの耳が、公平じゃなくなっちゃったんだろうか。
ツナさんの音を都合よく捉えるようになっちゃったんだろうか。
ツナさんの横暴発言に関しても同じ。
あたしが、ツナさんを好きになって、横暴を横暴と捉えないようになっちゃったのかも……。
あ、変わってない人、いた!
バジルさんは、今までと変わらず家事を手伝ってくれるし、相変わらずあたしを“本物の婚約者”だって勘違いして…
そこで、はたと気付いた。
あたしの立場は今、どうなっているのだろうかと。
---「俺、もう柚子のこと放すつもり無いから。」
こないだ、ツナさんは確かにそう言ってくれた。
けどそれは……ツナさんの立場的には無理なんじゃないかって思う。
だってあたしは一般人で、ツナさんはマフィアの次期ボスで……
もしかして、側室っぽく傍に置いてくれるのかなぁ…
それはそれで嬉しいような悲しいような。
けどツナさんにはもっとピッタリな人がいるってことも分かってるし、
例えばハルさんとか。
骸さんに対抗できるハルさんは、凄くいい奥様になれると思う。
『(あ、授業終わっちゃった…)』
結局、2限はほとんど聞かずじまいだった。
少し遠くの教室に移動して、3限の音楽療法についての授業を受ける。
少し難しいけど、講義自体は面白いから余計な考え事はしないまま90分過ごせた。
---
------
------------
「やっぱりいた、柚子!」
『あ、ツナさん…』
3限終了後、サボるにはどうしたら分からず4限の教室に向かってしまったあたし。
するとそこに、ひらっと手を振るツナさん。
相変わらず周りはキャーキャー言ってる。
ツナさんの半径2メートルは空洞みたいになってて、その周りに人だかり。
大物って、こんな感じなのかな。
逆に近寄りがたい的な。
「行こうか。」
『ど、何処にですか?』
てゆーか、公衆の面前で手ぇ握るとか!!
もしや…恥っていう概念が無い!?
「あるけど、今は別に恥ずかしくないし。」
『(読まれてた…!)』
「だってそうだろ?俺の柚子の手なんだから、握るの躊躇う必要無いし。」
『あ、あたしが恥ずかしいんです!』
何でツナさんはこう…肝が据わってるというか、大胆というか…///
『って、てゆーかあのっ…どちらに向かってるんですか!?』
「え?街だけど。」
『何か、お買い物でも…?』
「そ、デート。」
……いやいやいや!!
今の返事おかしいです!!
誰が「お買い物=デート」って決めましたか!?
「俺だよ。」
『(うん、もう何も反論しないことにしよう…)』
「いい選択だな。」
その笑顔に心臓を跳ねさせてしまうのは、あたしが相当おかしくなった証拠なのかも。
あたしが変わったから、皆さんの変化にも気付いた?
それとも…あたしが変わったから、皆さんが変わった?
分からない……今、7号館に起きてる小さな変化が、良いものなのか悪いものなのか。
『ツナさん、』
「ん?」
『あたしは……』
自分でも、分かってた。
あたしは今、とんでもないことを聞こうとしてる。
街は活気に溢れてて、行き交う人々は今日も幸せそうで。
あたしも、ツナさんに手を引かれて幸せ空間を歩いてて。
なのに今、それを自分で壊そうとしてる。
こんな質問をしたら……
「……公園でも行こうか。」
『えっ…?』
「話、あるんだろ?」
あたしの態度で分かってしまったのか、ツナさんは見抜いてた。
小さく頷くと、くるりと方向転換して違う道を行く。
この手は……いつまであたしの手を握っていてくれるのかな…
あたしは、やっぱりツナさんと吊り合わない人間なんだもの。
分かってるのに、ツナさんが「愛してる」って言ってくれたのが嬉しくて。
聞きたいことは、ただ一つだった。
“あたしは、いつまで貴方の傍にいられますか?”
---
-------
-------------
7号館の裏口のドアが開く。
帰って来たのは、トンファーに血を滴らせた雲雀だった。
「お帰りなさい、雲雀君。」
「……僕、今機嫌が悪いんだけど。」
「そうだと思って用意したんですよ、次のリストです。」
「…そう、まだいるんだ。」
小さくため息をつく雲雀に、骸もこめかみを掻く。
「本当に、正式に決まった途端コレですからね……」
「僕は獲物が増えるのは構わないよ。」
「しかし、君一人で対処するには限界も訪れるハズです。あちらもそこまで愚かではない。」
その言葉に雲雀が眼光を鋭くすると、骸は制止するように手の平を向けた。
「雲雀君は一人しかいませんから、複数の地点で同時に行動を起こされると対処できない、という意味です。」
「……だから山本や笹川がいるんでしょ。」
「無論そうですが……」
ふと、骸は廊下の向こうに目を向ける。
歩いてきたのはリボーンだった。
「ご苦労だったな、雲雀。」
「そっちはどうなの。」
「柚子にはバレてねーぞ。ただそれも……時間の問題だな。」
「やはりそうですか…」
骸はふぅと肩を落とし、雲雀は黙って自室に足を進めて行った。
「山本が、今日ボロを出しそうになっちまったみてーだ。」
「おやおや、早過ぎますよ。」
「仕方ねーだろ、アイツは元から隠しごとが苦手なんだ。」
骸とリボーンが会話する中、雲雀が再び自室から出てくる。
先ほどトンファーに付着していた血は、跡形もなく拭き取られていた。
「行って来る。」
「どんぐれー掛かりそうだ?」
「すぐ済むよ。」
「夕飯までには帰れよ、じゃねーと柚子が気にするからな。」
「……そうだね。」
一瞬だけ立ち止まった雲雀は、数分前に骸が渡したリストを持って外に出た。
それを見送ったリボーンと骸の表情は、深刻そのものだった。
「お二方、宜しいですか?」
「何だ?バジル。」
「たった今、親方様から連絡が入りました。やはり……狙われ所は週末のオペラだと。」
「…だろーな。」
数秒の沈黙が流れた後、バジルが重たい口を開く。
「こうなっては…柚子殿にも言うべきでは?」
「確かに、敢えて人の多い会場に行くなど……」
「おめーら、ツナの指示を忘れたのか?」
リボーンの言葉に、バジルと骸は口を閉ざした。
「余計な心配させて、柚子の笑顔を消すワケにはいかねーんだ。」
黒いハットの下にある瞳は、強い光を持っていた。
ターゲット
彼女を取り巻く彼らの意思に、彼女が気付くことは無く
continue...
本日はいい天気で、あたしの気分はウキウキです♪
授業も2限からなのでゆったり身支度できますし、更に……
コンコン、
「柚子、入るよ。」
『どわぁっ!!』
「今日の4限なんだけど……何してんだよ。」
『“何してんだよ”じゃありません!!どーして突然入って来るんですかぁ!!ま、まだ着替え中ですっ!!///』
慌てて隠すために、また毛布にくるまって頭だけ出すあたし。
う~~~ツナさんのバカ!
「何だよ、着替えてなかったのか。てか、俺は全然見せてくれて構わないけど。」
『あたしが嫌なんです!!』
意地悪そうに笑うツナさんは、どこか愉しそう。
いつか、振り回されない日が来るんだろうか。
……無理だよね、あたし一生ツナさんに勝てる気がしないや…。
『そ、それで…4限の授業がどうかしたんですか?』
今日のあたしの時間割は、2~4限までで終わり。
そして、4限の授業はツナさんと一緒だ。
オペラの構成や歴史を学ぶ授業で、あたしは結構気に入ってる。
「今日、“トゥーランドット”観る予定だっただろ?」
『はい!だからあたし楽しみで楽しみで!』
今まで講義ばかりだったから、今回は実際にDVD鑑賞する予定なのだ。
生じゃないのは残念だけど、オペラを観れるのはとっても嬉しい♪
「じゃあサボろうか。」
『えぇっ!!?あ、あの…ツナさん?』
「何だよ。」
『あたし…観たいんですけど……』
“楽しみ”って言ったの、聞こえなかったのかな?
それとも、いつもの嫌がらせ…!?
「いくら何でも、1週間に同じの2回は飽きるだろ。」
『へ…?』
話が見えずに首を傾げると、「後で話してやるから着替えて来い」と。
『わ、分かりました…』
「広間にいるから。」
『はい。』
気になるから急いで着替えて、荷物を持って広間に走ってく。
ツナさんはゆったりとコーヒーを飲んでいた。
「あぁ柚子、コレ見てみろよ。」
『何ですか?パンフレット…?』
そこに書いてある題目は、『トゥーランドット』。
え、しかもコレ……有名なオペラ歌手の名前がざらっと並んでる…!?
『ど、どうしたんですかコレ!』
「ボンゴレ10代目として招待された。柚子も行くだろ?」
『えっ…あたしも、宜しいんですか?』
「チケットは申請した分だけ貰えるし。特別枠だし。」
ぽかーんとしながらも、感動していた。
有名オペラ歌手のトゥーランドットを……生で観れる!!?
うそ…夢みたい……
ふと気付くと、ツナさんはクスクス笑っていて。
『な、何ですか…?』
「いや……お前、ホント可愛いなって思ってさ。」
『そっ…そーゆーコトはサラッと言うもんじゃないです!プレイボーイは自粛して下さい!!///』
「だから、安心しろって。柚子にしか言わないから。」
また、そんな風に言って…
あたしばっかり照れるの、何かちょっと悔しいじゃないですか。
「つーワケで、週末に見に行けるから今日の4限はサボる。いいな?」
『でも……』
「柚子は真面目過ぎ。あの授業、出席取らねーし、問題ないだろ?」
『まぁ、そうですけど…』
「よし決まり。」
この横暴ボスは…!
「何か言った?」
『いえ何も!』
黒笑いにビビったところで、出発時間になった。
ツナさんは、面倒だから2限には少し遅れて行く、と。
まったく、そんな自主遅刻を許すなんて、大学側は一体どんなプレッシャーをかけられてるんだか。
もしかしたら、資金提供されてるとか…?
…ま、いーや。
あたしが考えるようなことじゃないし。
最近、ツナさんの横暴があんまり横暴じゃないように思えてきた。
それは免疫なのか、それともあたしが……
「よっ、柚子!」
『あ、山本さんっ!』
ラッキー♪
山本さんとこんなトコで会えるなんて!
ここんトコ、山本さんは早朝練習で忙しいらしく、あたしが起きるよりも早く7号館を出てしまうのだ。
『お疲れ様です。』
「ん?あ、あぁ!」
『山本さんはもう聞いてます?今度、オペラ観に行くってツナさんが…』
「聞いてるぜ、だからその日に備えてトレーニング…」
『へ?』
オペラ観に行くのに、トレーニング??
試合とかあるんじゃなくて…??
疑問符を浮かべるあたしを見て、山本さんは慌てて口を閉ざした。
「いや、何でもねぇ!じゃーな柚子っ!」
『あ……、』
どうしたんだろう……
何処となく、いつもと違う感じがするのは気のせい?
走り去る山本さんの背を見ながら、う~んと手に顎を当てた。
とりあえず教室に行き、席に着く。
授業中も、あたしは教授の話を聞かないままボーッと思いを巡らせていた。
考えてみれば、皆さんの様子はちょっとずつ普段と違うような…
そんな気がしていたのだ。
獄寺さんは、こないだ「全力でお前を守る」とか言ったきりピリピリしてるし、
山本さんは、最近夕飯の時ぐらいにしか顔を合わせない。
了平さんは、あたしにボクシング勧誘を頻繁にするようになったし、
リボーンさんは、「銃を持っとけ」とか物騒なことを言う。
雲雀さんは、大学在籍なんてしてないみたいに授業をサボって毎日外出だし、
骸さんは、「買い物は僕だけで行きますからメモを下さい」という意味不明発言。
ツナさんですら……少し変わった。
前よりずっと、ずっとずーっと優しくなった。
そりゃあ、黒笑いと横暴発言は健在だし、突然抱きしめたり、「俺の柚子」とか言ったりもするけど……でも、
音が、変わった。
ツナさんが生み出すバイオリンの音色は、柔らかくて甘美になった。
聞いてるだけで、囁かれているような。
隠しがたい情熱を帯びているような。
『(もしかして……あたしが変わった、のかな…?)』
あたしの耳が、公平じゃなくなっちゃったんだろうか。
ツナさんの音を都合よく捉えるようになっちゃったんだろうか。
ツナさんの横暴発言に関しても同じ。
あたしが、ツナさんを好きになって、横暴を横暴と捉えないようになっちゃったのかも……。
あ、変わってない人、いた!
バジルさんは、今までと変わらず家事を手伝ってくれるし、相変わらずあたしを“本物の婚約者”だって勘違いして…
そこで、はたと気付いた。
あたしの立場は今、どうなっているのだろうかと。
---「俺、もう柚子のこと放すつもり無いから。」
こないだ、ツナさんは確かにそう言ってくれた。
けどそれは……ツナさんの立場的には無理なんじゃないかって思う。
だってあたしは一般人で、ツナさんはマフィアの次期ボスで……
もしかして、側室っぽく傍に置いてくれるのかなぁ…
それはそれで嬉しいような悲しいような。
けどツナさんにはもっとピッタリな人がいるってことも分かってるし、
例えばハルさんとか。
骸さんに対抗できるハルさんは、凄くいい奥様になれると思う。
『(あ、授業終わっちゃった…)』
結局、2限はほとんど聞かずじまいだった。
少し遠くの教室に移動して、3限の音楽療法についての授業を受ける。
少し難しいけど、講義自体は面白いから余計な考え事はしないまま90分過ごせた。
---
------
------------
「やっぱりいた、柚子!」
『あ、ツナさん…』
3限終了後、サボるにはどうしたら分からず4限の教室に向かってしまったあたし。
するとそこに、ひらっと手を振るツナさん。
相変わらず周りはキャーキャー言ってる。
ツナさんの半径2メートルは空洞みたいになってて、その周りに人だかり。
大物って、こんな感じなのかな。
逆に近寄りがたい的な。
「行こうか。」
『ど、何処にですか?』
てゆーか、公衆の面前で手ぇ握るとか!!
もしや…恥っていう概念が無い!?
「あるけど、今は別に恥ずかしくないし。」
『(読まれてた…!)』
「だってそうだろ?俺の柚子の手なんだから、握るの躊躇う必要無いし。」
『あ、あたしが恥ずかしいんです!』
何でツナさんはこう…肝が据わってるというか、大胆というか…///
『って、てゆーかあのっ…どちらに向かってるんですか!?』
「え?街だけど。」
『何か、お買い物でも…?』
「そ、デート。」
……いやいやいや!!
今の返事おかしいです!!
誰が「お買い物=デート」って決めましたか!?
「俺だよ。」
『(うん、もう何も反論しないことにしよう…)』
「いい選択だな。」
その笑顔に心臓を跳ねさせてしまうのは、あたしが相当おかしくなった証拠なのかも。
あたしが変わったから、皆さんの変化にも気付いた?
それとも…あたしが変わったから、皆さんが変わった?
分からない……今、7号館に起きてる小さな変化が、良いものなのか悪いものなのか。
『ツナさん、』
「ん?」
『あたしは……』
自分でも、分かってた。
あたしは今、とんでもないことを聞こうとしてる。
街は活気に溢れてて、行き交う人々は今日も幸せそうで。
あたしも、ツナさんに手を引かれて幸せ空間を歩いてて。
なのに今、それを自分で壊そうとしてる。
こんな質問をしたら……
「……公園でも行こうか。」
『えっ…?』
「話、あるんだろ?」
あたしの態度で分かってしまったのか、ツナさんは見抜いてた。
小さく頷くと、くるりと方向転換して違う道を行く。
この手は……いつまであたしの手を握っていてくれるのかな…
あたしは、やっぱりツナさんと吊り合わない人間なんだもの。
分かってるのに、ツナさんが「愛してる」って言ってくれたのが嬉しくて。
聞きたいことは、ただ一つだった。
“あたしは、いつまで貴方の傍にいられますか?”
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7号館の裏口のドアが開く。
帰って来たのは、トンファーに血を滴らせた雲雀だった。
「お帰りなさい、雲雀君。」
「……僕、今機嫌が悪いんだけど。」
「そうだと思って用意したんですよ、次のリストです。」
「…そう、まだいるんだ。」
小さくため息をつく雲雀に、骸もこめかみを掻く。
「本当に、正式に決まった途端コレですからね……」
「僕は獲物が増えるのは構わないよ。」
「しかし、君一人で対処するには限界も訪れるハズです。あちらもそこまで愚かではない。」
その言葉に雲雀が眼光を鋭くすると、骸は制止するように手の平を向けた。
「雲雀君は一人しかいませんから、複数の地点で同時に行動を起こされると対処できない、という意味です。」
「……だから山本や笹川がいるんでしょ。」
「無論そうですが……」
ふと、骸は廊下の向こうに目を向ける。
歩いてきたのはリボーンだった。
「ご苦労だったな、雲雀。」
「そっちはどうなの。」
「柚子にはバレてねーぞ。ただそれも……時間の問題だな。」
「やはりそうですか…」
骸はふぅと肩を落とし、雲雀は黙って自室に足を進めて行った。
「山本が、今日ボロを出しそうになっちまったみてーだ。」
「おやおや、早過ぎますよ。」
「仕方ねーだろ、アイツは元から隠しごとが苦手なんだ。」
骸とリボーンが会話する中、雲雀が再び自室から出てくる。
先ほどトンファーに付着していた血は、跡形もなく拭き取られていた。
「行って来る。」
「どんぐれー掛かりそうだ?」
「すぐ済むよ。」
「夕飯までには帰れよ、じゃねーと柚子が気にするからな。」
「……そうだね。」
一瞬だけ立ち止まった雲雀は、数分前に骸が渡したリストを持って外に出た。
それを見送ったリボーンと骸の表情は、深刻そのものだった。
「お二方、宜しいですか?」
「何だ?バジル。」
「たった今、親方様から連絡が入りました。やはり……狙われ所は週末のオペラだと。」
「…だろーな。」
数秒の沈黙が流れた後、バジルが重たい口を開く。
「こうなっては…柚子殿にも言うべきでは?」
「確かに、敢えて人の多い会場に行くなど……」
「おめーら、ツナの指示を忘れたのか?」
リボーンの言葉に、バジルと骸は口を閉ざした。
「余計な心配させて、柚子の笑顔を消すワケにはいかねーんだ。」
黒いハットの下にある瞳は、強い光を持っていた。
ターゲット
彼女を取り巻く彼らの意思に、彼女が気付くことは無く
continue...