🎼本編
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『おはようございます、リボーンさん。』
「ん?早ぇじゃねーか。」
ツナさんから昔話を聞いた翌日。
大広間のドアを開けると、朝のコーヒータイムを満喫しているリボーンさんが既にいた。
この人、一体いつも何時に起きてるんだろう…
てゆーか、毎日ちゃんと寝てるのかな…
「寝てるぞ。」
『よ、読まないで下さいっ!』
「ところで柚子、今日何かあんのか?」
『えっと、少し早めに学校行こうと思いまして…』
何となくだけど、今日は早く学校に行きたくて。
というか7号館に居づらいのかも知れない…
あ、あたしってば昨日…ツナさんに告白されて………
---「俺も今、夢みたいな気分だから……確かめさせろ。」
『(って、思い出しちゃダメダメっ!!///)』
紅潮しそうな頬を押さえて、首を振る。
『と、とにかく!すぐに朝ごはん用意しますねっ!』
「………柚子、」
『え?は、はい…』
大広間を飛び出そうとしたあたしを、リボーンさんは咄嗟に呼びとめて。
「良かったな。」
『なっ…!』
ニッて笑うもんだから、あたしの思い出しすら読まれていたことを察した。
あああ恥ずかしい…!!
完全に脳内がパニックになったあたしが、リボーンさんに何か言い返せるハズもなく。
逃げるようにダッシュして、キッチンへ向かった。
----------
「おっ!柚子!」
『あっ、お、おはようございます山本さん!』
「あぁ、おはよ!」
キッチンでは、今朝のロードワークを終わらせた山本さんが、スポーツドリンクを飲んでいた。
じきに了平さんも帰って来るそうだ。
「毎朝ありがとな、柚子。」
『いえいえっ!家政婦ですから!』
自分で言って、はたと気がつく。
あたしはただの家政婦であって、あくまで婚約者は役割…
昨日は勝手に舞い上がってたけど……
ツナさんはいつか、どっかの偉いマフィアの娘さんと…
「クフフフフ……見つけましたよ、僕の柚子…」
『ひえぇっ!!』
「おっ、骸じゃねーか。」
あまりにも突然聞こえてきた骸さんの声に、あたしは跳ねあがった。
キッチンの入り口から顔を半分だけ覗かせている骸さんは、どよ~んとした空気を纏っている。
一歩後ずさりしてから、とりあえず質問。
『な、何かご用ですか…?』
「昨日僕が貰って来た、遊園地ワンデーフリーパス……使ったでしょう?」
やっぱその話題キター!!!
ど、どうしよう…
パクったのはツナさんだけど…一緒に行っちゃったし……
『ご、ごめんなさい……あの、えっと…』
「知ってますよ、綱吉が僕を凍らせるついでにチケットを奪い、柚子と出かけたんですよね?」
『は、はい…』
「クフフ、クフフフフ……」
骸さんの周りに変なオーラが見える。
「いいですか柚子、あのチケットは僕が折角懸賞で当てたものだったんです。それをパーにしたということは………」
『という、ことは…?』
「これまた懸賞で当てた、有名デザイナーによる限定メイド服を着て貰います!!」
『どーしてそうなるんですか!!てゆーか、そんな懸賞品当てないでくださいっ!!』
聞き返したあたしがバカでした、はい。
にしてもこの人、懸賞でメイド服って………
「そんなん当たるなんて、運がいいのなー♪」
「勿論です、僕の実力です。」
『(実力、なのかな?それって…)』
少しだけ胸を張って山本さんに返す骸さん。
と、すぐにあたしの方に向き直って。
「とにかく柚子、今日は僕の部屋で僕専属メイドに………」
『えっ、あの、出来ればそれはお断りしたいんですが……』
「おいおい骸、ちょっと待てって。」
ジリジリと歩み寄って来る骸さんに、あたしも一歩ずつ下がる。
山本さんが穏便に止めようとした、その時。
ヒュンッ……ゴッ!
「クハッ…!」
「朝から早速風紀を乱してるのは、誰だい?」
『ひ、雲雀さん!』
「よっ、雲雀!」
トンファーで1発骸さんを殴った雲雀さんに、山本さんが明るく挨拶。
山本さん……大らか過ぎる…
『お、おはようございます雲雀さんっ!あと、ありがとうございます。』
「クフフフフ……“誰だい”と尋ねる前に僕を殴るとは…やってくれますね雲雀君…」
「君に関しては、風紀関係無く殴る対象なんだ。沢田の許可も下りてる。」
愉しそうに口角を上げる雲雀さん。
骸さんは、納得いきませんね、と溜め息。
ツナさんてば、何て酷い許可を……
いくら何でも骸さんが可哀想なんじゃないか、と思い始めた。
と、そこに…
「おお!こんな所に集まって何をしてるのだ?」
「お帰りっス、先輩!」
『了平さん!あ、スポーツドリンク用意しますね。』
「山本、帰ってたのか。すまんな柚子、頼んだ。極限に喉が渇いていてな。」
ロードワークを終えて帰って来た了平さんに、冷たい飲み物を差しだす。
というか、朝ごはんの用意しなくちゃ!
リボーンさんをお待たせしてるんだった!!
「何か手伝うか?柚子。」
『あ、いえ、大丈夫です。先に広間に戻ってて下さい。』
「ん、オッケ!」
山本さんは優しいなーと感動する。
だって、骸さんにも広間に行くように押してってくれたんだもの。
これで安心して朝食作れる♪
鼻歌まじりにベーグルサンドを作って、持っていく。
広間には、既に全員が揃っていた。
『お待たせしました。』
「ホントに待ったぞ。」
『す、すみませんリボーンさん…』
順番にお出しして、あたしはエプロンを取る。
『では、食べ終わりましたら食器を水に漬けておいて下さい。』
「ご心配なく。拙者が洗っておきますので。」
『本当ですか!?ありがとうございます!バジルさん!』
「いえ。」
「つか、何で早く行くんだよ。」
『へ?』
鞄を取りに行こうとすると、ツナさんに引き止められた。
ちょっとビクッとしてから振り返る。
『えーっと……何となく…』
「ふーん、何となくか…」
な、何ですかそのわざとらしい繰り返し方…!
別にあたしは7号館にいると恥ずかしさぶり返してくるとかそーゆーんじゃなくて…
「あ、そうなんだ。」
『読まないでくださいっ!てゆーか違います!!///』
「じゃあ、ちょっとこっち来い。」
『え?』
「拒否権なし。」
『(うぅ……)は、はい…』
凄く凄く嫌だったけど、ツナさん以外は食べ始めてて関心が逸れてるから、言われた通り近づく。
するとツナさんは、スッとあたしの右手を握って…
「いってらっしゃい。」
ちゅ、と手の甲に唇を落とした。
予想外というか心構えも身構えも出来てなかったその行動に、顔の熱が急上昇。
『なっ…何してるんですか!!///』
「悪い?」
『だって、だって…』
昨日の観覧車と違って、この広間には皆さんがいるのに……
と言いかけて、ハッとした。
横を向くと、食事をストップさせている皆さんと目が合う。
『………い、行ってきますっ!!!///』
「あ、柚子…」
朝からこんな状況、心臓がもたない!
恥ずかしさが頂点に達したあたしは、逃げるように広間を飛び出した。
今日は演奏の授業2コマで帰れるから、3時までに掃除終わらせて演奏室使おう!
1日中フルートのことを考えられるなんて、幸せな大学生活だな♪
思えば、もう春の陽気は夏の蒸し暑さに変わっていて。
足元を見れば、ブーツじゃなくてサンダルになっている。
『(早いなぁ…)』
これから先も、こんなに早くキャンパスライフが流れて行っちゃうんだろうか。
3、4年は就活だからぼんやりしてられないし……
皆さんとドタバタに過ごせる時間も、人生の長さに比べたらほんのちょっと、なんだろうな…。
今からこんな風に考えるなんて、バカみたい。
だけど考えずにはいられない。
寂しい気持ちを残したまま授業で演奏をしたら、「乱れがある」と注意されてしまった。
---
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------------
『ただいま帰りましたー。』
「早いね。」
『あ、雲雀さん。今日は……授業、無かったんですね。』
「うん。」
単位数が心配になったけど、雲雀さんは脅しとかで何とかなりそうだと思った。
いつものジャージに着替えてから、掃除を始める。
今日は……ちょっと時間あるし、出来るトコまで掃除機かけちゃおうっと。
『(さーて、頑張るぞっ。)』
「おや、帰ってたんですね、僕の柚子♪」
『ぎゃーーーっ!!』
びびびびビックリしたぁ!!
何で突然現れるの、この人ってば!
「僕は音もなく忍び寄るのが得意でして。」
『あ、そうですか……ではあたしは掃除機かけるので。』
「柚子っ、待って下さいよ~。」
『な、何ですか…言っておきますけどメイド服は絶対に着ません。あたしは家政婦なので!』
ハッキリ言っておかなくちゃ、と思って強気に出てみた。
すると骸さんは優しく微笑んで。
「朝のは冗談ですよ。確かにチケットを1円の礼もなく取られたのは癪ですが。」
『え?あ、代金でしたらあたしも払います。』
意外と普通な反応で、ちょっと拍子抜けした。
骸さんはやっぱり、ただのヘンタイさんじゃないんだと時々思う。
行動の真意が、掴めない。
「いえ、柚子は払わなくていいんです。綱吉に後で請求します。というワケで、」
『へ?』
「今日の夕飯の買い出し、連れて行って下さい♪」
『それは、構いませんけど…』
骸さん、荷物持ってくれるし…
歩いて喋ってるだけなら楽しいし。
「それと、一口チョコが切れそうなんです。」
『分かりました、買いましょう♪』
なーんだ、チョコレート欲しかっただけか。
こういうトコは可愛くて微笑ましい。
「では、買い物に行く時に呼んで下さいね。」
『はい。』
骸さんは部屋に戻っていく。
と、後ろから声をかけられた。
「おい柚子、」
『あ、獄寺さん!何でしょう?』
「ほら、今月の。」
獄寺さんが突き出した封筒は、まさしく今月のお給料!
一気にテンションが上がって深く深ーくお辞儀をする。
『ありがとうございますっ♪』
「それでよ、お前…」
『何ですか?』
「10代目から、聞いたのか?」
『あ……はい…』
お父さんとツナさんが、5年前に関わりを持ってたってこと。
あたしのフルートがツナさんの力になって、
ツナさんもあたしに力をくれてたってこと。
『少し………かなり、驚きました。』
「あぁ…けど柚子が覚悟を決めたってんなら、俺も全力でお前を守る。」
『へ?』
「俺からはそれだけだ、じゃあな。」
『あ、獄寺さ………』
獄寺さんは、足早に去ってしまった。
覚悟って、何のことだろう?
それに…獄寺さんがあたしを守る?何で?
婚約者役がまだ続くって意味?
だったらわざわざ言わなくても……
まぁいーや、気にしないで掃除掃除!
---
------
約2時間後、あたしは掃除機と窓ふきを終わらせて、グーッと背伸びした。
そろそろ3時、休憩の時間だ!
フルートを持って演奏室に行く。
しばらくコンクールも無いし、授業でやった曲でも練習しようかな……
そう思いながらドアを開けると、そこには先客がいた。
『あ。』
「あ。」
『……つ、使ってたんですね。どうぞ続けて下さい。退散しますので…』
「退散すんな、入れよ柚子。」
『は、はい…』
楽譜をにらめっこをしていたのは、バイオリンを持ったツナさんで。
昨日の今日で、どんな顔して接すればいいのか分からない。
「へぇ、照れてんの?」
『ち、違………く、ないです…』
そーですよ照れてるんです、
だってツナさんは普通にしてるから。
あたしにとって、昨日は衝撃の連続で。
だから授業中も色々考えちゃって落ち着かなくて…
「おいで。」
『ど、どーしてそーなるんですかぁ!』
「雇い主の命令、きけない?」
いつもの黒笑いを見せるツナさん。
未だに慣れず、逆らえない。
『………ツナさんの横暴。』
「なんか、柚子に言われると褒め言葉に聞こえるな。」
恐る恐る近づくあたしに、今度は優しく笑う。
『褒めてないですっ。』
「いいだろ?柚子のどんな言葉でも、俺は都合よく捉えるんだよ。」
『な、何ですかソレ…』
バイオリンをしまって、ツナさんはあたしの手を引く。
完全に油断していたあたしは、ツナさんの膝に座らされてしまった。
『ちょっ…あの、』
「うん、こーゆーのも悪くないな。」
逃げようとしてるけど、腰に手が回されて適わない。
『あ、あたしは嫌です!放して下さい!』
「じゃあ、柚子はどんなのがいいんだよ。」
『そんな要望ないですから!ホントにあのっ…放して下さいってば!!』
「……しょーがないな、ったく。」
『へ?』
解放されたかと思いきや、ツナさんも立ち上がって正面から抱きしめられる。
あーもーこれじゃさっきとあんまり変わってない!!
『つ、ツナさんっ!!』
「柚子…好きだよ。」
突如耳元で囁かれて、あたしはフリーズした。
まるで、夢のような昨日の続きみたい。
また、ドキドキが止まらなくなる。
「夢じゃないんだから、いい加減慣れろよ。」
『む、無理です…///』
「ならこれからずっと、お前の毎日は“夢”ってことだな。」
『えっ…?』
これから、ずっと?
真っ白な頭で、そのフレーズが繰り返される。
そ、それって……もしかして…
「俺、もう柚子のこと放すつもり無いから。」
そう言ってツナさんは、より一層強く抱きしめる。
夏なのに、この苦しさも暑さも何故か心地良く感じてしまう。
『ツナさん、やっぱり横暴です…』
「“嬉しい”って言ってるようにしか聞こえないけど。」
『ぜっ…全然違います!何ですかその脳内変換っ!!』
どこか嬉しそうなツナさんの声色に、思わず反論。
そしたらまた、ツナさんはいつもの腹黒スマイルを見せて。
「言っただろ?」
少し掬ったあたしの髪にキスを落としながら、
「柚子がどんな風に言おうと、俺は都合よく捉えちまうんだよ。」
あまりにも自信たっぷりに言うもんだから、
あたしは火照ってしまった顔を両手で覆い隠すことしか出来なかった。
チアフル
照れるばかりのあたしを見て、上機嫌になる意地悪な彼
continue...
「ん?早ぇじゃねーか。」
ツナさんから昔話を聞いた翌日。
大広間のドアを開けると、朝のコーヒータイムを満喫しているリボーンさんが既にいた。
この人、一体いつも何時に起きてるんだろう…
てゆーか、毎日ちゃんと寝てるのかな…
「寝てるぞ。」
『よ、読まないで下さいっ!』
「ところで柚子、今日何かあんのか?」
『えっと、少し早めに学校行こうと思いまして…』
何となくだけど、今日は早く学校に行きたくて。
というか7号館に居づらいのかも知れない…
あ、あたしってば昨日…ツナさんに告白されて………
---「俺も今、夢みたいな気分だから……確かめさせろ。」
『(って、思い出しちゃダメダメっ!!///)』
紅潮しそうな頬を押さえて、首を振る。
『と、とにかく!すぐに朝ごはん用意しますねっ!』
「………柚子、」
『え?は、はい…』
大広間を飛び出そうとしたあたしを、リボーンさんは咄嗟に呼びとめて。
「良かったな。」
『なっ…!』
ニッて笑うもんだから、あたしの思い出しすら読まれていたことを察した。
あああ恥ずかしい…!!
完全に脳内がパニックになったあたしが、リボーンさんに何か言い返せるハズもなく。
逃げるようにダッシュして、キッチンへ向かった。
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「おっ!柚子!」
『あっ、お、おはようございます山本さん!』
「あぁ、おはよ!」
キッチンでは、今朝のロードワークを終わらせた山本さんが、スポーツドリンクを飲んでいた。
じきに了平さんも帰って来るそうだ。
「毎朝ありがとな、柚子。」
『いえいえっ!家政婦ですから!』
自分で言って、はたと気がつく。
あたしはただの家政婦であって、あくまで婚約者は役割…
昨日は勝手に舞い上がってたけど……
ツナさんはいつか、どっかの偉いマフィアの娘さんと…
「クフフフフ……見つけましたよ、僕の柚子…」
『ひえぇっ!!』
「おっ、骸じゃねーか。」
あまりにも突然聞こえてきた骸さんの声に、あたしは跳ねあがった。
キッチンの入り口から顔を半分だけ覗かせている骸さんは、どよ~んとした空気を纏っている。
一歩後ずさりしてから、とりあえず質問。
『な、何かご用ですか…?』
「昨日僕が貰って来た、遊園地ワンデーフリーパス……使ったでしょう?」
やっぱその話題キター!!!
ど、どうしよう…
パクったのはツナさんだけど…一緒に行っちゃったし……
『ご、ごめんなさい……あの、えっと…』
「知ってますよ、綱吉が僕を凍らせるついでにチケットを奪い、柚子と出かけたんですよね?」
『は、はい…』
「クフフ、クフフフフ……」
骸さんの周りに変なオーラが見える。
「いいですか柚子、あのチケットは僕が折角懸賞で当てたものだったんです。それをパーにしたということは………」
『という、ことは…?』
「これまた懸賞で当てた、有名デザイナーによる限定メイド服を着て貰います!!」
『どーしてそうなるんですか!!てゆーか、そんな懸賞品当てないでくださいっ!!』
聞き返したあたしがバカでした、はい。
にしてもこの人、懸賞でメイド服って………
「そんなん当たるなんて、運がいいのなー♪」
「勿論です、僕の実力です。」
『(実力、なのかな?それって…)』
少しだけ胸を張って山本さんに返す骸さん。
と、すぐにあたしの方に向き直って。
「とにかく柚子、今日は僕の部屋で僕専属メイドに………」
『えっ、あの、出来ればそれはお断りしたいんですが……』
「おいおい骸、ちょっと待てって。」
ジリジリと歩み寄って来る骸さんに、あたしも一歩ずつ下がる。
山本さんが穏便に止めようとした、その時。
ヒュンッ……ゴッ!
「クハッ…!」
「朝から早速風紀を乱してるのは、誰だい?」
『ひ、雲雀さん!』
「よっ、雲雀!」
トンファーで1発骸さんを殴った雲雀さんに、山本さんが明るく挨拶。
山本さん……大らか過ぎる…
『お、おはようございます雲雀さんっ!あと、ありがとうございます。』
「クフフフフ……“誰だい”と尋ねる前に僕を殴るとは…やってくれますね雲雀君…」
「君に関しては、風紀関係無く殴る対象なんだ。沢田の許可も下りてる。」
愉しそうに口角を上げる雲雀さん。
骸さんは、納得いきませんね、と溜め息。
ツナさんてば、何て酷い許可を……
いくら何でも骸さんが可哀想なんじゃないか、と思い始めた。
と、そこに…
「おお!こんな所に集まって何をしてるのだ?」
「お帰りっス、先輩!」
『了平さん!あ、スポーツドリンク用意しますね。』
「山本、帰ってたのか。すまんな柚子、頼んだ。極限に喉が渇いていてな。」
ロードワークを終えて帰って来た了平さんに、冷たい飲み物を差しだす。
というか、朝ごはんの用意しなくちゃ!
リボーンさんをお待たせしてるんだった!!
「何か手伝うか?柚子。」
『あ、いえ、大丈夫です。先に広間に戻ってて下さい。』
「ん、オッケ!」
山本さんは優しいなーと感動する。
だって、骸さんにも広間に行くように押してってくれたんだもの。
これで安心して朝食作れる♪
鼻歌まじりにベーグルサンドを作って、持っていく。
広間には、既に全員が揃っていた。
『お待たせしました。』
「ホントに待ったぞ。」
『す、すみませんリボーンさん…』
順番にお出しして、あたしはエプロンを取る。
『では、食べ終わりましたら食器を水に漬けておいて下さい。』
「ご心配なく。拙者が洗っておきますので。」
『本当ですか!?ありがとうございます!バジルさん!』
「いえ。」
「つか、何で早く行くんだよ。」
『へ?』
鞄を取りに行こうとすると、ツナさんに引き止められた。
ちょっとビクッとしてから振り返る。
『えーっと……何となく…』
「ふーん、何となくか…」
な、何ですかそのわざとらしい繰り返し方…!
別にあたしは7号館にいると恥ずかしさぶり返してくるとかそーゆーんじゃなくて…
「あ、そうなんだ。」
『読まないでくださいっ!てゆーか違います!!///』
「じゃあ、ちょっとこっち来い。」
『え?』
「拒否権なし。」
『(うぅ……)は、はい…』
凄く凄く嫌だったけど、ツナさん以外は食べ始めてて関心が逸れてるから、言われた通り近づく。
するとツナさんは、スッとあたしの右手を握って…
「いってらっしゃい。」
ちゅ、と手の甲に唇を落とした。
予想外というか心構えも身構えも出来てなかったその行動に、顔の熱が急上昇。
『なっ…何してるんですか!!///』
「悪い?」
『だって、だって…』
昨日の観覧車と違って、この広間には皆さんがいるのに……
と言いかけて、ハッとした。
横を向くと、食事をストップさせている皆さんと目が合う。
『………い、行ってきますっ!!!///』
「あ、柚子…」
朝からこんな状況、心臓がもたない!
恥ずかしさが頂点に達したあたしは、逃げるように広間を飛び出した。
今日は演奏の授業2コマで帰れるから、3時までに掃除終わらせて演奏室使おう!
1日中フルートのことを考えられるなんて、幸せな大学生活だな♪
思えば、もう春の陽気は夏の蒸し暑さに変わっていて。
足元を見れば、ブーツじゃなくてサンダルになっている。
『(早いなぁ…)』
これから先も、こんなに早くキャンパスライフが流れて行っちゃうんだろうか。
3、4年は就活だからぼんやりしてられないし……
皆さんとドタバタに過ごせる時間も、人生の長さに比べたらほんのちょっと、なんだろうな…。
今からこんな風に考えるなんて、バカみたい。
だけど考えずにはいられない。
寂しい気持ちを残したまま授業で演奏をしたら、「乱れがある」と注意されてしまった。
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『ただいま帰りましたー。』
「早いね。」
『あ、雲雀さん。今日は……授業、無かったんですね。』
「うん。」
単位数が心配になったけど、雲雀さんは脅しとかで何とかなりそうだと思った。
いつものジャージに着替えてから、掃除を始める。
今日は……ちょっと時間あるし、出来るトコまで掃除機かけちゃおうっと。
『(さーて、頑張るぞっ。)』
「おや、帰ってたんですね、僕の柚子♪」
『ぎゃーーーっ!!』
びびびびビックリしたぁ!!
何で突然現れるの、この人ってば!
「僕は音もなく忍び寄るのが得意でして。」
『あ、そうですか……ではあたしは掃除機かけるので。』
「柚子っ、待って下さいよ~。」
『な、何ですか…言っておきますけどメイド服は絶対に着ません。あたしは家政婦なので!』
ハッキリ言っておかなくちゃ、と思って強気に出てみた。
すると骸さんは優しく微笑んで。
「朝のは冗談ですよ。確かにチケットを1円の礼もなく取られたのは癪ですが。」
『え?あ、代金でしたらあたしも払います。』
意外と普通な反応で、ちょっと拍子抜けした。
骸さんはやっぱり、ただのヘンタイさんじゃないんだと時々思う。
行動の真意が、掴めない。
「いえ、柚子は払わなくていいんです。綱吉に後で請求します。というワケで、」
『へ?』
「今日の夕飯の買い出し、連れて行って下さい♪」
『それは、構いませんけど…』
骸さん、荷物持ってくれるし…
歩いて喋ってるだけなら楽しいし。
「それと、一口チョコが切れそうなんです。」
『分かりました、買いましょう♪』
なーんだ、チョコレート欲しかっただけか。
こういうトコは可愛くて微笑ましい。
「では、買い物に行く時に呼んで下さいね。」
『はい。』
骸さんは部屋に戻っていく。
と、後ろから声をかけられた。
「おい柚子、」
『あ、獄寺さん!何でしょう?』
「ほら、今月の。」
獄寺さんが突き出した封筒は、まさしく今月のお給料!
一気にテンションが上がって深く深ーくお辞儀をする。
『ありがとうございますっ♪』
「それでよ、お前…」
『何ですか?』
「10代目から、聞いたのか?」
『あ……はい…』
お父さんとツナさんが、5年前に関わりを持ってたってこと。
あたしのフルートがツナさんの力になって、
ツナさんもあたしに力をくれてたってこと。
『少し………かなり、驚きました。』
「あぁ…けど柚子が覚悟を決めたってんなら、俺も全力でお前を守る。」
『へ?』
「俺からはそれだけだ、じゃあな。」
『あ、獄寺さ………』
獄寺さんは、足早に去ってしまった。
覚悟って、何のことだろう?
それに…獄寺さんがあたしを守る?何で?
婚約者役がまだ続くって意味?
だったらわざわざ言わなくても……
まぁいーや、気にしないで掃除掃除!
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約2時間後、あたしは掃除機と窓ふきを終わらせて、グーッと背伸びした。
そろそろ3時、休憩の時間だ!
フルートを持って演奏室に行く。
しばらくコンクールも無いし、授業でやった曲でも練習しようかな……
そう思いながらドアを開けると、そこには先客がいた。
『あ。』
「あ。」
『……つ、使ってたんですね。どうぞ続けて下さい。退散しますので…』
「退散すんな、入れよ柚子。」
『は、はい…』
楽譜をにらめっこをしていたのは、バイオリンを持ったツナさんで。
昨日の今日で、どんな顔して接すればいいのか分からない。
「へぇ、照れてんの?」
『ち、違………く、ないです…』
そーですよ照れてるんです、
だってツナさんは普通にしてるから。
あたしにとって、昨日は衝撃の連続で。
だから授業中も色々考えちゃって落ち着かなくて…
「おいで。」
『ど、どーしてそーなるんですかぁ!』
「雇い主の命令、きけない?」
いつもの黒笑いを見せるツナさん。
未だに慣れず、逆らえない。
『………ツナさんの横暴。』
「なんか、柚子に言われると褒め言葉に聞こえるな。」
恐る恐る近づくあたしに、今度は優しく笑う。
『褒めてないですっ。』
「いいだろ?柚子のどんな言葉でも、俺は都合よく捉えるんだよ。」
『な、何ですかソレ…』
バイオリンをしまって、ツナさんはあたしの手を引く。
完全に油断していたあたしは、ツナさんの膝に座らされてしまった。
『ちょっ…あの、』
「うん、こーゆーのも悪くないな。」
逃げようとしてるけど、腰に手が回されて適わない。
『あ、あたしは嫌です!放して下さい!』
「じゃあ、柚子はどんなのがいいんだよ。」
『そんな要望ないですから!ホントにあのっ…放して下さいってば!!』
「……しょーがないな、ったく。」
『へ?』
解放されたかと思いきや、ツナさんも立ち上がって正面から抱きしめられる。
あーもーこれじゃさっきとあんまり変わってない!!
『つ、ツナさんっ!!』
「柚子…好きだよ。」
突如耳元で囁かれて、あたしはフリーズした。
まるで、夢のような昨日の続きみたい。
また、ドキドキが止まらなくなる。
「夢じゃないんだから、いい加減慣れろよ。」
『む、無理です…///』
「ならこれからずっと、お前の毎日は“夢”ってことだな。」
『えっ…?』
これから、ずっと?
真っ白な頭で、そのフレーズが繰り返される。
そ、それって……もしかして…
「俺、もう柚子のこと放すつもり無いから。」
そう言ってツナさんは、より一層強く抱きしめる。
夏なのに、この苦しさも暑さも何故か心地良く感じてしまう。
『ツナさん、やっぱり横暴です…』
「“嬉しい”って言ってるようにしか聞こえないけど。」
『ぜっ…全然違います!何ですかその脳内変換っ!!』
どこか嬉しそうなツナさんの声色に、思わず反論。
そしたらまた、ツナさんはいつもの腹黒スマイルを見せて。
「言っただろ?」
少し掬ったあたしの髪にキスを落としながら、
「柚子がどんな風に言おうと、俺は都合よく捉えちまうんだよ。」
あまりにも自信たっぷりに言うもんだから、
あたしは火照ってしまった顔を両手で覆い隠すことしか出来なかった。
チアフル
照れるばかりのあたしを見て、上機嫌になる意地悪な彼
continue...