🎼本編
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並盛中央病院、エレベーター内。
「すみませんっ、5階お願いします。」
「はい。」
「ありがとうございます。」
何とか駆け込みで入って、ボタンの近くに立ってたおばさんに頼んだ。
目的のフロアで降りて、ある病室に向かう。
少し広めのその個室には……
「あら、来てくれたの?ツー君。」
「足はどうなんだよ…母さん。」
数日前、俺を狙った中小マフィアの連中が攻撃を仕掛けてきた。
俺だけを狙って攻撃するなら…良くないけど…別に良かった。
けどその時、庭で洗濯物を干していた母さんが巻き込まれた。
結果的に右大腿骨に軽くヒビを作って、全治3週間。
「手術の直後だから、リハビリはもう少し経ってからって。」
「……そっか。」
「お見舞い来てくれてありがとね、ツー君。でも宿題ちゃんとやらなきゃダメよ。」
「分かってるって。」
見舞いに来るのは当然だろ、
俺は母さんの息子で、その怪我の原因なんだから。
俺がぱっぱと刺客を退けられれば、母さんはこんな怪我しないで済んだ。
何が“仲間の為に強くなる”だよ。
俺は……
一番身近な家族さえ守れなかったんだ…。
「母さん、何か飲む?買ってくるけど。」
「ありがとう、それじゃあったかいお茶をお願い。」
「分かった、行ってくる。」
病室を出て、自販機へと足を進める。
と、そこには先客がいた。
『んーと、ミルクティーだっけ。』
肩に触れるか触れないかくらいの髪の毛は、光の加減で淡い金色に見える。
彼女が動くたびに、それがふわりと揺れて。
キョロキョロ辺りを見回し、知り合いがいないことを確認してから悪戯っぽく小さな独り言をこぼした。
『ついでにカフェオレ買っちゃお♪』
あの子も、親族の見舞いで来てるんだろうか。
どこの病室に戻るんだろう。
何故か気になって、彼女が立ち去ったあと素早くホット緑茶を買って追いかけた。
色素の薄い髪色はとても目立って、少し遠くからでも追いかけやすかった。
「(……って、アレ?)」
普通、こーゆー時って全然違う方向に行って帰り道分からなくなるオチなんじゃ…。
けど彼女は確実に、俺の母さんがいる病室の方に向かってる。
そして……まさしく俺が戻るべき病室の隣のドアに、手をかけた。
『ただいまお父さん、買ってきたよ。』
「ありがとな、柚子。」
彼女、柚子さんが入ってった病室には、どうやら父親が入院しているようだった。
呆然と立ち尽くす俺の頭に、不意にお決まりの重さがかかる。
「何してんだ?」
「…急に現れて乗るなよ、リボーン。」
今は、リボーンに会いたくなかった。
つっても“住み込みの家庭教師”だから会わない日なんて無いんだけど。
ただ母さんが怪我して、それは俺がボンゴレの10代目候補であることが原因で………
だから考えたくなかった。
マフィアになるかも知れない、なんて。
「どうかしたのか?ツナ。」
いつまでも突っ立ったまま考え事をしている俺に、リボーンの声が降って来る。
ホット緑茶を少し強く握って、俺は口を開いた。
「なぁリボーン、俺……やっぱりボスにはならない。」
「…ふざけたこと抜かすと、ドタマかち割るぞ。」
「今度は本気だよ、本気の本気。俺には出来ないと思うんだ。」
一番身近な人を守れずに怪我させて、何で仲間や友達を守れるんだよ。
無理に決まってる。
俺には、力が無いんだ。
今まで嫌がってたのは面倒だったから。
けど今回は、違う。
俺は自分の無力を知った。
だから断る。
こんな俺がボスになっちまったら、それこそボンゴレファミリーも次の代で終わっちまうだろうから。
「……聞かなかったことにしてやる。頭冷やせ。」
「冷えてるよ。」
「今のお前はママンの怪我で判断力を欠いてんだ。緑茶、冷めるぞ。」
言いながらリボーンは俺の頭から飛び降り、母さんの病室に入っていった。
俺もホット緑茶を頼まれていたのを思い出し、後に続いた。
-----
--------
翌日、また病院へ行った。
ランボが「毎日ママンに会いたい」とか言うからだ。
病室に駆け込むランボにため息をついてから、ふと隣の病室に目をやる。
“牧之原朽葉”……そう、書いてあった。
「ツー君どうしたの?入らないの?」
「あ、あぁ…」
いつまでもドアを閉めない俺に疑問を持った母さんが言う。
慌てて閉めて、椅子に座った。
家事は居候のみんなと分担してやってること、
勉強会もしてるから別に寂しくないこと、
父さんから母さんへの手紙が来てたこと……
色々話してからまた席を立つ。
「ランボ、大人しくしてろよ。イーピン、頼んだぞ。」
「ツナ~、ランボさんのお菓子も!!」
「はいはい。」
俺が病室を出たその瞬間、目の前を誰かが走り去って行った。
ふわりと光ったあの髪色は………
「柚子!病院なんだから走っちゃダメよ!」
『でも早くしないとレッスンに遅れちゃうの!』
サッと振り向き言ってから、走って行く彼女。
その母親らしき女性はため息を一つ零してから、それまで居た病室の中に向かって言った。
「まったく……ごめんなさいね、また来るわ。」
「ああ、気をつけて帰るんだよ。」
「ありがとう。」
やや寂しそうな微笑を見せ、その女性は立ち去った。
俺は売店に行こうと隣の病室の前を通る。
頭の隅に何かが引っかかっているような、そんな感じがした。
---
------
「(ん…?)」
売店からの帰り、俺は一際目立つ髪色を見つけた。
それは、ふわりと揺れながら離れていく。
あの髪は……柚子さん?
けど俺、さっき彼女が帰ったトコを見たワケだし…。
おかしいと思いつつ後を追ってみる。
つっても病室が同じ方向だからそっちに向かわざるを得なかったんだけど。
そして、人込みを抜けた所で理解した。
「そっか…」
俺が今追っかけてた髪の持ち主は、柚子さんの父親だったんだ。
病院から支給されたらしき水色のパジャマでゆったりと歩く。
柚子さんの髪色が親譲りだということは、一目瞭然だった。
自分の病室のドアに手をかけた柚子さんの父親……確か朽葉さんだっけ……は、ふと視線をこっちに持ってくる。
驚きながら目を逸らした俺に、彼はゆったりと歩み寄った。
「昨日の声、君だったのか。」
「……へ?」
「いやぁすまない、職業柄、耳が必要以上に働いてしまってね。ボスがどうとか、頭冷やせとか、言い争いが聞こえてしまったんだ。」
目を見開く俺に、朽葉さんは自己紹介をしてくれた。
プロのフルート奏者で、倒れる前は世界中を飛び回っていたと。
俺も自己紹介をすると、更に親しげに同じ年の娘さんがいると教えてくれた。
「(俺と同い年なんだ、柚子さん……)」
「これは僕のお節介だから、聞き流してくれると有難いんだが……」
「…何ですか?」
「さっき廊下から聞こえた会話から察するに、綱吉君はお母様の怪我を自分のせいだと思ってるようだね。」
普通、数分前に出会った赤の他人にそんなことを言われたらカッとなるだろう。
けど何故かその時、俺は朽葉さんに怒りどころか不快感すら欠片も感じなかった。
黒縁メガネの奥にある、穏やかな瞳。
それは、尖るはずの気持ちに温かく語りかける。
「……実際、そうなんです。母が今入院してるのは、俺のせいで…」
「君は、母親思いのいい少年だ。」
「俺の責任ですから、毎日見舞いに来ることなんて当然です。」
「そうじゃない。君は今、何かを諦めようとしてる。お母様の怪我を理由に………違うかい?」
「諦め、る…?」
俺が?
ボンゴレ10代目になるのを“諦める”?
それはまるで、ボスになりたがってる人間に使う言葉だ。
俺は別に………
いや、違う。そうじゃないんだ。
俺はボンゴレのボス候補として色んな人に出会ったんだ。
たくさんの試練を乗り越えて、仲間も友達も増えた。
俺は……その交流を諦めようとしてるのか…?
「綱吉君、君の若さで諦めは良くない。ぶつかって、挫折するくらいがちょうどいい。柚子にもそう教えてるんだ。」
「(あ……!)」
その瞬間、俺は自分の中で絡まっていた糸が解けたのを感じた。
さっきまで頭の隅に引っかかってた何か、それは……
一瞬だけ見えた、柚子さんの表情だったんだ。
俺の前を通ったあの瞬間、彼女は確かに苦しそうで泣きそうな顔をしてた。
なのに、呼び止められて振り向いた時、そんな表情は無かったかのように笑顔になった。
弱い自分を、見られまいとでもするかのように。
「あらツー君、そんなトコでお喋り?そちらの方は?」
「あ、母さん…」
「すみません、僕が息子さんを引き留めてしまったんです。隣の病室の、牧之原朽葉と言います。」
ちょうど、車椅子で出てきた母さんが俺を見つけた。
トイレにでも行こうとしてたみたいだ。
朽葉さんの穏やかなオーラは若干母さんのソレと似ていて、俺も含めて喋るようになった。
-----
---------
翌日、柚子さんは見舞いに来なくて、朽葉さんの奥さんである杏香さんだけ紹介された。
彼女は朽葉さんとは対照的で、しっかり者の印象を受けた。
「残念だわ、ちょうど柚子は今日からフルートの練習が忙しくなって…数日に1度しか来れないのよ。」
「そうか…綱吉君は柚子と同い年だし、紹介したかったんだがなぁ…」
「(フルート習ってるんだ…)」
杏香さんも週休2日で仕事をしているから、柚子さんはフルート教室に入り浸っているらしい。
家で一人で待っているより寂しくないし、ご両親としてもその方が安全だと考えたのだ。
「ごめんなさい。私もあまり長く居られないので…もし奈々さんや綱吉君の時間がある時に朽葉の話相手になって下されば助かります。」
「えぇもちろんです。ね、ツー君。」
「俺たちで良ければ…」
「ありがとうございます。うちの柚子も、綱吉君みたいにしっかり者になってくれないかしら。」
杏香さんは苦笑しながら時計を見て、立ち上がる。
そろそろ帰って夕飯の買い物に行かなければならない、と。
母さんも体に障るといけないから、とナースに部屋に戻るよう急かされる。
「じゃあ俺も失礼します。」
「うん、楽しかったよ。ありがとう、綱吉君。」
「……あの、」
礼を言われた時の違和感に、俺は思わず立ち止まった。
朽葉さんは変わらぬ穏やかな瞳を向ける。
「どうかしたのかい?」
「俺……人よりカンが働くんですけど………朽葉さんも、何かを諦めてませんか?」
「…何故そう思うんだい?」
「えっと…雰囲気とか、ホントにただのカンなんですけど…」
超直感があるなんて、一般人には言えなかった。
けど確かに俺は、朽葉さんが当然のように何かを諦めてると察した。
思い切って問いかけた俺に、朽葉さんは驚くほど自然に、まるで子供に絵本を読み聞かせるように、言った。
「僕は…もう長くないんだ。」
朽葉さんが諦めていたのは、自分の生命だった。
「な…何言ってんですか?だって朽葉さん、元気に話してますし…」
「奈々さんには言わないで欲しい。隣の病室にいる患者が、末期がんだって。」
「がん…!?」
「きっと奈々さんは僕以上に気を使ってしまうだろうからね。けど綱吉君は聞き流してくれそうだ。」
「そ、そんなこと…!」
「むしろ、聞き流して欲しい。」
何てこと無いとでも言うように、朽葉さんは微笑む。
「未練が無いと言えば嘘になるけど……不思議と気が楽なんだ。杏香や柚子には苦労をかけてしまうけどね。」
「朽葉さん……」
「ほら、奈々さんの病室に戻らないと。」
色々と聞きたいことがあったけど、俺は仕方なく戻った。
明日、ちゃんと聞こう。
何で杏香さんが俺に死期が近いと告げたのか。
------
-----------
翌日、病院に来た俺の耳に、笛の音が聞こえてきた。
散歩道の方からだ。
結構な広さがあるから、迷惑にもならないだろうと病院側に許可されたんだろう。
けどそれは、病院という環境に似合わない軽快な曲。
どんな人が吹いてるのか気になって、母さんの病室の窓から見回してみた。
「どうしたの?ツー君。」
「笛、聞こえるから……どこで吹いてんのかと思って。」
「吹いてるの、柚子ちゃんですって。ほら、朽葉さんの娘さん。」
母さんから聞いた話じゃ、柚子さんはフルート教室で出された課題曲を朽葉さんにレクチャーしてもらってるとか。
確かに、世界に名を馳せるフルート奏者が父親なら、これほど良い先生はいない。
「それにしても上手ね……聞き惚れちゃうわ。」
「………うん…」
まるで、唄っているような。
まるで、語りかけるような。
この音色はきっと、朽葉さんの音色を受け継いだものなんだろうな。
曲が終わると、甲高い声が響く。
『どうだった!?お父さん!』
「(あ、見つけた…)」
風に揺れる薄い茶髪が、2人分。
朽葉さんと柚子さんだ。
あの光景を見てると、どうしても信じられなくなる。
---「僕は…もう長くないんだ。」
朽葉さんが病室に戻ってきたら、昨日の疑問をぶつけてみよう。
そう思った、直後だった。
『お父さんっ…!!』
「(え?)」
『お父さんっ!!しっかりして!お父さんっ!!』
それまで楽しそうに弾むように話していた柚子さんの声が、一気に色を変えた。
緊迫が伝わる。
見ると、2人の所に数人のナースが駆け寄っていた。
朽葉さんが、倒れたんだ。
寝かされた状態で病室に戻ってきた朽葉さん。
その手をしっかりと握って病室に入って行く柚子さん。
話しかけるタイミングなんて、あるハズもなかった。
------
-----------
しばらくして、隣から声が聞こえてきた。
朽葉さんは意識を取り戻したようだ。
いつの間にか杏香さんも駆けつけていたらしく、柚子さんの声色にも安堵が混じっていた。
「朽葉さんは…何の病気なのかしらね……」
母さんにも隣からの声は聞こえてたらしく、俺に問いかける。
「……さぁ…」
昨日朽葉さんに口止めされたのを思い出して、俺はちゃんと答えなかった。
-----
---------
『また明日ね!お父さん。』
「ああ、待ってるよ。」
柚子さんが廊下を走ってく音がした。
後から杏香さんのヒールの音。
「……俺、ちょっと朽葉さんに会って来る。」
「え?ちょっとツー君…」
「放っといていーぞ、ママン。ツナなら大丈夫だ。」
「リボーン君…」
俺を追いかけようとした母さんを、リボーンが何を思って止めたのかは知らない。
その時の俺はとにかく、朽葉さんと話がしたかった。
コンコン、
「朽葉さん、いいですか?」
「あぁ、綱吉君。どうぞ。」
入室してすぐ、俺は尋ねた。
どうして、出会って間もない他人の俺に「もう長くない」なんて言ったのか。
朽葉さんは少しだけ苦笑して、窓の外を見た。
うっすらオレンジに染まり始める空に、愛おしそうな視線を注ぐ。
「……今日、柚子がフルートを吹いてたのを聞いたかい?」
「聞こえましたけど……それが何か?」
「実に軽快な曲なんだ、柚子にとっての試練なんだよ。」
「試練…?」
その単語を反復して、すぐ気付いた。
柚子さんにとっても今は凄く不安定な時期。
実の父親が末期のがんで入院してるんだから。
「あの子は気付いているんだ、僕がもう逝ってしまうことに。けど明るく振舞ってくれるんだ、僕を安心させるようにね。」
病室を出る時、柚子さんは一瞬だけ苦しみに潰れそうな表情をするという。
けど呼び止めればすぐに笑顔を見せ、『また明日』と言ってくれるそうだ。
その言葉に保障がないと、分かっていながら。
いつ破られてもおかしくない約束であると、知りながら。
「柚子は……強く振舞えると思う。けど本当はとても繊細だ……まだ中学生だからね。」
「柚子さんのことに……俺は関係ないハズです。」
「ハハハ、確かにそうだね。けれど、“袖摺り合うも多少の縁”って言葉を知ってるかい?」
話が見えないまま小首を傾げた俺に、朽葉さんは突如頭を下げた。
「なっ…!」
「僕が逝った後、柚子のフルートを聴いて欲しいんだ。」
「お……俺が、ですか?てゆーか、頭上げて下さいっ!」
何で俺が、
他人なのに、
音楽批評家でもないのに、
色んなことを一気に考えて混乱する。
朽葉さんは教えてくれた。
柚子さんが今練習しているのは、大勢で演奏して初めて完成する『ラデツキー行進曲』。
自宅に不幸があったからと言って、輪を乱してはいけないのだと。
「声をかけなくてもいい、3日間でいい!……僕の代わりに、聴いて欲しいんだ。」
「俺には、朽葉さんの代わりなんて…」
「アドバイスをする必要はない、聴くだけでいいんだ。」
承諾を躊躇う俺に、朽葉さんは続ける。
「柚子には…あの散歩道に来て練習するように言ったんだ。多分、今日居た木の下で吹くと思う。」
「でも…」
「聴いて欲しいんだ、他でもない綱吉君……君に。」
空は、赤に近いオレンジに染まっていた。
燃えるようなその色を髪の毛に反射させ、朽葉さんは俺にもう一度頭を下げた。
「分かり、ました…」
こんな真剣に頼みごとをされたのは初めてで、俺は半ば押されるように承諾した。
朽葉さんは少し泣きそうになりながら何度もお礼を言う。
母さんの退院まであと2週間以上あるし、病院に来ればきっと聞こえるだろう……
と、思った。
「あの…話を受けておいてアレですけど…聴くだけなら、杏香さんもいるんじゃ……」
「君と杏香では、きっと違うだろうから。」
「血縁者と他人ってことですか?」
だったら、血縁者である杏香さんの方が朽葉さんの代わりとして聴けるんじゃないか……
その考えを見透かしたように、朽葉さんは言った。
「曲から受け取る、言葉だよ。」
「へ?」
「僕の持論だ。同じ曲を聴いて、全く同じ感想を抱く人間はいない。だから曲にも聴く人を選ぶ権利がある。」
「はぁ……」
「それに杏香には仕事もある、これ以上負担を掛けたくないんだ……あ、こんな言い方じゃ綱吉君が暇人だと言ってるみたいだね、すまない。」
「あ、いえ……どうせ夏休みですし…」
俺の返答に、朽葉さんはハハッと笑った。
それから5日後のことだった。
朽葉さんの容体が急変し、俺がその約束を果たす時が来たのは。
トラウマ
あの頃はマフィアなんかになりたくなくて、大事な人が傷つくことにただただ恐怖していた。
continue...
「すみませんっ、5階お願いします。」
「はい。」
「ありがとうございます。」
何とか駆け込みで入って、ボタンの近くに立ってたおばさんに頼んだ。
目的のフロアで降りて、ある病室に向かう。
少し広めのその個室には……
「あら、来てくれたの?ツー君。」
「足はどうなんだよ…母さん。」
数日前、俺を狙った中小マフィアの連中が攻撃を仕掛けてきた。
俺だけを狙って攻撃するなら…良くないけど…別に良かった。
けどその時、庭で洗濯物を干していた母さんが巻き込まれた。
結果的に右大腿骨に軽くヒビを作って、全治3週間。
「手術の直後だから、リハビリはもう少し経ってからって。」
「……そっか。」
「お見舞い来てくれてありがとね、ツー君。でも宿題ちゃんとやらなきゃダメよ。」
「分かってるって。」
見舞いに来るのは当然だろ、
俺は母さんの息子で、その怪我の原因なんだから。
俺がぱっぱと刺客を退けられれば、母さんはこんな怪我しないで済んだ。
何が“仲間の為に強くなる”だよ。
俺は……
一番身近な家族さえ守れなかったんだ…。
「母さん、何か飲む?買ってくるけど。」
「ありがとう、それじゃあったかいお茶をお願い。」
「分かった、行ってくる。」
病室を出て、自販機へと足を進める。
と、そこには先客がいた。
『んーと、ミルクティーだっけ。』
肩に触れるか触れないかくらいの髪の毛は、光の加減で淡い金色に見える。
彼女が動くたびに、それがふわりと揺れて。
キョロキョロ辺りを見回し、知り合いがいないことを確認してから悪戯っぽく小さな独り言をこぼした。
『ついでにカフェオレ買っちゃお♪』
あの子も、親族の見舞いで来てるんだろうか。
どこの病室に戻るんだろう。
何故か気になって、彼女が立ち去ったあと素早くホット緑茶を買って追いかけた。
色素の薄い髪色はとても目立って、少し遠くからでも追いかけやすかった。
「(……って、アレ?)」
普通、こーゆー時って全然違う方向に行って帰り道分からなくなるオチなんじゃ…。
けど彼女は確実に、俺の母さんがいる病室の方に向かってる。
そして……まさしく俺が戻るべき病室の隣のドアに、手をかけた。
『ただいまお父さん、買ってきたよ。』
「ありがとな、柚子。」
彼女、柚子さんが入ってった病室には、どうやら父親が入院しているようだった。
呆然と立ち尽くす俺の頭に、不意にお決まりの重さがかかる。
「何してんだ?」
「…急に現れて乗るなよ、リボーン。」
今は、リボーンに会いたくなかった。
つっても“住み込みの家庭教師”だから会わない日なんて無いんだけど。
ただ母さんが怪我して、それは俺がボンゴレの10代目候補であることが原因で………
だから考えたくなかった。
マフィアになるかも知れない、なんて。
「どうかしたのか?ツナ。」
いつまでも突っ立ったまま考え事をしている俺に、リボーンの声が降って来る。
ホット緑茶を少し強く握って、俺は口を開いた。
「なぁリボーン、俺……やっぱりボスにはならない。」
「…ふざけたこと抜かすと、ドタマかち割るぞ。」
「今度は本気だよ、本気の本気。俺には出来ないと思うんだ。」
一番身近な人を守れずに怪我させて、何で仲間や友達を守れるんだよ。
無理に決まってる。
俺には、力が無いんだ。
今まで嫌がってたのは面倒だったから。
けど今回は、違う。
俺は自分の無力を知った。
だから断る。
こんな俺がボスになっちまったら、それこそボンゴレファミリーも次の代で終わっちまうだろうから。
「……聞かなかったことにしてやる。頭冷やせ。」
「冷えてるよ。」
「今のお前はママンの怪我で判断力を欠いてんだ。緑茶、冷めるぞ。」
言いながらリボーンは俺の頭から飛び降り、母さんの病室に入っていった。
俺もホット緑茶を頼まれていたのを思い出し、後に続いた。
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翌日、また病院へ行った。
ランボが「毎日ママンに会いたい」とか言うからだ。
病室に駆け込むランボにため息をついてから、ふと隣の病室に目をやる。
“牧之原朽葉”……そう、書いてあった。
「ツー君どうしたの?入らないの?」
「あ、あぁ…」
いつまでもドアを閉めない俺に疑問を持った母さんが言う。
慌てて閉めて、椅子に座った。
家事は居候のみんなと分担してやってること、
勉強会もしてるから別に寂しくないこと、
父さんから母さんへの手紙が来てたこと……
色々話してからまた席を立つ。
「ランボ、大人しくしてろよ。イーピン、頼んだぞ。」
「ツナ~、ランボさんのお菓子も!!」
「はいはい。」
俺が病室を出たその瞬間、目の前を誰かが走り去って行った。
ふわりと光ったあの髪色は………
「柚子!病院なんだから走っちゃダメよ!」
『でも早くしないとレッスンに遅れちゃうの!』
サッと振り向き言ってから、走って行く彼女。
その母親らしき女性はため息を一つ零してから、それまで居た病室の中に向かって言った。
「まったく……ごめんなさいね、また来るわ。」
「ああ、気をつけて帰るんだよ。」
「ありがとう。」
やや寂しそうな微笑を見せ、その女性は立ち去った。
俺は売店に行こうと隣の病室の前を通る。
頭の隅に何かが引っかかっているような、そんな感じがした。
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「(ん…?)」
売店からの帰り、俺は一際目立つ髪色を見つけた。
それは、ふわりと揺れながら離れていく。
あの髪は……柚子さん?
けど俺、さっき彼女が帰ったトコを見たワケだし…。
おかしいと思いつつ後を追ってみる。
つっても病室が同じ方向だからそっちに向かわざるを得なかったんだけど。
そして、人込みを抜けた所で理解した。
「そっか…」
俺が今追っかけてた髪の持ち主は、柚子さんの父親だったんだ。
病院から支給されたらしき水色のパジャマでゆったりと歩く。
柚子さんの髪色が親譲りだということは、一目瞭然だった。
自分の病室のドアに手をかけた柚子さんの父親……確か朽葉さんだっけ……は、ふと視線をこっちに持ってくる。
驚きながら目を逸らした俺に、彼はゆったりと歩み寄った。
「昨日の声、君だったのか。」
「……へ?」
「いやぁすまない、職業柄、耳が必要以上に働いてしまってね。ボスがどうとか、頭冷やせとか、言い争いが聞こえてしまったんだ。」
目を見開く俺に、朽葉さんは自己紹介をしてくれた。
プロのフルート奏者で、倒れる前は世界中を飛び回っていたと。
俺も自己紹介をすると、更に親しげに同じ年の娘さんがいると教えてくれた。
「(俺と同い年なんだ、柚子さん……)」
「これは僕のお節介だから、聞き流してくれると有難いんだが……」
「…何ですか?」
「さっき廊下から聞こえた会話から察するに、綱吉君はお母様の怪我を自分のせいだと思ってるようだね。」
普通、数分前に出会った赤の他人にそんなことを言われたらカッとなるだろう。
けど何故かその時、俺は朽葉さんに怒りどころか不快感すら欠片も感じなかった。
黒縁メガネの奥にある、穏やかな瞳。
それは、尖るはずの気持ちに温かく語りかける。
「……実際、そうなんです。母が今入院してるのは、俺のせいで…」
「君は、母親思いのいい少年だ。」
「俺の責任ですから、毎日見舞いに来ることなんて当然です。」
「そうじゃない。君は今、何かを諦めようとしてる。お母様の怪我を理由に………違うかい?」
「諦め、る…?」
俺が?
ボンゴレ10代目になるのを“諦める”?
それはまるで、ボスになりたがってる人間に使う言葉だ。
俺は別に………
いや、違う。そうじゃないんだ。
俺はボンゴレのボス候補として色んな人に出会ったんだ。
たくさんの試練を乗り越えて、仲間も友達も増えた。
俺は……その交流を諦めようとしてるのか…?
「綱吉君、君の若さで諦めは良くない。ぶつかって、挫折するくらいがちょうどいい。柚子にもそう教えてるんだ。」
「(あ……!)」
その瞬間、俺は自分の中で絡まっていた糸が解けたのを感じた。
さっきまで頭の隅に引っかかってた何か、それは……
一瞬だけ見えた、柚子さんの表情だったんだ。
俺の前を通ったあの瞬間、彼女は確かに苦しそうで泣きそうな顔をしてた。
なのに、呼び止められて振り向いた時、そんな表情は無かったかのように笑顔になった。
弱い自分を、見られまいとでもするかのように。
「あらツー君、そんなトコでお喋り?そちらの方は?」
「あ、母さん…」
「すみません、僕が息子さんを引き留めてしまったんです。隣の病室の、牧之原朽葉と言います。」
ちょうど、車椅子で出てきた母さんが俺を見つけた。
トイレにでも行こうとしてたみたいだ。
朽葉さんの穏やかなオーラは若干母さんのソレと似ていて、俺も含めて喋るようになった。
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翌日、柚子さんは見舞いに来なくて、朽葉さんの奥さんである杏香さんだけ紹介された。
彼女は朽葉さんとは対照的で、しっかり者の印象を受けた。
「残念だわ、ちょうど柚子は今日からフルートの練習が忙しくなって…数日に1度しか来れないのよ。」
「そうか…綱吉君は柚子と同い年だし、紹介したかったんだがなぁ…」
「(フルート習ってるんだ…)」
杏香さんも週休2日で仕事をしているから、柚子さんはフルート教室に入り浸っているらしい。
家で一人で待っているより寂しくないし、ご両親としてもその方が安全だと考えたのだ。
「ごめんなさい。私もあまり長く居られないので…もし奈々さんや綱吉君の時間がある時に朽葉の話相手になって下されば助かります。」
「えぇもちろんです。ね、ツー君。」
「俺たちで良ければ…」
「ありがとうございます。うちの柚子も、綱吉君みたいにしっかり者になってくれないかしら。」
杏香さんは苦笑しながら時計を見て、立ち上がる。
そろそろ帰って夕飯の買い物に行かなければならない、と。
母さんも体に障るといけないから、とナースに部屋に戻るよう急かされる。
「じゃあ俺も失礼します。」
「うん、楽しかったよ。ありがとう、綱吉君。」
「……あの、」
礼を言われた時の違和感に、俺は思わず立ち止まった。
朽葉さんは変わらぬ穏やかな瞳を向ける。
「どうかしたのかい?」
「俺……人よりカンが働くんですけど………朽葉さんも、何かを諦めてませんか?」
「…何故そう思うんだい?」
「えっと…雰囲気とか、ホントにただのカンなんですけど…」
超直感があるなんて、一般人には言えなかった。
けど確かに俺は、朽葉さんが当然のように何かを諦めてると察した。
思い切って問いかけた俺に、朽葉さんは驚くほど自然に、まるで子供に絵本を読み聞かせるように、言った。
「僕は…もう長くないんだ。」
朽葉さんが諦めていたのは、自分の生命だった。
「な…何言ってんですか?だって朽葉さん、元気に話してますし…」
「奈々さんには言わないで欲しい。隣の病室にいる患者が、末期がんだって。」
「がん…!?」
「きっと奈々さんは僕以上に気を使ってしまうだろうからね。けど綱吉君は聞き流してくれそうだ。」
「そ、そんなこと…!」
「むしろ、聞き流して欲しい。」
何てこと無いとでも言うように、朽葉さんは微笑む。
「未練が無いと言えば嘘になるけど……不思議と気が楽なんだ。杏香や柚子には苦労をかけてしまうけどね。」
「朽葉さん……」
「ほら、奈々さんの病室に戻らないと。」
色々と聞きたいことがあったけど、俺は仕方なく戻った。
明日、ちゃんと聞こう。
何で杏香さんが俺に死期が近いと告げたのか。
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翌日、病院に来た俺の耳に、笛の音が聞こえてきた。
散歩道の方からだ。
結構な広さがあるから、迷惑にもならないだろうと病院側に許可されたんだろう。
けどそれは、病院という環境に似合わない軽快な曲。
どんな人が吹いてるのか気になって、母さんの病室の窓から見回してみた。
「どうしたの?ツー君。」
「笛、聞こえるから……どこで吹いてんのかと思って。」
「吹いてるの、柚子ちゃんですって。ほら、朽葉さんの娘さん。」
母さんから聞いた話じゃ、柚子さんはフルート教室で出された課題曲を朽葉さんにレクチャーしてもらってるとか。
確かに、世界に名を馳せるフルート奏者が父親なら、これほど良い先生はいない。
「それにしても上手ね……聞き惚れちゃうわ。」
「………うん…」
まるで、唄っているような。
まるで、語りかけるような。
この音色はきっと、朽葉さんの音色を受け継いだものなんだろうな。
曲が終わると、甲高い声が響く。
『どうだった!?お父さん!』
「(あ、見つけた…)」
風に揺れる薄い茶髪が、2人分。
朽葉さんと柚子さんだ。
あの光景を見てると、どうしても信じられなくなる。
---「僕は…もう長くないんだ。」
朽葉さんが病室に戻ってきたら、昨日の疑問をぶつけてみよう。
そう思った、直後だった。
『お父さんっ…!!』
「(え?)」
『お父さんっ!!しっかりして!お父さんっ!!』
それまで楽しそうに弾むように話していた柚子さんの声が、一気に色を変えた。
緊迫が伝わる。
見ると、2人の所に数人のナースが駆け寄っていた。
朽葉さんが、倒れたんだ。
寝かされた状態で病室に戻ってきた朽葉さん。
その手をしっかりと握って病室に入って行く柚子さん。
話しかけるタイミングなんて、あるハズもなかった。
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しばらくして、隣から声が聞こえてきた。
朽葉さんは意識を取り戻したようだ。
いつの間にか杏香さんも駆けつけていたらしく、柚子さんの声色にも安堵が混じっていた。
「朽葉さんは…何の病気なのかしらね……」
母さんにも隣からの声は聞こえてたらしく、俺に問いかける。
「……さぁ…」
昨日朽葉さんに口止めされたのを思い出して、俺はちゃんと答えなかった。
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『また明日ね!お父さん。』
「ああ、待ってるよ。」
柚子さんが廊下を走ってく音がした。
後から杏香さんのヒールの音。
「……俺、ちょっと朽葉さんに会って来る。」
「え?ちょっとツー君…」
「放っといていーぞ、ママン。ツナなら大丈夫だ。」
「リボーン君…」
俺を追いかけようとした母さんを、リボーンが何を思って止めたのかは知らない。
その時の俺はとにかく、朽葉さんと話がしたかった。
コンコン、
「朽葉さん、いいですか?」
「あぁ、綱吉君。どうぞ。」
入室してすぐ、俺は尋ねた。
どうして、出会って間もない他人の俺に「もう長くない」なんて言ったのか。
朽葉さんは少しだけ苦笑して、窓の外を見た。
うっすらオレンジに染まり始める空に、愛おしそうな視線を注ぐ。
「……今日、柚子がフルートを吹いてたのを聞いたかい?」
「聞こえましたけど……それが何か?」
「実に軽快な曲なんだ、柚子にとっての試練なんだよ。」
「試練…?」
その単語を反復して、すぐ気付いた。
柚子さんにとっても今は凄く不安定な時期。
実の父親が末期のがんで入院してるんだから。
「あの子は気付いているんだ、僕がもう逝ってしまうことに。けど明るく振舞ってくれるんだ、僕を安心させるようにね。」
病室を出る時、柚子さんは一瞬だけ苦しみに潰れそうな表情をするという。
けど呼び止めればすぐに笑顔を見せ、『また明日』と言ってくれるそうだ。
その言葉に保障がないと、分かっていながら。
いつ破られてもおかしくない約束であると、知りながら。
「柚子は……強く振舞えると思う。けど本当はとても繊細だ……まだ中学生だからね。」
「柚子さんのことに……俺は関係ないハズです。」
「ハハハ、確かにそうだね。けれど、“袖摺り合うも多少の縁”って言葉を知ってるかい?」
話が見えないまま小首を傾げた俺に、朽葉さんは突如頭を下げた。
「なっ…!」
「僕が逝った後、柚子のフルートを聴いて欲しいんだ。」
「お……俺が、ですか?てゆーか、頭上げて下さいっ!」
何で俺が、
他人なのに、
音楽批評家でもないのに、
色んなことを一気に考えて混乱する。
朽葉さんは教えてくれた。
柚子さんが今練習しているのは、大勢で演奏して初めて完成する『ラデツキー行進曲』。
自宅に不幸があったからと言って、輪を乱してはいけないのだと。
「声をかけなくてもいい、3日間でいい!……僕の代わりに、聴いて欲しいんだ。」
「俺には、朽葉さんの代わりなんて…」
「アドバイスをする必要はない、聴くだけでいいんだ。」
承諾を躊躇う俺に、朽葉さんは続ける。
「柚子には…あの散歩道に来て練習するように言ったんだ。多分、今日居た木の下で吹くと思う。」
「でも…」
「聴いて欲しいんだ、他でもない綱吉君……君に。」
空は、赤に近いオレンジに染まっていた。
燃えるようなその色を髪の毛に反射させ、朽葉さんは俺にもう一度頭を下げた。
「分かり、ました…」
こんな真剣に頼みごとをされたのは初めてで、俺は半ば押されるように承諾した。
朽葉さんは少し泣きそうになりながら何度もお礼を言う。
母さんの退院まであと2週間以上あるし、病院に来ればきっと聞こえるだろう……
と、思った。
「あの…話を受けておいてアレですけど…聴くだけなら、杏香さんもいるんじゃ……」
「君と杏香では、きっと違うだろうから。」
「血縁者と他人ってことですか?」
だったら、血縁者である杏香さんの方が朽葉さんの代わりとして聴けるんじゃないか……
その考えを見透かしたように、朽葉さんは言った。
「曲から受け取る、言葉だよ。」
「へ?」
「僕の持論だ。同じ曲を聴いて、全く同じ感想を抱く人間はいない。だから曲にも聴く人を選ぶ権利がある。」
「はぁ……」
「それに杏香には仕事もある、これ以上負担を掛けたくないんだ……あ、こんな言い方じゃ綱吉君が暇人だと言ってるみたいだね、すまない。」
「あ、いえ……どうせ夏休みですし…」
俺の返答に、朽葉さんはハハッと笑った。
それから5日後のことだった。
朽葉さんの容体が急変し、俺がその約束を果たす時が来たのは。
トラウマ
あの頃はマフィアなんかになりたくなくて、大事な人が傷つくことにただただ恐怖していた。
continue...