🎼本編
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「おはようございます!10代目!」
「あ、おはよう獄寺君。」
「あれ、お1人っスか?柚子は…」
「レポート溜まったから早く行くって。」
獄寺君は「そーいや出てました」と言いながら座る。
俺達は、必ず1人1つは柚子と同じ授業を取っている。
今回レポートが出された授業は、柚子と獄寺君が取ってるものらしい。
「でもアレ、調べ物さえ終わればすぐ済むと思います。」
「けど、さすがに夕飯作る時間には間に合わないよなー…」
「はい、多分……バジルに言っときますか?」
「あ、うん。頼むよ。」
今日の夕飯はバジル担当か…
またオール湯葉じゃなきゃいいけど。
あ、最近納豆って言ってたな……
偏ったメニューにならなければいいと、少しだけ神頼みしておいた。
---
-------
---------------
『よしっ、』
このレポートを仕上げるまで帰らない!
うん、決めた。
全部の授業で一番後ろの席に座り、借りたノートパソコンを開く。
あたしは普通の人より若干タイピングが遅いから、なかなか思うように進まない。
う~ん、今度練習しようっと。
あ、確か雲雀さんはタイピング早かった気がする…。
コツとか教えてもらおうかな。
結局、授業全てを使ったけどその時間内には終わらず、放課後図書館に残る事にした。
『あと何枚だろ……』
最低10枚だから、少なくとも5枚は書かなくちゃいけないんだ……あぁ、憂鬱。
調べたり視聴したりするのは大好きなんだけど、それをまとめたり考察したりするのは凄く苦手。
あーあ、演奏の授業だけ取って卒業出来ないかなぁ…。
『……っと、いけないいけない!』
集中しなくちゃね。
早く終わらせて、早く帰りたい。
そしたら、ツナさんの話を聞くんだ……明るくて暗い話…。
レポートやらなくちゃって思ってても、どうも思考が別の方にいっちゃう。
これじゃあいつまで経っても終わらないよ……はぁ。
『また、皆さんと演奏したいなぁ…』
初めて弾いたスメタナの「ブルタバ(モルダウ)」を思い出して、
カバンの中にあるフルートのケースをチラリと見た。
---
------
-------------
『んーっ……』
2時間ぶっ続けはさすがに肩が凝って、思いきり背伸びをした。
ふと見ると、もう6時。
あーもー夕飯の時間だ、またバジルさんにご迷惑かけちゃったなぁ…。
お詫びのメールでもしようかと携帯を探した、その時。
ブーッ、ブーッ、
『ひょえ!?』
突然バイブ音がして、ビクッとした。
おかげで携帯はすぐ見つかったんだけど……
『(誰だろ…?)』
見ると、ツナさんからのメール1件。
何てタイミング……
-----------
From.ツナさん
(non title)
柚子、はかどってる?
夕飯はバジルがやってくれるから心配するなよ。
------------
そこまで書いてあって、まだスクロール出来るようになってる。
このパターンは、まさか……
『(やっぱり、なかなか次の文章出て来ない…!)』
んもーっ、あの暇人ボスめ!
------------
今、俺が暇人だって思っただろ。
------------
『ひょえっ!!』
慌てて周囲を確認したけど、誰もいない。
ビックリさせないで下さいよ、もう…。
『…………あ。』
長い長いスクロールを終えて、最後に出て来た文面。
あたしが目を見開くのに、充分な内容だった。
------------
待ってるから、頑張れよ。
------------
あぁダメだ、ニヤけちゃう…。
たった一言だけど、嬉し過ぎて。
この長い長いスクロールがツナさんの照れ隠しのように思えて、何だか可愛く見えて来る。
『…返信しよっと。』
------------
ありがとうございます♪
頑張って、あと1時間くらいで終わらせます!
------------
ツナさんに返信してから、自分の頬をぺちっと叩く。
気合を入れ直して、また再開した。
---
----------
『終わったー!!』
メールしてから1時間弱、ようやくあたしのレポートは完成し、プリントアウトも完了した。
持って来たホッチキスで留めて、あとは明日提出するだけ。
『さーて、帰ろうっと!』
ツナさんの話、楽しみだけど不安だな…
あたしも関わってるんだよね、何か緊張するなぁ……。
図書館を出て、7号館に向かっていた、その途中。
ポタ、ポタ……サー…
『うぎゃっ!』
突然、雨が降って来た。
見上げれば、昼までの晴れた空は全く無くて。
『(避難避難っ…)』
慌てて屋根のあるトコに雨宿り。
困ったなぁ、
このまま中庭を突っ切るのが距離的には早いんだけど……
でも中庭の広さは尋常じゃない。
駆け抜けても3分は雨にさらされることになる。
それに、あたしちょっとドジだからな……転ぶかも……
『しょうがないなぁ…』
7号館は他のキャンパスより少し離れてる。
だから遠回りするとなると、一回このキャンパスを出る事になるのだ。
そーだ、正面玄関で傘の貸出してるだろうし、そっちから帰ろうっと。
遠回りするのは癪だけど、ずぶ濡れで転びそうになるよりマシ。
仕方なく、正面玄関から一旦街に出るルートを通ることにした。
------
「はい、1週間後までに返してね。」
『ありがとうございます。』
キャンパスの玄関前事務所で傘を借りて、外に出た。
ぐるっと回り込んで7号館に帰るのは面倒だけど、来た道を引き返すのもそれなりに遠い。
こーなったらどっちでもいいと思って、そのまま一般道を歩いていた。
すると…
パッパー!
『え?』
後ろから、クラクションの音が聞こえて振り向く。
あたし、歩行者道路にいるハズなのに……
でもそれは、危険を知らせるクラクションじゃなくて。
「柚子さん、こんにちは。」
『あ、えと…矢野さん!』
半分だけ開いた窓の向こうから呼びかけて来たのは、
フルートコンクール金賞を獲った、矢野さんだった。
「今帰りですか?」
『はい、ちょっとレポート残っちゃってて……矢野さん、この近くの方なんですか?』
「いや、コンクールの為に近くに滞在してましてね。今日、地元に帰るんです。」
『あ、そうでしたか!』
路中状態の矢野さんの車。
同じように立ち止って、あたしは話す。
「それにしても、本当に運が良かった。帰る前に柚子さんに会えるなんて。」
『え?』
「僕にライバル宣言をしてくれたのは、柚子さんが初めてでしたから。」
『ライバル宣言…………あ!』
---『今度どこかのコンクールで出会った時は、負けませんので。』
そう言えばそんなこと言っちゃったな…
でも、あたしにも一応目標があるし…。
『す、すみません。気を悪くなさったなら謝ります。』
「いえ、違うんです。ただ……、」
その瞬間、あたしの視線は本能的に矢野さんの手元を見ていた。
懐に入れられた彼の右手が、何かを取り出す仕草を。
バチッ…!
『きゃっ…!!?』
咄嗟に一歩引いたのは、普段リボーンさんが銃を取り出す仕草を身体が覚えていたから。
雨に当たって光を放ったソレは、初めて目にするスタンガン。
え?何で?
矢野さんが、あたしを……気絶させようとした!?
「避けるなよ。」
『な…、』
「僕にライバルなんて必要ない。危険な芽は……花開く前に摘むまで。」
“逃げろ”
本能の命令に従って、全速力で走りだした。
『(うそ、でしょ…!?)』
今の日本人ってそんな危険な行動起こしちゃうんだ…!
あーやっぱり余計なこと言うんじゃなかった!!
てゆーか!
リボーンさんに感謝しなくちゃ!
いつも脅かされてたおかげで一歩下がるクセついてたんだ、本当に感謝!!
落ち着け、落ち着くのよ柚子。
今あたし…何処に向かってるの!?
『7号館……』
ううん、ダメ!
皆さんに迷惑かけられないよ、むしろ7号館からは遠ざかるべき!!
7号館付近で事件でも起こしたら、住んでることがバレちゃうし……やっぱり良くない!
でも相手は車、あたしは走り。
どう考えても追いつかれる……
そうだ、小道を行けばいーんだ!
薄暗い道に、あたしは足を踏み入れた。
『はぁっ……はぁっ…』
ココまで来れば大丈夫、かな?
結構細い道ばかり通って頑張ったんだけど……
途中で傘を閉じちゃったから、もう風邪引きそうなくらい寒い。
服も靴も髪もびしょびしょ。
キキーッ、
『………うそ…』
どんだけ執念深いのさ……
前に喧嘩売って来た怖いお姉さん並みだよ…。
(第47話参照)
あり得ないことに、そこは袋小路だった。
あたしってば、もっとマシなルートチョイス出来なかったのかな?
仕方ないよ、今年の4月この街に来たばっかだもん。
フル回転する頭には、そんな後悔しか浮かんでこない。
矢野さんが、車から降りた。
「やっと追い詰めた、僕の危険分子。」
『あ…あたしに何を…』
「別に。ただ、指が一本無くなればいいんじゃないかと思って。」
何てことを考えてるんだろう、今時の若者は。
いや、あたしも今時の若者だけどさ。
出来る限り、後退る。
あぁもうダメなの?
あたし、指一本取られて、フルート出来なくなるの…?
「大人しくしてれば、一本だけにするからさ。」
『……んなの、』
「ん?」
『そんなの嫌っ!!!』
袋小路なら、逃走ルートは限られてる。
矢野さんを一瞬だけ退かせることが出来れば、あたしは逃げられるハズ!
お父さんに教わったフルート、こんなトコでその道を断たれるなんて絶対に嫌!!
「諦め悪いなぁ。」
彼が持つスタンガンが、怖くないワケじゃない。
むしろ超怖い。
けど、あたしは……こんな人のためにフルートを諦めたくない!!
頭の中ではこの抵抗が無駄かもと思いながら、重いカバンを振り上げた、その時。
カカカカッ、
『えっ…!?』
あたしと矢野さんの間に刺さった、風車(かざぐるま)。
矢野さんも怯んだのか、数歩下がる。
気付けばあたしは、3人の人に守られるように囲まれていて。
「貴女は敵を倒すには弱すぎる……」
『へ…?』
目の前に立つ、細長い男の人が言う。
ふと見ると、あたしの右側に立っているゴスロリ服の女の子が、傘に入れてくれていた。
「しかし、か弱い乙女というには、強すぎる精神をお持ちですな。」
「な、何だお前ら……一体どこから…」
矢野さんの言葉は無視して、細長い人は続けた。
「だからこそ、ボンゴレなんぞよりも我々のファミリーに来て頂く!!要するに…助太刀いたしますぞ!」
それは凄く凄く助かるんですけど、でも……
『ど、どなた…!!?』
ネバーギブアップ
諦めない精神が引き寄せたのは、新たな出会いだった。
continue...
「あ、おはよう獄寺君。」
「あれ、お1人っスか?柚子は…」
「レポート溜まったから早く行くって。」
獄寺君は「そーいや出てました」と言いながら座る。
俺達は、必ず1人1つは柚子と同じ授業を取っている。
今回レポートが出された授業は、柚子と獄寺君が取ってるものらしい。
「でもアレ、調べ物さえ終わればすぐ済むと思います。」
「けど、さすがに夕飯作る時間には間に合わないよなー…」
「はい、多分……バジルに言っときますか?」
「あ、うん。頼むよ。」
今日の夕飯はバジル担当か…
またオール湯葉じゃなきゃいいけど。
あ、最近納豆って言ってたな……
偏ったメニューにならなければいいと、少しだけ神頼みしておいた。
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『よしっ、』
このレポートを仕上げるまで帰らない!
うん、決めた。
全部の授業で一番後ろの席に座り、借りたノートパソコンを開く。
あたしは普通の人より若干タイピングが遅いから、なかなか思うように進まない。
う~ん、今度練習しようっと。
あ、確か雲雀さんはタイピング早かった気がする…。
コツとか教えてもらおうかな。
結局、授業全てを使ったけどその時間内には終わらず、放課後図書館に残る事にした。
『あと何枚だろ……』
最低10枚だから、少なくとも5枚は書かなくちゃいけないんだ……あぁ、憂鬱。
調べたり視聴したりするのは大好きなんだけど、それをまとめたり考察したりするのは凄く苦手。
あーあ、演奏の授業だけ取って卒業出来ないかなぁ…。
『……っと、いけないいけない!』
集中しなくちゃね。
早く終わらせて、早く帰りたい。
そしたら、ツナさんの話を聞くんだ……明るくて暗い話…。
レポートやらなくちゃって思ってても、どうも思考が別の方にいっちゃう。
これじゃあいつまで経っても終わらないよ……はぁ。
『また、皆さんと演奏したいなぁ…』
初めて弾いたスメタナの「ブルタバ(モルダウ)」を思い出して、
カバンの中にあるフルートのケースをチラリと見た。
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『んーっ……』
2時間ぶっ続けはさすがに肩が凝って、思いきり背伸びをした。
ふと見ると、もう6時。
あーもー夕飯の時間だ、またバジルさんにご迷惑かけちゃったなぁ…。
お詫びのメールでもしようかと携帯を探した、その時。
ブーッ、ブーッ、
『ひょえ!?』
突然バイブ音がして、ビクッとした。
おかげで携帯はすぐ見つかったんだけど……
『(誰だろ…?)』
見ると、ツナさんからのメール1件。
何てタイミング……
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From.ツナさん
(non title)
柚子、はかどってる?
夕飯はバジルがやってくれるから心配するなよ。
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そこまで書いてあって、まだスクロール出来るようになってる。
このパターンは、まさか……
『(やっぱり、なかなか次の文章出て来ない…!)』
んもーっ、あの暇人ボスめ!
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今、俺が暇人だって思っただろ。
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『ひょえっ!!』
慌てて周囲を確認したけど、誰もいない。
ビックリさせないで下さいよ、もう…。
『…………あ。』
長い長いスクロールを終えて、最後に出て来た文面。
あたしが目を見開くのに、充分な内容だった。
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待ってるから、頑張れよ。
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あぁダメだ、ニヤけちゃう…。
たった一言だけど、嬉し過ぎて。
この長い長いスクロールがツナさんの照れ隠しのように思えて、何だか可愛く見えて来る。
『…返信しよっと。』
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ありがとうございます♪
頑張って、あと1時間くらいで終わらせます!
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ツナさんに返信してから、自分の頬をぺちっと叩く。
気合を入れ直して、また再開した。
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『終わったー!!』
メールしてから1時間弱、ようやくあたしのレポートは完成し、プリントアウトも完了した。
持って来たホッチキスで留めて、あとは明日提出するだけ。
『さーて、帰ろうっと!』
ツナさんの話、楽しみだけど不安だな…
あたしも関わってるんだよね、何か緊張するなぁ……。
図書館を出て、7号館に向かっていた、その途中。
ポタ、ポタ……サー…
『うぎゃっ!』
突然、雨が降って来た。
見上げれば、昼までの晴れた空は全く無くて。
『(避難避難っ…)』
慌てて屋根のあるトコに雨宿り。
困ったなぁ、
このまま中庭を突っ切るのが距離的には早いんだけど……
でも中庭の広さは尋常じゃない。
駆け抜けても3分は雨にさらされることになる。
それに、あたしちょっとドジだからな……転ぶかも……
『しょうがないなぁ…』
7号館は他のキャンパスより少し離れてる。
だから遠回りするとなると、一回このキャンパスを出る事になるのだ。
そーだ、正面玄関で傘の貸出してるだろうし、そっちから帰ろうっと。
遠回りするのは癪だけど、ずぶ濡れで転びそうになるよりマシ。
仕方なく、正面玄関から一旦街に出るルートを通ることにした。
------
「はい、1週間後までに返してね。」
『ありがとうございます。』
キャンパスの玄関前事務所で傘を借りて、外に出た。
ぐるっと回り込んで7号館に帰るのは面倒だけど、来た道を引き返すのもそれなりに遠い。
こーなったらどっちでもいいと思って、そのまま一般道を歩いていた。
すると…
パッパー!
『え?』
後ろから、クラクションの音が聞こえて振り向く。
あたし、歩行者道路にいるハズなのに……
でもそれは、危険を知らせるクラクションじゃなくて。
「柚子さん、こんにちは。」
『あ、えと…矢野さん!』
半分だけ開いた窓の向こうから呼びかけて来たのは、
フルートコンクール金賞を獲った、矢野さんだった。
「今帰りですか?」
『はい、ちょっとレポート残っちゃってて……矢野さん、この近くの方なんですか?』
「いや、コンクールの為に近くに滞在してましてね。今日、地元に帰るんです。」
『あ、そうでしたか!』
路中状態の矢野さんの車。
同じように立ち止って、あたしは話す。
「それにしても、本当に運が良かった。帰る前に柚子さんに会えるなんて。」
『え?』
「僕にライバル宣言をしてくれたのは、柚子さんが初めてでしたから。」
『ライバル宣言…………あ!』
---『今度どこかのコンクールで出会った時は、負けませんので。』
そう言えばそんなこと言っちゃったな…
でも、あたしにも一応目標があるし…。
『す、すみません。気を悪くなさったなら謝ります。』
「いえ、違うんです。ただ……、」
その瞬間、あたしの視線は本能的に矢野さんの手元を見ていた。
懐に入れられた彼の右手が、何かを取り出す仕草を。
バチッ…!
『きゃっ…!!?』
咄嗟に一歩引いたのは、普段リボーンさんが銃を取り出す仕草を身体が覚えていたから。
雨に当たって光を放ったソレは、初めて目にするスタンガン。
え?何で?
矢野さんが、あたしを……気絶させようとした!?
「避けるなよ。」
『な…、』
「僕にライバルなんて必要ない。危険な芽は……花開く前に摘むまで。」
“逃げろ”
本能の命令に従って、全速力で走りだした。
『(うそ、でしょ…!?)』
今の日本人ってそんな危険な行動起こしちゃうんだ…!
あーやっぱり余計なこと言うんじゃなかった!!
てゆーか!
リボーンさんに感謝しなくちゃ!
いつも脅かされてたおかげで一歩下がるクセついてたんだ、本当に感謝!!
落ち着け、落ち着くのよ柚子。
今あたし…何処に向かってるの!?
『7号館……』
ううん、ダメ!
皆さんに迷惑かけられないよ、むしろ7号館からは遠ざかるべき!!
7号館付近で事件でも起こしたら、住んでることがバレちゃうし……やっぱり良くない!
でも相手は車、あたしは走り。
どう考えても追いつかれる……
そうだ、小道を行けばいーんだ!
薄暗い道に、あたしは足を踏み入れた。
『はぁっ……はぁっ…』
ココまで来れば大丈夫、かな?
結構細い道ばかり通って頑張ったんだけど……
途中で傘を閉じちゃったから、もう風邪引きそうなくらい寒い。
服も靴も髪もびしょびしょ。
キキーッ、
『………うそ…』
どんだけ執念深いのさ……
前に喧嘩売って来た怖いお姉さん並みだよ…。
(第47話参照)
あり得ないことに、そこは袋小路だった。
あたしってば、もっとマシなルートチョイス出来なかったのかな?
仕方ないよ、今年の4月この街に来たばっかだもん。
フル回転する頭には、そんな後悔しか浮かんでこない。
矢野さんが、車から降りた。
「やっと追い詰めた、僕の危険分子。」
『あ…あたしに何を…』
「別に。ただ、指が一本無くなればいいんじゃないかと思って。」
何てことを考えてるんだろう、今時の若者は。
いや、あたしも今時の若者だけどさ。
出来る限り、後退る。
あぁもうダメなの?
あたし、指一本取られて、フルート出来なくなるの…?
「大人しくしてれば、一本だけにするからさ。」
『……んなの、』
「ん?」
『そんなの嫌っ!!!』
袋小路なら、逃走ルートは限られてる。
矢野さんを一瞬だけ退かせることが出来れば、あたしは逃げられるハズ!
お父さんに教わったフルート、こんなトコでその道を断たれるなんて絶対に嫌!!
「諦め悪いなぁ。」
彼が持つスタンガンが、怖くないワケじゃない。
むしろ超怖い。
けど、あたしは……こんな人のためにフルートを諦めたくない!!
頭の中ではこの抵抗が無駄かもと思いながら、重いカバンを振り上げた、その時。
カカカカッ、
『えっ…!?』
あたしと矢野さんの間に刺さった、風車(かざぐるま)。
矢野さんも怯んだのか、数歩下がる。
気付けばあたしは、3人の人に守られるように囲まれていて。
「貴女は敵を倒すには弱すぎる……」
『へ…?』
目の前に立つ、細長い男の人が言う。
ふと見ると、あたしの右側に立っているゴスロリ服の女の子が、傘に入れてくれていた。
「しかし、か弱い乙女というには、強すぎる精神をお持ちですな。」
「な、何だお前ら……一体どこから…」
矢野さんの言葉は無視して、細長い人は続けた。
「だからこそ、ボンゴレなんぞよりも我々のファミリーに来て頂く!!要するに…助太刀いたしますぞ!」
それは凄く凄く助かるんですけど、でも……
『ど、どなた…!!?』
ネバーギブアップ
諦めない精神が引き寄せたのは、新たな出会いだった。
continue...