🎼本編
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「あと6秒だったな。」
「こんなんで撃たれてたまるかっての。」
少し残念そうなリボーンさんに対して、ツナさんは得意気に口角を上げる。
あたしは、ハルさんに誘導されて席に着いた。
『わぁーっ!』
豪華なお食事が並んでいる。
「感謝しやがれ、柚子のためにわざわざホテルレストランに頼んだんだからな。」
『デリバリーでこの豪華さですか!!凄いです!!ありがとうございます獄寺さんっ♪』
お礼を言ったら、獄寺さんはそっぽを向いた。
感謝しろって自分で言ったのに…変なの。
「さぁ柚子ちゃん、頂きましょう!」
「ランボさん、柚子の隣座るーっ!!」
『いーよ♪おいでおいで!』
ハルさんとランボ君に挟まれて座り、お食事を頂いた。
ボンゴレクリームスパゲティが格別美味しくて、ついついおかわりを取りに行ってしまう。
「おやおや柚子、口の端にクリームがついてますよ?」
『じ、自分で取ります!』
「ダメです、こういうのは気付いた者の特権なんですから。」
『(ぎゃーっ!!)』
抵抗むなしく、骸さんに口の端のクリームを掬われる。
「ごちそうさまです♪」
『むっ…骸さん!!///あなたは何て事を…』
「雲雀さん、お願いします。」
ゴッ、
「クハッ…!」
『あ。』
お決まりのパターン……ツナさんの要請で雲雀さんが骸さんを殴る……で骸さんは気絶した。
呆然としていると、ツナさんにデコピンされた。
『いたっ……何するんですかぁ!』
「隙だらけの柚子も悪いってこと。」
『す、すみません……』
額をさすりながら謝るあたしに、ツナさんはくすっと微笑した。
首を傾げると、ポンと頭に手を乗せられて。
「ま、だから余計に可愛いんだけどさ。」
『(うっ…///)で、ですから…!』
「デザートお持ちしました!」
「おっ、うまそーなのな!」
反論しようとしたその時、いつの間にか退室していたバジルさんが広間に戻って来た。
山本さんが「どれにしようか」と選ぶそのお盆の上には……
で、デザート!!
一面のデザート!!
『あたしも食べますっ!!』
「ランボさんもーっ!!」
「あ、おい柚子っ………ったく、」
ツナさんの前からバジルさんの前へと、マッハで移動した。
『あっ、和菓子もあるっ!!』
「はい!柚子殿は和菓子好きだとお聞きしたので、取り寄せました。」
バジルさん…神!!
何てお優しいんでしょうっ…!
「お好きなのをどうぞ♪」
『ありがとうございます!!』
早速、一番手前にあった生八つ橋を一つ頬張る。
あぁ美味しい…幸せっ…///
「言っとくけど、」
『ふ?』
「取り寄せるように指示したの、俺だから。」
『ふぐっ…!?』
ツナさんの言葉に吃驚し過ぎて、八つ橋を喉に詰まらせるかと思った。
辛うじて飲み込み、息を落ち着かせるあたしを見て、ツナさんは意地悪く笑う。
「感謝しろよ?」
あたしの好きなもの、覚えててくれたんだ…。
そんな些細なことでも嬉しく思っちゃうあたしは、もう重傷なんだろうな。
『ありがとうございます!ツナさん♪』
普段は口から出にくいお礼の言葉も、するっと出てくる。
ホントは、言い足りないくらいなんです。
ツナさんはいつも、分からないように優しいから。
自然に自然に、溶け込んで包み込むような優しさだから。
『あ、山本さん、そちらのおはぎはどうでしょう?』
「おう!なかなか美味いぜ♪食うか?」
『はいっ!』
和菓子を堪能していると、次は洋菓子が出て来た。
シュークリームにチーズケーキ、ガトーショコラにミルクレープ。
幸せすぎて、顔がニヤけっ放しだった。
---
-------
パーティー開始から2時間と少し経った頃、テーブルの上はランボのおかげでだいぶ汚くなっていた。
俺はというと、リボーンと一緒に躊躇い無くワインを飲む山本に呆れていて。
「まだ未成年だろ、山本。」
「まーまー、ツナも飲むか?」
「飲まないよ、今日は。」
あははっと笑った山本は、思い出したように言う。
「そーいやさっき、骸がグラス持って柚子の方に行ったな。」
「なっ…はぁ!?」
焦って振り向くと、骸がまるでぶどうジュースを勧めるように柚子にグラスを持たせていて。
「柚子も一口どうです?アルコール度数は限りなく低いので。」
『でも…』
「そうですか、口移しがいいですか!喜んで!!」
『分かりました飲みます!飲みますからそれは勘弁して下さいっ!!///』
柚子は渋々グラスに口をつけ、少量喉に通した。
「何してんだよ骸、怒るよ?」
「おや綱吉、こんな日くらいいいじゃないですか。美味しいでしょう?柚子。」
『骸さん…これ、ホントにアルコール度数低いんですか…?何だか頭ボーッとします……』
見ると、柚子は火照った頬を手の平で押さえながら首を傾げていて。
「貸せ。」
「綱吉も飲みたいんですか?」
「違ぇよ。」
グラスを回して匂いを嗅いだだけで分かった。
「………骸、お前なぁ…」
「クフフ♪」
「雲雀さん、お願いします。」
ゴッ、バキッ、
「クハッ…!」
「いつもすみません。」
「別に、群れててイライラしてたし。」
あ、そうだよな…
いつもよりオーラが黒めな雲雀さんを見て、改めて気付く。
「骸なら好きなだけ殴っていいですよ。」
「そう。」
「な、何故ですか綱吉ぃぃぃ~~…僕は柚子ともっと喋りた…」
「他所見する暇、あるの?」
喚く骸に雲雀さんのトンファーが襲いかかる。
仕方なさそうに槍を出して応戦する骸。
俺は、未だボーッと宙を見つめる柚子に声をかけた。
「おい、大丈夫か?柚子。」
『………ツナさん……』
「ん?」
『…眠いです……』
「え、……うわっ、」
次の瞬間、柚子はふっと前に倒れ込む。
机に頭をぶつける前に支えて、ハッと思いだした。
確か、杏香さんもお酒弱いって言ってたな……
5年前、俺が初めて柚子を見つけたあの病院で。
「ったく、しょーがないな……」
ひとまず、柚子を部屋の隅のソファに寝かせて、片づけを始めるように指示した。
「えー!!もうパーティー終わりー!?ランボさんの御馳走はー!?」
「ツナ兄、ケーキ少し持って帰っていい?」
「うん、好きなだけ。あ、でも和菓子は残しといてな。」
「分かった!ありがとうツナ兄!」
「わーい!ランボさんもケーキ持って帰るもんね!!」
「イーピンも、好きなの持って帰っていいからな。」
「ありがとうございます!!」
時計を見ればもう9時になりそうで、お開きには妥当な時間かなと思った。
「じゃ、広間の片づけは頼んでいい?」
「はいっ!お任せ下さい10代目っ!!」
ハルやフゥ太が帰った後、俺はみんなに広間の大まかな片づけを任せた。
雲雀さんと骸は戦闘を継続中。
「ほら、柚子、」
『んー……』
「寝るなら部屋で……」
『……あと5分…』
…寝ぼけてる。
てか、寝言か?
「ったく、世話の焼ける…」
目を覚まさない柚子を抱き上げ、運んでやった。
疲れてたんだよな、きっと。
ずっとずっと、苦しみながらコンクールに向けて集中してて。
「ホント、ごめんな…」
“俺が引きこんだせいで…”
そう思った途端、口から漏れた謝罪の言葉。
柚子が起きてたら、絶対口に出来ない言葉。
『ん……』
「柚子?」
起きてたのかと焦ったけど、柚子は目を閉じたままで、
ただ、俺の服をギュッと握る。
「何だよ、らしくないな。」
寝てると分かってたけど、それでもその行為が愛しくて、思わず語りかける。
すると、柚子は小さく口を開いて。
『…ツナ、さん……』
皆が大広間にいてくれて良かったと思った。
今の俺、笑えるくらい赤くなってるだろうから。
柚子の部屋に着いて、起こさないようにベッドに寝かせる。
と、まだ服が掴まれてるのに気付いた。
「何だよ、ココにいろってか?」
しゃがんだまま、柚子の髪を撫でる。
色素の薄いそれは、窓から差し込む明かりに照らされて淡い金に見える。
初めて見た時から、変わらない髪の色。
5年前は、もう少し短かったかな。
なぁ柚子…
柚子はあの時、俺に強さをくれたんだ。
そのおかげで俺は今こうして、この立場にいる。
けど、俺が柚子から強さを貰えたのは、朽葉さんのおかげなんだ。
ひょっとしたら、朽葉さんに全部仕組まれてたのかもな。
それでもいい。
俺は……柚子に出会えて良かった。
そう、心から言えるから。
「ほら柚子、そろそろ放せって。」
あんまり可愛いことすんなっての。
普段俺に「プレイボーイはやめろ」って言うクセにさ。
「柚子、」
俺の服を掴む柚子の手を上から握る。
少し力を込めると、簡単に指がほどけた。
「今日は、良く頑張ったな。」
ゆっくりと髪を撫でる手を止めて、閉じられたその瞼に唇を落とした。
「おやすみ。」
言ってから柚子に毛布をかけて、俺は大広間に戻った。
---
--------
-------------
『おはようございますっ!』
「おはよう。」
俺が広間に来ると、既に全員分の食事を用意した柚子が明るく挨拶した。
昨日…やっぱ普通に寝てたのか。
「早いな、何かあるのか?」
『じ、実はですね……レポート提出が…』
コンクールの方に集中し過ぎて授業の課題を忘れていたらしい。
柚子は大きなため息をつく。
『あ、でも!ツナさんのお話は今日聞きますから!』
「え?あぁ、そっか。コンクール終わったら、って言ってたな。」
『はいっ、でもレポート終わるまで学校に残るので……』
「分かった、待ってるよ。」
ずっとずっと、話したかったこと。
伝えたかったことを、今日言える。
『ありがとうございます!あ、ちなみに冷蔵庫にデザートのヨーグルト入ってますので!トッピングはお好みでっ!』
「柚子はもう食べたのか?」
『はい!では、お先に行ってきます♪』
「いってらっしゃい。」
エプロンを取って、柚子は駆けて行った。
見送ってから、箸を手に取りオムレツを一口食べる。
「ん、美味しい。」
ぼんやりした朝の光が差す中、俺の口元は自然と緩んだ。
ノクターン
昨夜の彼女の可愛い仕草は、俺だけの秘密
continue...
「こんなんで撃たれてたまるかっての。」
少し残念そうなリボーンさんに対して、ツナさんは得意気に口角を上げる。
あたしは、ハルさんに誘導されて席に着いた。
『わぁーっ!』
豪華なお食事が並んでいる。
「感謝しやがれ、柚子のためにわざわざホテルレストランに頼んだんだからな。」
『デリバリーでこの豪華さですか!!凄いです!!ありがとうございます獄寺さんっ♪』
お礼を言ったら、獄寺さんはそっぽを向いた。
感謝しろって自分で言ったのに…変なの。
「さぁ柚子ちゃん、頂きましょう!」
「ランボさん、柚子の隣座るーっ!!」
『いーよ♪おいでおいで!』
ハルさんとランボ君に挟まれて座り、お食事を頂いた。
ボンゴレクリームスパゲティが格別美味しくて、ついついおかわりを取りに行ってしまう。
「おやおや柚子、口の端にクリームがついてますよ?」
『じ、自分で取ります!』
「ダメです、こういうのは気付いた者の特権なんですから。」
『(ぎゃーっ!!)』
抵抗むなしく、骸さんに口の端のクリームを掬われる。
「ごちそうさまです♪」
『むっ…骸さん!!///あなたは何て事を…』
「雲雀さん、お願いします。」
ゴッ、
「クハッ…!」
『あ。』
お決まりのパターン……ツナさんの要請で雲雀さんが骸さんを殴る……で骸さんは気絶した。
呆然としていると、ツナさんにデコピンされた。
『いたっ……何するんですかぁ!』
「隙だらけの柚子も悪いってこと。」
『す、すみません……』
額をさすりながら謝るあたしに、ツナさんはくすっと微笑した。
首を傾げると、ポンと頭に手を乗せられて。
「ま、だから余計に可愛いんだけどさ。」
『(うっ…///)で、ですから…!』
「デザートお持ちしました!」
「おっ、うまそーなのな!」
反論しようとしたその時、いつの間にか退室していたバジルさんが広間に戻って来た。
山本さんが「どれにしようか」と選ぶそのお盆の上には……
で、デザート!!
一面のデザート!!
『あたしも食べますっ!!』
「ランボさんもーっ!!」
「あ、おい柚子っ………ったく、」
ツナさんの前からバジルさんの前へと、マッハで移動した。
『あっ、和菓子もあるっ!!』
「はい!柚子殿は和菓子好きだとお聞きしたので、取り寄せました。」
バジルさん…神!!
何てお優しいんでしょうっ…!
「お好きなのをどうぞ♪」
『ありがとうございます!!』
早速、一番手前にあった生八つ橋を一つ頬張る。
あぁ美味しい…幸せっ…///
「言っとくけど、」
『ふ?』
「取り寄せるように指示したの、俺だから。」
『ふぐっ…!?』
ツナさんの言葉に吃驚し過ぎて、八つ橋を喉に詰まらせるかと思った。
辛うじて飲み込み、息を落ち着かせるあたしを見て、ツナさんは意地悪く笑う。
「感謝しろよ?」
あたしの好きなもの、覚えててくれたんだ…。
そんな些細なことでも嬉しく思っちゃうあたしは、もう重傷なんだろうな。
『ありがとうございます!ツナさん♪』
普段は口から出にくいお礼の言葉も、するっと出てくる。
ホントは、言い足りないくらいなんです。
ツナさんはいつも、分からないように優しいから。
自然に自然に、溶け込んで包み込むような優しさだから。
『あ、山本さん、そちらのおはぎはどうでしょう?』
「おう!なかなか美味いぜ♪食うか?」
『はいっ!』
和菓子を堪能していると、次は洋菓子が出て来た。
シュークリームにチーズケーキ、ガトーショコラにミルクレープ。
幸せすぎて、顔がニヤけっ放しだった。
---
-------
パーティー開始から2時間と少し経った頃、テーブルの上はランボのおかげでだいぶ汚くなっていた。
俺はというと、リボーンと一緒に躊躇い無くワインを飲む山本に呆れていて。
「まだ未成年だろ、山本。」
「まーまー、ツナも飲むか?」
「飲まないよ、今日は。」
あははっと笑った山本は、思い出したように言う。
「そーいやさっき、骸がグラス持って柚子の方に行ったな。」
「なっ…はぁ!?」
焦って振り向くと、骸がまるでぶどうジュースを勧めるように柚子にグラスを持たせていて。
「柚子も一口どうです?アルコール度数は限りなく低いので。」
『でも…』
「そうですか、口移しがいいですか!喜んで!!」
『分かりました飲みます!飲みますからそれは勘弁して下さいっ!!///』
柚子は渋々グラスに口をつけ、少量喉に通した。
「何してんだよ骸、怒るよ?」
「おや綱吉、こんな日くらいいいじゃないですか。美味しいでしょう?柚子。」
『骸さん…これ、ホントにアルコール度数低いんですか…?何だか頭ボーッとします……』
見ると、柚子は火照った頬を手の平で押さえながら首を傾げていて。
「貸せ。」
「綱吉も飲みたいんですか?」
「違ぇよ。」
グラスを回して匂いを嗅いだだけで分かった。
「………骸、お前なぁ…」
「クフフ♪」
「雲雀さん、お願いします。」
ゴッ、バキッ、
「クハッ…!」
「いつもすみません。」
「別に、群れててイライラしてたし。」
あ、そうだよな…
いつもよりオーラが黒めな雲雀さんを見て、改めて気付く。
「骸なら好きなだけ殴っていいですよ。」
「そう。」
「な、何故ですか綱吉ぃぃぃ~~…僕は柚子ともっと喋りた…」
「他所見する暇、あるの?」
喚く骸に雲雀さんのトンファーが襲いかかる。
仕方なさそうに槍を出して応戦する骸。
俺は、未だボーッと宙を見つめる柚子に声をかけた。
「おい、大丈夫か?柚子。」
『………ツナさん……』
「ん?」
『…眠いです……』
「え、……うわっ、」
次の瞬間、柚子はふっと前に倒れ込む。
机に頭をぶつける前に支えて、ハッと思いだした。
確か、杏香さんもお酒弱いって言ってたな……
5年前、俺が初めて柚子を見つけたあの病院で。
「ったく、しょーがないな……」
ひとまず、柚子を部屋の隅のソファに寝かせて、片づけを始めるように指示した。
「えー!!もうパーティー終わりー!?ランボさんの御馳走はー!?」
「ツナ兄、ケーキ少し持って帰っていい?」
「うん、好きなだけ。あ、でも和菓子は残しといてな。」
「分かった!ありがとうツナ兄!」
「わーい!ランボさんもケーキ持って帰るもんね!!」
「イーピンも、好きなの持って帰っていいからな。」
「ありがとうございます!!」
時計を見ればもう9時になりそうで、お開きには妥当な時間かなと思った。
「じゃ、広間の片づけは頼んでいい?」
「はいっ!お任せ下さい10代目っ!!」
ハルやフゥ太が帰った後、俺はみんなに広間の大まかな片づけを任せた。
雲雀さんと骸は戦闘を継続中。
「ほら、柚子、」
『んー……』
「寝るなら部屋で……」
『……あと5分…』
…寝ぼけてる。
てか、寝言か?
「ったく、世話の焼ける…」
目を覚まさない柚子を抱き上げ、運んでやった。
疲れてたんだよな、きっと。
ずっとずっと、苦しみながらコンクールに向けて集中してて。
「ホント、ごめんな…」
“俺が引きこんだせいで…”
そう思った途端、口から漏れた謝罪の言葉。
柚子が起きてたら、絶対口に出来ない言葉。
『ん……』
「柚子?」
起きてたのかと焦ったけど、柚子は目を閉じたままで、
ただ、俺の服をギュッと握る。
「何だよ、らしくないな。」
寝てると分かってたけど、それでもその行為が愛しくて、思わず語りかける。
すると、柚子は小さく口を開いて。
『…ツナ、さん……』
皆が大広間にいてくれて良かったと思った。
今の俺、笑えるくらい赤くなってるだろうから。
柚子の部屋に着いて、起こさないようにベッドに寝かせる。
と、まだ服が掴まれてるのに気付いた。
「何だよ、ココにいろってか?」
しゃがんだまま、柚子の髪を撫でる。
色素の薄いそれは、窓から差し込む明かりに照らされて淡い金に見える。
初めて見た時から、変わらない髪の色。
5年前は、もう少し短かったかな。
なぁ柚子…
柚子はあの時、俺に強さをくれたんだ。
そのおかげで俺は今こうして、この立場にいる。
けど、俺が柚子から強さを貰えたのは、朽葉さんのおかげなんだ。
ひょっとしたら、朽葉さんに全部仕組まれてたのかもな。
それでもいい。
俺は……柚子に出会えて良かった。
そう、心から言えるから。
「ほら柚子、そろそろ放せって。」
あんまり可愛いことすんなっての。
普段俺に「プレイボーイはやめろ」って言うクセにさ。
「柚子、」
俺の服を掴む柚子の手を上から握る。
少し力を込めると、簡単に指がほどけた。
「今日は、良く頑張ったな。」
ゆっくりと髪を撫でる手を止めて、閉じられたその瞼に唇を落とした。
「おやすみ。」
言ってから柚子に毛布をかけて、俺は大広間に戻った。
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『おはようございますっ!』
「おはよう。」
俺が広間に来ると、既に全員分の食事を用意した柚子が明るく挨拶した。
昨日…やっぱ普通に寝てたのか。
「早いな、何かあるのか?」
『じ、実はですね……レポート提出が…』
コンクールの方に集中し過ぎて授業の課題を忘れていたらしい。
柚子は大きなため息をつく。
『あ、でも!ツナさんのお話は今日聞きますから!』
「え?あぁ、そっか。コンクール終わったら、って言ってたな。」
『はいっ、でもレポート終わるまで学校に残るので……』
「分かった、待ってるよ。」
ずっとずっと、話したかったこと。
伝えたかったことを、今日言える。
『ありがとうございます!あ、ちなみに冷蔵庫にデザートのヨーグルト入ってますので!トッピングはお好みでっ!』
「柚子はもう食べたのか?」
『はい!では、お先に行ってきます♪』
「いってらっしゃい。」
エプロンを取って、柚子は駆けて行った。
見送ってから、箸を手に取りオムレツを一口食べる。
「ん、美味しい。」
ぼんやりした朝の光が差す中、俺の口元は自然と緩んだ。
ノクターン
昨夜の彼女の可愛い仕草は、俺だけの秘密
continue...