🎼本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『ただいま帰りましたー。』
ヴァリアーさんが去ってから、3日が経った。
本選の練習は少しずつだけど進んで、結構吹けるようになった。
あとは繰り返し練習して暗譜と微調整しなくちゃいけない。
『今日は…了平さんのお部屋かな。』
お掃除する場所を思い出し、ジャージとエプロンに着替えて髪を1つに結ぶ。
さーて、3時まで頑張るぞっ!
あれから、苦しくなったりする度にルッスーリアさんの言葉を反芻して、持ちこたえられるようになった。
うん、大丈夫。
あたし、ちゃんと笑えてるハズ。
「おや、お帰りなさい僕の柚子!」
『た、ただいまです…』
「どうして後ずさるんですか?」
『えと…ちょっと退いてもらえませんか?お掃除に行くので…』
「柚子は照れ屋ですね♪」
『何でそーなるんですか!?』
「僕に近付きたいと思いつつあまりの愛しさに近付き過ぎることを避けている…しかし僕は……」
『失礼します!!!』
目を閉じてペラペラ喋り出した骸さんをスルーして、了平さんの部屋へと急いだ。
「……おやおや、」
「核心突き過ぎじゃねーのか?」
「いたんですか、アルコバレーノ。覗き見とは悪い趣味だ。」
廊下に残された骸は、後ろで銃を磨いていたリボーンにそう返す。
「にしても、君の読心術は容赦がないですね。」
「聞こえるんだ、柚子のは特にな。ただ今回は通常パターンじゃねぇ。柚子自身が気づいてねぇからな。」
溜め息をつくリボーンに、骸はクフフと笑って。
「分かってますよ、だからああしてヒントを。」
「ヒントにしちゃ核心突き過ぎだって言ってんだ。」
「回りくどいと失敗しますからね、何処かのバイオリニストのように。」
「…間違っちゃいねーな。」
リボーンはまた溜め息を1つ。
「それで、そのバイオリニストはどうなんです?」
「ダメツナだからな、こんな時ばっかり読心術自己封印してやがる。」
「…おやおや、これは時間がかかりそうですね。」
思わず苦笑をする骸だったが、リボーンはハットを深くかぶり直して。
「話すと決めたそうだ……あの事をな。」
「ようやく、ですか……」
「ツナにとっても哀しみなくして話せねぇことだ。柚子の心境を考慮に入れるヒマがねーってのもある。」
「……なるほど。」
「ただ、いくら柚子でもどれだけもつか分からねぇ。早くしねーと、潰れちまうかもしんねーな…」
その言葉を最後に、リボーンは背を向け去って行った。
「そうですね…」
骸も小さく呟き、自室へと足を運んだ。
---
------
------------
『よしっ、完了♪』
了平さんのお部屋の掃除を終えて、窓に手をかける。
あと10分で3時かぁ…
どうせだからお買い物ついでに1時間外でぶらぶらしようかな。
最近練習ばっかで張り切り過ぎてたし。
『んーっ!』
了平さんトコのベランダでぐーっと背伸びをして、日光に目を細める。
と、その時。
「柚子!」
『へっ…?』
不意に下から呼ばれて、地上に目線を落とす。
『あっ!』
「よっ、久しぶりだな!」
『ディーノさんっ!!お久しぶりですっ!』
相変わらずキラキラしてる、素敵な人。
笑顔が眩しくて綺麗…///
『あっ、えと…今日はお仕事ですか?』
「ああ、リボーンに呼ばれてな。」
『ごめんなさい、お客様いらしてたのにお茶も出さずに…』
「いーって、掃除頑張ってたんだろ?」
はぅぅ~…
同じマフィアのボスでもツナさんとは正反対なぐらい優しい…!
『もうお帰りになりますか?』
「いや、フライトまで時間あるから街をぶらつこーと思ってな。柚子は?」
『あ、あたしは……これからお買い物に…』
「そーか!なら付き合うぜ、どーせ暇だしな。」
『えぇっ!?』
何という展開!!
ディーノさんが買い物に付きあって下さるですと!!?
「ココで待ってっから。」
『あ…はいっ!』
反射的に返事をして、あたしはダッシュでお財布を取りに行った。
何だか…最近7号館メンバーじゃない方とのお出かけ増えてる気がする…
『あ。』
あたしってば、ジャージじゃん!
いいのかな…でも着替えてたらディーノさん待たせちゃう…。
あーもー気にしない!そのまま行こうっと!
『お待たせしましたぁ!!』
「おっ、早かったな。まだ3分も待ってねーぜ?」
『あの、すみません……ジャージのままで…』
「可愛いから問題ねーよ。」
『(うっ…///)』
反則過ぎる…!
あたし、心臓もつかなぁ…
---
-------
「ったく、アイツらが羨ましいぜ。」
『へ?』
「毎日柚子の手料理だろ?」
『そっ、そんなあたし別に料理上手でもないですし…!』
買い物を終えたあたしは、ディーノさんとその部下・ロマーリオさんと一緒に近くの喫茶店に寄った。
この店のミルフィーユは本当に美味しい♪
しかもディーノさんと一緒だもん、ふわふわした気分になる。
「そーだ、1つだけ柚子に謝っておきたくてな。」
『あ、あたしにですか?』
「あぁ、初めて7号館に行った時、柚子がツナのフィアンセだって分かっててイタリアに誘っちまったからな……ホント、突発的で悪かった。」
『えっ、あのっ、そんな…頭上げて下さいっ……』
あたしは、本当はフィアンセでも何でもないんですから…
婚約者役すら終われば、おさらばする存在なんですから…
『嬉しかったですよ、音楽家を目指す者にとってヨーロッパは憧れの地ですから。』
「柚子……」
『それよりディーノさん!早く食べないと上に乗ってるアイス、溶けちゃいますよっ?』
「やべっ、ホントだ!」
慌ててアイスを食べるディーノさんに、あたしも少し笑った。
---
--------
「ただいまー。」
「遅かったじゃねーか、ツナ。」
「何だよ、リボーンが出迎えなんて珍しいな。柚子は?」
「いねーぞ、買い物だ。」
「あ、そっか。」
ネクタイを緩めて書斎に向かうツナに、リボーンは付け足した。
「ディーノとな。」
「…は?」
「俺が用があって呼んだんだが、フライトまで時間があるから買い物に付き合うとか何とか言ってたぞ。」
聞いた途端ツナの瞳は丸くなり、口からは盛大な溜め息が漏れる。
「んだよ…あのバカ柚子……」
「バカはおめーもだぞ、ツナ。」
「…どーゆー意味だよ。」
「読心術封印しやがって、何考えてんだ。」
探るようなリボーンの瞳に、ツナは一瞬だけ言葉を詰まらせて。
「何でもいーだろ…!」
外へと駆け出した。
---
------
-------------
『本当に、今日はありがとうございました。』
「いーって、俺も久々に楽しかったしな!」
結局奢ってもらっちゃったし…
でもディーノさんが「どうしても」って言うし……
本当にいい人だなぁ…。
今はディーノさんとロマーリオさんと並盛駅前にいる。
お見送りできるのはそこまでだから、いっぱいお礼を言った。
「柚子、元気でな。また会う時まで。」
『はい、ディーノさんも。』
「何かあったらすぐ言えよ、俺で良ければ相談に乗るから…無理だけはすんな。」
苦笑しながらのディーノさんの台詞に、あたしは一瞬固まった。
もしかして……気づかれてた?
『あの…、』
「ん?」
『あたし、無理してるように見えますか…?』
答えは、聞かなくても分かった。
驚いたような、ディーノさんの表情。
流れる沈黙。
全てが、物語る。
『あたしっ…ちゃんと笑えてないんでしょうか…?』
7号館にいるだけで苦しくて、
だけどヴァリアーの方々にもアドバイスしてもらって、
今までみたいに笑っていよう……
そう、思ってるのに。
なのに……
『無理、してないんですよ…?時々ちょっと…苦しいだけで……』
「………あぁ…」
弁解しようとしたら、視界が滲んだ。
頑張ってたのに見抜かれちゃった悔しさなのか、
それとも…見抜いて貰った安心なのか。
『7号館の皆さんにも…ツナさんにも……バレちゃってるんでしょうか…?』
「柚子っ…」
引き寄せられた瞬間、溜まり過ぎた涙が零れて、ディーノさんの服にシミを作った。
『でぃ、ディーノさ…』
「俺だったら…こんな顔させねーのに……」
『えっ…?』
目が熱くなるのと同じように、頬が熱くなる。
力強い腕に、心臓が高鳴る。
「立場さえなければ、このまま攫っていけるのにな……なんて、こんなこと言っても柚子を苦しめるだけだよな、悪ぃ…」
『ディーノさん…』
「だからせめて、聞かせてくれねぇか…?ツナ達には言えねぇこと、柚子が無理して笑ってる理由…」
ツナさん達には絶対言えないこと…
それでも何処かで吐き出してしまいたいこと…
今抱きしめられてるのも、
嬉しいのに寂しい……
どうして?
『あたし…苦しいんですっ……』
吐き出した瞬間、全部、分かった。
何かに掴まってないと両足の力が抜けてしまいそうで、
ディーノさんの服を握った。
涙が、止まらない。
『7号館にいると…苦しいっ……』
違う、本当はもっと限定的なの。
バカみたいだ、今頃分かっちゃうなんて。
「泣けないなら…ココで泣いてていいぜ。」
『ふぇっ…うっ……ぅあああっ…』
ずっとずっと、泣かないように生きて来た。
お父さんの死後、お母さんになるべく負担をかけないようにって。
それは今でも変わって無くて、
あたしは、泣いてしまう事で他人を困らせるのが嫌で仕方なかった。
それを考えると、今の自分が情けなさ過ぎる。
ディーノさんの優しさに甘えて、
いけないと分かってるのに涙が止められなくて、
自分がどんどん、最低に思えて来る。
あたしは、ディーノさんの気持ちに応えられないのに。
甘えて泣きつく権利なんて、無いはずなのに。
それでも、渦巻く苦しさに耐えきれなかった。
誰かに寄りかからなければ、その場で潰れてしまいそうだった。
---
-----
------------
「はぁっ……ったく、何処行ったんだよ柚子…」
柚子がディーノと出掛けたと知り飛び出したツナは、一度止まって呼吸を整えた。
がむしゃらに探すのは効率が悪いと考え、頭に手を置く。
「空港に行くには……駅か!」
再び走り出し、並盛駅に向かう。
そして……
「(なっ…!)」
その目に留まったのは、最愛の彼女の姿と……
「何で、だよ……」
彼女を強く抱きしめる、兄弟子の姿。
衝撃を受けるツナの耳に、柚子のか細い声。
-『7号館にいると…苦しいっ……』
雑踏の中でも聞き取れたその言葉。
直後に、一層泣きだした彼女。
「………そっか…」
ツナが“ある解釈”をするのに、それほど時間は掛からなかった。
マイルド
優しく哀しく穏やかな、すれ違いが始まった
continue...
ヴァリアーさんが去ってから、3日が経った。
本選の練習は少しずつだけど進んで、結構吹けるようになった。
あとは繰り返し練習して暗譜と微調整しなくちゃいけない。
『今日は…了平さんのお部屋かな。』
お掃除する場所を思い出し、ジャージとエプロンに着替えて髪を1つに結ぶ。
さーて、3時まで頑張るぞっ!
あれから、苦しくなったりする度にルッスーリアさんの言葉を反芻して、持ちこたえられるようになった。
うん、大丈夫。
あたし、ちゃんと笑えてるハズ。
「おや、お帰りなさい僕の柚子!」
『た、ただいまです…』
「どうして後ずさるんですか?」
『えと…ちょっと退いてもらえませんか?お掃除に行くので…』
「柚子は照れ屋ですね♪」
『何でそーなるんですか!?』
「僕に近付きたいと思いつつあまりの愛しさに近付き過ぎることを避けている…しかし僕は……」
『失礼します!!!』
目を閉じてペラペラ喋り出した骸さんをスルーして、了平さんの部屋へと急いだ。
「……おやおや、」
「核心突き過ぎじゃねーのか?」
「いたんですか、アルコバレーノ。覗き見とは悪い趣味だ。」
廊下に残された骸は、後ろで銃を磨いていたリボーンにそう返す。
「にしても、君の読心術は容赦がないですね。」
「聞こえるんだ、柚子のは特にな。ただ今回は通常パターンじゃねぇ。柚子自身が気づいてねぇからな。」
溜め息をつくリボーンに、骸はクフフと笑って。
「分かってますよ、だからああしてヒントを。」
「ヒントにしちゃ核心突き過ぎだって言ってんだ。」
「回りくどいと失敗しますからね、何処かのバイオリニストのように。」
「…間違っちゃいねーな。」
リボーンはまた溜め息を1つ。
「それで、そのバイオリニストはどうなんです?」
「ダメツナだからな、こんな時ばっかり読心術自己封印してやがる。」
「…おやおや、これは時間がかかりそうですね。」
思わず苦笑をする骸だったが、リボーンはハットを深くかぶり直して。
「話すと決めたそうだ……あの事をな。」
「ようやく、ですか……」
「ツナにとっても哀しみなくして話せねぇことだ。柚子の心境を考慮に入れるヒマがねーってのもある。」
「……なるほど。」
「ただ、いくら柚子でもどれだけもつか分からねぇ。早くしねーと、潰れちまうかもしんねーな…」
その言葉を最後に、リボーンは背を向け去って行った。
「そうですね…」
骸も小さく呟き、自室へと足を運んだ。
---
------
------------
『よしっ、完了♪』
了平さんのお部屋の掃除を終えて、窓に手をかける。
あと10分で3時かぁ…
どうせだからお買い物ついでに1時間外でぶらぶらしようかな。
最近練習ばっかで張り切り過ぎてたし。
『んーっ!』
了平さんトコのベランダでぐーっと背伸びをして、日光に目を細める。
と、その時。
「柚子!」
『へっ…?』
不意に下から呼ばれて、地上に目線を落とす。
『あっ!』
「よっ、久しぶりだな!」
『ディーノさんっ!!お久しぶりですっ!』
相変わらずキラキラしてる、素敵な人。
笑顔が眩しくて綺麗…///
『あっ、えと…今日はお仕事ですか?』
「ああ、リボーンに呼ばれてな。」
『ごめんなさい、お客様いらしてたのにお茶も出さずに…』
「いーって、掃除頑張ってたんだろ?」
はぅぅ~…
同じマフィアのボスでもツナさんとは正反対なぐらい優しい…!
『もうお帰りになりますか?』
「いや、フライトまで時間あるから街をぶらつこーと思ってな。柚子は?」
『あ、あたしは……これからお買い物に…』
「そーか!なら付き合うぜ、どーせ暇だしな。」
『えぇっ!?』
何という展開!!
ディーノさんが買い物に付きあって下さるですと!!?
「ココで待ってっから。」
『あ…はいっ!』
反射的に返事をして、あたしはダッシュでお財布を取りに行った。
何だか…最近7号館メンバーじゃない方とのお出かけ増えてる気がする…
『あ。』
あたしってば、ジャージじゃん!
いいのかな…でも着替えてたらディーノさん待たせちゃう…。
あーもー気にしない!そのまま行こうっと!
『お待たせしましたぁ!!』
「おっ、早かったな。まだ3分も待ってねーぜ?」
『あの、すみません……ジャージのままで…』
「可愛いから問題ねーよ。」
『(うっ…///)』
反則過ぎる…!
あたし、心臓もつかなぁ…
---
-------
「ったく、アイツらが羨ましいぜ。」
『へ?』
「毎日柚子の手料理だろ?」
『そっ、そんなあたし別に料理上手でもないですし…!』
買い物を終えたあたしは、ディーノさんとその部下・ロマーリオさんと一緒に近くの喫茶店に寄った。
この店のミルフィーユは本当に美味しい♪
しかもディーノさんと一緒だもん、ふわふわした気分になる。
「そーだ、1つだけ柚子に謝っておきたくてな。」
『あ、あたしにですか?』
「あぁ、初めて7号館に行った時、柚子がツナのフィアンセだって分かっててイタリアに誘っちまったからな……ホント、突発的で悪かった。」
『えっ、あのっ、そんな…頭上げて下さいっ……』
あたしは、本当はフィアンセでも何でもないんですから…
婚約者役すら終われば、おさらばする存在なんですから…
『嬉しかったですよ、音楽家を目指す者にとってヨーロッパは憧れの地ですから。』
「柚子……」
『それよりディーノさん!早く食べないと上に乗ってるアイス、溶けちゃいますよっ?』
「やべっ、ホントだ!」
慌ててアイスを食べるディーノさんに、あたしも少し笑った。
---
--------
「ただいまー。」
「遅かったじゃねーか、ツナ。」
「何だよ、リボーンが出迎えなんて珍しいな。柚子は?」
「いねーぞ、買い物だ。」
「あ、そっか。」
ネクタイを緩めて書斎に向かうツナに、リボーンは付け足した。
「ディーノとな。」
「…は?」
「俺が用があって呼んだんだが、フライトまで時間があるから買い物に付き合うとか何とか言ってたぞ。」
聞いた途端ツナの瞳は丸くなり、口からは盛大な溜め息が漏れる。
「んだよ…あのバカ柚子……」
「バカはおめーもだぞ、ツナ。」
「…どーゆー意味だよ。」
「読心術封印しやがって、何考えてんだ。」
探るようなリボーンの瞳に、ツナは一瞬だけ言葉を詰まらせて。
「何でもいーだろ…!」
外へと駆け出した。
---
------
-------------
『本当に、今日はありがとうございました。』
「いーって、俺も久々に楽しかったしな!」
結局奢ってもらっちゃったし…
でもディーノさんが「どうしても」って言うし……
本当にいい人だなぁ…。
今はディーノさんとロマーリオさんと並盛駅前にいる。
お見送りできるのはそこまでだから、いっぱいお礼を言った。
「柚子、元気でな。また会う時まで。」
『はい、ディーノさんも。』
「何かあったらすぐ言えよ、俺で良ければ相談に乗るから…無理だけはすんな。」
苦笑しながらのディーノさんの台詞に、あたしは一瞬固まった。
もしかして……気づかれてた?
『あの…、』
「ん?」
『あたし、無理してるように見えますか…?』
答えは、聞かなくても分かった。
驚いたような、ディーノさんの表情。
流れる沈黙。
全てが、物語る。
『あたしっ…ちゃんと笑えてないんでしょうか…?』
7号館にいるだけで苦しくて、
だけどヴァリアーの方々にもアドバイスしてもらって、
今までみたいに笑っていよう……
そう、思ってるのに。
なのに……
『無理、してないんですよ…?時々ちょっと…苦しいだけで……』
「………あぁ…」
弁解しようとしたら、視界が滲んだ。
頑張ってたのに見抜かれちゃった悔しさなのか、
それとも…見抜いて貰った安心なのか。
『7号館の皆さんにも…ツナさんにも……バレちゃってるんでしょうか…?』
「柚子っ…」
引き寄せられた瞬間、溜まり過ぎた涙が零れて、ディーノさんの服にシミを作った。
『でぃ、ディーノさ…』
「俺だったら…こんな顔させねーのに……」
『えっ…?』
目が熱くなるのと同じように、頬が熱くなる。
力強い腕に、心臓が高鳴る。
「立場さえなければ、このまま攫っていけるのにな……なんて、こんなこと言っても柚子を苦しめるだけだよな、悪ぃ…」
『ディーノさん…』
「だからせめて、聞かせてくれねぇか…?ツナ達には言えねぇこと、柚子が無理して笑ってる理由…」
ツナさん達には絶対言えないこと…
それでも何処かで吐き出してしまいたいこと…
今抱きしめられてるのも、
嬉しいのに寂しい……
どうして?
『あたし…苦しいんですっ……』
吐き出した瞬間、全部、分かった。
何かに掴まってないと両足の力が抜けてしまいそうで、
ディーノさんの服を握った。
涙が、止まらない。
『7号館にいると…苦しいっ……』
違う、本当はもっと限定的なの。
バカみたいだ、今頃分かっちゃうなんて。
「泣けないなら…ココで泣いてていいぜ。」
『ふぇっ…うっ……ぅあああっ…』
ずっとずっと、泣かないように生きて来た。
お父さんの死後、お母さんになるべく負担をかけないようにって。
それは今でも変わって無くて、
あたしは、泣いてしまう事で他人を困らせるのが嫌で仕方なかった。
それを考えると、今の自分が情けなさ過ぎる。
ディーノさんの優しさに甘えて、
いけないと分かってるのに涙が止められなくて、
自分がどんどん、最低に思えて来る。
あたしは、ディーノさんの気持ちに応えられないのに。
甘えて泣きつく権利なんて、無いはずなのに。
それでも、渦巻く苦しさに耐えきれなかった。
誰かに寄りかからなければ、その場で潰れてしまいそうだった。
---
-----
------------
「はぁっ……ったく、何処行ったんだよ柚子…」
柚子がディーノと出掛けたと知り飛び出したツナは、一度止まって呼吸を整えた。
がむしゃらに探すのは効率が悪いと考え、頭に手を置く。
「空港に行くには……駅か!」
再び走り出し、並盛駅に向かう。
そして……
「(なっ…!)」
その目に留まったのは、最愛の彼女の姿と……
「何で、だよ……」
彼女を強く抱きしめる、兄弟子の姿。
衝撃を受けるツナの耳に、柚子のか細い声。
-『7号館にいると…苦しいっ……』
雑踏の中でも聞き取れたその言葉。
直後に、一層泣きだした彼女。
「………そっか…」
ツナが“ある解釈”をするのに、それほど時間は掛からなかった。
マイルド
優しく哀しく穏やかな、すれ違いが始まった
continue...