🎼本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ツナさん達の食器を洗い、時計を見た。
ちょうど3時。
本来なら休憩時間の始まりだ。
けど、さっきルッスーリアさんとお喋りしちゃったから、もうちょっと仕事しなくちゃ。
「僕の柚子っ、そろそろ休憩時間ですよね?折角の休日ですし、どこか行きませんか?」
『ごめんなさい骸さん、ワケあってもう少し働かなくちゃいけないんです。それにあたし、休憩時間には本選の練習しなくちゃいけませんし…』
“僕の”発言さえスルーできれば、骸さんとは意外と普通な会話になるのかもと思った。
けれど骸さんは、見事にその期待を裏切る。
「ワケあって、ですと…!?まさか柚子、綱吉に雇い主の権力を振りかざされて何かいかがわしい条件を…」
『何ですぐそっちに思考が行くんですか!!///何にも無いです!!!』
「僕はいつも遠くからこっそり柚子を見守っているんですよ!心配で心配で!!」
『一歩間違えばストーカーですっ!!』
あたしがそう叫ぶと、骸さんは冷凍マグロみたいに固まった。
『と、とにかくお掃除したいので…ちょっと向こうに行ってて下さいよ………骸さん?聞いてます?』
「そ、そんなぁーーーっ!!僕の柚子がーーっ!!」
突然の嘆きの後、猛ダッシュ。
あぁ本当にあの人はあたしの話を聞いてくれないんだ……はぁ。
『(でもまぁ、これで静かに掃除が出来る。)』
ホッとしてから、廊下に掃除機をかけ始めた。
これが終われば30分くらい経ってるハズ。
そうしたら休憩に入ろうっと。
「おい柚子、休んでねーのか?」
『あ、リボーンさんっ!はい、さっき早めに休んでしまったので…』
「そーか、頑張れよ。」
『はいっ!』
返事をしてからハッとする。
あのリボーンさんが…あたしに激励を!?
「随分と失礼だな、撃たれてーのか?」
『すすすすすみませんっ!!感謝しております!!』
振り向いて銃を向けるリボーンさんに、慌てて頭を下げた。
「……まぁいい、許しといてやる。」
『ありがとうございますっ!!』
い、命拾いした…
リボーンさんは大きなため息を吐いてから、自室に戻っていった。
---
------
--------------
『(よし!完了っ!)』
我ながら結構頑張った。
廊下の絨毯には今、塵一つ無い状態。
うん、気持ちいい光景♪
花瓶の水も換えたたし、そろそろ休憩していいかな?
ルッスーリアさんと喋ってたのが大体20分くらいだから…
あと40分は休んでいいよね。
というワケで、あたしはフルートを持って演奏室に行った。
ガチャ、
『あ!』
「あ"?」
扉を開けたその向こうには、ピアノの椅子に座って頬杖をついてる獄寺さんがいた。
何か、読んでる…?
『すみません、使用中ですか…?』
「別に、弾いてたワケじゃねぇよ。」
だったら一体…
まさか、妖しい読み物をこっそり読む為に演奏室に隠れて……!
「おい柚子…喧嘩売ってんのか?」
『ごごごごめんなさい!!』
どうかその爆発物はポケットにしまって下さいませぇ!!
獄寺さんが読心術属性なのを思い出したところで、何をしてたのか真面目に気になる。
スッと近付いてみると、「この野次馬め…」みたいな目で見られた。
「おめーのコンクールの楽譜だっての。」
『え、でもあたし…………あ!!』
見せられた楽譜に一瞬ハテナ状態になって、ハッとした。
『ま、まさか……音合わせ手伝って下さるんですか!?』
「…10代目が言ってたんだよ。俺は今日書類もねーし、暇だってことで…」
『ありがとうございます♪獄寺さんっ!』
「だっ、だから10代目の指示だっつってんだろーが!!///」
獄寺さんはガタンと立ち上がったけど、あたしは何だか嬉しくてニヤついてしまった。
「おらっ、とにかく始めっぞ!!」
『はいっ♪』
コンクール本選の課題曲は、モーツァルトの“フルート協奏曲第1番・ト長調”。
楽器編成はフルートの他に、オーボエ・バイオリン・チェロ・ビオラ・コントラバス・ホルンなんだけど……
『獄寺さん、ピアノ担当ですよね?でしたら今回は…』
「うっせ。」
『ぎゃっ、』
今回は獄寺さんとの音合わせは不必要な気がする、
そう言おうと思ったあたしの額に、獄寺さんはコツンと拳を当てた。
『な、何するんですかぁ…』
「何回言わせる気だよ、俺は10代目に言われて来たんだっての!」
『ほへ…』
もしかするとそれって…
『獄寺さん、今日はバイオリン担当だったり…?』
「10代目ほどじゃねーけどな。」
椅子から立ち上がった獄寺さんは、ツナさんのバイオリンケースに手をかける。
おぉっ、この人…!
ピアノとバイオリン、両刀使いだったのか…!!
感動しまくりでポケーッとしていると、「早く柚子も準備しろ」と怒られた。
---
------
-------------
獄寺さんのバイオリンは、思ってた何倍も素晴らしかった。
「10代目ほどじゃねぇ」とか言ってたけど、そんな事なかった。
この人、楽器との相性がいいんだろーか…
楽器に懐かれてるとしか思えない。
「おい、聞いてんのか柚子!」
『あ、はい!もう1回お願いします!!』
「聞いてねぇじゃねーか!!」
『………あははっ☆』
山本さんを真似して、天然スマイルをやってみる。
けど、獄寺さんには逆効果だった。
物凄く白けた目で見られる。
『……ごめんなさいすいません許して下さい…』
「はぁ……ったく…」
獄寺さんが再び説明して、あたしも今度はちゃんと聞いていた。
と、その時。
バンッ、
「メイドの柚子ちゃーん、おやつあるー?」
『えっ!?』
勢いよく入室してそう言ったのは、下見から帰って来たであろうベルさんだった。
途端に獄寺さんはイライラ丸出しの表情になる。
「てんめぇ…今柚子はコンクールの練習してんだよ!!邪魔すんじゃねぇ!!」
「そんなの後でいーじゃん、つーか何でお前が怒鳴んの?」
「音合わせ手伝ってやってんだよ!!」
「へぇー、お前がねー…。でさ、王子さっきのリーフパイ食いたいんだけど。」
『あ、でしたらキッチンの棚に残りが…』
「普通に応答してんじゃねーよ、このバカ柚子っ!!」
はぅっ…!
何故かあたしも怒られた!!
「なぁなぁ、柚子ちゃんいつもコイツに教わってんの?」
『いえ、今日はたまたま獄寺さんが練習に付き合って下さるって…』
「ふーん…あ、そうそう。今日下見に行ったターゲットなんだけどさー、」
「おいコラ…邪魔すんなら出てけってんだ!!」
獄寺さんがコンクール出場者のあたしよりも真剣に怒ってる…
何か複雑な気分……
でも暗殺部隊さんのターゲットの話は出来れば聞きたくないかも。
「うるせーなー、お前そーやってカリカリしてっから俺に勝てねぇんだって。」
「んだと!!?」
「ししっ、頭に血ぃ上ってたら無理に決まってんじゃん。そーじゃなくても無理なんだからさー。」
いつの間にか何かの勝ち負けの話になっていた。
ベルさんがいると話題がコロコロ変わる。
それは、聞いてる分には面白い。
獄寺さんは完全に振り回されてる感じだけど……(汗)
「でさ、ターゲットの男が油っこいモンばっか食っててー、アレ切り刻んでも真っ赤な血じゃねーよーな気がして。」
『(ひえええっ!!)』
「何サラッと話してんだよ!」
「だって脂肪分取り過ぎってよくねーじゃん?血ぃドロドロらしーし。」
『(ベルさんが言うと健康面の意味じゃないように聞こえる…)』
イライラボルテージが上がって来た獄寺さんが頭を掻く。
あたしはとりあえずリーフパイをベルさんに持って来ようかと思ったけど、獄寺さんが怒るのはヤダし…
すると、またベルさんが話題転換をした。
「ありっ、お前何でバイオリン持ってんの?違ぇヤツだったじゃん。」
「あ"?てめーには関係ねぇだろ。」
最早獄寺さんは応答すら適当になっている。
あたしが慌ててフォローした。
『あのですねっ、獄寺さんはピアノがメインなんですがバイオリンもとっても上手いんですっ!あたしさっき感動しちゃいまして!』
「へぇー、両刀ってヤツ?」
『はいっ♪』
少しテンション高めの返答をするあたし。
ベルさんはジーッと獄寺さんを見た後、ししっと笑った。
「ま、俺もだけどさ。」
『えっ…?』
「なにっ!?」
「うしし♪俺、こないだはクラリネットやったけど、スクアーロの楽器も出来んだよね。」
スクアーロさんの楽器……えーっと…
『オーボエですか!?』
「そーそー、それ。」
「けっ、ハッタリかましてんじゃねーよ。だったらこの楽譜弾いてみろってんだ。」
そう言えば、本選の課題曲にはオーボエパートがある。
だけど一発で吹けなんてそんな無茶な…
「ししっ、天才に出来ないワケねーじゃん。見してみ。」
『あ、はい、どうぞ…』
ベルさんは数秒楽譜を見て、小さく頷いた。
「オーボエあるー?」
『只今お出ししますっ。』
「おい柚子!何でおめーがパシられてんだよ!!自分で探させろ!」
「柚子ちゃん優しーっ♪」
『いえいえっ、コレどうぞ!』
「サンキュ。」
オーボエを受け取りベルさんは吹き始める。
『(おおっ…)』
ちゃんと吹けてる…
ミスが無いのは勿論のこと、音が綺麗。
見事に15小節ほど弾いた後の、ベルさんの得意気な笑み。
獄寺さんは眉間のしわを濃くしたみたいだったけど、あたしは思わず拍手した。
『凄いですっ!本当に両刀使いさんなんですね!』
「ま、ナイフとワイヤーみてーな感じじゃね?ししっ。」
「……違ぇよ。」
ボソッとした獄寺さんの反論に、ちょっと笑ってしまった。
「んじゃ柚子ちゃん、王子と買い物行こーよ!」
『へっ!?』
「てめぇ…何がどーなるとそんな話になんだよ!!」
「今すんげー腹減ってんの思いだした。ほら、どーせ夕飯の買い物とか行くっしょ?早めに行くのもありじゃね?」
『そう、ですね……そろそろ休憩時間も終わりますし。』
あとは、獄寺さんの許可が下りればいいんだけど…
そう思ってチラリと見てみたら、盛大な溜め息と共に「好きにしろよ」と。
「また直前になってバタバタした練習すんじゃねーぞ。」
『はいっ、お気遣いありがとうございます♪』
「なっ…べ、別に気遣ってねーよ!とっとと行け!!///」
『は、はいっ!』
何ですぐ怒鳴るんでしょうか…
普通にしてれば普通に優しい人なのに。
吃驚したからそのままベルさんと演奏室を出た。
フルートと楽譜を自室に置き、代わりにお財布を取って来る。
いつものスーパーに向かいながら、あたしは思い切ってベルさんに話かけた。
『あの、実はまだメニュー決めてないんですが……何かあります?』
「ジャッポーネの美味しい料理♪」
『日本料理ですか…!?』
どうしよう、和菓子しか浮かばない……
あとは…懐石料理、とか…?
いくらなんでもお寿司は高いし…
歩きながらぐるぐる悩んでも、いい案は出ない。
と、ベルさんは愉しそうに笑って。
「柚子ちゃんて、超面白いよなー。」
『へ?』
「何でもいいに決まってんじゃん。俺が食べたいのは、柚子ちゃんの美味しい手料理だし。」
『ほえっ…?///』
「うししし♪」
赤くなっちゃったのは、不可抗力。
ベルさんの白い歯、
風に流れる金髪、
キラキラティアラが夕陽に映えて、
更に不意打ちの優しい台詞……
『(何なのさ…もうっ……)』
マフィアには、どうしてこうも心臓に悪い人が多いんだろう。
その世界に関わっちゃったあたしは、幸せ者なのかそれとも……
「柚子ちゃん真っ赤ー!可愛いーっ♪」
『み、見ないで下さいっ…!///』
「血まみれみたいじゃね?ししっ。」
『(その表現ヤダーっ!!)』
ベルさんにからかわれないように、必死に両手で頬を隠した。
「あ。」
『えっ、どうかしましたか?』
「やっぱり俺、ビーフシチュー食べたいかも。」
『あ、はいっ!了解です!』
突然のメニュー指定にも驚かされたけど、
やっぱりベルさんも素敵な人だなって思った。
ムーディー
気まぐれな王子様に振り回されるのも、時々だったら悪くない
continue...
ちょうど3時。
本来なら休憩時間の始まりだ。
けど、さっきルッスーリアさんとお喋りしちゃったから、もうちょっと仕事しなくちゃ。
「僕の柚子っ、そろそろ休憩時間ですよね?折角の休日ですし、どこか行きませんか?」
『ごめんなさい骸さん、ワケあってもう少し働かなくちゃいけないんです。それにあたし、休憩時間には本選の練習しなくちゃいけませんし…』
“僕の”発言さえスルーできれば、骸さんとは意外と普通な会話になるのかもと思った。
けれど骸さんは、見事にその期待を裏切る。
「ワケあって、ですと…!?まさか柚子、綱吉に雇い主の権力を振りかざされて何かいかがわしい条件を…」
『何ですぐそっちに思考が行くんですか!!///何にも無いです!!!』
「僕はいつも遠くからこっそり柚子を見守っているんですよ!心配で心配で!!」
『一歩間違えばストーカーですっ!!』
あたしがそう叫ぶと、骸さんは冷凍マグロみたいに固まった。
『と、とにかくお掃除したいので…ちょっと向こうに行ってて下さいよ………骸さん?聞いてます?』
「そ、そんなぁーーーっ!!僕の柚子がーーっ!!」
突然の嘆きの後、猛ダッシュ。
あぁ本当にあの人はあたしの話を聞いてくれないんだ……はぁ。
『(でもまぁ、これで静かに掃除が出来る。)』
ホッとしてから、廊下に掃除機をかけ始めた。
これが終われば30分くらい経ってるハズ。
そうしたら休憩に入ろうっと。
「おい柚子、休んでねーのか?」
『あ、リボーンさんっ!はい、さっき早めに休んでしまったので…』
「そーか、頑張れよ。」
『はいっ!』
返事をしてからハッとする。
あのリボーンさんが…あたしに激励を!?
「随分と失礼だな、撃たれてーのか?」
『すすすすすみませんっ!!感謝しております!!』
振り向いて銃を向けるリボーンさんに、慌てて頭を下げた。
「……まぁいい、許しといてやる。」
『ありがとうございますっ!!』
い、命拾いした…
リボーンさんは大きなため息を吐いてから、自室に戻っていった。
---
------
--------------
『(よし!完了っ!)』
我ながら結構頑張った。
廊下の絨毯には今、塵一つ無い状態。
うん、気持ちいい光景♪
花瓶の水も換えたたし、そろそろ休憩していいかな?
ルッスーリアさんと喋ってたのが大体20分くらいだから…
あと40分は休んでいいよね。
というワケで、あたしはフルートを持って演奏室に行った。
ガチャ、
『あ!』
「あ"?」
扉を開けたその向こうには、ピアノの椅子に座って頬杖をついてる獄寺さんがいた。
何か、読んでる…?
『すみません、使用中ですか…?』
「別に、弾いてたワケじゃねぇよ。」
だったら一体…
まさか、妖しい読み物をこっそり読む為に演奏室に隠れて……!
「おい柚子…喧嘩売ってんのか?」
『ごごごごめんなさい!!』
どうかその爆発物はポケットにしまって下さいませぇ!!
獄寺さんが読心術属性なのを思い出したところで、何をしてたのか真面目に気になる。
スッと近付いてみると、「この野次馬め…」みたいな目で見られた。
「おめーのコンクールの楽譜だっての。」
『え、でもあたし…………あ!!』
見せられた楽譜に一瞬ハテナ状態になって、ハッとした。
『ま、まさか……音合わせ手伝って下さるんですか!?』
「…10代目が言ってたんだよ。俺は今日書類もねーし、暇だってことで…」
『ありがとうございます♪獄寺さんっ!』
「だっ、だから10代目の指示だっつってんだろーが!!///」
獄寺さんはガタンと立ち上がったけど、あたしは何だか嬉しくてニヤついてしまった。
「おらっ、とにかく始めっぞ!!」
『はいっ♪』
コンクール本選の課題曲は、モーツァルトの“フルート協奏曲第1番・ト長調”。
楽器編成はフルートの他に、オーボエ・バイオリン・チェロ・ビオラ・コントラバス・ホルンなんだけど……
『獄寺さん、ピアノ担当ですよね?でしたら今回は…』
「うっせ。」
『ぎゃっ、』
今回は獄寺さんとの音合わせは不必要な気がする、
そう言おうと思ったあたしの額に、獄寺さんはコツンと拳を当てた。
『な、何するんですかぁ…』
「何回言わせる気だよ、俺は10代目に言われて来たんだっての!」
『ほへ…』
もしかするとそれって…
『獄寺さん、今日はバイオリン担当だったり…?』
「10代目ほどじゃねーけどな。」
椅子から立ち上がった獄寺さんは、ツナさんのバイオリンケースに手をかける。
おぉっ、この人…!
ピアノとバイオリン、両刀使いだったのか…!!
感動しまくりでポケーッとしていると、「早く柚子も準備しろ」と怒られた。
---
------
-------------
獄寺さんのバイオリンは、思ってた何倍も素晴らしかった。
「10代目ほどじゃねぇ」とか言ってたけど、そんな事なかった。
この人、楽器との相性がいいんだろーか…
楽器に懐かれてるとしか思えない。
「おい、聞いてんのか柚子!」
『あ、はい!もう1回お願いします!!』
「聞いてねぇじゃねーか!!」
『………あははっ☆』
山本さんを真似して、天然スマイルをやってみる。
けど、獄寺さんには逆効果だった。
物凄く白けた目で見られる。
『……ごめんなさいすいません許して下さい…』
「はぁ……ったく…」
獄寺さんが再び説明して、あたしも今度はちゃんと聞いていた。
と、その時。
バンッ、
「メイドの柚子ちゃーん、おやつあるー?」
『えっ!?』
勢いよく入室してそう言ったのは、下見から帰って来たであろうベルさんだった。
途端に獄寺さんはイライラ丸出しの表情になる。
「てんめぇ…今柚子はコンクールの練習してんだよ!!邪魔すんじゃねぇ!!」
「そんなの後でいーじゃん、つーか何でお前が怒鳴んの?」
「音合わせ手伝ってやってんだよ!!」
「へぇー、お前がねー…。でさ、王子さっきのリーフパイ食いたいんだけど。」
『あ、でしたらキッチンの棚に残りが…』
「普通に応答してんじゃねーよ、このバカ柚子っ!!」
はぅっ…!
何故かあたしも怒られた!!
「なぁなぁ、柚子ちゃんいつもコイツに教わってんの?」
『いえ、今日はたまたま獄寺さんが練習に付き合って下さるって…』
「ふーん…あ、そうそう。今日下見に行ったターゲットなんだけどさー、」
「おいコラ…邪魔すんなら出てけってんだ!!」
獄寺さんがコンクール出場者のあたしよりも真剣に怒ってる…
何か複雑な気分……
でも暗殺部隊さんのターゲットの話は出来れば聞きたくないかも。
「うるせーなー、お前そーやってカリカリしてっから俺に勝てねぇんだって。」
「んだと!!?」
「ししっ、頭に血ぃ上ってたら無理に決まってんじゃん。そーじゃなくても無理なんだからさー。」
いつの間にか何かの勝ち負けの話になっていた。
ベルさんがいると話題がコロコロ変わる。
それは、聞いてる分には面白い。
獄寺さんは完全に振り回されてる感じだけど……(汗)
「でさ、ターゲットの男が油っこいモンばっか食っててー、アレ切り刻んでも真っ赤な血じゃねーよーな気がして。」
『(ひえええっ!!)』
「何サラッと話してんだよ!」
「だって脂肪分取り過ぎってよくねーじゃん?血ぃドロドロらしーし。」
『(ベルさんが言うと健康面の意味じゃないように聞こえる…)』
イライラボルテージが上がって来た獄寺さんが頭を掻く。
あたしはとりあえずリーフパイをベルさんに持って来ようかと思ったけど、獄寺さんが怒るのはヤダし…
すると、またベルさんが話題転換をした。
「ありっ、お前何でバイオリン持ってんの?違ぇヤツだったじゃん。」
「あ"?てめーには関係ねぇだろ。」
最早獄寺さんは応答すら適当になっている。
あたしが慌ててフォローした。
『あのですねっ、獄寺さんはピアノがメインなんですがバイオリンもとっても上手いんですっ!あたしさっき感動しちゃいまして!』
「へぇー、両刀ってヤツ?」
『はいっ♪』
少しテンション高めの返答をするあたし。
ベルさんはジーッと獄寺さんを見た後、ししっと笑った。
「ま、俺もだけどさ。」
『えっ…?』
「なにっ!?」
「うしし♪俺、こないだはクラリネットやったけど、スクアーロの楽器も出来んだよね。」
スクアーロさんの楽器……えーっと…
『オーボエですか!?』
「そーそー、それ。」
「けっ、ハッタリかましてんじゃねーよ。だったらこの楽譜弾いてみろってんだ。」
そう言えば、本選の課題曲にはオーボエパートがある。
だけど一発で吹けなんてそんな無茶な…
「ししっ、天才に出来ないワケねーじゃん。見してみ。」
『あ、はい、どうぞ…』
ベルさんは数秒楽譜を見て、小さく頷いた。
「オーボエあるー?」
『只今お出ししますっ。』
「おい柚子!何でおめーがパシられてんだよ!!自分で探させろ!」
「柚子ちゃん優しーっ♪」
『いえいえっ、コレどうぞ!』
「サンキュ。」
オーボエを受け取りベルさんは吹き始める。
『(おおっ…)』
ちゃんと吹けてる…
ミスが無いのは勿論のこと、音が綺麗。
見事に15小節ほど弾いた後の、ベルさんの得意気な笑み。
獄寺さんは眉間のしわを濃くしたみたいだったけど、あたしは思わず拍手した。
『凄いですっ!本当に両刀使いさんなんですね!』
「ま、ナイフとワイヤーみてーな感じじゃね?ししっ。」
「……違ぇよ。」
ボソッとした獄寺さんの反論に、ちょっと笑ってしまった。
「んじゃ柚子ちゃん、王子と買い物行こーよ!」
『へっ!?』
「てめぇ…何がどーなるとそんな話になんだよ!!」
「今すんげー腹減ってんの思いだした。ほら、どーせ夕飯の買い物とか行くっしょ?早めに行くのもありじゃね?」
『そう、ですね……そろそろ休憩時間も終わりますし。』
あとは、獄寺さんの許可が下りればいいんだけど…
そう思ってチラリと見てみたら、盛大な溜め息と共に「好きにしろよ」と。
「また直前になってバタバタした練習すんじゃねーぞ。」
『はいっ、お気遣いありがとうございます♪』
「なっ…べ、別に気遣ってねーよ!とっとと行け!!///」
『は、はいっ!』
何ですぐ怒鳴るんでしょうか…
普通にしてれば普通に優しい人なのに。
吃驚したからそのままベルさんと演奏室を出た。
フルートと楽譜を自室に置き、代わりにお財布を取って来る。
いつものスーパーに向かいながら、あたしは思い切ってベルさんに話かけた。
『あの、実はまだメニュー決めてないんですが……何かあります?』
「ジャッポーネの美味しい料理♪」
『日本料理ですか…!?』
どうしよう、和菓子しか浮かばない……
あとは…懐石料理、とか…?
いくらなんでもお寿司は高いし…
歩きながらぐるぐる悩んでも、いい案は出ない。
と、ベルさんは愉しそうに笑って。
「柚子ちゃんて、超面白いよなー。」
『へ?』
「何でもいいに決まってんじゃん。俺が食べたいのは、柚子ちゃんの美味しい手料理だし。」
『ほえっ…?///』
「うししし♪」
赤くなっちゃったのは、不可抗力。
ベルさんの白い歯、
風に流れる金髪、
キラキラティアラが夕陽に映えて、
更に不意打ちの優しい台詞……
『(何なのさ…もうっ……)』
マフィアには、どうしてこうも心臓に悪い人が多いんだろう。
その世界に関わっちゃったあたしは、幸せ者なのかそれとも……
「柚子ちゃん真っ赤ー!可愛いーっ♪」
『み、見ないで下さいっ…!///』
「血まみれみたいじゃね?ししっ。」
『(その表現ヤダーっ!!)』
ベルさんにからかわれないように、必死に両手で頬を隠した。
「あ。」
『えっ、どうかしましたか?』
「やっぱり俺、ビーフシチュー食べたいかも。」
『あ、はいっ!了解です!』
突然のメニュー指定にも驚かされたけど、
やっぱりベルさんも素敵な人だなって思った。
ムーディー
気まぐれな王子様に振り回されるのも、時々だったら悪くない
continue...