🎼本編
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こんにちは、柚子です。
ツナさんと喧嘩っぽくなってイーピンちゃんに慰められた日から、10日が経ちました。
フルートコンクール3次予選の編成も決めて、只今7号館の皆さまに聞いてもらってます。
『………ありがとうございました。』
「すんげーじゃねーか柚子っ!!」
「実に良い演奏だったぞ!!」
「さすがです柚子殿っ!!」
『山本さん、了平さん、バジルさん…ありがとうございますっ///』
爽やかコンビとバジルさんは、拍手の後すぐにそう言ってくれた。
うん、でも問題はこっからなんだよね。
「おい柚子、バッハの方が予定時間より25秒長かったぞ。」
『えっ、ホントですか!?』
「獄寺、測ってただろ?」
「はいっ、26秒オーバーでした!」
リボーンさんの厳しい指摘……しかも獄寺さんの証拠付き。
そうです、3大恐怖と変態さんからの評価がメインイベントなんです。
「「「誰が3大恐怖だって?」」」
『ごごごめんなさいぃぃっっっ!!!』
お願いですから口を揃えないで下さいませ!
てゆーか自覚あるんじゃないですか…!
「赤ん坊が言ってたポイントも気になったけど、」
「そう呼ぶなって言ってんだろ、雲雀。」
リボーンさんの睨みを微笑でかわせる雲雀さんは凄いと思う。
勇者過ぎる。
「僕としては、モーツァルトの方、第1楽章で転びそうになったトコが耳についた。」
『(バレてた……(汗)』
「アレグロだけど、最初から転んだら印象が悪くなる。気を付けなよ。」
『はい、分かりました。』
これで3分の2恐怖は終わった。
あとは……
「骸、何か言うことある?」
「僕が気づいた所は、綱吉も気づいているでしょうから。」
「じゃあ言うけど…」
ツナさんが真面目な顔でこっちを見る。
ああどうしよう、怖いよーっ…
「全体的にテンポの変化が弱い。」
『はい…』
「特に、アンダンテとアレグロと区別をもっとハッキリさせた方がいい。」
『はいっ。』
「それと…」
楽譜をパラパラめくりながら探すツナさん。
何だか本物のフルート講師に見えてくるから不思議だ。
「モーツァルトのフルート四重奏曲・第4楽章なんだけど、」
『はい、』
あたしも自分の楽譜で確認。
「もう少し力抜いて吹いていいと思う。」
『了解ですっ。』
確かに、この第4楽章には軽快さが多く含まれている。
緊張する舞台でそれを表現するのは難しいと思うけど、今から表現出来てなきゃ本番でもっと堅くなっちゃう。
ツナさんは横暴ボスだけど、アドバイスはちゃんとしてるんだなーと思った。
勿論ツナさんだけじゃなく、他の皆さんも。
「とにかく、あと2日だぞ。柚子、ホントに一人で微調整するのか?」
『はい、大丈夫です。精一杯頑張りますから!』
今回あたしは、皆さんのスパルタ無しで自力で挑むことにした。
演奏を聴いて頂いて助言は貰うけど、練習は一人でする……
そう、決めたのだ。
『あ、バジルさん!』
「何でしょう?」
『家事のこと、本当にごめんなさい。コンクール終わったらすぐに復帰しますから!』
「いえいえ、お気になさらず。柚子殿はご自分のことに専念なさってください。」
『ありがとうございますっ!』
バジルさんのおかげで、あたしは家政婦の仕事から一時解放されてるんだ。
これが終わったら何かおごってあげようっと。
「……じゃ、頑張れよ。」
『はいっ!』
パタン、
演奏室の扉が閉められた。
一つだけ深呼吸をして、言われたトコを見直す。
それから、メトロノームでテンポの確認をした。
---
------
---------------
「いいんですか?10代目。」
「何が?」
ツナの書斎にて、書類をまとめながら尋ねた獄寺に、ツナは首を傾げた。
「柚子のヤツを一人で…」
「大丈夫だよ。」
「それも、おめーの超直感か?」
部屋のソファで銃磨きをしながらリボーンが聞く。
ツナは少し驚いたように目を丸くしてから、ふっと笑った。
「……違ぇよ、今回は。“直感”じゃなくて、“確信”。」
「“確信”、スか?」
「うん。」
答えながら、ツナはサラサラとサインをする手を止めない。
「俺がどのくらい柚子のこと見て来たと思う?」
「えっと……」
「もう5年になるな。」
逆算しようとした獄寺より早く、リボーンが言った。
「そう、もう5年だよ…」
「そんなに経ってんスね、もう。」
記憶を辿るようにボーッとする獄寺。
と、そこに。
コンコン、
「ツナ、いるか?」
「山本?」
ガチャ、
「おっ、獄寺に小僧もいたのか。」
「どうかした?」
「いやー、何か部活がねーと暇でさ。」
何か手伝うぜ、と言う山本を、獄寺はムッと睨む。
「ん?あぁ、おめーの仕事は取らねぇよ。」
「けっ、茶でも入れてろ野球バカ。」
「んじゃーそーするぜ♪」
と、ここでリボーンが話題を戻す。
「で、最後まで聞いてねーぞ。」
「ああ、そうだった。」
「何の話だ?」
「俺が初めて柚子に会った時の話。」
書類に目を移したまま言うツナに、山本は「そか…」と一言。
「ほっとんど変わってないんだよ、あの頃から。」
「柚子がか?」
エスプレッソを手に、意外そうに言うリボーン。
「俺としては、第一印象より今の方がビビりだと思うぞ。」
「それは性格面だろ。」
「じゃあ何が変わってねぇんだ?」
緑茶を入れた山本が、ツナの机に湯呑を置いて尋ねた。
軽く礼を言ってから、ツナは答える。
「何て言えばいっかな……性質…?」
「性質っスか…??」
「うーん……柚子の、フルート練習法……とでも言っとくよ。」
懐かしむように窓の外を見て、続ける。
「あの時も…5年前もそうだったんだ……。」
---「柚子ちゃん!待ちなさい!!」
---「柚子!何処行くの!?柚子…!!」
---『先生もお母さんも付いて来ないで!!』
並盛病院のある病室の窓から見えた、1人の少女と2人の女性。
同い年くらいに見えた少女の手には、陽光を反射する銀色のフルート。
親に押し付けられた習い事なのかと、最初は思った。
しかし、本当はその逆で。
---『あたしっ……一人じゃないと練習したくない!!』
辺りに響いた少女の訴えに、どれほど驚かされたことか。
「まぁそーゆーワケで、柚子は昔から一人で練習すると効率が抜群に上がってたんだ。」
「そ、そーなんスか!?」
「ただし、期日が迫った時限定で。」
「追い込まれて本領発揮するタイプなんだなっ♪」
「そんな感じ。」
やっぱすげぇな、と感心する山本。
その横でリボーンが呟く。
「だから2次の時も、5分で10小節覚えられたんだな。」
「リボーンお前…そんなスパルタしてたのかよ。」
「ツナが俺に任せたんだからな、今更文句言うな。いーじゃねーか、実際柚子は2次通過したぞ。」
得意気なリボーンにツナが溜め息をつくと、今度は山本が言った。
「けど普通、一人でこもっちまうと行き詰ると思うんだけどな。」
「自分を客観視できないっスからね。」
「けど、柚子には出来る。」
ハッキリと言い切ったツナに、獄寺と山本は疑問符を浮かべ、リボーンは「なるほど」と口角を上げた。
「柚子の心の中には、世界レベルのフルート奏者が生きてるから…さ。」
---
-------
--------------
『んー……疲れたぁ…』
グーッと背伸びをしてから、時計を見る。
『あ。』
もう日付が変わってた。
演奏室が防音壁でよかったぁ……
じゃなきゃご近所迷惑過ぎる。
『明日、もっかい通しで聴いて貰えるかな…』
何たって30分のお時間を頂かなくちゃいけない。
マフィアの仕事がどんなのか知らないけど、少なくともあたしの演奏を聴いてる間はタイムロスになってる、と思う。
だとしたら、そんなに頻繁に聴いて貰うワケにもいかないし……
やっぱ大学の教授や友達に……
『(あれっ…?)』
色々考えながら部屋に戻ろうとしたあたしは、ふと廊下に漏れる明かりに気がついた。
『(こんな時間まで、誰……)』
ううん、誰かは分かってた。
だって明かりが点いてるのは……
ツナさんの書斎なんだもの。
どうしよ、声かけるべきなのかな?
でもお仕事に集中してるんだったら、邪魔しない方が…
悩んだ末、ドアにそっと耳を近づけて様子を窺うことにした。
もしも起きてたら、何か書いてる音とかするよね。
それか、コーヒー飲んでたり。
でも、そんな音は全く聞こえて来なかった。
『(何でだろ?静かすぎない…?)』
仕方がないから、そうっとドアを開けてみた。
すると……
『(ん?………わわっ…///)』
部屋の一番奥にある大きな机で、ツナさんは書類と腕を枕にして眠っていた。
しかもこれがまた赤面しちゃうくらいの素敵寝顔。
あーあ、目ぇ閉じてるだけでどーしてこんなに違うんだろ。
普段の腹黒が嘘みたいに、素敵な寝顔……
って、何見とれてんのあたし!!
早く寝なくちゃ、明日も早起きだし…
『(………でも、)』
起こすべき、なのかな…
ちゃんとベッドで寝た方が……
あーでも、ツナさんの眠りを妨げたら怒られそうだな……怖い…。
あ、毛布かけとこうっと!
思いついたら即行動!
あたしはツナさんの寝室から毛布を持ってきた。
「スー……スー……」
『お疲れ様です、ツナさん。』
ふわっと肩に毛布をかけた。
これで風邪はひかないよね。
いくらツナさんが横暴ボスだからって、風邪ひいちゃうのは良くないと思うし。
うん、ちゃんと家政婦の仕事した!
偉いぞあたし!
『(では、おやすみなさい…)』
心の中で挨拶して、自分の寝室に戻ろうとした、その時。
「………柚子…、」
『えっ…?』
まさか寝たフリってこと…!!?
ビクビクしながら振り向いたあたしの目には、
変わらずそこで眠ってるツナさん。
寝言…?
いや、まだ分からない。
もしかしたら寝言のマネで呼びとめて……
はうっ!
ということはつまり、あたしのさっきまでの考察全て読まれていた可能性も…!?
『(や、ヤバい…!)』
何回“横暴ボス”って言ったか分かんないや……(汗)
ビビりながらも、ツナさんの観察を続ける。
そしたら、また寝言。
「…柚子……、」
お、起きてるのかな…?
起きてたらどうしよう…!
あたしやっぱりまた苛められる…!!
『ツナ、さん…?』
呼び掛けてみたけど、返事無し。
本当に寝言??
『あ、あの…』
「……行く、なよ…」
『え…?』
話しかけようとしたら、違う寝言が聞こえて来た。
少しビックリして、歩み寄る。
さっきまで普通の寝顔だったのに、少しだけつらそうになってた。
悪い夢でも見てるの…?
「………待てよ…」
どうしよ…
悪い夢だったら…起こすべき、よね?
『ツナさんっ、ツナさん起きて下さいっ。』
毛布の上から肩をゆすってみる。
「…ん……」
『あ、ツナさんっ、ちゃんとベッドで寝た方が……』
「柚子……?」
『そうです、あたしでs………きゃっ!』
うっすらと目を開けたツナさんは、あたしを見るなり引き寄せた。
その強い力に勝てないまま、抱きしめられる。
『つ、ツナさ……』
「 」
『えっ…?』
耳元での一言に、あたしは何故かフリーズした。
と、次の瞬間ツナさんはバッとあたしを放して。
「柚子、何でお前ココに……」
『え、あ……ベッドでお休みになった方がいいと思って……何か、寝苦しそうだったんで…』
「……そっか、サンキュ。」
それだけ言ったツナさんは、ふらっと寝室へ行ってしまった。
やっぱりさっき、寝ぼけてたのかな…?
---「…ごめん……柚子…」
あんな風に、ツナさんが謝るなんて。
『(まいっか、あたしも寝ようっと。)』
その時あたしは、ツナさんに起こった異変に気付いていなかった。
翌日ツナさんは、39度の熱を出して倒れてしまった。
レガート
滑らかに過ぎてく日常は、小さな変化に壊されて
continue...
ツナさんと喧嘩っぽくなってイーピンちゃんに慰められた日から、10日が経ちました。
フルートコンクール3次予選の編成も決めて、只今7号館の皆さまに聞いてもらってます。
『………ありがとうございました。』
「すんげーじゃねーか柚子っ!!」
「実に良い演奏だったぞ!!」
「さすがです柚子殿っ!!」
『山本さん、了平さん、バジルさん…ありがとうございますっ///』
爽やかコンビとバジルさんは、拍手の後すぐにそう言ってくれた。
うん、でも問題はこっからなんだよね。
「おい柚子、バッハの方が予定時間より25秒長かったぞ。」
『えっ、ホントですか!?』
「獄寺、測ってただろ?」
「はいっ、26秒オーバーでした!」
リボーンさんの厳しい指摘……しかも獄寺さんの証拠付き。
そうです、3大恐怖と変態さんからの評価がメインイベントなんです。
「「「誰が3大恐怖だって?」」」
『ごごごめんなさいぃぃっっっ!!!』
お願いですから口を揃えないで下さいませ!
てゆーか自覚あるんじゃないですか…!
「赤ん坊が言ってたポイントも気になったけど、」
「そう呼ぶなって言ってんだろ、雲雀。」
リボーンさんの睨みを微笑でかわせる雲雀さんは凄いと思う。
勇者過ぎる。
「僕としては、モーツァルトの方、第1楽章で転びそうになったトコが耳についた。」
『(バレてた……(汗)』
「アレグロだけど、最初から転んだら印象が悪くなる。気を付けなよ。」
『はい、分かりました。』
これで3分の2恐怖は終わった。
あとは……
「骸、何か言うことある?」
「僕が気づいた所は、綱吉も気づいているでしょうから。」
「じゃあ言うけど…」
ツナさんが真面目な顔でこっちを見る。
ああどうしよう、怖いよーっ…
「全体的にテンポの変化が弱い。」
『はい…』
「特に、アンダンテとアレグロと区別をもっとハッキリさせた方がいい。」
『はいっ。』
「それと…」
楽譜をパラパラめくりながら探すツナさん。
何だか本物のフルート講師に見えてくるから不思議だ。
「モーツァルトのフルート四重奏曲・第4楽章なんだけど、」
『はい、』
あたしも自分の楽譜で確認。
「もう少し力抜いて吹いていいと思う。」
『了解ですっ。』
確かに、この第4楽章には軽快さが多く含まれている。
緊張する舞台でそれを表現するのは難しいと思うけど、今から表現出来てなきゃ本番でもっと堅くなっちゃう。
ツナさんは横暴ボスだけど、アドバイスはちゃんとしてるんだなーと思った。
勿論ツナさんだけじゃなく、他の皆さんも。
「とにかく、あと2日だぞ。柚子、ホントに一人で微調整するのか?」
『はい、大丈夫です。精一杯頑張りますから!』
今回あたしは、皆さんのスパルタ無しで自力で挑むことにした。
演奏を聴いて頂いて助言は貰うけど、練習は一人でする……
そう、決めたのだ。
『あ、バジルさん!』
「何でしょう?」
『家事のこと、本当にごめんなさい。コンクール終わったらすぐに復帰しますから!』
「いえいえ、お気になさらず。柚子殿はご自分のことに専念なさってください。」
『ありがとうございますっ!』
バジルさんのおかげで、あたしは家政婦の仕事から一時解放されてるんだ。
これが終わったら何かおごってあげようっと。
「……じゃ、頑張れよ。」
『はいっ!』
パタン、
演奏室の扉が閉められた。
一つだけ深呼吸をして、言われたトコを見直す。
それから、メトロノームでテンポの確認をした。
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「いいんですか?10代目。」
「何が?」
ツナの書斎にて、書類をまとめながら尋ねた獄寺に、ツナは首を傾げた。
「柚子のヤツを一人で…」
「大丈夫だよ。」
「それも、おめーの超直感か?」
部屋のソファで銃磨きをしながらリボーンが聞く。
ツナは少し驚いたように目を丸くしてから、ふっと笑った。
「……違ぇよ、今回は。“直感”じゃなくて、“確信”。」
「“確信”、スか?」
「うん。」
答えながら、ツナはサラサラとサインをする手を止めない。
「俺がどのくらい柚子のこと見て来たと思う?」
「えっと……」
「もう5年になるな。」
逆算しようとした獄寺より早く、リボーンが言った。
「そう、もう5年だよ…」
「そんなに経ってんスね、もう。」
記憶を辿るようにボーッとする獄寺。
と、そこに。
コンコン、
「ツナ、いるか?」
「山本?」
ガチャ、
「おっ、獄寺に小僧もいたのか。」
「どうかした?」
「いやー、何か部活がねーと暇でさ。」
何か手伝うぜ、と言う山本を、獄寺はムッと睨む。
「ん?あぁ、おめーの仕事は取らねぇよ。」
「けっ、茶でも入れてろ野球バカ。」
「んじゃーそーするぜ♪」
と、ここでリボーンが話題を戻す。
「で、最後まで聞いてねーぞ。」
「ああ、そうだった。」
「何の話だ?」
「俺が初めて柚子に会った時の話。」
書類に目を移したまま言うツナに、山本は「そか…」と一言。
「ほっとんど変わってないんだよ、あの頃から。」
「柚子がか?」
エスプレッソを手に、意外そうに言うリボーン。
「俺としては、第一印象より今の方がビビりだと思うぞ。」
「それは性格面だろ。」
「じゃあ何が変わってねぇんだ?」
緑茶を入れた山本が、ツナの机に湯呑を置いて尋ねた。
軽く礼を言ってから、ツナは答える。
「何て言えばいっかな……性質…?」
「性質っスか…??」
「うーん……柚子の、フルート練習法……とでも言っとくよ。」
懐かしむように窓の外を見て、続ける。
「あの時も…5年前もそうだったんだ……。」
---「柚子ちゃん!待ちなさい!!」
---「柚子!何処行くの!?柚子…!!」
---『先生もお母さんも付いて来ないで!!』
並盛病院のある病室の窓から見えた、1人の少女と2人の女性。
同い年くらいに見えた少女の手には、陽光を反射する銀色のフルート。
親に押し付けられた習い事なのかと、最初は思った。
しかし、本当はその逆で。
---『あたしっ……一人じゃないと練習したくない!!』
辺りに響いた少女の訴えに、どれほど驚かされたことか。
「まぁそーゆーワケで、柚子は昔から一人で練習すると効率が抜群に上がってたんだ。」
「そ、そーなんスか!?」
「ただし、期日が迫った時限定で。」
「追い込まれて本領発揮するタイプなんだなっ♪」
「そんな感じ。」
やっぱすげぇな、と感心する山本。
その横でリボーンが呟く。
「だから2次の時も、5分で10小節覚えられたんだな。」
「リボーンお前…そんなスパルタしてたのかよ。」
「ツナが俺に任せたんだからな、今更文句言うな。いーじゃねーか、実際柚子は2次通過したぞ。」
得意気なリボーンにツナが溜め息をつくと、今度は山本が言った。
「けど普通、一人でこもっちまうと行き詰ると思うんだけどな。」
「自分を客観視できないっスからね。」
「けど、柚子には出来る。」
ハッキリと言い切ったツナに、獄寺と山本は疑問符を浮かべ、リボーンは「なるほど」と口角を上げた。
「柚子の心の中には、世界レベルのフルート奏者が生きてるから…さ。」
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『んー……疲れたぁ…』
グーッと背伸びをしてから、時計を見る。
『あ。』
もう日付が変わってた。
演奏室が防音壁でよかったぁ……
じゃなきゃご近所迷惑過ぎる。
『明日、もっかい通しで聴いて貰えるかな…』
何たって30分のお時間を頂かなくちゃいけない。
マフィアの仕事がどんなのか知らないけど、少なくともあたしの演奏を聴いてる間はタイムロスになってる、と思う。
だとしたら、そんなに頻繁に聴いて貰うワケにもいかないし……
やっぱ大学の教授や友達に……
『(あれっ…?)』
色々考えながら部屋に戻ろうとしたあたしは、ふと廊下に漏れる明かりに気がついた。
『(こんな時間まで、誰……)』
ううん、誰かは分かってた。
だって明かりが点いてるのは……
ツナさんの書斎なんだもの。
どうしよ、声かけるべきなのかな?
でもお仕事に集中してるんだったら、邪魔しない方が…
悩んだ末、ドアにそっと耳を近づけて様子を窺うことにした。
もしも起きてたら、何か書いてる音とかするよね。
それか、コーヒー飲んでたり。
でも、そんな音は全く聞こえて来なかった。
『(何でだろ?静かすぎない…?)』
仕方がないから、そうっとドアを開けてみた。
すると……
『(ん?………わわっ…///)』
部屋の一番奥にある大きな机で、ツナさんは書類と腕を枕にして眠っていた。
しかもこれがまた赤面しちゃうくらいの素敵寝顔。
あーあ、目ぇ閉じてるだけでどーしてこんなに違うんだろ。
普段の腹黒が嘘みたいに、素敵な寝顔……
って、何見とれてんのあたし!!
早く寝なくちゃ、明日も早起きだし…
『(………でも、)』
起こすべき、なのかな…
ちゃんとベッドで寝た方が……
あーでも、ツナさんの眠りを妨げたら怒られそうだな……怖い…。
あ、毛布かけとこうっと!
思いついたら即行動!
あたしはツナさんの寝室から毛布を持ってきた。
「スー……スー……」
『お疲れ様です、ツナさん。』
ふわっと肩に毛布をかけた。
これで風邪はひかないよね。
いくらツナさんが横暴ボスだからって、風邪ひいちゃうのは良くないと思うし。
うん、ちゃんと家政婦の仕事した!
偉いぞあたし!
『(では、おやすみなさい…)』
心の中で挨拶して、自分の寝室に戻ろうとした、その時。
「………柚子…、」
『えっ…?』
まさか寝たフリってこと…!!?
ビクビクしながら振り向いたあたしの目には、
変わらずそこで眠ってるツナさん。
寝言…?
いや、まだ分からない。
もしかしたら寝言のマネで呼びとめて……
はうっ!
ということはつまり、あたしのさっきまでの考察全て読まれていた可能性も…!?
『(や、ヤバい…!)』
何回“横暴ボス”って言ったか分かんないや……(汗)
ビビりながらも、ツナさんの観察を続ける。
そしたら、また寝言。
「…柚子……、」
お、起きてるのかな…?
起きてたらどうしよう…!
あたしやっぱりまた苛められる…!!
『ツナ、さん…?』
呼び掛けてみたけど、返事無し。
本当に寝言??
『あ、あの…』
「……行く、なよ…」
『え…?』
話しかけようとしたら、違う寝言が聞こえて来た。
少しビックリして、歩み寄る。
さっきまで普通の寝顔だったのに、少しだけつらそうになってた。
悪い夢でも見てるの…?
「………待てよ…」
どうしよ…
悪い夢だったら…起こすべき、よね?
『ツナさんっ、ツナさん起きて下さいっ。』
毛布の上から肩をゆすってみる。
「…ん……」
『あ、ツナさんっ、ちゃんとベッドで寝た方が……』
「柚子……?」
『そうです、あたしでs………きゃっ!』
うっすらと目を開けたツナさんは、あたしを見るなり引き寄せた。
その強い力に勝てないまま、抱きしめられる。
『つ、ツナさ……』
「 」
『えっ…?』
耳元での一言に、あたしは何故かフリーズした。
と、次の瞬間ツナさんはバッとあたしを放して。
「柚子、何でお前ココに……」
『え、あ……ベッドでお休みになった方がいいと思って……何か、寝苦しそうだったんで…』
「……そっか、サンキュ。」
それだけ言ったツナさんは、ふらっと寝室へ行ってしまった。
やっぱりさっき、寝ぼけてたのかな…?
---「…ごめん……柚子…」
あんな風に、ツナさんが謝るなんて。
『(まいっか、あたしも寝ようっと。)』
その時あたしは、ツナさんに起こった異変に気付いていなかった。
翌日ツナさんは、39度の熱を出して倒れてしまった。
レガート
滑らかに過ぎてく日常は、小さな変化に壊されて
continue...