🎼本編
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「柚子……おい柚子、」
『んー…』
「起きないと給料…」
『おひゃようごじゃいますっ…!!』
「噛み過ぎ。」
だって寝起きですし…!
寝ぼけた耳に飛び込んできた脅し文句にビビったんですから!
それにしても、起きて一番に見るのがツナさんの黒笑いだなんて…
今日はついてないのかも。
「何か言った?」
『いいえ!!』
そうだ、ツナさんの読心術はレベル高いんだ。
というか、あたしがツナさんに早起きで負けるなんて…不覚!
「はい、コレ届いてたよ。」
『へ?』
「コンクール、2次も通過したって。」
『ほ、ホントですかっ!?』
あの超高速特訓で、通過出来たの…!?
渡された通知を読んでみる。
あぁ…信じられない……
「俺たちのおかげだよな。」
『え、ツナさんも含まれるんですか?』
「やっぱり給料…」
『感謝してます!!ツナさんに一番大感謝!!』
「だろ?」
言わせられている…
あたし、完全に操られている…
それでツナさんが満足なら別にいいけどさー…
「んじゃ、3次予選も頑張れよ。いくら柚子が俺のだからって、今度は3日じゃ通らないと思うし。」
『そうですね……って、“俺の”は違います!』
「俺が決めたんだよ。」
『家政婦にも人権があります!』
「じゃあペットにしようか。」
『お断りします!!』
あ、言い争ってる場合じゃないよ。
3次予選の曲は……
『フルートと通奏低音のためのソナタ……バッハの曲ですか…』
「もう1つあるな。モーツァルトのフルート四重奏曲か。」
“モーツァルトのフルート四重奏曲”は第4楽章まである。
どうやら、4つの楽章から好きな2楽章を選ぶようだ。
『全体で30分以内になればいいみたいです。』
「結構長いな、今までの倍はあるな。」
いよいよ本格的なコンクールのムードが出て来た。
そう思ったら、少しだけドキドキし始めた。
「あぁそうだ、柚子、」
『何ですか?』
「2次通過、おめでとう。」
『へっ…?』
ツナさんが、急に笑った。
黒笑いじゃなくて、本当に自然に。
『あ、えっと……ありがとう、ございます…///』
不意打ちなんて、ズル過ぎる。
プレイボーイ自主規制してって言ってるのに。
「何?照れた?」
『照れてませんっ!朝食作ってきます!!』
ドキッとした次の瞬間にはもう雰囲気ぶち壊すし…
ツナさんの真意なんて、あたしにはわかりっこない……
「そんなの、俺だって同じ。」
『(ぎょえっ…)』
今のも読まれてたんだ…!
身構えながら次の言葉を待つあたしに、ツナさんは滅多に見せない顔をして。
「柚子の言動って、たまに謎だよ。」
『あたし、ですか…?』
「つーワケで、早く朝食。」
『…はーい……』
“つーワケで”って、何にも話が繋がってない…。
だけどあたしには、聞き直すなんてことはできなかった。
『(だってツナさん……)』
「おお柚子!早いな!」
『あ、了平さん!おはようございますっ♪』
廊下でバッタリ了平さんに出会う。
その首にはタオルがかけられていて、頬も少し紅潮していた。
『早朝ランニングなさってたんですか?』
「よく分かったな!極限にその通りだ!!」
『でしたらちょっと一緒にキッチンに来て下さい。スポーツドリンクが冷えてると思うので。』
「そうか!では行こう。」
了平さんの隣を歩くのは、何だか久しぶりだ。
ヴァリアーさんが来る前はずっと出張だったし、その後も試合がたくさんあった。
夕飯は皆さん揃って食べてるけど、2人で会話するのは本当に久々だったりする。
「柚子、2次も通ったそうだな!」
『へっ!?それあたしも今朝聞いたんですが…』
「そうなのか?俺はランニングに行く前に聞かされたぞ。」
『あの、誰から…』
「もちろん沢田からだ!!」
やっぱり!
あの横暴ボス、どうして当事者には最後に教えるの!!?
「どうかしたか?柚子。」
『あ、いえ!』
了平さんにツナさんの愚痴なんて言えない…
というか、ココにいる人達には絶対言えないな……
言えるとしたら……誰だろ…
スクアーロさんくらいかな??
そう言えば、どうしてスクアーロさんはあたしの苦労を一発で見抜いてくれたんだろう?
んー……今度会えたら聞いてみようかな。
『はい、どうぞ♪』
「ありがとな!」
『いえいえっ!』
了平さんにスポーツドリンクを出して、あたしは朝食の用意を始めた。
今日、ツナさんは久しぶりに授業に出るらしい。
あたしも昼過ぎまで授業がある。
休憩時間に楽譜でも調達しようかな……じゃないと3次予選の練習できないし。
そんな事を思いながらボーッとしてた。
ジューッ!
「柚子!危ないぞ!!」
『きゃっ…!』
突如了平さんに腕をつかまれ、コンロから引き離される。
気がついた時には、スープが鍋からこぼれていた。
『あ…』
「大丈夫か!?怪我は無いか!?」
『はいっ、あの、すみませんっ…!』
あたしの両肩を掴んで真剣な目で問う了平さんに、いつものクセで咄嗟に謝る。
そしたら何故か、ビックリした顔をされた。
その表情に、あたしの方もビックリした。
『あの、何か…?』
火を止めながら、訊いてみた。
「何故謝るのだ?柚子は悪くないだろう。」
『え、あ…ボーッとしてましたし……』
「人間ならば考え事で体が動かなくなる時もあるぞ。」
了平さんの自然な言葉に、あたしは思わずポカンとした。
だって、絶対3代恐怖の人とか姑の獄寺さんとかだったら文句言うに決まってる。
「何やってんだ」って怒るに決まってるのに……
「柚子に怪我が無ければそれでいい、俺はそう思ったのだ。」
『了平さん……』
「きっと他の奴だって同じハズだ。」
『他のって?』
まさかツナさん達のことを言ってるんじゃ…
あ、でも、了平さんと同じ“爽やか属性”の山本さんなら…!
「沢田は特に心配するだろうな、柚子が火傷など負えば。」
『えぇっ!?』
あり得ないですよ了平さん。
あのツナさんが、けなさないで心配するワケないじゃないですか。
あたしの心の中での反論は聞こえてないようで、(良かった…)
了平さんは続ける。
「男なら、大事な者は自分の身に変えてでも守るものだ。沢田は今までそれを体現してきている。」
『(そうなんだ…)』
やっぱりツナさん、昔から変わってないんだな……優しいトコ。
「何してんだ?おめーら。」
「おお!」
『あ、おはようございますリボーンさん!』
「ちゃおっス柚子、了平。」
リボーンさんはエスプレッソを飲みに来たそうだ。
「なんだ、こぼしたのか。」
『すみません、うっかり火を止めるの忘れてて…』
「しょーがねー奴だな、火傷してねーか?」
『えっ?』
あれ、空耳…?
リボーンさんが、心配してくれた…?
「空耳じゃねーぞ。随分と失礼だな。」
『す、すみませんっ…!!』
銃を出すリボーンさんに慌てて頭を下げる。
「…朝食まだか?腹減ったぞ。」
『あっ、もう出来ました!スープも…ちょっと量が減っちゃっただけですし…』
「なら、俺は広間で待ってるぞ。」
『はいっ。』
リボーンさんが去った後、トーストとスープ、ハムエッグを用意し始める。
了平さんは、スポーツドリンクのペットボトルを片付けながら言った。
「心配していただろう?」
『あ…はい……意外でした…』
「俺達は、柚子を大切に思っているのだ。沢田を筆頭にな。」
『……どうしてですか?あたしが、家政婦やってるからですか?』
「それは言えん。」
恐る恐る聞いたあたしに、了平さんは真剣な眼差しを向けた。
声色も、それよりもずっと威厳を増して。
あたしが固まってしまったのは言うまでもない。
爽やかで真っ直ぐな了平さんなら、そのまま教えてくれるかも…
そんな期待を抱いてたのかもしれない。
『そう、ですか…』
「すまんな柚子…だがコレは、他人が話して良い事ではない……そんな気がするのだ…。」
『了平さん…』
全員分の朝食をよそり終わった。
配膳台に乗せて、カラカラ運ぶ。
隣を歩く了平さんは、心底申し訳なさそうな顔をしていた。
『大丈夫ですよ、了平さんは悪くないですから。』
「しかし……何年経っても秘密というのはむず痒いものだな。」
『そう思って下さるだけで、嬉しいです。』
平気で隠し事しちゃう人よりは、と付け足せば、了平さんも苦笑した。
にしても、こんな正直な人にこんな表情をさせるなんて……
どんな秘密なんだろう…
いつになったらあたしは、教えてもらえるのかな…?
ツナさんは、どうやって話してくれるのかな…?
「柚子、心配するな。柚子に全てが伝えられるその日まで、俺達は極限にお前を守り続けるぞ!」
『え!?』
ま…守る!?
『そんな…まるで悪漢に襲われるみたいな言い方……』
「今までもあったそうではないか、誘拐などが。」
『あー……えぇ、まぁ…でもあんまり怖くありませんでしたよ?』
思い出したままにそう言うと、了平さんは少し目を見開いた。
え、何かあたし、変なこと言ったかな…?
「そうか!柚子は極限に強い女だな!!」
『そうですか?了平さんにそう言ってもらえると嬉しいです♪』
へへっと笑ったあたしの頭を、了平さんはわしゃわしゃっと撫でた。
「だが世の中、そんな弱い輩ばかりとは限らない。故に俺達がお前を守るのだ。」
『はぁ…』
「大事な者を守る、これこそが漢の浪漫だ!!!」
あ、熱い…!!
その闘志に圧倒されつつ、広間のドアを開ける。
「やっと来たか。」
「よっ!柚子!先輩も!」
「ふぁ~あ…」
「10代目のから配れよ。」
「おはようございます、僕の柚子♪」
「骸、柚子は俺の。」
こうして見ると、何とも強力なメンツに囲まれてると思う。
だけど、一緒にいて楽しいし、本質は良い人たちばかり。
『おはようございます!皆さん♪』
朝食を並べて、揃って食べ始める。
「あ、柚子、俺今日午後まで授業だけどさ、」
『はい、聞いてます。』
「会いたくなったら呼んでいいからな。」
『よっ…呼びませんよ!寂しくもないですし!』
「狡いですよ綱吉っ!柚子、何かありましたら僕を呼んで下さいね。飛んで向かいますから。」
『呼びません!何も起こりませんから!』
骸さんに反論してから、ふと気がつく。
あれ?もしかして…
ツナさんが言った“会いたくなったら”って、
“何かあったら”とイコール関係だったりするの…?
---「大事な者を守る、これこそが漢の浪漫だ!!!」
あんな事を教えられた直後だから、妙に意識しちゃう。
そんな自分の思考回路が嫌で、ふるふるっと頭を振った。
「ん?何してんだ?柚子。」
『いえ!何でもないです!』
「バカになったんじゃないの。」
『違いますーっ!』
「おや、膨れた顔も可愛いですね♪」
「ホントだ、こっち向けよ柚子。」
『ふぎゃっ…///』
ツナさんが急に顎を引くもんだから、縮まった距離に赤くなってしまった。
そしたら直後、勝ち誇ったような顔をされた。
『(絶対確信犯だ…!!)』
ロマンチスト
彼が語った浪漫とは、空想よりも信念に似た思いだった
continue...
『んー…』
「起きないと給料…」
『おひゃようごじゃいますっ…!!』
「噛み過ぎ。」
だって寝起きですし…!
寝ぼけた耳に飛び込んできた脅し文句にビビったんですから!
それにしても、起きて一番に見るのがツナさんの黒笑いだなんて…
今日はついてないのかも。
「何か言った?」
『いいえ!!』
そうだ、ツナさんの読心術はレベル高いんだ。
というか、あたしがツナさんに早起きで負けるなんて…不覚!
「はい、コレ届いてたよ。」
『へ?』
「コンクール、2次も通過したって。」
『ほ、ホントですかっ!?』
あの超高速特訓で、通過出来たの…!?
渡された通知を読んでみる。
あぁ…信じられない……
「俺たちのおかげだよな。」
『え、ツナさんも含まれるんですか?』
「やっぱり給料…」
『感謝してます!!ツナさんに一番大感謝!!』
「だろ?」
言わせられている…
あたし、完全に操られている…
それでツナさんが満足なら別にいいけどさー…
「んじゃ、3次予選も頑張れよ。いくら柚子が俺のだからって、今度は3日じゃ通らないと思うし。」
『そうですね……って、“俺の”は違います!』
「俺が決めたんだよ。」
『家政婦にも人権があります!』
「じゃあペットにしようか。」
『お断りします!!』
あ、言い争ってる場合じゃないよ。
3次予選の曲は……
『フルートと通奏低音のためのソナタ……バッハの曲ですか…』
「もう1つあるな。モーツァルトのフルート四重奏曲か。」
“モーツァルトのフルート四重奏曲”は第4楽章まである。
どうやら、4つの楽章から好きな2楽章を選ぶようだ。
『全体で30分以内になればいいみたいです。』
「結構長いな、今までの倍はあるな。」
いよいよ本格的なコンクールのムードが出て来た。
そう思ったら、少しだけドキドキし始めた。
「あぁそうだ、柚子、」
『何ですか?』
「2次通過、おめでとう。」
『へっ…?』
ツナさんが、急に笑った。
黒笑いじゃなくて、本当に自然に。
『あ、えっと……ありがとう、ございます…///』
不意打ちなんて、ズル過ぎる。
プレイボーイ自主規制してって言ってるのに。
「何?照れた?」
『照れてませんっ!朝食作ってきます!!』
ドキッとした次の瞬間にはもう雰囲気ぶち壊すし…
ツナさんの真意なんて、あたしにはわかりっこない……
「そんなの、俺だって同じ。」
『(ぎょえっ…)』
今のも読まれてたんだ…!
身構えながら次の言葉を待つあたしに、ツナさんは滅多に見せない顔をして。
「柚子の言動って、たまに謎だよ。」
『あたし、ですか…?』
「つーワケで、早く朝食。」
『…はーい……』
“つーワケで”って、何にも話が繋がってない…。
だけどあたしには、聞き直すなんてことはできなかった。
『(だってツナさん……)』
「おお柚子!早いな!」
『あ、了平さん!おはようございますっ♪』
廊下でバッタリ了平さんに出会う。
その首にはタオルがかけられていて、頬も少し紅潮していた。
『早朝ランニングなさってたんですか?』
「よく分かったな!極限にその通りだ!!」
『でしたらちょっと一緒にキッチンに来て下さい。スポーツドリンクが冷えてると思うので。』
「そうか!では行こう。」
了平さんの隣を歩くのは、何だか久しぶりだ。
ヴァリアーさんが来る前はずっと出張だったし、その後も試合がたくさんあった。
夕飯は皆さん揃って食べてるけど、2人で会話するのは本当に久々だったりする。
「柚子、2次も通ったそうだな!」
『へっ!?それあたしも今朝聞いたんですが…』
「そうなのか?俺はランニングに行く前に聞かされたぞ。」
『あの、誰から…』
「もちろん沢田からだ!!」
やっぱり!
あの横暴ボス、どうして当事者には最後に教えるの!!?
「どうかしたか?柚子。」
『あ、いえ!』
了平さんにツナさんの愚痴なんて言えない…
というか、ココにいる人達には絶対言えないな……
言えるとしたら……誰だろ…
スクアーロさんくらいかな??
そう言えば、どうしてスクアーロさんはあたしの苦労を一発で見抜いてくれたんだろう?
んー……今度会えたら聞いてみようかな。
『はい、どうぞ♪』
「ありがとな!」
『いえいえっ!』
了平さんにスポーツドリンクを出して、あたしは朝食の用意を始めた。
今日、ツナさんは久しぶりに授業に出るらしい。
あたしも昼過ぎまで授業がある。
休憩時間に楽譜でも調達しようかな……じゃないと3次予選の練習できないし。
そんな事を思いながらボーッとしてた。
ジューッ!
「柚子!危ないぞ!!」
『きゃっ…!』
突如了平さんに腕をつかまれ、コンロから引き離される。
気がついた時には、スープが鍋からこぼれていた。
『あ…』
「大丈夫か!?怪我は無いか!?」
『はいっ、あの、すみませんっ…!』
あたしの両肩を掴んで真剣な目で問う了平さんに、いつものクセで咄嗟に謝る。
そしたら何故か、ビックリした顔をされた。
その表情に、あたしの方もビックリした。
『あの、何か…?』
火を止めながら、訊いてみた。
「何故謝るのだ?柚子は悪くないだろう。」
『え、あ…ボーッとしてましたし……』
「人間ならば考え事で体が動かなくなる時もあるぞ。」
了平さんの自然な言葉に、あたしは思わずポカンとした。
だって、絶対3代恐怖の人とか姑の獄寺さんとかだったら文句言うに決まってる。
「何やってんだ」って怒るに決まってるのに……
「柚子に怪我が無ければそれでいい、俺はそう思ったのだ。」
『了平さん……』
「きっと他の奴だって同じハズだ。」
『他のって?』
まさかツナさん達のことを言ってるんじゃ…
あ、でも、了平さんと同じ“爽やか属性”の山本さんなら…!
「沢田は特に心配するだろうな、柚子が火傷など負えば。」
『えぇっ!?』
あり得ないですよ了平さん。
あのツナさんが、けなさないで心配するワケないじゃないですか。
あたしの心の中での反論は聞こえてないようで、(良かった…)
了平さんは続ける。
「男なら、大事な者は自分の身に変えてでも守るものだ。沢田は今までそれを体現してきている。」
『(そうなんだ…)』
やっぱりツナさん、昔から変わってないんだな……優しいトコ。
「何してんだ?おめーら。」
「おお!」
『あ、おはようございますリボーンさん!』
「ちゃおっス柚子、了平。」
リボーンさんはエスプレッソを飲みに来たそうだ。
「なんだ、こぼしたのか。」
『すみません、うっかり火を止めるの忘れてて…』
「しょーがねー奴だな、火傷してねーか?」
『えっ?』
あれ、空耳…?
リボーンさんが、心配してくれた…?
「空耳じゃねーぞ。随分と失礼だな。」
『す、すみませんっ…!!』
銃を出すリボーンさんに慌てて頭を下げる。
「…朝食まだか?腹減ったぞ。」
『あっ、もう出来ました!スープも…ちょっと量が減っちゃっただけですし…』
「なら、俺は広間で待ってるぞ。」
『はいっ。』
リボーンさんが去った後、トーストとスープ、ハムエッグを用意し始める。
了平さんは、スポーツドリンクのペットボトルを片付けながら言った。
「心配していただろう?」
『あ…はい……意外でした…』
「俺達は、柚子を大切に思っているのだ。沢田を筆頭にな。」
『……どうしてですか?あたしが、家政婦やってるからですか?』
「それは言えん。」
恐る恐る聞いたあたしに、了平さんは真剣な眼差しを向けた。
声色も、それよりもずっと威厳を増して。
あたしが固まってしまったのは言うまでもない。
爽やかで真っ直ぐな了平さんなら、そのまま教えてくれるかも…
そんな期待を抱いてたのかもしれない。
『そう、ですか…』
「すまんな柚子…だがコレは、他人が話して良い事ではない……そんな気がするのだ…。」
『了平さん…』
全員分の朝食をよそり終わった。
配膳台に乗せて、カラカラ運ぶ。
隣を歩く了平さんは、心底申し訳なさそうな顔をしていた。
『大丈夫ですよ、了平さんは悪くないですから。』
「しかし……何年経っても秘密というのはむず痒いものだな。」
『そう思って下さるだけで、嬉しいです。』
平気で隠し事しちゃう人よりは、と付け足せば、了平さんも苦笑した。
にしても、こんな正直な人にこんな表情をさせるなんて……
どんな秘密なんだろう…
いつになったらあたしは、教えてもらえるのかな…?
ツナさんは、どうやって話してくれるのかな…?
「柚子、心配するな。柚子に全てが伝えられるその日まで、俺達は極限にお前を守り続けるぞ!」
『え!?』
ま…守る!?
『そんな…まるで悪漢に襲われるみたいな言い方……』
「今までもあったそうではないか、誘拐などが。」
『あー……えぇ、まぁ…でもあんまり怖くありませんでしたよ?』
思い出したままにそう言うと、了平さんは少し目を見開いた。
え、何かあたし、変なこと言ったかな…?
「そうか!柚子は極限に強い女だな!!」
『そうですか?了平さんにそう言ってもらえると嬉しいです♪』
へへっと笑ったあたしの頭を、了平さんはわしゃわしゃっと撫でた。
「だが世の中、そんな弱い輩ばかりとは限らない。故に俺達がお前を守るのだ。」
『はぁ…』
「大事な者を守る、これこそが漢の浪漫だ!!!」
あ、熱い…!!
その闘志に圧倒されつつ、広間のドアを開ける。
「やっと来たか。」
「よっ!柚子!先輩も!」
「ふぁ~あ…」
「10代目のから配れよ。」
「おはようございます、僕の柚子♪」
「骸、柚子は俺の。」
こうして見ると、何とも強力なメンツに囲まれてると思う。
だけど、一緒にいて楽しいし、本質は良い人たちばかり。
『おはようございます!皆さん♪』
朝食を並べて、揃って食べ始める。
「あ、柚子、俺今日午後まで授業だけどさ、」
『はい、聞いてます。』
「会いたくなったら呼んでいいからな。」
『よっ…呼びませんよ!寂しくもないですし!』
「狡いですよ綱吉っ!柚子、何かありましたら僕を呼んで下さいね。飛んで向かいますから。」
『呼びません!何も起こりませんから!』
骸さんに反論してから、ふと気がつく。
あれ?もしかして…
ツナさんが言った“会いたくなったら”って、
“何かあったら”とイコール関係だったりするの…?
---「大事な者を守る、これこそが漢の浪漫だ!!!」
あんな事を教えられた直後だから、妙に意識しちゃう。
そんな自分の思考回路が嫌で、ふるふるっと頭を振った。
「ん?何してんだ?柚子。」
『いえ!何でもないです!』
「バカになったんじゃないの。」
『違いますーっ!』
「おや、膨れた顔も可愛いですね♪」
「ホントだ、こっち向けよ柚子。」
『ふぎゃっ…///』
ツナさんが急に顎を引くもんだから、縮まった距離に赤くなってしまった。
そしたら直後、勝ち誇ったような顔をされた。
『(絶対確信犯だ…!!)』
ロマンチスト
彼が語った浪漫とは、空想よりも信念に似た思いだった
continue...