🎼本編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
こんにちは!柚子です。
突然ですが、今日は7号館から少し離れた球場に来ております。
何故かというと…
「柚子、来たよ。」
『あっ!山本さんっ!!』
山本さんが所属する野球部の試合の応援に来ているんです!!
『ぶっ飛ばせーっ、やーまもとっ!』
「かっ飛ばせですよ、柚子。」
『えっ?あたし、そう言いませんでした?』
ちなみに、ツナさんとリボーンさん、それに獄寺さんと骸さんが一緒に来てます。
雲雀さんはこんなトコに来たら大変ですし…
了平さんは客席でボクシング勧誘をし始めるんだとか。
カキーンッ…
『わぁっ…!』
「行ったな、ホームランだ。」
「けっ、相変わらずだぜ。」
あたし達がいるサイトじゃなかったけど、山本さんの打った球は大きな弧を描いた。
その軌道があまりにも綺麗で、思わず感嘆の声。
獄寺さんは何故かつまんなそうにしてるけど。
「さすが山本、相変わらず凄いよ。」
『ずっと名バッターだったんですか?』
「うん、中学の時から“山本がいれば百人力”って言われてたから。」
『そうなんですかぁ!』
いいなぁ…
中学の時の山本さんって、どんな感じだったんだろ?
山本さんだけじゃなくて、他の方の中学時代も知りたいな…。
きっと、今とあんまり変わんないんだろうな…
「そんな事ねーぞ。」
『へ?』
リボーンさんがナチュラルに心を読んで、そう言った。
「山本はまんまだが、ツナは全く違ったからな。」
『ツナさんが…ですか?』
「言うなよリボーン、あれは軽く黒歴史。」
ツナさんが少しだけムッとして、あたしはますます気になった。
『今と全然違うって…横暴ボスじゃなかったんですか!?』
「そう言えば、そうでしたね……弱く小さい存在だった。」
信じられない。
え、普通に恐怖政治するクラス委員だと思ってた…。
「逆だぞ。ダメツナだったんだ。」
『ダメ、ツナ?』
「言うなっつってんだろ。」
「大丈夫っスよ10代目!10代目は昔から素晴らしいお人でした!!」
どうやら、獄寺さんは昔からこんな感じだったみたい。
だけどリボーンさんと骸さんは、首を振る。
「本当に不思議ですよ、二重人格としか言いようがありませんね。」
『二重人格…?』
「ツナはな、勉強も運動も出来ないダメツナだったんだ。」
『えぇっ!?』
「リボーンも骸も……そんな話しに来たんじゃないだろ、試合見に来たんだろ。」
話を逸らそうとするツナさん。
けどリボーンさんは続ける。
「だがツナにはボンゴレの血があった。だからボスになったんだぞ。」
『え、それで、こーなっちゃったんですか!!?何処がどうねじ曲がったんですか!?』
「柚子、喧嘩売ってる?それとも給料下げられたいワケ?」
『ごごごごめんなさいいいっ!!!』
ツナさんの真っ黒な笑顔にビビりつつ、リボーンさんの話の続きを待つ。
「演技だったらしーぞ、そのダメっぷりがな。」
『えっ、演技ですか!?何でまたそんな…』
恐る恐るツナさんの方を見る。
もう話題逸らしは諦めたみたいで、溜め息をついてからこう言った。
「面倒だったんだよ、全部。成績良くてもスポーツ出来ても、褒められると同時に妬まれるだろ。」
「確かに、そうですね…」
『でも、だからってわざとダメにならなくても…』
ツナさんはきっと、普通にしてれば普通にこなせそうなのに。
「まぁいいじゃんか、どうせだから暇つぶし。俺がビリでいれば、他がビリにならないから。」
「10代目…!!」
「それは初耳ですね。」
「うるさい、改めて言うような事じゃないだろ。だからもうこの話は終わり………柚子?」
ボーッとしてたあたしに、ツナさんは首をかしげる。
『あ、何でもないですっ!』
「嘘見え見え、正直に言わないと…」
『ツナさんも、変わってないんだなぁって思っただけです。』
「………は?」
それ以上は、あたしの中で内緒にしておこうと思った。
だってツナさんは、すぐ黒笑モードに戻っちゃうから。
『山本さーん!頑張って下さーいっ!!』
「おい柚子、話逸らすな…」
『だって、ツナさんが言ったんじゃないですか。この話終わりって。』
口を尖らせてそう言ったら、「後で問いただしてやるからな」と囁かれた。
それからの試合展開は凄かった。
4番バッターの山本さんは、どんなボールでもポーンと観客席に運ぶ。
おかげでチームは10点リードで8回コールド勝ちしてしまった。
『勝ちましたねっ!本当に凄いです…!!』
「では今夜は御馳走ですね。」
『はい、頑張って作ります!』
どうやら骸さんは、また一緒に買い出しに行ってくれるらしい。
こういう時は優しいなと思う。
「んじゃ、帰るか。」
「はい!」
「そーだな。」
『あ、あの…その前に、トイレ寄っていいですか??』
そろりと申請するあたしに、突き刺さる4つの視線。
『ごめんなさい、空気読めなくて……なるべく早く戻りますから…』
「いいけど…混んでるかと思ってさ。」
「俺も同感っス。」
「別の場所で行った方がいいのでは?」
「いーじゃねーか、行きたいなら行って来い。」
『あ、ありがとうございます!』
人ごみを縫うように歩いて、あたしはトイレへ向かった。
退場ラッシュに流されないように、足に少しだけ力を入れて。
---
-------
-------------
うん、どうしよう。
『(ま…迷った!!)』
トイレに着いて、ちゃんと済ませたトコまでは良かったのに…
出たと同時に色んな人ごみに流されて、全く見覚えのない通路に来てしまった。
『案内板とか、無いかなぁ…?』
キョロキョロしてみるものの、見当たらない。
あーん!ツナさーん!!
獄寺さーん!リボーンさーん!骸さーん!
---「バカ柚子。」
あぁ聞こえる…ツナさんがあたしを罵倒する声が。
うぅっ…泣きたい……。
「君、どーしたの?」
『へ…?』
声を掛けられて振り向いた瞬間、あたしは3人の男の人に囲まれていた。
見た感じ、あたしと同い年くらい。
この人たちも大学生、なのかな?
『あ、あの…迷っちゃったんですけど……出口ってどっちですか?』
「そーなんだ、じゃあ俺らが案内してあげるよ。」
『あ、いえ!そんなご迷惑は掛けられませんから…方向だけ教えて頂ければ…』
「いーからいーから。」
『あっ…』
一人に、手首を掴まれた。
何でか知らないけど、体の中に悪寒が走る。
『あの、ホントに大丈夫ですから…』
「遠慮すんなって、なぁ?」
「そーそー。にしても君、可愛いねー。」
怖い……
この人たちの笑顔、何だか怖い……
『えっと、とりあえず放してもらえませんか?』
「ダメだよ、そしたら逃げられるだろ?」
前と、後ろと、横に一人ずつ。
付いて行っちゃ、ダメなのかも知れない。
そう思って、足を止めた。
『放して下さいっ…!やっぱり自分で探しますから…!!』
「いーから来いよ!」
『嫌っ…』
「何してんだ?お前ら。」
突然聞きなれた声がして、あたしはバッと顔を向けた。
そこには…
『や、山本さんっ…!』
「あれ、柚子じゃねーか!そいつらは友達……じゃ、なさそーだな…」
ビックリした。
山本さんの大らかな空気が、一瞬で変わった…。
「放してやれよ。」
「何だおめー…」
「聞こえなかったか…?」
おかしい。
あたしの知ってる山本さんじゃないみたい…
「そのコに傷一つでもつけてみろ、一般人だろーと容赦はしねーぜ。」
「くっ…」
その尋常じゃない雰囲気を感じ取ったのか、3人の男の人は逃げるように走り去った。
それでもあたしは、色んなショックでまだ震えてて。
「悪ぃ、大丈夫か?柚子…」
『山本さ……』
次の瞬間、2本の腕に包まれる。
伝わる優しい感触に、ようやく緊張がほぐれ始めて。
『良かった……山本さん…戻った……』
「柚子…」
あたしの知ってる山本さんだ。
あったかくて優しくて爽やかで非横暴の、山本さんだ。
いつもみたいに頭を撫でられて、心の底から安心した。
と、そこに。
「柚子…!お前こんなトコで……山本?」
「おっ、ツナ!」
『ツナさんっ…!!』
パッと解放され、あたしはツナさんに駆け寄る。
『あの、えと……ごめんなさい!迷いました!!』
「……そんな事だろーと思った。」
「俺が見つけた時、変な奴らに絡まれててさ。」
『道を聞こうと思ったんですけど…』
「バカ柚子。」
あぁ、やっぱり言われた。
「それで、さ……追い払う時に…」
「………あぁ、分かったよ。ありがとう山本。」
あたしを挟んで交わされる、よく分からない会話。
ツナさんは山本さんの言いたい事を読心術で察したらしい。
「行くよ、柚子。山本は部員の祝勝会があるんだろ?」
「あぁ、でも柚子の御馳走は食うぜ!」
『あ、はいっ!腕によりをかけます!!』
笑顔でそう言ったら、山本さんも笑顔で手を振ってくれた。
---
-------
駐車場では、既に皆さんが待機していた。
頭を下げて謝ると、ツナさんが「先に乗れ」と促す。
レディーファースト精神かな、と思った。
「さすが10代目!10分で見つけるなんて素晴らしいっス!」
「超直感だな、変なトコで使いやがって。」
「俺の柚子が迷子になるからいけないんだよ。」
『うぅ…すみません……』
でも“俺の”って言うのはホントにやめて欲しいです。
所有物じゃないですもん、あたし。
「で、何とも無かったのかよ。」
『はい、大丈夫です。』
「……殺気にもあてられなかった?」
『殺気…?』
首を傾げると、ツナさんは驚いたように少しだけ目を丸くした。
「まさか、分かんなかった?山本が…」
『あ、アレは殺気のせいだったんですね!なーんだ……良かったぁ…』
「“アレ”…?」
『山本さんが、一瞬だけ怖く見えまして……でもすぐ元に戻って…安心したんです。』
ツナさんの丸くなった目が、今度は細められていく。
まるで、何かを懐かしむような……
『ツナ、さん…?』
「着いたぞ、降りろ。」
「柚子、どうぞ。」
『あ、ありがとうございますっ。』
助手席に乗っていた骸さんが、後部座席のドアを開けて手を差し伸べる。
車を降りて、もう一度ツナさんの表情を確認したけど、
「ん?何?」
『あ、いえ…』
普通の黒笑顔だった。
「さぁ柚子、買い物行きましょう。」
『あ、はい!エコバック取ってきます!』
「玄関で待ってます。」
『了解ですっ!』
エコバックを持ち、あたしは骸さんとスーパーに行った。
今日は豚肉が安い日だったと思う。
よし、豚しゃぶでも作ろうっと♪
「ところで柚子、」
『何ですか?』
歩いている途中で、骸さんに話しかけられる。
「試合の時、綱吉が昔と変わってない…そう言ってましたが、何故です?」
『え、それは…あたしの中だけで内緒にしとこうと思ったんですけど…』
「以前、会った事があるんですか?」
『まさか!会ってたら覚えてますって、あんな横暴ボス。』
「……そう、ですか…」
あの時、ツナさんの話を聞いて芽生えたのは、ぼんやりとした確信。
『だってツナさん、今も昔もさりげなく優しいじゃないですか♪その辺、変わってないんだなぁって思って。』
「おや、いつも柚子は“横暴腹黒ボス”とか呼んでるというのに……面白いですね。」
『あ、あれは……ツナさんのせいです!』
クラスでビリになり続けてたのも、
さっきみたいに心配してくれるのも、
ツナさんの中で変わらず存在してる、優しさ。
だけど普段は、それを隠してしまってるから。
だからあたしは、横暴さと優しさに振り回されてしまう。
『あ!今の話、内緒ですからね!』
「クフフ♪」
『骸さんっ!!』
「クフフーっ♪」
変な歌を歌いながら逃げる骸さんを、あたしは慌てて追いかけた。
『チョコレートいっぱい買ってあげますからーっ!』
「おや、ではそれで手をうちましょう。」
『(通じた…!)』
とりあえず、骸さんの口封じの為に10袋の一口チョコを買ってツナさんに怒られるのは、
それから30分後のこと。
レクリエーション
昔話も試合観戦も、主が家政婦に贈った気晴らし
continue...
突然ですが、今日は7号館から少し離れた球場に来ております。
何故かというと…
「柚子、来たよ。」
『あっ!山本さんっ!!』
山本さんが所属する野球部の試合の応援に来ているんです!!
『ぶっ飛ばせーっ、やーまもとっ!』
「かっ飛ばせですよ、柚子。」
『えっ?あたし、そう言いませんでした?』
ちなみに、ツナさんとリボーンさん、それに獄寺さんと骸さんが一緒に来てます。
雲雀さんはこんなトコに来たら大変ですし…
了平さんは客席でボクシング勧誘をし始めるんだとか。
カキーンッ…
『わぁっ…!』
「行ったな、ホームランだ。」
「けっ、相変わらずだぜ。」
あたし達がいるサイトじゃなかったけど、山本さんの打った球は大きな弧を描いた。
その軌道があまりにも綺麗で、思わず感嘆の声。
獄寺さんは何故かつまんなそうにしてるけど。
「さすが山本、相変わらず凄いよ。」
『ずっと名バッターだったんですか?』
「うん、中学の時から“山本がいれば百人力”って言われてたから。」
『そうなんですかぁ!』
いいなぁ…
中学の時の山本さんって、どんな感じだったんだろ?
山本さんだけじゃなくて、他の方の中学時代も知りたいな…。
きっと、今とあんまり変わんないんだろうな…
「そんな事ねーぞ。」
『へ?』
リボーンさんがナチュラルに心を読んで、そう言った。
「山本はまんまだが、ツナは全く違ったからな。」
『ツナさんが…ですか?』
「言うなよリボーン、あれは軽く黒歴史。」
ツナさんが少しだけムッとして、あたしはますます気になった。
『今と全然違うって…横暴ボスじゃなかったんですか!?』
「そう言えば、そうでしたね……弱く小さい存在だった。」
信じられない。
え、普通に恐怖政治するクラス委員だと思ってた…。
「逆だぞ。ダメツナだったんだ。」
『ダメ、ツナ?』
「言うなっつってんだろ。」
「大丈夫っスよ10代目!10代目は昔から素晴らしいお人でした!!」
どうやら、獄寺さんは昔からこんな感じだったみたい。
だけどリボーンさんと骸さんは、首を振る。
「本当に不思議ですよ、二重人格としか言いようがありませんね。」
『二重人格…?』
「ツナはな、勉強も運動も出来ないダメツナだったんだ。」
『えぇっ!?』
「リボーンも骸も……そんな話しに来たんじゃないだろ、試合見に来たんだろ。」
話を逸らそうとするツナさん。
けどリボーンさんは続ける。
「だがツナにはボンゴレの血があった。だからボスになったんだぞ。」
『え、それで、こーなっちゃったんですか!!?何処がどうねじ曲がったんですか!?』
「柚子、喧嘩売ってる?それとも給料下げられたいワケ?」
『ごごごごめんなさいいいっ!!!』
ツナさんの真っ黒な笑顔にビビりつつ、リボーンさんの話の続きを待つ。
「演技だったらしーぞ、そのダメっぷりがな。」
『えっ、演技ですか!?何でまたそんな…』
恐る恐るツナさんの方を見る。
もう話題逸らしは諦めたみたいで、溜め息をついてからこう言った。
「面倒だったんだよ、全部。成績良くてもスポーツ出来ても、褒められると同時に妬まれるだろ。」
「確かに、そうですね…」
『でも、だからってわざとダメにならなくても…』
ツナさんはきっと、普通にしてれば普通にこなせそうなのに。
「まぁいいじゃんか、どうせだから暇つぶし。俺がビリでいれば、他がビリにならないから。」
「10代目…!!」
「それは初耳ですね。」
「うるさい、改めて言うような事じゃないだろ。だからもうこの話は終わり………柚子?」
ボーッとしてたあたしに、ツナさんは首をかしげる。
『あ、何でもないですっ!』
「嘘見え見え、正直に言わないと…」
『ツナさんも、変わってないんだなぁって思っただけです。』
「………は?」
それ以上は、あたしの中で内緒にしておこうと思った。
だってツナさんは、すぐ黒笑モードに戻っちゃうから。
『山本さーん!頑張って下さーいっ!!』
「おい柚子、話逸らすな…」
『だって、ツナさんが言ったんじゃないですか。この話終わりって。』
口を尖らせてそう言ったら、「後で問いただしてやるからな」と囁かれた。
それからの試合展開は凄かった。
4番バッターの山本さんは、どんなボールでもポーンと観客席に運ぶ。
おかげでチームは10点リードで8回コールド勝ちしてしまった。
『勝ちましたねっ!本当に凄いです…!!』
「では今夜は御馳走ですね。」
『はい、頑張って作ります!』
どうやら骸さんは、また一緒に買い出しに行ってくれるらしい。
こういう時は優しいなと思う。
「んじゃ、帰るか。」
「はい!」
「そーだな。」
『あ、あの…その前に、トイレ寄っていいですか??』
そろりと申請するあたしに、突き刺さる4つの視線。
『ごめんなさい、空気読めなくて……なるべく早く戻りますから…』
「いいけど…混んでるかと思ってさ。」
「俺も同感っス。」
「別の場所で行った方がいいのでは?」
「いーじゃねーか、行きたいなら行って来い。」
『あ、ありがとうございます!』
人ごみを縫うように歩いて、あたしはトイレへ向かった。
退場ラッシュに流されないように、足に少しだけ力を入れて。
---
-------
-------------
うん、どうしよう。
『(ま…迷った!!)』
トイレに着いて、ちゃんと済ませたトコまでは良かったのに…
出たと同時に色んな人ごみに流されて、全く見覚えのない通路に来てしまった。
『案内板とか、無いかなぁ…?』
キョロキョロしてみるものの、見当たらない。
あーん!ツナさーん!!
獄寺さーん!リボーンさーん!骸さーん!
---「バカ柚子。」
あぁ聞こえる…ツナさんがあたしを罵倒する声が。
うぅっ…泣きたい……。
「君、どーしたの?」
『へ…?』
声を掛けられて振り向いた瞬間、あたしは3人の男の人に囲まれていた。
見た感じ、あたしと同い年くらい。
この人たちも大学生、なのかな?
『あ、あの…迷っちゃったんですけど……出口ってどっちですか?』
「そーなんだ、じゃあ俺らが案内してあげるよ。」
『あ、いえ!そんなご迷惑は掛けられませんから…方向だけ教えて頂ければ…』
「いーからいーから。」
『あっ…』
一人に、手首を掴まれた。
何でか知らないけど、体の中に悪寒が走る。
『あの、ホントに大丈夫ですから…』
「遠慮すんなって、なぁ?」
「そーそー。にしても君、可愛いねー。」
怖い……
この人たちの笑顔、何だか怖い……
『えっと、とりあえず放してもらえませんか?』
「ダメだよ、そしたら逃げられるだろ?」
前と、後ろと、横に一人ずつ。
付いて行っちゃ、ダメなのかも知れない。
そう思って、足を止めた。
『放して下さいっ…!やっぱり自分で探しますから…!!』
「いーから来いよ!」
『嫌っ…』
「何してんだ?お前ら。」
突然聞きなれた声がして、あたしはバッと顔を向けた。
そこには…
『や、山本さんっ…!』
「あれ、柚子じゃねーか!そいつらは友達……じゃ、なさそーだな…」
ビックリした。
山本さんの大らかな空気が、一瞬で変わった…。
「放してやれよ。」
「何だおめー…」
「聞こえなかったか…?」
おかしい。
あたしの知ってる山本さんじゃないみたい…
「そのコに傷一つでもつけてみろ、一般人だろーと容赦はしねーぜ。」
「くっ…」
その尋常じゃない雰囲気を感じ取ったのか、3人の男の人は逃げるように走り去った。
それでもあたしは、色んなショックでまだ震えてて。
「悪ぃ、大丈夫か?柚子…」
『山本さ……』
次の瞬間、2本の腕に包まれる。
伝わる優しい感触に、ようやく緊張がほぐれ始めて。
『良かった……山本さん…戻った……』
「柚子…」
あたしの知ってる山本さんだ。
あったかくて優しくて爽やかで非横暴の、山本さんだ。
いつもみたいに頭を撫でられて、心の底から安心した。
と、そこに。
「柚子…!お前こんなトコで……山本?」
「おっ、ツナ!」
『ツナさんっ…!!』
パッと解放され、あたしはツナさんに駆け寄る。
『あの、えと……ごめんなさい!迷いました!!』
「……そんな事だろーと思った。」
「俺が見つけた時、変な奴らに絡まれててさ。」
『道を聞こうと思ったんですけど…』
「バカ柚子。」
あぁ、やっぱり言われた。
「それで、さ……追い払う時に…」
「………あぁ、分かったよ。ありがとう山本。」
あたしを挟んで交わされる、よく分からない会話。
ツナさんは山本さんの言いたい事を読心術で察したらしい。
「行くよ、柚子。山本は部員の祝勝会があるんだろ?」
「あぁ、でも柚子の御馳走は食うぜ!」
『あ、はいっ!腕によりをかけます!!』
笑顔でそう言ったら、山本さんも笑顔で手を振ってくれた。
---
-------
駐車場では、既に皆さんが待機していた。
頭を下げて謝ると、ツナさんが「先に乗れ」と促す。
レディーファースト精神かな、と思った。
「さすが10代目!10分で見つけるなんて素晴らしいっス!」
「超直感だな、変なトコで使いやがって。」
「俺の柚子が迷子になるからいけないんだよ。」
『うぅ…すみません……』
でも“俺の”って言うのはホントにやめて欲しいです。
所有物じゃないですもん、あたし。
「で、何とも無かったのかよ。」
『はい、大丈夫です。』
「……殺気にもあてられなかった?」
『殺気…?』
首を傾げると、ツナさんは驚いたように少しだけ目を丸くした。
「まさか、分かんなかった?山本が…」
『あ、アレは殺気のせいだったんですね!なーんだ……良かったぁ…』
「“アレ”…?」
『山本さんが、一瞬だけ怖く見えまして……でもすぐ元に戻って…安心したんです。』
ツナさんの丸くなった目が、今度は細められていく。
まるで、何かを懐かしむような……
『ツナ、さん…?』
「着いたぞ、降りろ。」
「柚子、どうぞ。」
『あ、ありがとうございますっ。』
助手席に乗っていた骸さんが、後部座席のドアを開けて手を差し伸べる。
車を降りて、もう一度ツナさんの表情を確認したけど、
「ん?何?」
『あ、いえ…』
普通の黒笑顔だった。
「さぁ柚子、買い物行きましょう。」
『あ、はい!エコバック取ってきます!』
「玄関で待ってます。」
『了解ですっ!』
エコバックを持ち、あたしは骸さんとスーパーに行った。
今日は豚肉が安い日だったと思う。
よし、豚しゃぶでも作ろうっと♪
「ところで柚子、」
『何ですか?』
歩いている途中で、骸さんに話しかけられる。
「試合の時、綱吉が昔と変わってない…そう言ってましたが、何故です?」
『え、それは…あたしの中だけで内緒にしとこうと思ったんですけど…』
「以前、会った事があるんですか?」
『まさか!会ってたら覚えてますって、あんな横暴ボス。』
「……そう、ですか…」
あの時、ツナさんの話を聞いて芽生えたのは、ぼんやりとした確信。
『だってツナさん、今も昔もさりげなく優しいじゃないですか♪その辺、変わってないんだなぁって思って。』
「おや、いつも柚子は“横暴腹黒ボス”とか呼んでるというのに……面白いですね。」
『あ、あれは……ツナさんのせいです!』
クラスでビリになり続けてたのも、
さっきみたいに心配してくれるのも、
ツナさんの中で変わらず存在してる、優しさ。
だけど普段は、それを隠してしまってるから。
だからあたしは、横暴さと優しさに振り回されてしまう。
『あ!今の話、内緒ですからね!』
「クフフ♪」
『骸さんっ!!』
「クフフーっ♪」
変な歌を歌いながら逃げる骸さんを、あたしは慌てて追いかけた。
『チョコレートいっぱい買ってあげますからーっ!』
「おや、ではそれで手をうちましょう。」
『(通じた…!)』
とりあえず、骸さんの口封じの為に10袋の一口チョコを買ってツナさんに怒られるのは、
それから30分後のこと。
レクリエーション
昔話も試合観戦も、主が家政婦に贈った気晴らし
continue...