🎼本編
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「つーワケで、俺としては非常に不本意なんだけどさ……」
『はぁ…』
「ツナさん!ハルがしっかり柚子ちゃんをお守りします!ご心配なく!!」
『は、ハルさんっ…!』
おはようございます、柚子です。
本日はフルートコンクール二次予選です。
どうやらツナさんは急用が入ったとかで、見に来れなくなったそうです。
あたし的には別にどっちでも構わないんですが…
というか、どちらかと言えば見られたくなかったんで安心したというか…
「何か余計な事言った?」
『言ってません!!』
数秒間あたしをジッと見たツナさんは、勝ち誇ったように笑った。
「まぁ、いいよ。獄寺君と山本がDVDに収めるから。」
『えぇっ!?』
「それに、雲雀さんがいるしね。」
何ですと!!?
愕然とするあたしを、ハルさんが揺する。
「柚子ちゃん?柚子ちゃーん?」
「ハル、メイク頼むよ。」
「はいっ!了解です♪」
し、信じられない……
“ツナさんが来ないじゃんラッキー”とか思ってたのに…
ビデオ2台と恐怖1人…!!
「じゃ、行ってくるよ。」
「いってらっしゃいませ!」
『ませ………』
ドアが閉まる直前まで、輝くばかりの腹黒スマイルが見えた。
---
-----
------------
「柚子!アホ女!もたついてんじゃねぇ!!」
「アホって何ですか!!」
「そのまんまじゃねーか!!」
「まーまー、とにかく早く乗ろうぜ、なっ?」
獄寺さんとハルさんが喧嘩する。
それを宥めながら、山本さんが後部座席のドアを開けた。
今日は(比較的)普通の車で会場に行くらしい。
『ありがとうございます、山本さん。』
「いーって!」
あぁ、今日も頑張れる気がする…!
山本さんの笑顔は百人力だものっ!!
「ねぇ、早く出してよ。」
『ぎょわっ…!』
あたしが乗ったその奥に、既に雲雀さんが待機していらっしゃった。
あ…ああああ…
あたしが雲雀さんの隣!!?
「何か不満でも?」
『無いですごめんなさいっ!!』
「早くしなよ、遅れるよ。」
『は、はいっ!!』
うん、怖いってのも半分あるけどさ……
「柚子、」
『あ、はい!』
「シートベルト、しないと咬み殺すから。」
『はいいいっ!!』
さりげに優しくて美人さんだから、緊張しちゃうんだよね…///
こんな精神状態で大丈夫なのかなぁ、あたし……
「練習、したんでしょ。」
『へ…?』
ま、まさか今の読まれてた…??
美人さんとか言ったの、聞こえてたんですか!!?
「柚子は出来るよ。」
『雲雀さん…///』
そんなスマイルで、そんな風に言わないで下さいってば!
お世辞でもドキッとしちゃうんですからっ…
「赤ん坊と六道にも習ったんでしょ。」
『はいっ!お二人とも、とっても教え方が上手くて吃驚しました!あ、でもリボーンさんはスパルタで……』
「彼らしいね。」
何だか、今日の雲雀さんは穏やかだ。
時々窓の外を見てるのは、空が好きだからだろうか。
『あの、ありがとうございます。』
「何、急に。」
『あ、えと…雲雀さんが励ましてくれたので、お礼言わなきゃって思って、ですね…』
恥ずかしくて俯いたあたしの頭を、雲雀さんは撫でてくれた。
もっと恥ずかしくなって、キュッと目をつぶった。
「柚子、着いたぜっ!」
『ありがとうございます、山本さん!獄寺さんも!』
「早くいけっての。」
「獄寺は車庫入れの後に合流すっからさ。」
山本さんの言葉にコクンと頷き、あたしは車の外に出る。
ココに来るのは、2回目だ。
「柚子ちゃん、頑張って下さいね!」
『はいっ、精一杯やりますっ!コレも持ってますし♪』
「はひ?」
一次予選の日にハルさんがくれたブレスレット。
今日も通りますように、とお守り代わりに付けてきた。
「柚子ちゃん……ありがとうございますっ!ハルはっ…ハルは感動で泣きそうです…!!」
「おいおい、まだ始まってないぜ?」
「そ、そうですよねっ!こらえますっ!」
必死に上を向くハルさんを見てると、雲雀さんがあたしの服を引っ張った。
『ほへっ?』
「受付こっち。」
『あ、すみませんっ、ありがとうございます!!』
「それと、僕が控室まで付いて行くから。」
『えぇっ!!?』
「何か不満でも?」
ひいっ!
雲雀さん目力半端ない…!
『ふ、不満じゃなくてっ…どーしてかなーって……』
「危なっかしいからって、沢田が。」
『えっ…』
ツナさんが…?
あ、そっか。
一次予選の時、あたしが一人でふらふらしてたから捕まったんだよね…。
「ほら柚子、手。」
『え、あ、はいっ!』
あれ…??
何か急かされたから咄嗟に握っちゃったけど……
どーして手ぇ繋いでるの??
試しに放してみようとするものの、
意外としっかり繋がれている。
雲雀さんの手って、指が細くて綺麗だなぁ…
チェロ弾いてるけど、フルートも上手く弾けそうな感じする。
「……なに。」
『な、何でもないです!』
「ちゃんと前見て歩いてよ。」
『はいっ!』
美人さんなのに、威圧感。
いや、もしかして…
美人さんだから、威圧感!?
「着いた。」
『あ、どうも…』
「20分後に、ピアノ奏者との音合わせがあるから。また迎えに来るよ。」
『すみません、わざわざ…』
「じゃあね。」
雲雀さんは静かに戸を閉めて行ってしまった。
てゆーか、ちゃんと獄寺さん達と合流するのかな…?
群れたくないとか言って、別のトコ行きそう。
『(うーん…暇だなぁ…)』
少しの時間も大事!
あたしは最終確認をする事にした。
---
-----
---------------
コンコン、
「柚子、入るよ。」
『えっ、あ…雲雀さん!もう20分経ったんですか!?』
「あと4分。言ったでしょ、迎えに来るって。」
『は、はい……』
今のセリフ…ちょっと吃驚した。
ともあれ、雲雀さんが一緒に来てくれたおかげで、あたしは会場で迷子にならずに済んだ。
迷子になったら絶対ツナさんにバカにされちゃうもんね、気をつけなきゃ。
ピアノ奏者との音合わせも終え、今度は本番待ち。
控室で、雲雀さんと二人ぼっち。
『あ、あの…』
「何?」
『山本さんと獄寺さんとハルさんは…』
「全員客席。」
『そうですか…』
どうしよ…
気まずっ!!
かつてない程の気まずさだよコレ!!
あたしちょっと息が詰まりそうですっ…!
「ねぇ柚子、」
『はい、何でしょう?』
「柚子はどうして…7号館に来たの。」
『えっ…?』
今更…じゃないですか??
という言葉は、ぐっと飲み込んだ。
『公認の器楽サークルに入りたくて…その方が気持ち的にコンクールに参加しやすいですし…』
「じゃあ、沢田と初めて会ったの、いつ?」
『えっと……あたしが雲雀さんに初めて会った日と同じだと思いますけど…』
何でそんな事聞くんだろ。
ツナさんと初めて会ったのは、紛れもなく大学でツナさんの演奏を聴いた日……のハズ。
『もしかして、道ですれ違ってたりしてたんでしょうか…?』
「さぁね。」
『さぁね、って……』
なーんだ。
雲雀さん、分かってて聞いたんじゃないのか…。
「僕にも、分からないんだ。」
『え?』
気がつけば、雲雀さんはあたしのことをジッと見つめていて。
反射的に、あたしは心臓を跳ねさせてしまって。
でも雲雀さんは、そのまま言葉を続ける。
「沢田が、どうしてあんなにこだわるのか。」
『こだわる…何にですか??』
「君にだよ、柚子。」
『あ、あたしですか!??』
ふと考えたのは、
もしかして、この話はツナさんがあたしに言いそびれてる事と関係があるんじゃないかって事。
だとしたら、あたしはまだ聞くべきじゃないんだって事。
山本さんは知ってるっぽかったけど…
雲雀さんは知らないのかな…?
「知ってるよ。」
『よ、読まないで下さいってば!』
「でも教えてあげない。」
『うぅ…』
意地悪そうに笑う雲雀さんに、あたしは口をつぐんだ。
だって、自分で決めたから。
ツナさんが言ってくれるまで待つって。
「柚子、時間だよ。」
『あ、はいっ!』
今の会話を思い出さないように、頭を振る。
演奏中に余計なこと考えちゃいけないから。
「……ねぇ、ちょっと、」
『へ?』
「正面向いて。」
『はいっ。』
フルートを持って控室を出ようとしたあたしは、雲雀さんの方を真っ直ぐ向いて立つ。
コツコツと歩み寄った雲雀さんは、スッとあたしの前髪に触れて。
「髪止め、曲がってるよ。」
『あ、すみませ…』
「ジッとして。」
まるで、至近距離で見つめられてるみたいでドキドキした。
男の人に、髪止め直されるのって恥ずかしいな……///
「いいよ、行ってきなよ。」
『ありがとうございますっ、雲雀さん!』
「一音でもミスしたら…咬み殺すから。」
『ひょえ!』
何と恐ろしいことをサラッとおっしゃるんだろうか……
けど、
ひっくり返せば“頑張れ”って言われてるんだよ、ね?
『頑張ってきますっ♪』
精一杯の笑顔でビシッと敬礼してから、あたしは部屋を出た。
色んな人に応援してもらったんだもの、ちゃんと結果を出さなくちゃ。
----
-------
「ふぅん…」
控室に残った雲雀は、そのまま椅子に腰かけた。
客席に行かなくても、音は微かに聞こえてくるのだ。
「(あんな話聞いても、何も変わらないと思ったけど……)」
以前にツナから聞いた話を思い出しながら、先ほどの柚子の笑顔を思い浮かべた。
---
------
-------------
『ただいま帰りました~…』
「お帰り、俺の方が早かったな。」
『ツナさん!』
「どうだった?ま、後でDVD見るけどさ。」
『そ、それ言わないで下さいっ!!』
口を尖らせる柚子に、ツナは微笑をこぼす。
そして、不意を突くように引き寄せた。
『きゃっ……つ、ツナさんっ!?』
「今日の夕飯はポークソテーがいい。」
『ちょっ…えっ…えぇ!?豚肉なんて買ってませんよ!』
「俺が今日の会談相手から貰って来たんだよ。」
『あ!そうでしたか!それなら了解しました♪』
腕の中で二コリと笑った柚子を解放し、ツナはふぅと一息。
と、そこに。
「ねぇ沢田、」
「あ、雲雀さん、今日はありがとうございました。」
「別にいいよ、面白かったから。」
ツナには、雲雀の笑みがいつもと違うように思えて。
「何かあったんですか?」
「少しだけ分かったよ、君のこだわりの理由。僕も、強い人間は嫌いじゃない。」
疑問符を浮かべていたツナだが、ピンと閃いたように言う。
「柚子のこと、ですか?アレは俺のですから。」
「知らないよ。」
「雲雀さんにも、譲るつもりはありません。」
「ふぅん…」
黒い笑みを見せるツナに、雲雀は吹雪の笑みを返す。
「それは君の自由でしょ。だから…僕の柚子への行動も、僕の自由だよ。」
それだけ言って、雲雀は自室に戻った。
一人廊下に残され、雲雀の言葉を反芻するツナ。
---「強い人間は嫌いじゃない。」
「強い、か………確かにな…」
そう呟きながら遠い記憶に思いを馳せたツナは、
右手で軽く、拳を作った。
リベラリズム
気に入ったモノは手に入れる、自分本位な自由主義
continue...
『はぁ…』
「ツナさん!ハルがしっかり柚子ちゃんをお守りします!ご心配なく!!」
『は、ハルさんっ…!』
おはようございます、柚子です。
本日はフルートコンクール二次予選です。
どうやらツナさんは急用が入ったとかで、見に来れなくなったそうです。
あたし的には別にどっちでも構わないんですが…
というか、どちらかと言えば見られたくなかったんで安心したというか…
「何か余計な事言った?」
『言ってません!!』
数秒間あたしをジッと見たツナさんは、勝ち誇ったように笑った。
「まぁ、いいよ。獄寺君と山本がDVDに収めるから。」
『えぇっ!?』
「それに、雲雀さんがいるしね。」
何ですと!!?
愕然とするあたしを、ハルさんが揺する。
「柚子ちゃん?柚子ちゃーん?」
「ハル、メイク頼むよ。」
「はいっ!了解です♪」
し、信じられない……
“ツナさんが来ないじゃんラッキー”とか思ってたのに…
ビデオ2台と恐怖1人…!!
「じゃ、行ってくるよ。」
「いってらっしゃいませ!」
『ませ………』
ドアが閉まる直前まで、輝くばかりの腹黒スマイルが見えた。
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「柚子!アホ女!もたついてんじゃねぇ!!」
「アホって何ですか!!」
「そのまんまじゃねーか!!」
「まーまー、とにかく早く乗ろうぜ、なっ?」
獄寺さんとハルさんが喧嘩する。
それを宥めながら、山本さんが後部座席のドアを開けた。
今日は(比較的)普通の車で会場に行くらしい。
『ありがとうございます、山本さん。』
「いーって!」
あぁ、今日も頑張れる気がする…!
山本さんの笑顔は百人力だものっ!!
「ねぇ、早く出してよ。」
『ぎょわっ…!』
あたしが乗ったその奥に、既に雲雀さんが待機していらっしゃった。
あ…ああああ…
あたしが雲雀さんの隣!!?
「何か不満でも?」
『無いですごめんなさいっ!!』
「早くしなよ、遅れるよ。」
『は、はいっ!!』
うん、怖いってのも半分あるけどさ……
「柚子、」
『あ、はい!』
「シートベルト、しないと咬み殺すから。」
『はいいいっ!!』
さりげに優しくて美人さんだから、緊張しちゃうんだよね…///
こんな精神状態で大丈夫なのかなぁ、あたし……
「練習、したんでしょ。」
『へ…?』
ま、まさか今の読まれてた…??
美人さんとか言ったの、聞こえてたんですか!!?
「柚子は出来るよ。」
『雲雀さん…///』
そんなスマイルで、そんな風に言わないで下さいってば!
お世辞でもドキッとしちゃうんですからっ…
「赤ん坊と六道にも習ったんでしょ。」
『はいっ!お二人とも、とっても教え方が上手くて吃驚しました!あ、でもリボーンさんはスパルタで……』
「彼らしいね。」
何だか、今日の雲雀さんは穏やかだ。
時々窓の外を見てるのは、空が好きだからだろうか。
『あの、ありがとうございます。』
「何、急に。」
『あ、えと…雲雀さんが励ましてくれたので、お礼言わなきゃって思って、ですね…』
恥ずかしくて俯いたあたしの頭を、雲雀さんは撫でてくれた。
もっと恥ずかしくなって、キュッと目をつぶった。
「柚子、着いたぜっ!」
『ありがとうございます、山本さん!獄寺さんも!』
「早くいけっての。」
「獄寺は車庫入れの後に合流すっからさ。」
山本さんの言葉にコクンと頷き、あたしは車の外に出る。
ココに来るのは、2回目だ。
「柚子ちゃん、頑張って下さいね!」
『はいっ、精一杯やりますっ!コレも持ってますし♪』
「はひ?」
一次予選の日にハルさんがくれたブレスレット。
今日も通りますように、とお守り代わりに付けてきた。
「柚子ちゃん……ありがとうございますっ!ハルはっ…ハルは感動で泣きそうです…!!」
「おいおい、まだ始まってないぜ?」
「そ、そうですよねっ!こらえますっ!」
必死に上を向くハルさんを見てると、雲雀さんがあたしの服を引っ張った。
『ほへっ?』
「受付こっち。」
『あ、すみませんっ、ありがとうございます!!』
「それと、僕が控室まで付いて行くから。」
『えぇっ!!?』
「何か不満でも?」
ひいっ!
雲雀さん目力半端ない…!
『ふ、不満じゃなくてっ…どーしてかなーって……』
「危なっかしいからって、沢田が。」
『えっ…』
ツナさんが…?
あ、そっか。
一次予選の時、あたしが一人でふらふらしてたから捕まったんだよね…。
「ほら柚子、手。」
『え、あ、はいっ!』
あれ…??
何か急かされたから咄嗟に握っちゃったけど……
どーして手ぇ繋いでるの??
試しに放してみようとするものの、
意外としっかり繋がれている。
雲雀さんの手って、指が細くて綺麗だなぁ…
チェロ弾いてるけど、フルートも上手く弾けそうな感じする。
「……なに。」
『な、何でもないです!』
「ちゃんと前見て歩いてよ。」
『はいっ!』
美人さんなのに、威圧感。
いや、もしかして…
美人さんだから、威圧感!?
「着いた。」
『あ、どうも…』
「20分後に、ピアノ奏者との音合わせがあるから。また迎えに来るよ。」
『すみません、わざわざ…』
「じゃあね。」
雲雀さんは静かに戸を閉めて行ってしまった。
てゆーか、ちゃんと獄寺さん達と合流するのかな…?
群れたくないとか言って、別のトコ行きそう。
『(うーん…暇だなぁ…)』
少しの時間も大事!
あたしは最終確認をする事にした。
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コンコン、
「柚子、入るよ。」
『えっ、あ…雲雀さん!もう20分経ったんですか!?』
「あと4分。言ったでしょ、迎えに来るって。」
『は、はい……』
今のセリフ…ちょっと吃驚した。
ともあれ、雲雀さんが一緒に来てくれたおかげで、あたしは会場で迷子にならずに済んだ。
迷子になったら絶対ツナさんにバカにされちゃうもんね、気をつけなきゃ。
ピアノ奏者との音合わせも終え、今度は本番待ち。
控室で、雲雀さんと二人ぼっち。
『あ、あの…』
「何?」
『山本さんと獄寺さんとハルさんは…』
「全員客席。」
『そうですか…』
どうしよ…
気まずっ!!
かつてない程の気まずさだよコレ!!
あたしちょっと息が詰まりそうですっ…!
「ねぇ柚子、」
『はい、何でしょう?』
「柚子はどうして…7号館に来たの。」
『えっ…?』
今更…じゃないですか??
という言葉は、ぐっと飲み込んだ。
『公認の器楽サークルに入りたくて…その方が気持ち的にコンクールに参加しやすいですし…』
「じゃあ、沢田と初めて会ったの、いつ?」
『えっと……あたしが雲雀さんに初めて会った日と同じだと思いますけど…』
何でそんな事聞くんだろ。
ツナさんと初めて会ったのは、紛れもなく大学でツナさんの演奏を聴いた日……のハズ。
『もしかして、道ですれ違ってたりしてたんでしょうか…?』
「さぁね。」
『さぁね、って……』
なーんだ。
雲雀さん、分かってて聞いたんじゃないのか…。
「僕にも、分からないんだ。」
『え?』
気がつけば、雲雀さんはあたしのことをジッと見つめていて。
反射的に、あたしは心臓を跳ねさせてしまって。
でも雲雀さんは、そのまま言葉を続ける。
「沢田が、どうしてあんなにこだわるのか。」
『こだわる…何にですか??』
「君にだよ、柚子。」
『あ、あたしですか!??』
ふと考えたのは、
もしかして、この話はツナさんがあたしに言いそびれてる事と関係があるんじゃないかって事。
だとしたら、あたしはまだ聞くべきじゃないんだって事。
山本さんは知ってるっぽかったけど…
雲雀さんは知らないのかな…?
「知ってるよ。」
『よ、読まないで下さいってば!』
「でも教えてあげない。」
『うぅ…』
意地悪そうに笑う雲雀さんに、あたしは口をつぐんだ。
だって、自分で決めたから。
ツナさんが言ってくれるまで待つって。
「柚子、時間だよ。」
『あ、はいっ!』
今の会話を思い出さないように、頭を振る。
演奏中に余計なこと考えちゃいけないから。
「……ねぇ、ちょっと、」
『へ?』
「正面向いて。」
『はいっ。』
フルートを持って控室を出ようとしたあたしは、雲雀さんの方を真っ直ぐ向いて立つ。
コツコツと歩み寄った雲雀さんは、スッとあたしの前髪に触れて。
「髪止め、曲がってるよ。」
『あ、すみませ…』
「ジッとして。」
まるで、至近距離で見つめられてるみたいでドキドキした。
男の人に、髪止め直されるのって恥ずかしいな……///
「いいよ、行ってきなよ。」
『ありがとうございますっ、雲雀さん!』
「一音でもミスしたら…咬み殺すから。」
『ひょえ!』
何と恐ろしいことをサラッとおっしゃるんだろうか……
けど、
ひっくり返せば“頑張れ”って言われてるんだよ、ね?
『頑張ってきますっ♪』
精一杯の笑顔でビシッと敬礼してから、あたしは部屋を出た。
色んな人に応援してもらったんだもの、ちゃんと結果を出さなくちゃ。
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「ふぅん…」
控室に残った雲雀は、そのまま椅子に腰かけた。
客席に行かなくても、音は微かに聞こえてくるのだ。
「(あんな話聞いても、何も変わらないと思ったけど……)」
以前にツナから聞いた話を思い出しながら、先ほどの柚子の笑顔を思い浮かべた。
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『ただいま帰りました~…』
「お帰り、俺の方が早かったな。」
『ツナさん!』
「どうだった?ま、後でDVD見るけどさ。」
『そ、それ言わないで下さいっ!!』
口を尖らせる柚子に、ツナは微笑をこぼす。
そして、不意を突くように引き寄せた。
『きゃっ……つ、ツナさんっ!?』
「今日の夕飯はポークソテーがいい。」
『ちょっ…えっ…えぇ!?豚肉なんて買ってませんよ!』
「俺が今日の会談相手から貰って来たんだよ。」
『あ!そうでしたか!それなら了解しました♪』
腕の中で二コリと笑った柚子を解放し、ツナはふぅと一息。
と、そこに。
「ねぇ沢田、」
「あ、雲雀さん、今日はありがとうございました。」
「別にいいよ、面白かったから。」
ツナには、雲雀の笑みがいつもと違うように思えて。
「何かあったんですか?」
「少しだけ分かったよ、君のこだわりの理由。僕も、強い人間は嫌いじゃない。」
疑問符を浮かべていたツナだが、ピンと閃いたように言う。
「柚子のこと、ですか?アレは俺のですから。」
「知らないよ。」
「雲雀さんにも、譲るつもりはありません。」
「ふぅん…」
黒い笑みを見せるツナに、雲雀は吹雪の笑みを返す。
「それは君の自由でしょ。だから…僕の柚子への行動も、僕の自由だよ。」
それだけ言って、雲雀は自室に戻った。
一人廊下に残され、雲雀の言葉を反芻するツナ。
---「強い人間は嫌いじゃない。」
「強い、か………確かにな…」
そう呟きながら遠い記憶に思いを馳せたツナは、
右手で軽く、拳を作った。
リベラリズム
気に入ったモノは手に入れる、自分本位な自由主義
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