🎼本編
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「う"お"ぉい!こんなトコで油売ってやがったのかぁ!!」
「何だよ、腕掴むなよスクアーロ。」
「るせぇ!俺らはもう帰んだぁ!!」
「えーっ、俺まだ柚子ちゃんと喋りたいしー。なぁ?マーモン。」
「ウム。」
ベルさんとマーモンさんと一緒に、違う味のパスタを食べていると、スクアーロさんがやって来た。
どうやら、ザンザスさんが帰宅命令を出したみたい。
「あぁ"…いたのかぁ、柚子。」
『あ、お疲れ様です…スクアーロさん。』
「おう、柚子もなぁ。」
この人やっぱり、あたしの苦労分かってくれてる…!
何ていい人!!
「おらぁ!行くぜぇベル、マーモン!!」
「だってー、俺らが行っちゃうと柚子ちゃんまた絡まれるだろーしー…」
え…?
ベルさん、あたしのこと心配してくれてる…??
『あ、あの!あたしは大丈夫ですよ?ですからほら、ザンザスさん待たせちゃダメですよっ。』
「ム、それはそうだね。」
「良く分かってんじゃねぇかぁ柚子!!」
「ちぇー、柚子ちゃんもスクアーロの味方かよっ。」
口を尖らせるベルさんに、頭を下げて謝った。
「分かったから腕放せよ、スクアーロ。」
「逃げんじゃねーぞぉ。」
「はいはい、大人しく帰るって。んじゃ柚子ちゃん、またねー♪」
『はいっ、お気をつけて!』
笑顔でお見送りしたら、ベルさんも「ししっ」と笑ってくれた。
マーモンさんも、小さい手を振ってくれた。
か、可愛い……///
『(さーて、暇になっちゃったなぁ…)』
またあのお姉さんみたいな人に絡まれなきゃいーけど。
そうだ、今度は何を食べようかなぁ…。
色々考えながらテーブルの上を見回していると、隣にいる車椅子のおじいさんがフォークを取ろうと手を伸ばしているのが見えた。
『あ、どうぞ!』
「おや、すまないね。ありがとう。」
『いえいえっ。』
外ハネの白髪と、同じ色のお髭。
何だか優しい雰囲気を纏っていた。
癒されるなぁと思いながら、あたしはおじいさんに問いかける。
『あの、何かお取りしましょうか?』
するとおじいさんは一瞬だけ目を丸くして、温かい笑みを向ける。
「いいのかい?」
『はいっ。』
「じゃあ、そこのリゾットを頂こうかね。」
『了解です!分量はどのくらいにしますか?』
「小分けスプーンで2杯分頼むよ。」
『はい!』
綺麗に盛れるように慎重によそる。
そして、車椅子のおじいさんにゆっくりと手渡した。
「本当にありがとう、牧之原柚子さん。」
『えっ?あ、あたしの名前…』
「舞台で発表されていたからね、覚えているよ。」
あ、そっか……
見ず知らずの人にも名前公開しちゃったんだよなぁ……
軽く凹んだあたしに、おじいさんは言った。
「10代目ファミリーの皆は、まだ忙しいみたいだね。」
『そうですね、皆さん素敵な方ですから。』
「ならば、少しこちらのテラスで休んではいかがかな?」
『え…?』
「変な輩に絡まれずに済むからね。」
ポカンとするあたしに微笑みながら、おじいさんは車椅子でテラスへと向かう。
その温かいオーラにつられるように、あたしもテラスへ続いた。
「このベンチに座ると良い。」
『あ、ありがとうございます。』
「寒くないかね?」
『はい、大丈夫です。』
言われた通りベンチに座るあたし。
おじいさんは、隣に車椅子を停めた。
「それにしても、」
『へ?』
「さっきのは気持ちが良かったね。」
さっき…
さっきの……?
突然の話題転換に最初は混乱しまくったけど、ハッと気がついて。
ニコニコ笑うおじいさんとは反対に、青ざめた。
『(まさかっ!!)』
「君は良い婦人になれる。」
『見てらしたんですか……』
「このテラスから見えたよ。会場の隅とは言え、結構な騒ぎだったからね。」
うぅ…やっぱりマズかったかも。
ツナさんが侮辱された感じがして思わず、だし。
気まずくなってモジモジし始めるあたしに、おじいさんは言った。
「少し、昔話をしようかね。」
『昔話、ですか?』
「十数分、老人の小話に付き合ってもらいたいんだが。」
『あ、はいっ。あたしで宜しければ…!』
「ありがとう。」
このおじいさん、不思議。
凄くあったかくて、驚くほど心が和んで来る。
「私は長いことイタリアにいてね、趣味で音楽会を開催しているんだ。」
『凄いです!演奏家さんを招いてらっしゃるんですか?』
「募集方法は毎回様々だが……数年前、ポスターで呼びかけた時のことだ。」
それほど背の高くない日本人の男が1人、招集会場にやって来たらしい。
黒ぶちメガネに色素の薄い髪の毛、手には細長い革のケースを持っていた、と。
「イタリア人ばかりだ、当然彼は浮いた存在になってしまってね……しかし私は、是非演奏をと頼んだ。」
---「何を弾きましょうか。」
---「君の好きな曲を。」
---「私が好きな曲は、開催者が喜ぶ曲……つまり貴方が選ぶ曲です。」
「とても面白い男だと思ったよ。私がリクエストしたヴィヴァルディを、実に温かい音で奏でてくれた。」
おじいさんは、懐かしむように目を細める。
同時にあたしも、ずっと前のことをふと思い出した。
---「柚子は何の歌が好きかな?」
---『んーとねー……“アマリリス”!パパがオルゴールくれたもんっ。』
---「そっか、気に入ってくれて嬉しいよ。」
---『パパは?』
---「ん?」
---『好きな歌、なぁにー?』
---「そうだなぁ、パパの好きな歌は…………」
「その演奏後、彼は違った意味で浮き上がった。圧倒的才能を、認められたんだね。」
『聞いてみたいです…その演奏……』
すると、おじいさんは微笑みながらあたしを見て。
「内在しているんだよ、同じ温もりが。」
『………へ?』
「今夜のフルートは、彼のフルートにとても良く似ていた。」
だんだんと、勘が働いて来る。
まさか、まさか……
「彼は、日本に妻子を残していると言っていた……自分の職のせいで苦労をかけている、とも。」
コレ、勘違いだったら恥ずかしいな……でも、
「特に、娘さんには……2世であるが故に才能を求められてしまうだろうと。」
『おじいさん……その人って…』
「牧之原、という名字だった。君の…お父上だね、柚子さん。」
涙が、零れた。
『………あ、』
「これを。」
『す、すみませ……』
差し出されるハンカチに、更に止まらなくなる涙。
おじいさんは続ける。
「彼の言葉……伝言ではないんだがね、君に届けたいという、私のエゴだ。」
『父が…?』
聞き返すあたしに小さくゆっくり頷いて、おじいさんは口を開く。
「周りにいかなる期待を持たれようと、自分の選択で生きて欲しい……と。それでもし、君がフルートを選択するならば……」
フルートを習うと決めた時の、父の複雑そうな表情を覚えてる。
それから頭を撫でられて、言われた。
「“言葉を音楽に出来るように、心で音を紡いで欲しい”……と。」
『う……、ぁ…』
小さい子供みたいに、泣きじゃくってしまった。
だって、全く同じなんだもの。
父の言葉、そのものなんだもの。
---『好きな歌、なぁにー?』
---「そうだなぁ、パパの好きな歌は………柚子の好きな歌だな。」
---『柚子と一緒!?ホントに!?』
---「あぁ、そうだよ。」
あの時は分からなかったけど、今は少し分かる。
パパがいつも、“誰かの好きな歌”を愛していた理由。
「彼はいつも、聴かせる歌を自分で選曲しなかった。それはきっと、」
『心が……通うからですね…』
「その通りだね。」
父にとって、音楽は言葉だった。
好きな歌を知る事で、相手を知るヒントを得ていた。
「さぁ、私の話は終わりだ。あとは、若い者に任せよう。」
『え……?』
未だ止まらない涙を拭いつつ、おじいさんの視線を追う。
「柚子!お前こんなトコに………って、9代目っ!?」
『ツナさ……』
あれ?
今、何と??
『9代目であらされますかぁ!!?』
「おやおや、レディーが大声を出すものではないよ。」
『す、すみませんっ…!』
深ーく頭を下げるあたしに、おじいさん改め9代目様はクスッと笑う。
「では綱吉君、あとは君が守ってあげなさい。」
「はい。」
テラスから会場に戻る9代目に、ツナさんも頭を下げた。
あ、あのツナさんが…!
あの横暴腹黒意地悪ツナさんが…!!
『(頭下げたーーーーっ!!)』
「また随分と失礼な…」
『ご、ごめんなさっ……』
「まぁ、今日は大目に見てやるよ。」
スッと隣に座ったツナさんは、そのままグイッとあたしを抱き寄せて。
『つ、ツナさんっ!?』
「明日、目ぇ腫れるかもな。」
『あ……!』
そうだよ、あたしってば大泣きしちゃったもん。
絶対腫れるーーーっ!!
「柚子、」
『何ですか…?』
「……大丈夫か?」
信じられなかった。
だって、ツナさんはもっと意地悪なコメントすると思ってたから。
『……なんか、ズルいですよ…ツナさん。』
「何がだよ、つーか質問に答えろ。」
『大丈夫…じゃないですっ。』
どうせ抱きしめられてんだから、表情なんてお互い見えない。
あたしが自分で逃れるのは100%不可能。
だったら、新品スーツに涙つけてやるっ。
『何でっ…こんな時ばっかりっ……』
「…意味不明。つーか涙つけんな、9代目からハンカチ借りたんだろ?」
『(読まれてるし…)』
「ったく……」
ツナさんが、溜め息をつきながらあたしの頭を撫でる。
その感触も涙腺を刺激して、ますます大丈夫じゃなくなった。
多分、10代目の婚約者役である以上、こんな風にテラスで泣いてる場合じゃないんだろうな。
またツナさんや他の皆さんに、迷惑かけちゃってるのかも知れない。
「そんなの、構わねぇよ。」
『え…?』
「大丈夫じゃねぇなら、俺がココにいるから。」
心臓が、五月蝿くなった。
目だけじゃなくて、顔全体が熱くなった。
そして、気付いてしまった。
『(ツナさん……泣いてる理由、訊かないんだ……)』
横暴ボスの、優しさに。
ヤップ
温かい人とのお喋りは、色んな事に気付かせてくれた
continue...
「何だよ、腕掴むなよスクアーロ。」
「るせぇ!俺らはもう帰んだぁ!!」
「えーっ、俺まだ柚子ちゃんと喋りたいしー。なぁ?マーモン。」
「ウム。」
ベルさんとマーモンさんと一緒に、違う味のパスタを食べていると、スクアーロさんがやって来た。
どうやら、ザンザスさんが帰宅命令を出したみたい。
「あぁ"…いたのかぁ、柚子。」
『あ、お疲れ様です…スクアーロさん。』
「おう、柚子もなぁ。」
この人やっぱり、あたしの苦労分かってくれてる…!
何ていい人!!
「おらぁ!行くぜぇベル、マーモン!!」
「だってー、俺らが行っちゃうと柚子ちゃんまた絡まれるだろーしー…」
え…?
ベルさん、あたしのこと心配してくれてる…??
『あ、あの!あたしは大丈夫ですよ?ですからほら、ザンザスさん待たせちゃダメですよっ。』
「ム、それはそうだね。」
「良く分かってんじゃねぇかぁ柚子!!」
「ちぇー、柚子ちゃんもスクアーロの味方かよっ。」
口を尖らせるベルさんに、頭を下げて謝った。
「分かったから腕放せよ、スクアーロ。」
「逃げんじゃねーぞぉ。」
「はいはい、大人しく帰るって。んじゃ柚子ちゃん、またねー♪」
『はいっ、お気をつけて!』
笑顔でお見送りしたら、ベルさんも「ししっ」と笑ってくれた。
マーモンさんも、小さい手を振ってくれた。
か、可愛い……///
『(さーて、暇になっちゃったなぁ…)』
またあのお姉さんみたいな人に絡まれなきゃいーけど。
そうだ、今度は何を食べようかなぁ…。
色々考えながらテーブルの上を見回していると、隣にいる車椅子のおじいさんがフォークを取ろうと手を伸ばしているのが見えた。
『あ、どうぞ!』
「おや、すまないね。ありがとう。」
『いえいえっ。』
外ハネの白髪と、同じ色のお髭。
何だか優しい雰囲気を纏っていた。
癒されるなぁと思いながら、あたしはおじいさんに問いかける。
『あの、何かお取りしましょうか?』
するとおじいさんは一瞬だけ目を丸くして、温かい笑みを向ける。
「いいのかい?」
『はいっ。』
「じゃあ、そこのリゾットを頂こうかね。」
『了解です!分量はどのくらいにしますか?』
「小分けスプーンで2杯分頼むよ。」
『はい!』
綺麗に盛れるように慎重によそる。
そして、車椅子のおじいさんにゆっくりと手渡した。
「本当にありがとう、牧之原柚子さん。」
『えっ?あ、あたしの名前…』
「舞台で発表されていたからね、覚えているよ。」
あ、そっか……
見ず知らずの人にも名前公開しちゃったんだよなぁ……
軽く凹んだあたしに、おじいさんは言った。
「10代目ファミリーの皆は、まだ忙しいみたいだね。」
『そうですね、皆さん素敵な方ですから。』
「ならば、少しこちらのテラスで休んではいかがかな?」
『え…?』
「変な輩に絡まれずに済むからね。」
ポカンとするあたしに微笑みながら、おじいさんは車椅子でテラスへと向かう。
その温かいオーラにつられるように、あたしもテラスへ続いた。
「このベンチに座ると良い。」
『あ、ありがとうございます。』
「寒くないかね?」
『はい、大丈夫です。』
言われた通りベンチに座るあたし。
おじいさんは、隣に車椅子を停めた。
「それにしても、」
『へ?』
「さっきのは気持ちが良かったね。」
さっき…
さっきの……?
突然の話題転換に最初は混乱しまくったけど、ハッと気がついて。
ニコニコ笑うおじいさんとは反対に、青ざめた。
『(まさかっ!!)』
「君は良い婦人になれる。」
『見てらしたんですか……』
「このテラスから見えたよ。会場の隅とは言え、結構な騒ぎだったからね。」
うぅ…やっぱりマズかったかも。
ツナさんが侮辱された感じがして思わず、だし。
気まずくなってモジモジし始めるあたしに、おじいさんは言った。
「少し、昔話をしようかね。」
『昔話、ですか?』
「十数分、老人の小話に付き合ってもらいたいんだが。」
『あ、はいっ。あたしで宜しければ…!』
「ありがとう。」
このおじいさん、不思議。
凄くあったかくて、驚くほど心が和んで来る。
「私は長いことイタリアにいてね、趣味で音楽会を開催しているんだ。」
『凄いです!演奏家さんを招いてらっしゃるんですか?』
「募集方法は毎回様々だが……数年前、ポスターで呼びかけた時のことだ。」
それほど背の高くない日本人の男が1人、招集会場にやって来たらしい。
黒ぶちメガネに色素の薄い髪の毛、手には細長い革のケースを持っていた、と。
「イタリア人ばかりだ、当然彼は浮いた存在になってしまってね……しかし私は、是非演奏をと頼んだ。」
---「何を弾きましょうか。」
---「君の好きな曲を。」
---「私が好きな曲は、開催者が喜ぶ曲……つまり貴方が選ぶ曲です。」
「とても面白い男だと思ったよ。私がリクエストしたヴィヴァルディを、実に温かい音で奏でてくれた。」
おじいさんは、懐かしむように目を細める。
同時にあたしも、ずっと前のことをふと思い出した。
---「柚子は何の歌が好きかな?」
---『んーとねー……“アマリリス”!パパがオルゴールくれたもんっ。』
---「そっか、気に入ってくれて嬉しいよ。」
---『パパは?』
---「ん?」
---『好きな歌、なぁにー?』
---「そうだなぁ、パパの好きな歌は…………」
「その演奏後、彼は違った意味で浮き上がった。圧倒的才能を、認められたんだね。」
『聞いてみたいです…その演奏……』
すると、おじいさんは微笑みながらあたしを見て。
「内在しているんだよ、同じ温もりが。」
『………へ?』
「今夜のフルートは、彼のフルートにとても良く似ていた。」
だんだんと、勘が働いて来る。
まさか、まさか……
「彼は、日本に妻子を残していると言っていた……自分の職のせいで苦労をかけている、とも。」
コレ、勘違いだったら恥ずかしいな……でも、
「特に、娘さんには……2世であるが故に才能を求められてしまうだろうと。」
『おじいさん……その人って…』
「牧之原、という名字だった。君の…お父上だね、柚子さん。」
涙が、零れた。
『………あ、』
「これを。」
『す、すみませ……』
差し出されるハンカチに、更に止まらなくなる涙。
おじいさんは続ける。
「彼の言葉……伝言ではないんだがね、君に届けたいという、私のエゴだ。」
『父が…?』
聞き返すあたしに小さくゆっくり頷いて、おじいさんは口を開く。
「周りにいかなる期待を持たれようと、自分の選択で生きて欲しい……と。それでもし、君がフルートを選択するならば……」
フルートを習うと決めた時の、父の複雑そうな表情を覚えてる。
それから頭を撫でられて、言われた。
「“言葉を音楽に出来るように、心で音を紡いで欲しい”……と。」
『う……、ぁ…』
小さい子供みたいに、泣きじゃくってしまった。
だって、全く同じなんだもの。
父の言葉、そのものなんだもの。
---『好きな歌、なぁにー?』
---「そうだなぁ、パパの好きな歌は………柚子の好きな歌だな。」
---『柚子と一緒!?ホントに!?』
---「あぁ、そうだよ。」
あの時は分からなかったけど、今は少し分かる。
パパがいつも、“誰かの好きな歌”を愛していた理由。
「彼はいつも、聴かせる歌を自分で選曲しなかった。それはきっと、」
『心が……通うからですね…』
「その通りだね。」
父にとって、音楽は言葉だった。
好きな歌を知る事で、相手を知るヒントを得ていた。
「さぁ、私の話は終わりだ。あとは、若い者に任せよう。」
『え……?』
未だ止まらない涙を拭いつつ、おじいさんの視線を追う。
「柚子!お前こんなトコに………って、9代目っ!?」
『ツナさ……』
あれ?
今、何と??
『9代目であらされますかぁ!!?』
「おやおや、レディーが大声を出すものではないよ。」
『す、すみませんっ…!』
深ーく頭を下げるあたしに、おじいさん改め9代目様はクスッと笑う。
「では綱吉君、あとは君が守ってあげなさい。」
「はい。」
テラスから会場に戻る9代目に、ツナさんも頭を下げた。
あ、あのツナさんが…!
あの横暴腹黒意地悪ツナさんが…!!
『(頭下げたーーーーっ!!)』
「また随分と失礼な…」
『ご、ごめんなさっ……』
「まぁ、今日は大目に見てやるよ。」
スッと隣に座ったツナさんは、そのままグイッとあたしを抱き寄せて。
『つ、ツナさんっ!?』
「明日、目ぇ腫れるかもな。」
『あ……!』
そうだよ、あたしってば大泣きしちゃったもん。
絶対腫れるーーーっ!!
「柚子、」
『何ですか…?』
「……大丈夫か?」
信じられなかった。
だって、ツナさんはもっと意地悪なコメントすると思ってたから。
『……なんか、ズルいですよ…ツナさん。』
「何がだよ、つーか質問に答えろ。」
『大丈夫…じゃないですっ。』
どうせ抱きしめられてんだから、表情なんてお互い見えない。
あたしが自分で逃れるのは100%不可能。
だったら、新品スーツに涙つけてやるっ。
『何でっ…こんな時ばっかりっ……』
「…意味不明。つーか涙つけんな、9代目からハンカチ借りたんだろ?」
『(読まれてるし…)』
「ったく……」
ツナさんが、溜め息をつきながらあたしの頭を撫でる。
その感触も涙腺を刺激して、ますます大丈夫じゃなくなった。
多分、10代目の婚約者役である以上、こんな風にテラスで泣いてる場合じゃないんだろうな。
またツナさんや他の皆さんに、迷惑かけちゃってるのかも知れない。
「そんなの、構わねぇよ。」
『え…?』
「大丈夫じゃねぇなら、俺がココにいるから。」
心臓が、五月蝿くなった。
目だけじゃなくて、顔全体が熱くなった。
そして、気付いてしまった。
『(ツナさん……泣いてる理由、訊かないんだ……)』
横暴ボスの、優しさに。
ヤップ
温かい人とのお喋りは、色んな事に気付かせてくれた
continue...